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2006年10月31日

順風満帆の安倍政権だが

岩田 公雄岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)


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郵政造反組の復党はどうなる
『安倍政権』は、高い支持率で「臨時国会序盤」を無難に乗り切り、
さらに「中韓歴訪」や「北朝鮮の核実験」を追い風に「衆院補選」も
完勝して、政権1ヶ月で安定軌道に乗りました。
『安倍政権』は、「国会運営」でもこの「官邸主導の政策運営」を一層
強めていくのでしょう。

まず、政権が最重要課題に掲げる『教育基本法改正案』は審議が加速
して、「政府案」のまま今国会での成立を目指すことになります。
また、『防衛庁』の「省昇格」を目指す『防衛省昇格法案』は審議入り
し、「憲法改正の手続き」を定める『国民投票法案』は「小委員会」が
設置され、継続審議の見通しが立ちました。

このように順風満帆の船出に見える『安倍政権』ですが、「郵政造反組
の復党問題」が大きな火種になりそうです。
平沼赳夫氏・堀内光雄氏・野田聖子氏などに代表される「造反組」は、
「選挙に強い」という共通点を持ち、来年夏の『参院選』を考えた時、
絶対に必要な戦力だからです。
「与野党逆転」を狙う小沢一郎・民主党代表にとっても絶対に欲しい
人材ですが、「民主党入り」を表明したのは『鳥取』の川上義博元議員
だけです。
綿貫民輔氏・亀井静香氏・久興氏など『日本新党』組を除く「造反組」
が『自民党』復党にこだわるのは、「野党にいては何もできない」こと
を知っているからです。

私が「初代報道東京駐在」として赴任してきたのは、1993年9月。
その直前に、『日本新党・新政党・新党さきがけ・民社党・公明党・
社会党・社民連・民改連』の8つの政党・会派の『細川内閣』が誕生
しました。
「55体制」以後、『自民党』が初めて「野党」になった時です。
そして、「政権」を外れた「自民党議員」が知ったのは、陳情が来なく
なったこと、官庁の役人にもなかなか会えなくなったことなど“野党
の悲哀”だったのです。 

そして、「何が何でも政権に戻ろう」とした『自民党』が図ったのは、
社会党の村山富市委員長を主犯とする『自・社・さ連立政権』でした。
平沼赳夫氏・堀内光雄氏・野田聖子氏らは「復党」に自信を持ち、さら
に未来を見ているのです。


小泉チルドレンは使い捨てか
青木幹雄氏・片山虎之助氏ら「自民党・参院執行部」が「造反組復党」
に積極的なことに対し、「小泉チルドレン」が「復党反対の署名活動」
を開始しました。

これに参加したのは82人のチルドレンのうち57人。
「現時点での復党は、国民に自民党のおごりと思われる」「党としての
筋を通して欲しい」というのが、反対の弁です。
もし、選挙に強い「造反組」が復党すれば、次の衆議院選挙でチルド
レンの出番はなくなります。

この話を受けて、民主党・菅直人代表代行は、「自民党は“使い捨ての
政党”であることを示している」という談話を残しています。
「小泉チルドレン」が恐れているのは“使い捨て”になることです。
安倍総裁は「幹事長に検討して頂きたい」と述べ、中川秀直幹事長は
「首相の公約に全面的に賛成するなら、“安倍リーグ”に入るべき」と
話し、「復党に前向きな姿勢」を見せています。
これに対し、“チルドレンの生みの親”である小泉純一郎前首相は、
建部勤前幹事長との会談で、「既得権者、郵便局の票を当てにしたら、
参院選で負けるぞ」と、「造反組復党には慎重な姿勢が必要」の考えを
示しました。

いずれにしても「復党」は実現するのでしょうが、「それがいつになる
のか」「“刺客議員”の選挙区の調整をどうするのか」など難問が山積
しています。
この問題がこじれると、順風満帆の『安倍政権』は新たな“火種”を
抱えることになりそうです。

2006年10月30日

不協和音が出てきた小沢民主党

岩田 公雄岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)


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周辺事態法を巡って、党内はぎくしゃく
26日で『安倍政権』、誕生1ヶ月が過ぎました。
まず「訪中・訪韓」で「東アジア外交」を復活させ、その最中に「北
朝鮮の核実験」があったものの、『国連安保理』で「経済制裁決議」を
取り付けました。


そして来年夏の『参議院選挙』の“前哨戦”といわれた『神奈川16
区』と『大阪9区』の「衆院補欠選挙」で、『自民党』は2勝しました。
まさに順風満帆のスタートだったといえます。

一方、『民主党』にとって「補選2敗」は、手痛い取りこぼしになりま
した。特に鳩山由紀夫幹事長を責任者に乗り込んだ『大阪9区』では
当初「民主有利」と見られていたのですが、「北朝鮮の核実験」が追い
風になって、有権者の声は「朝鮮半島の危機管理は政権与党がやるべ
きだ」に変わり、なすべくもない敗戦でした。

鳩山幹事長は、「北朝鮮の核実験で全てが飛んだ。争点が見つけられな
かった」としながらも、敗因の一つとして「細野豪志議員のテレビ
アナとの不倫キス騒ぎ」をあげました。確かに応援に駆けつけた小沢
一郎代表に「細野を出せ!」という野次も飛びました。しかし、敗因
とは言えないでしょう。
何しろ論点としていた「小泉政権が広げた格差」や「消費税」の問題
を選挙で訴えることができず、「危機管理」にしても「周辺事態法論議」
では、有権者はついてこなかったわけです。
小沢・鳩山・菅の“民主党トロイカ”は「周辺事態法に当たらない」と
いう立場を取るのに対し、前原誠司前代表ら若手は「周辺事態と認定
できる」と発言しています。

そして、敗戦の翌日には“党内不一致”というか、「小沢批判」が始ま
りました。
「選挙に強いという“小沢神話”が崩壊した」とか、「民主党に将来の
政権を託せるのか」という声も聞かれ出して、この不協和音が党内のヒビを大きくする恐れがあります。
この敗戦は、小沢代表にとってもショックだったに違いありません。
「健康不安説」も取り沙汰されていますが、『民主党』をどう立て直す
のでしょうか。


福島県知事選・沖縄県知事選はどうなる
『民主党』は、来年の参院選で「与野党逆転」を狙うには、もう一度
踏みとどまって体制を整えなければ、苦しいことになります。
その鍵を握るのが、11月の『福島県知事・沖縄県知事』の選挙です。
『福島』では、『民主党』が強く出馬を願っていた弁護士の森雅子さん
が『自民党』の推薦を受けたために、『民主党』からは佐藤雄平・参院
議員が出ることになりました。
『福島』には「民主党国会議員」が多く、衆院3区・玄葉光一郎、4区・
渡部浩三、比例区・吉田泉、参院・和田洋子がいるのですが、佐藤雄平
候補の陣営からは「民主党本部に応援に来ないでほしい」という声が
出ているといいます。

