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2006年10月13日

世論調査のマジック

坂 泰知のプロフィール坂 泰知
読売テレビ放送報道局解説委員


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 世論調査というものは一見、中立的で冷静な調査のように感じますが、実は「どこ
の社が」「どんな質問を設け」「どんな方法で」「誰に聞いたか」によって、大きく結果
が異なってくるものです。

つまり、極端なことを言えば、その結果を恣意的なものに
しようと思えばいくらでも可能ですし、「これが平均的な世論だ」とアナウンスするこ
とで、更に論調を操作していくことも可能なのです。今回の安倍内閣に対する全国紙
の世論調査でも各社の微妙なズレが見えてきて、その結果はなかなか興味深いものが
ありました。


 まず安倍内閣の支持率ですが、読売が70%、朝日が63%、毎日が67%、日経
が71%と各社とも高い数字となりました。歴代1位の小泉さんには及ばないものの、
日経は歴代2位、その他の各紙も歴代3位という結果です。朝日と日経の支持率に8
ポイントの開きがありますが、不支持率を比較すると各社とも2~4ポイント差に収
斂するので、おおむね誤差の範囲と言っていいでしょう。


 次に内閣の顔ぶれについて国民がどう考えているかです。まず、読売新聞の世論調
査は「新内閣の閣僚の顔ぶれに満足していますか?」という設問で、36%が「満足
している」、28%が「満足していない」という結果になりました。対する朝日新聞は
「安倍内閣の顔ぶれを見て新鮮だと思いますか?」という設問で、35%が「新鮮だ」、
38%が「そう思わない」という結果に・・・・。この数字を受け、朝日の記事は「支持
率は高水準だが、国民の見方は分かれている」と解説しています。そして、毎日新聞
は「首相が行なった閣僚人事を評価しますか?」という設問で、49%が「評価する」、
29%が「評価しない」という結果になりました。ここで問題にしたいのは、朝日の
「新鮮か?」という問いかけに関してです。他紙のように、「満足するかしないか」あ
るいは「評価するかしないか」という二面性を問う質問にしていたら、肯定的な答え
が多くなっていたかもしれません。更に朝日は「この内閣は強力な内閣だと思います
か?頼りない内閣だと思いますか?」という質問も設けています。結果は「頼りない」
が34%で「強力」が23%なのですが、少なくとも「強力だと思う」「そう思わない」
という選択で答えさせていたら、もう少し拮抗していたかもしれません。朝日が恣意
的に設問したとは思いませんが、質問の仕方によって回答者が誘導される可能性があ
るという一例ではないかと思います。


 更に見て行きましょう。朝日は「先の戦争について、安倍首相は自らの歴史認識を
示していません。こうした姿勢を評価しますか?」という質問を用意しました。結果
は「評価する」が24%で「評価しない」が52%でした。毎日にも同じような設問
があるのですが、こちらの文言は「首相は官房長官だった今年4月、靖国神社を参拝
しました。首相は参拝したかどうかを明らかにしていませんが、こうした姿勢を支持
しますか?」というもの。結果は「支持する」が46%で「支持しない」も46%と
なりました。これは私の主観かもしれませんが、「参拝の有無」という特定した形で質
問した毎日に比べ、朝日は「歴史認識」という広範囲にわたる質問になりますから、
当然、いろいろなイメージが湧いてきます。もしかすると、安倍総理のタカ派イメー
ジが増幅される設問であったかもしれません。ちなみに、読売はこの手の質問を行な
っていません。回答が割れることを見越してあえて聞かなかった・・・・わけではないで
しょうが、世論調査には「質問しない」という、別の意味での恣意性だって入り込む
恐れがあるのです。


 数字というものは、物事の客観性を指し示す指標のように錯覚してしまいますが、
こうして見ていくと、決してそうではないということがわかるでしょう。その結果を
元に主観的なコメントをしたならば、それはもう世論の誘導以外の何者でもなくなる
のです。「数字に惑わされてはいけない、その数字を恣意的に使ってはいけない」と、
自戒の念をこめて実感させられます。だからと言うわけではないですが、安倍さんに
は世論調査の結果に左右されることなく、自身が考える政策をしっかりと実現してい
ってほしいと思っています。

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