佐藤栄佐久前知事が公共工事を巡る談合事件の収賄容疑で逮捕された
後の選挙だけに、「民主有利」と見て「本部の応援はいらない」という
のでしょうか、それともほかに理由があるのでしょうか、理解に苦し
む対応です。
『沖縄』では『沖縄社会大衆党』の糸数慶子・参院議員が「野党5党
共闘」の候補として立つことになっています。
『沖縄』には「保守と革新が交互に県政を担ってきた」歴史があり、
今度は「革新の番だ」と言われているだけに、『民主党』は共闘に踏み
切ったのでしょうが、『民主党』が『共産党・社民党』と共闘できるの
でしょうか。
「2大政党時代の『野党第一党』としての“個性”が出せないのでは
ないかと、気になるところです。

2006年10月27日

「事実は一つ・・・・ではない」

坂 泰知のプロフィール坂 泰知
読売テレビ放送報道局解説委員


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 先日、思わず苦笑せざるを得ない新聞記事を見つけました。それは、国際面に載ってい
た小さな記事なのですが、中国と韓国の間で論争が起きているというのです。


 事の発端は日本でもお馴染みの「漢方」でした。韓国が中国の伝統医学である「漢方(中
医学)」を「韓医学」と改名し、世界遺産に登録する動きが出ていて、これに対し、中国で
猛反発が起きているというのです。事実とするならば、これぞ〝捏造〟ではないかと私な
どは思ってしまうのですが、それにしても「日本の歴史教科書の記述は国家的捏造だ」と
足並み揃えて我々を批判する両国が、足元の〝歴史の改竄〟を巡って対立するとは、何と
も苦笑するしかありません。

 ことほど左様に、歴史認識というものは人や立場によってバラバラですし、後世に恣意
的に塗り替えられたものも少なくありません。よく言われるのは、何か対立なり戦いなり
があった場合、その後の歴史は全て勝者の論理で書かれていくという点です。敗者はとこ
とん悪者扱いされるのです。いや、それどころか、歴史上から抹殺された者もたくさん存
在するわけです。そういった意味では、事実は一つと言いますが、どの角度から、どうい
う視点で眺めるかによって、全く違った見解が生まれるわけです。百歩譲って事実は一つ
だとしても、その事実を「是」とするか「非」とするかは、評価する立場によって正反対。
日本と中国、あるいは、日本と韓国の専門家が共に歴史を検証する場を設けると言います
が、そこで統一見解を出すなどということは半ば不可能だと個人的には思います。

 例えば靖国問題ですが、韓国や中国は「A級戦犯を祀る施設に一国の総理が参拝するこ
とは許せない」という論理で、「日本は先の戦争を反省していない」と責め立てます。しか
し、それは相手国から見た論理です。我々大半の日本人は軍国主義への回帰を望みません
し、小泉前総理も言っていたように、不戦への思いは強いのです。一方でその昔、日本の
初代総理・伊藤博文は安重根によって暗殺されたわけですが、韓国では歴史上の英雄とし
て扱われています。もし、ここで日本側が「一国のトップを殺したテロリストを祀り上げ
るとはとんでもない話ではないか」と、自国の論理だけで拳を振り上げたとしたらどうな
るでしょうか。しかし、我々はそんな愚は犯しません。なぜなら、あまりにも感情的に過
ぎるからです。暗殺という行為について、韓国側から見た評価と日本側から見た評価は別
物であり、正しかったか間違っていたかを両者で争っても何も生み出すことはできないの
です。A級戦犯問題も同じだろうと私は思います。そもそも、広田弘毅のような文人にま
で絞首刑という判決を下した東京裁判は大いに疑問を感じるところですが、少なくとも、
日本では軍人・東条英機を英雄視するような考え方はごくごく少数です。その東条が祀ら
れていると知りながら、参拝に対してさほど抵抗感を覚えないのは、ある政治家も口にし
ていましたが「死者に鞭打たない」という日本独特の宗教観のなせる業だと思うのです。

 と、こんなことを書いていると、右翼的な危険人物との烙印を押されるかもしれません
が、私が言いたいのは、立場や主張の違うもの同士、「冷静さ」と「寛容」こそ、必要なの
だということです。そして、自分の論理の押し付けではなく、複眼的な物の見方が大切だ
と思うのです。私も一人の人間ですから、人に対しても事象に対しても「好き嫌い」が発
生します。しかし、この仕事をしていて思うのは、個人的に「嫌いだ」とか「理解できな
い」と感じる人物・物事であればあるほど、自分の理屈ではなく相手の論理を見つけ出す
努力をしなくてはいけないという点です。それがキャスターとしてのバランス感覚であり、
ニュースとしての理性だと思うのです。もちろん、外交関係もかくあるべきだというのが
私の持論ではありますが・・・・。

2006年10月26日

メディア論コーヒーブレイク8

辛坊 治郎辛坊 治郎
読売テレビ・報道局局次長兼解説委員


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 さあ、全国選りすぐりのオチこぼれを集めて、読売テレビのアナウンサー試験が
始まりました。

八人のオチこぼれ
 全国から集まった受験生は八人でした。全員男です。男女雇用機会均等法の施
行された今なら、嘘でも女性を入れておかないと、お役所に怒られますが、当時は
そんな法律はありません。会社はとにかく男性アナウンサーが欲しかったようなの
です。

 どのくらい男性アナウンサーが払底していたかというと、これは入社後分かった
ことですが、三年先輩の男性アナは中国地方の他系列局からの移籍者で、五年
先輩は短波放送からの引抜でした。というくらい、当時の読売テレビは人手が足り
なかったのです。

 今でも事情はそんなに変わっていないかもしれません。というのも、女性アナウ
ンサーというのは、まさに現在の花形職業で、将来他業種に進出して文化人とな
るもよし、結婚するもよし、局に残ってお局(つぼね)になるもよしで、娘にやらせた
い職業ナンバーワンでしょう。ところが男性アナウンサーというのは、つぶしは利
かない、他業種に進出できない、文化人になんか絶対になれない、まさに放送業
界ヒエラルヒーの底辺の職業なのです。なんていうと現職先輩諸兄に怒られそう
ですが、まあそのくらいの自覚があってもいいでしょう。というわけで、現在の女子
アナブームからは考えられないほど、男性アナウンサーの受験生は本当にわず
かなのです。

 はっきり言います。これから放送局を目指そうとする人で、仕事はともかく、何が
何でも局に入りたいという男性は、まずアナウンサー試験を受けることをお勧めし
ます。なぜなら、ディレクターや記者などの一般職に比べると、圧倒的に競争率が
低いからです。いったん局に入ってしまえば、不祥事さえ起こさない限り後はどうと
でもなりますから、方法論として覚えておかれてもいいと思います。

 さて、全国から選りすぐりのオチこぼれ八人の中に見知った顔がありました。そ
の人物は、フジテレビの最終試験で最後の三人になったうちの一人でした。という
ことは、私と彼とが落っこちて、もう一人が受かったということです。ところが受かっ
たはずのもう一人の顔を、その後フジテレビで見たという記憶がないのです。多分
かなり早い段階で、他の職場に変わられたのか、テレビ局になじめずに失踪して
しまわれたのかどちらかではないかと思っています。


試験が始まった
 試験は一泊二日の短期決戦です。まず初日はペーパーテストと、性格診断テス
ト、そして、簡単な原稿の読みです。あとからわかったことですが、この段階での原
稿読みに関して、うまい下手はほとんど関係ありません。アナウンサーを目指して、
とにかく必死に原稿の読みを練習してくる人がいますが、この段階での読みのうま
い下手は、合否にほとんど関係ないのです。この原稿読みテストの意義は基本的
に、字を音に換えられるか、ということと、常識的な漢字を常識的に読む能力があ
るかを見ることにあるのです。

 また、ペーパーテストも一般職ほど厳しく順位付けはされません。平均より突出
して低い点でない限り、オッケーなのです。

 さらにまた、性格テストに関しては、アナウンス部などの現場の採点者が合否判
定の参考にすることはまったくありません。だいいち、人事部以外の人間が、この
種の個人情報を見る機会すらないのが現状です。私のアナウンス部時代の経験
からしても、この性格テストの結果で人事から採用の合否判定にクレームが来た
ことは一度もありません。

 ところでこの性格診断テストというのは、いったいどのくらい信用がおけるものな
んでしょうかねえ。あの中によく、「あなたは時々自分は電波で操られていると思い
ますか」なんていう質問がありますが、これにイエスと答える人がいるんでしょう
か?残念ながら、もうこんなテストを受けることがなくなって何十年もたちますが、
次にやらさらたら、ためらわずにイエスに丸をしようと決意しています。そのときの
判定者の顔が見てみたいものです。

 初日はこうしてあっさりと終わり、会社が押さえてくれていた近所のビジネスホテ
ルに、みんなで引き上げました。晩飯をどこでだれと食べたのかは記憶がありま
せん。ただ、その後関西で暮らすようになって、食に関して一番びっくりしたのは、
「うどん定食」の存在です。


関西のうどん定食
 辛坊家のルーツは大阪岸和田にあり、現在でも本家筋は何軒かそこに住んでい
るのですが、私自身は親父が公務員だったこともあり、小学校に上がる前までは
相当頻繁に全国を転々としたようです。「したようです」という言い方は変ですが、
ほとんど記憶がないので仕方がありません。生まれたのは鳥取県米子市らしいの
ですが、わずか二ヶ月の滞在だったようです。だから、一番困る質問は、「ご出身
は?」というものです。生まれは鳥取県ですが、そこにはほとんど縁もゆかりもあり
ません。また大阪はルーツですが、物心付いてからは埼玉県で育ったので、「ふる
さと大阪」という感じはこれまたほとんどありません。また埼玉県は青春時代を過
ごした土地ですから、愛着は強いのですが、家庭内は言葉も含めて関西の文化
圏でしたから、どこか「よそもの」感を抱きながらの青春だったような気もするので
す。結局、私はふるさとを持たない根無し草なのだと思います。

 そんな私が就職して一番驚いたのは、天神橋商店街のうどん定食でした。漫画
「おとこおいどん」でラーメンライスが全国区になってから、麺類と白ご飯を一緒に
食べることに抵抗感を持たない人も増えていますが、昔は関東で、ご飯をおかず
にうどんを食べる人などは誰もいませんでしたし、そんなメニューはどこのうどん
屋にも存在しませんでした。

 ところが初めて関西で生活を始めてびっくり、関西では、どこのうどんやさんにも
うどん定食があるのです。そのメニューでは、白飯をおかずにうどんを食べるので
す。どんぶりのおかずにミニうどんが付くのとは根本的に違います。あくまでうどん
がメインで、白いご飯がおかずなのです。その奇妙さに取り付かれて、入社後二
年間くらい、毎日、うどん定食ばかりを食べ続けました。人間炭水化物だけでも死
なない、という確信を持ったのはそのためです。


短期決戦二日目
さあ、試験はいよいよ二日目に突入です。ここでまたも意外な展開が待っていまし
た。というあたりは次回に。


2006年10月25日

上海蟹とは切っても切れない『紹興酒』

大泉 純子大泉 純子
読売テレビ放送 報道局 報道部記者

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『紹興』産の酒だけが「紹興酒」
先週は「上海蟹」のことを書いたので、今週は蟹を食べるときに欠か
せない「紹興酒」のウラ話です。

「紹興酒」の産地は、上海から車で3時間ほど南の『浙江省紹興』と
いうまち。作家、魯迅の生まれ故郷としても有名なところです。
このまちのきれいな水とお米で作られるお酒だけを、「紹興酒」という
のです。
産地が『紹興』でなければ、「紹興酒」ではない、ということ。
他の場所で作られたものは、「黄酒」といいます。
(余談ですが、今から20年ほど前、学生時代に訪れた『紹興』は、
水路と田んぼのイメージしかないほどのんびりした風景が広がって
いたものです。
最近はどんどん今風の姿に開発されてしまって残念……)
「上海蟹」にはぜひ、ワインなど他のお酒ではなく、「紹興酒」をお勧
めします。
普段お酒を飲まなくても、「蟹を食べるときだけは飲む」という人もい
るくらいです。


『どっちの料理ショー』取材異聞
一昨年のちょうど今頃、読売テレビの『どっちの料理ショー』が、
特選素材として「紹興酒」を取り上げたいということで、少しだけ
お手伝いをさせていただきました。
今では、2週間までの観光やビジネス目的であればビザのいらなくな
った中国ですが、
取材をするには「ビザ」を取得しなければなりません。
必要書類をお役所に提出し、さて、いよいよあさってスタッフが上海
入り、という日のこと。

担当プロデューサーからの電話。
「まだビザOKの連絡が来ないのですが、大丈夫でしょうか……?」 
「大丈夫じゃないよ!!」
役所に電話をしてみたところ、「担当者が休暇中で連絡がつかない」と
いいます。
「やりかけの仕事を放っておいて何ということ!」と怒ったところで
事態は解決しないので、とにかく上海のお役所のトップに直談判に
行きました。「ビザ」を発給するのは外交部(外務省)の仕事ですが、
上海市は特別な権限を与えられているので、取材場所が上海だけなら
上海市がビザを発給することができます。
ところが、今回は上海に加えて『紹興』にも取材に行くため、取材先
の紹興市の役所、さらにその上の浙江省の担当部署を通じて外交部に
「ビザ」を申請しなければなりません。
地元の受け入れ機関が確定しないと、「ビザ」を発給してもらえないの
です。

これまでの例から、上海市の役所にお願いすれば全ての手続きをして
くれるはずだったのですが、どこかで連絡が途切れてしまい、結果的
にほったらかされていたということが判明しました。
もう少し早くわかっていれば、外交部に直接コンタクトするとか何か
方法があったものの……。
取材はあさってから……。
とにかく頼み込んで上海取材の許可をもらい、スタッフは上海入り。
上海市内で有名な豚肉の煮込み「トンポーロー」のお店などの取材を
開始しました。

しかし、今回のメインは「紹興酒」。上海でも紹興酒を売るお店はたく
さんあるので、「そこで済ます」という手もあったもののそれではやは
り格好が悪い。
とはいえ、取材許可がないのに勝手に紹興に行くわけにもいきません。
上海での取材許可を出してくれた役所の幹部にも、
「今回の取材は上海だけです。まさかこっそり紹興に行こうなんて思
っていないでしょうね。そこは大泉さん、あなたは中国長いんだから
わかっているでしょう」と念を押され、東京にいるチーフプロデュー
サーからも「もう無理するな」と言われ、途方にくれていたところ・・・。
世の中にこんな偶然があっていいのかと思う出来事が起こります。
紹興市の共産党幹部から、突然支局に電話が入ったのです。
「用事で上海に来ていて、ついでに日本のマスコミに挨拶に行きたい
のですが……」
「歓迎光臨いたします!」さっそくやってきたのは中国共産党紹興市
委員会の女性幹部。
「来月にも日本のメディア向けに取材ツアーを開催するので是非参加
してください」というお話でした。
「そんな、来月といわず、明日行きたいのですが」……。
「かくかくしかじか……」と事情を説明したところ、快諾してくれた
のです。

この返事をもって、上海市の役所へダッシュ。
「知り合いの紹興市の幹部が取材に来てもいいと言っています。です
からOKください!」
知り合いといっても、ほんの30分前に初めて会った人。これが中国
式世渡りというものです。
「紹興に行っていいのは出演者だけ、撮影は支局の中国人カメラマン
が行う、紹興での宿泊は認めない、常駐記者証を持っている私が必ず
同行すること」という理不尽な条件を付けられつつも紹興行きのOK
が出ました。

もともとの予定では3日かけて紹興を取材するはずだったのですが、
宿泊不可ということで早朝4時に出発。
さらに、予定していた取材が思うように行かず(中国ではよくあることですが)、
お昼は食べたものの、夜はそんな時間もなく
深夜3時にスタッフ一同くたくたになって上海に戻ってきました。
「やっぱり、制作番組の取材はきついですねぇ……」とスタッフ一同
に敬意を表したところ、リポーターの清水アナウンサーによると、
「今回の取材が今までで一番きつかったです」とのことでした。

こうして辿り着いた特選素材、30年ものの紹興酒を使った「豚肉の
煮込みVSビーフシチュー」の対決は、7対0で完敗……。
担当ディレクターさんは、収録の翌日病欠したそうです。

2006年10月24日

北朝鮮は経済制裁でどうなる

岩田 公雄岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)


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北朝鮮の贅沢品は誰のためのものか
『国連安全保障理事会』は、「核実験」に踏み切った『北朝鮮』に対し、
「国連憲章7章」に基づく「制裁決議」を全会一致で採択しました。
この「決議」の中で私が一番注目したのは、「贅沢品の供給・移転の阻止」
という一節でした。

「食糧やエネルギーに苦しむ北朝鮮」という国に「贅沢品という言葉は
似合わないよう」に思えるのですが、91年と92年に『北朝鮮』に
入国取材した私は「贅沢品があれほどある国も少ない」と思っています。
まず、「平壌は北朝鮮のショーウインドー」と言われますが、『平壌』
の街並みはきれいですし、『金日成主席像』『チュチェ思想塔』などの
巨大な記念碑、48階建てや45階建てのホテル、15万人・10万
人収容の競技場などの見事な建造物があちこちにあります。
これらは、80年以降、金正日総書記の指導の元に作られたのですが、
「世界一が大好き」という“金書記の好み”の現れです。
ドイツの街以外で、ここほど『ベンツ』にあふれた街はありません。
労働党や軍の幹部は、運転手付きの『ベンツ』で出勤です。92年の
訪朝の時の私は、「放送団」の団長でしたから、『ベンツ』が貸与され
ました。
そしてその時、「何を土産にしようか」と北朝鮮をよく知る人に相談し
たところ、「ネクタイや時計ならヨーロッパのブランドもの。でも貰い
なれているから、よほどのものじゃないとダメ」といわれました。
また、その時逢った名古屋の在日朝鮮人のお婆ちゃんは「今度は10
台のベンツを持ってきたの」と自慢げに話していました。
「帰還運動」で北朝鮮に帰国した肉親を持つ人は、彼らが暮らし易い
場所に住めるように「労働党への寄付」が欠かせないといいます。
「世界一が大好き」な金総書記は、ブランデーもワインも超高級品し
か飲みませんし、「日本の食材を『万景峰号』で取り寄せることもある」
と言います。
そして金総書記は、それらの贅沢品を自分で食べたり、使ったりするだ
けではなく、党や軍の幹部に贈ることで忠誠心を買っていたのです。
しかし「贅沢品の供給・移転の阻止」で、それができなくなる日がくる
かもしれません。
そうなったとき、党や軍の幹部は金総書記を支える意味がなくなり、
離反や反発が起こらないでしょうか。
私には「金王朝の崩壊」が早いように思えます。


食糧とエネルギーは中韓からの援助の北朝鮮
「北朝鮮への経済制裁」を巡って「世界の外交」が動き出しています。
中国の唐家璇国務委員が北朝鮮に入り、金総書記と会談を行いました。
会談の中身は発表されていませんが、金総書記は「成果はあった」と
述べたと伝えられています。
アメリカのライス国務長官は、日・韓・中・ロを歴訪し、「安保理決議
の履行問題」を協議しています。
そして、少しずつ「経済制裁」の動きが見えてきました。
『中国』国境の一部では、「北朝鮮向けの石油や電気製品の輸出」に
一定の制限をかけ始めました。また、『中国銀行』は「北朝鮮への送金」
を禁止しています。
“友好国”の『中・韓』に「食糧とエネルギー源」の多くを頼ってい
る『北朝鮮』は、どのようにして「経済制裁」を凌ぐのでしょうか。
金総書記が飢えることはないでしょうが、国民の飢えは目前です。


2006年10月23日

衆議院補選は、自民党の2勝

岩田 公雄岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)


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安倍アシストの風が吹いた
来年夏の『参議院選挙』の“前哨戦”といわれた『神奈川16区』と
『大阪9区』の「衆院補欠選挙」は、自民党の2勝で終わりました。

安倍晋三総理と小沢一郎民主党代表の初めての“国政選挙対決”で、
「選挙に強い小沢効果か」、「安倍信任か」で争われるはずでしたが、
「北朝鮮の核実験」が“安倍アシストの風”になって、「安倍政権」が
信任される結果となりました。
特に『大阪9区』は、茨木市を中心にするニュータウンの無党派層が
多いことから、民主党が告示前から力を入れ、「大阪は貰う」と言って
いたのですが、選挙民の関心は一気に「朝鮮半島の危機管理は政権党
がやるべきだ」に変わってしまったのです。
この敗戦は、「与野党逆転のためにも負けられない一戦」と主張してき
た小沢代表にとってもショックだったに違いありません。
論点としていた「小泉政権が広げた格差」や「消費税」の問題を選挙
で訴えることができなかったからです。
それは初の「安倍vs小沢=党首討論」でも見られました。
取り上げたテーマは、「憲法改正」と「北朝鮮の核実験への対応」の
2点で、冒頭に予告した「教育」や「格差問題」には触れずじまいに
終わり、追求のない精彩を欠いた初対決に終わりました。
「民主党としての核実験に対する対案」が感じられず、この時点で補選
の結果が出ていたという人もいます。
そして、「2敗でも小沢代表の責任ではない」と言われていたにもかか
わらず、民主党内には「小沢批判の声」が早くも聞かれるようになり
ました。


どうする沖縄県知事選
11月には『沖縄県知事・福島県知事・福岡市長』の選挙があります。
来年夏の『参議院選挙』で「与野党逆転」を図る小沢・民主党代表に
とっては、これらの「地方選挙」も無視できません。
『沖縄』では沖縄社会大衆党の糸数慶子・参院議員が「野党5党共闘」
の候補として立つことになりました。
『沖縄』には「保守と革新が交互に県政を担ってきた」歴史があり、
今度は「革新の番だ」と言われているだけに、落とせない一戦です。
しかも「在日米軍の基地問題」が大きな問題だけに、ここでも「北朝鮮の
核実験に対する民主党の対案」が問われることになります。
『福島』では、民主党が強く出馬を願っていた弁護士の森雅子さんが
自民党の推薦を受けたために、佐藤雄平・参院議員が出ることになり
ました。
「参院補選」があるにせよ、ここにきて2人の参院議員を欠くことにな
ると、「与野党逆転の数」が厳しいものになります。
「何としてもこの地方選で勝利して、参院選につなぐ」のが、これか
らの小沢代表の腕の見せどころになるのでしょう。

2006年10月20日

またしても危うい世論

坂 泰知のプロフィール坂 泰知
読売テレビ放送報道局解説委員


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 前回の「ニュースのうら側」で、世論調査の意外な危うさについて書きました
が、10月18日付けの産経新聞朝刊、「産経抄」というお馴染みのコラムの中で
興味深い記事を見つけました。産経新聞が行なった世論調査に関するものなので
すが、少し引用してみることにしましょう。


 『小紙(東京版)に掲載された世論調査では、「日本は核武装すべきか」という
問いに対して、「すべきでない」の答えが82.4%と圧倒的多数だった。問いが
「議論すべきか」だったら、どうだろう。「すべきでない」が多数を占めただろう
か・・・・』

 私が指摘したように、世論調査の質問の仕方によって、その答えは右にも左に
も揺れ動くという趣旨で書かれたコラムです。そもそものテーマは、自民党の中
川昭一政調会長が「憲法でも核保有は禁止されてはいない。議論はあっていい」
と語ったことに対し、内外からの一方的な批判が強すぎるのではないかという内
容。要は「核保有に関して賛成する国民は確かに少数だが、国民の多数が議論ま
で否定しているわけではないだろう」と主張しているわけです。「産経抄」は次の
ように綴っています。

 『北朝鮮の核実験発表を受けて、与党の政策責任者が、安全保障をめぐるタブ
ーなき議論を呼びかけるのは当然のことだ。それを許さないという声が、野党や
公明党だけでなく、自民党のなかからも相次いでいる・・・・日本人の核アレルギー
がいくら強いといっても、核廃絶を訴えるだけで、安全が保障されると信じてい
る人はもはや少数派だろう』

 と、この原稿を書いている矢先、今度は麻生太郎外務大臣が「隣の国が持つこ
とになった時に検討するのもダメ、意見の交換もダメというのは一つの考え方と
は思うが、議論をしておくのも大事なことだ」と語ったというニュースが飛び込
んできました。またもや、言葉尻を捉えて大々的に批判する向きも出てくるでし
ょうが、私自身は、中川政調会長や麻生外相が言う「議論の必要性」については
理解できるという立場ですし、「産経抄」の主張はある意味、正論だと思います。
少なくともこの時期、「議論した上で、持たないことを再確認する」という結論を
導き出すことも、それなりの意義があるように思いますし、ただ単に感情的に言
論封鎖してしまうのはいかがなものかという気がするのです。ただし、外に対し
ても内に対しても責任ある立場の発言としては「あまり賢いとは言えないよな」
というのが私の率直な感想ではありますが・・・・。

 核発言に対する批判の主な論拠は「諸外国に対して間違ったメッセージを発す
ることになりかねない」というものです。確かに中国や韓国からは早くも牽制的
批判が届いていますし、タカ派イメージの安倍政権で、これまたタカ派の急先鋒
と見られてきた中川さんや麻生さんが発言したということになると、これ幸いと
ばかり、日本タタキの材料に使われてしまうのは必至でしょう。ただ、日本が軍
国主義に戻ったり、それこそ核武装するなどと本気で考えている外国があるとは
私には思えません。むしろ、おろかで不用意な発言を逆手にとって、自国のナシ
ョナリズムを高めている側面の方が強いのではないでしょうか。そういった意味
では、今回の問題を必要以上に問題視する日本の一部マスコミも、それこそ間違
ったメッセージを送っているような気がしてなりません。まぁ、もとを正せば、
一番初めに間違ったメッセージを発信する愚挙を犯したのは、核実験を行なった
〝かの国〟なのですから・・・・。

2006年10月19日

小林薫被告、死刑確定 1「量刑」

横須賀 ゆきの横須賀 ゆきの
読売テレビ放送 編成局アナウンス部・報道局


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奈良市の小学一年生・有山楓ちゃんが誘拐され殺害された事件から2年。
死刑判決を言い渡された小林薫被告は、控訴を取り下げ刑が確定しました。

判決は、「殺害された被害者が1人でも死刑」と踏み込んだものとなりました。
これまでの死刑判決は、「被害者の数」が特に重視され、
犠牲者が一人の場合は、殺人の前科があるか、金銭目的の犯行に限られていました。

今回、奈良地裁は、
「女児への異常な性欲を満たすための犯行で動機に酌量の余地はない。
更に、楓ちゃんが水中で苦しむ姿を目の当たりにしながらも、
長時間にわたり沈め続けるなど、極めて残忍な犯行だ」と厳しく批判。
被害者の数は重要ではあるが、
その犯行の悪質性、更生は困難、遺族感情の尊重、社会的影響の大きさなどから、
「被害者が1人であることは死刑回避の理由にならない」との判断を下しました。

この奈良の判決も含めて、最近は、世論の動きを反映させた判決が見られます。
山口県光市の母子殺害事件で、最高裁は、
犯行当時18歳の被告に対し「死刑としない十分な理由がない」として、
無期懲役の2審判決を破棄、高裁に差し戻しました。
少年であることを理由に特別扱いしないという判断。
この背景にも世論の高まりがあると思います。
「死刑」か「無期懲役」か、
時代とともに揺れ動き、今は、厳罰化が進んでいます。

3年後、2009年には一般の市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が始まります。
有罪・無罪や量刑をも判断します。
それこそ、命を持って償わせるべきかどうか、
という究極の選択を誰もがしなくてはならないわけです。
奈良の判決は1つの判断基準を示したものであるといえます。

厳罰化の流れにあり、裁判員制度を控える今だからこそ、
私達一人一人が「判決の重さ」について考えてみることが大切なのかなと思いました。

2006年10月18日

上海蟹の季節がやってきた!

大泉 純子大泉 純子
読売テレビ放送 報道局 報道部記者

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陽澄湖産が最高だが、偽物も多い
上海の秋の味覚といえば、やはり蟹。
毎年9月末から10月になると上海のレストランに登場するご当地名物
です。
普段は上海料理を出していないお店でも、日本でいえば「冷やし中華
始めました」というような感じで、お店にメニューが貼られます。
最近では独自に養殖をしていて一年中食べられる専門店もありますが、
やはり旬の時期はミソの詰まり具合が全然違います。

出始めから10月末頃までは卵のいっぱい詰まったメス、その後は
オスがお勧めです。
聞くところによると、日本で食べたら小さいので一杯5000円とか。
上海では、専門店でも1000円くらいで大きな上海蟹に出会えます。
ところで、『上海蟹』というのは実は日本人が勝手につけた通称名で、
このまま書いて筆談しても通じません。 中国では『大閘蟹』といい
ますが、それでは馴染みがないのでここではやはり『上海蟹』と呼ぶ
ことにします。
この『上海蟹』……毎年本当に表彰してあげたくなるほど話題を提供
してくれました。
通常、あるネタを取材すると、2度目はよほどトピックがない限り
取材は見送ることが多いのですが、『上海蟹シリーズ』はすっかり
“季節の風物詩ネタ”として定着。
東京のデスクや視聴者からの反応がすこぶる良かったのが、私として
はすごく嬉しかったです。
さて、『上海蟹』は、上海の隣、江蘇省の『陽澄湖』という湖で養殖
されているものが最高級とされています。
他にも多くの湖で養殖されているのですが、この『陽澄湖産』という
ブランドを巡って、いわゆる偽モノが横行……『陽澄湖産』と銘打て
ば高値で売れるからです。


偽モノ防止のあの手この手
まずは2003年の秋……“本物”の『上海蟹』には甲羅に「レーザーで
刻印」が施されました。
茹でると、『協会認定正真正銘陽澄湖産』という文字が浮かび上がる
仕掛けです。
しかし、そこは「偽モノ天国」の中国……“安い蟹”を取り扱う水産
物市場では、『レーザー刻印あり!本物の陽澄湖産』というふれこみ
を掲げる店がズラリ。
あるお店で、「ここの蟹、刻印してあるの?」と聞いてみたところ、
「ああ、偽者防止のアレね、いるならすぐしてあげるよ」という調子
で効果なし。
さらに、「レーザー刻印」は、“陽澄湖産の本物の蟹”にダメージを
与えてしまい、健康なのに3日くらいで死んでしまうことも判明しま
した。
翌年……レーザーに代わり鳴り物入りで登場したのが、「協会認定の
指輪」をはめるという方法……これはすぐに偽モノの指輪が登場する
なと、市場へ行ってみると案の定。
「指輪ついた蟹ある?」と聞いてみたところ、「ああ、はいはい」と
いってお兄さんが取り出したのは袋にどっさり入った指輪……ひとつ
5銭なり。よく見ると、指輪に書かれたマークが不鮮明であったりし
て、見る人が見たら偽モノ丸出しなのですが、この国ではやったモノ
勝ち。
さっそく「偽モノ指輪」を『陽澄湖の蟹協会』に届けると、会長さん
は「これもダメだったか・・・」といたく落ち込んでおられました。
こうした偽モノを当局が取り締まることはできないのか?という疑問
が湧いてきます。
蟹協会の言い分としては、『陽澄湖産』というブランドが侵害されて
いるわけですが、2004年当時、中国では地名を商標登録すること
が認められておらず、法的に取り締まることができなかったのです。
そして2005年。蟹協会の取った対策は、指輪のバージョンアップ。
「指輪」に一つずつ製造番号をつけ、蟹の出荷数をチェック。
指輪には製造番号が付いていて、携帯のメールで番号を送ると、本物
か偽モノかをすぐにチェックすることができるシステムを開発。
さらに、蟹協会の再三にわたる申し出を受けて、『陽澄湖産』という
ブランドが正式に「国家の商標登録」として認められたのです。
これで、偽モノが見つかった場合は関係機関に届ければ、悪質な業者
を処分することも可能となりました。
さて、上海にいる友人たちの情報によると、今年は例年になく不作な
のだそうです。近いうちに、自分の舌で確かめてこようと思います。

2006年10月17日

北朝鮮核実験の日本の政局への影響

岩田 公雄岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)


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初めての安倍晋三vs小沢一郎
今、来年夏の「参議院選挙」の“前哨戦”といわれる『神奈川16区』
と『大阪9区』の「衆院補欠選挙」の真っ最中です。

安倍晋三総理と小沢一郎民主党代表の初めての「国政選挙対決」です。
それだけに『民主党』にとっては、“与野党逆転のためにも負けられな
い一戦”とあって、早くから選挙態勢を整えてきました。
『神奈川16区』は菅直人代表代行、『大阪9区』は鳩山由紀夫幹事長
を責任者に決め、両選挙区に党職員・秘書・他府県の地方議員を動員
して、選挙に備えてきたのです。
4月の『千葉7区』の補選で“選挙に強い小沢効果”で勝った勢いで、
「与党に風穴を開けたい」という意気込みが感じられていました。
一方『自民党』は、いずれも現職の死去に伴う“弔い選挙”だけに、
有利と見られていましたが、ここにきて高支持率で滑り出した“安倍
首相を前面に打ち出す戦略”を展開し始めていました。
特に『大阪9区』は、茨木市を中心にするニュータウンの無党派層の
多いところですから、何が起こっても不思議ではありません。ここを
落とすと、安倍政権の出鼻がくじかれることになります。
首相就任の挨拶回りで『公明党』を訪れた安倍首相は、太田昭宏代表
にまず「補選をよろしくお願いします」と口を切りました。
『大阪』は『公明党』の地盤が強く、北側一雄幹事長の地元でもあり
ますから、ここで負けると「与党としての国会運営や来年の参院選挙」
にも大きな影響が出ることになります。
『公明党』しても気合いが入っていました。
その「補選の告示」の前日に『北朝鮮』が「核実験」をしたのです。
小沢代表も“大阪入り”して、応援演説を始めました。
ところが「格差だ、勝ち組・負け組だ」と訴えてもパンチが弱く、選挙
民の反応は全くありません。
「国を挙げて北朝鮮への対応を考える時に、何を細かいことを言って
るのか」、「朝鮮半島の危機管理は政権党がやらなければならない」と
いうわけです。
告示前に与党の幹部は「痛み分け=1勝1敗でもしかたない」といい、
民主党幹部は「一つは貰う」と言っていたのですが、「核実験」がこの
選挙を変えました。その民主党幹部は嘆きます、「選挙のやりようがな
くなった。安倍さんはついている」と。
この2つの「補選」が済むと、11月には『福島県知事・沖縄県知事』
『福岡市長』の選挙があり、来年になると『愛媛・山梨・愛知県知事』
『広島・北急市長選』が控え、4月には『都知事選』をはじめ「統一
地方選挙」が続きます。
「何としてもこの補選で勝利して、地方選・参院選という風につなぎ
たい」という小沢代表の気持ちは分かるのですが。
そして、明日はいよいよ「党首討論」が行われます。
小沢代表は、どのような視点から総理に迫るのでしょうか。楽しみです
し、「補選」にも影響が出るのでしょう。


船舶検査、日本はどう対応する
『国連安全保障理事会』の「制裁決議」には、「北朝鮮に出入りする
船舶の検査=臨検」を盛り込んだものになりました。
先日の「参議院予算委員会」で、桝添要一議員が「日米共同の臨検で、
米艦が攻撃された時、日本船は何もしないで見てるだけなのか」とい
う質問をしました。
「専守防衛・集団自衛権否定」の「現行憲法」では、「見てるだけ」なの
でしょう。「憲法改正論議」が盛んになりそうです。
また、安倍総理は国会で「日本の核武装はない」と答弁していますが、
政治家の中には「核武装論のタカ派」が多いといわれています。
そして「拉致問題」も、これからは「話題にもならない」でしょう。
「北朝鮮の核実験」は、日本の政局にも大きな影響を与えています。


2006年10月16日

北朝鮮核実験の国際的波紋

岩田 公雄岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)


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北朝鮮がどう出るのか、誰にもわからない
『国連安全保障理事会』は、「核実験」に踏み切った『北朝鮮』に対し、
「国連憲章7章」に基づく「制裁決議」を採択しました。

『日・米』と『中・ロ』が歩み寄って、「7章42条の軍事制裁」には
触れなかったものの、「41条の経済制裁」を中心に「北朝鮮に出入り
する船舶の検査=臨検」を盛り込んだ厳しいものになりました。
『日本』も「北朝鮮籍船の入港全面禁止」「北朝鮮からの輸入全面禁止」
「北朝鮮籍の人の入国禁止」などを柱とする「独自制裁」を決定して、
すでに実施されています。
『北朝鮮』は、「国際社会による制裁を“宣戦布告”と見なす」と宣言
していますから、これからどう出るのか注意深く見守らなければなり
ません。
私はこの春先から講演で、「今最も心配なのは、北朝鮮の核実験。行き
詰まりになった北朝鮮が行うのは核実験」と言い続けてきたのですが、
「これほど早く実施する」とは、思っても見ませんでした。
そして、実際に行われてしまうと、「どんな解決策があるのか」、全く
予想がつかないのです。
それは「北朝鮮の核実験」に対する各国の対応が物語っています。
『中国』は「北朝鮮の暴走を懸命に食い止めよう」としていたのです
が、それが裏切られただけに、「制裁」を容認しました。
しかし本音は「北の体制維持」にあるのではないでしょうか。金体制
が崩壊して、「大難民が中国北東部に押し寄せる」ことが心配です。
また、米国寄りの『韓国』との間に『北朝鮮』があることが「緩衝帯」
としての役割を果たしてきました。だからこそ、大量の食料とエネル
ギーを支援し、資源開発にも力を入れてきたのです。
『韓国』の盧武鉉大統領は、「核実験」の報を聞き、「太陽=宥和政策
だけを主張し続けることは難しくなった」と、これまでの「北対策の見
直し」を発言しました。
しかし、「金剛山観光」「開城工業団地開発」や「食糧支援」の中止の
声は聞こえてきません。『韓国』の本音も「北の体制維持」……難民の
不安もありますし、「南北統一」は民族の願いだからです。
「中・韓の“安定”の鍵を『北朝鮮』が握っている」といえます。


80年代後半から核兵器の開発を本格化
私は、91年と92年に「北朝鮮の入国取材」を行い、2度目は世界初
の「平壌からの3日間連続生中継」でした。
そして、ちょうどその時が「北朝鮮のプルトニウム抽出成功」の時期
でした。テレビで「原子炉から燃料棒を取り出す映像」が繰り返し、
繰り返し放映されるのが印象的でした。
『北朝鮮』が「大量破壊兵器=核兵器」の開発を本格化させたのは、
80年代後半からです。それは、「朝鮮半島の武力統一」や「地域覇権
の獲得」のためではなく、「自らの体制維持=生き残り」のためでした。
「ウラン鉱」と「黒鉛」を産する『北朝鮮』にとって「プルトニウム」
を生産することは、技術がなくても可能だったわけです。
でも、それを兵器とし、それをミサイルで飛ばすまでには、長い歳月が
必要でした。
『アメリカ』のブッシュ大統領は、「北の核開発は前政権の時代に始ま
った」といいます。
クリントン政権は、「北朝鮮との外交」に理解を示しました。「北の核
開発」は“クリントンの負の遺産”だともいえます。あの時に定期的
な“査察”を行っておけば、「今度の核実験を防げた」というわけです。
『アメリカ』が恐れるのは、「核の分散」です。
今、「核保有国」は、『アメリカ・イギリス・フランス・中国・ロシア・
インド・パキスタン』の7ヵ国。そして『イスラエル』も開発済みだ
といわれていますから、『北朝鮮』で9カ国になります。
その『北朝鮮』が「核技術」を、『ベネズエラ』などの「反米の中南米
諸国」や「テロリスト」に売ったら、大変なことになります。
“パキスタンの核開発の父”カーン博士が、『北朝鮮・イラン・リビア』
などの「核開発」に協力したことはよく知られています。
「核保有国」となった『北朝鮮』が、どのような戦略を展開するのか
全く見えません。
希望的な観測からいうと、世界には「核兵器を解除した国」が2つあり
ます。核開発を放棄した『リビア』と核兵器を一旦は持ちながら武装
解除した『南アフリカ』です。
『北朝鮮』が「国連の制裁決議」を受け入れて、「核兵器の放棄」に
踏み切ってくれることを願うばかりです。

2006年10月13日

世論調査のマジック

坂 泰知のプロフィール坂 泰知
読売テレビ放送報道局解説委員


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 世論調査というものは一見、中立的で冷静な調査のように感じますが、実は「どこ
の社が」「どんな質問を設け」「どんな方法で」「誰に聞いたか」によって、大きく結果
が異なってくるものです。

つまり、極端なことを言えば、その結果を恣意的なものに
しようと思えばいくらでも可能ですし、「これが平均的な世論だ」とアナウンスするこ
とで、更に論調を操作していくことも可能なのです。今回の安倍内閣に対する全国紙
の世論調査でも各社の微妙なズレが見えてきて、その結果はなかなか興味深いものが
ありました。


 まず安倍内閣の支持率ですが、読売が70%、朝日が63%、毎日が67%、日経
が71%と各社とも高い数字となりました。歴代1位の小泉さんには及ばないものの、
日経は歴代2位、その他の各紙も歴代3位という結果です。朝日と日経の支持率に8
ポイントの開きがありますが、不支持率を比較すると各社とも2~4ポイント差に収
斂するので、おおむね誤差の範囲と言っていいでしょう。


 次に内閣の顔ぶれについて国民がどう考えているかです。まず、読売新聞の世論調
査は「新内閣の閣僚の顔ぶれに満足していますか?」という設問で、36%が「満足
している」、28%が「満足していない」という結果になりました。対する朝日新聞は
「安倍内閣の顔ぶれを見て新鮮だと思いますか?」という設問で、35%が「新鮮だ」、
38%が「そう思わない」という結果に・・・・。この数字を受け、朝日の記事は「支持
率は高水準だが、国民の見方は分かれている」と解説しています。そして、毎日新聞
は「首相が行なった閣僚人事を評価しますか?」という設問で、49%が「評価する」、
29%が「評価しない」という結果になりました。ここで問題にしたいのは、朝日の
「新鮮か?」という問いかけに関してです。他紙のように、「満足するかしないか」あ
るいは「評価するかしないか」という二面性を問う質問にしていたら、肯定的な答え
が多くなっていたかもしれません。更に朝日は「この内閣は強力な内閣だと思います
か?頼りない内閣だと思いますか?」という質問も設けています。結果は「頼りない」
が34%で「強力」が23%なのですが、少なくとも「強力だと思う」「そう思わない」
という選択で答えさせていたら、もう少し拮抗していたかもしれません。朝日が恣意
的に設問したとは思いませんが、質問の仕方によって回答者が誘導される可能性があ
るという一例ではないかと思います。


 更に見て行きましょう。朝日は「先の戦争について、安倍首相は自らの歴史認識を
示していません。こうした姿勢を評価しますか?」という質問を用意しました。結果
は「評価する」が24%で「評価しない」が52%でした。毎日にも同じような設問
があるのですが、こちらの文言は「首相は官房長官だった今年4月、靖国神社を参拝
しました。首相は参拝したかどうかを明らかにしていませんが、こうした姿勢を支持
しますか?」というもの。結果は「支持する」が46%で「支持しない」も46%と
なりました。これは私の主観かもしれませんが、「参拝の有無」という特定した形で質
問した毎日に比べ、朝日は「歴史認識」という広範囲にわたる質問になりますから、
当然、いろいろなイメージが湧いてきます。もしかすると、安倍総理のタカ派イメー
ジが増幅される設問であったかもしれません。ちなみに、読売はこの手の質問を行な
っていません。回答が割れることを見越してあえて聞かなかった・・・・わけではないで
しょうが、世論調査には「質問しない」という、別の意味での恣意性だって入り込む
恐れがあるのです。


 数字というものは、物事の客観性を指し示す指標のように錯覚してしまいますが、
こうして見ていくと、決してそうではないということがわかるでしょう。その結果を
元に主観的なコメントをしたならば、それはもう世論の誘導以外の何者でもなくなる
のです。「数字に惑わされてはいけない、その数字を恣意的に使ってはいけない」と、
自戒の念をこめて実感させられます。だからと言うわけではないですが、安倍さんに
は世論調査の結果に左右されることなく、自身が考える政策をしっかりと実現してい
ってほしいと思っています。

2006年10月12日

メディア論コーヒーブレイク7

辛坊 治郎辛坊 治郎
読売テレビ・報道局局次長兼解説委員


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さあいよいよ佳境です。って言っても、よほど熱心な読者でない限り、何が佳境なんだかさっぱりわからないでしょうが、とにかく佳境です。

足の秘密
 フジテレビの役員面接で落っこちた話から続けましょう。もうすで
に大学四年の十一月です。今では就職協定は「なし崩し」状態で、大
学三年の終わりごろには就職戦線も収束に向かうようですが、当時は
大学四年の十月一日就職試験解禁という固い制度が機能していました。
大学三年で就職を考えなくちゃいけない今の学生さんは気の毒だなと
いう気もしますが、その一方で就職が決まればあとはのびのび暮らせ
るわけで、当時のように卒業の土壇場まで進路が決まらないのと比べ
て、さてどっちがいいんでしょうか。

 ところで、フジテレビの最終試験については後日談があります。公
務員試験の最終配属待ちをしながら相変わらずマージャンの面子集め
だけのために大学に通っていたある日、クラスの友人との間でこんな
会話がありました。
「おれさあ、天才じゃないかなあ。フジのリポーター試験で最終面接
まで残っちゃったぜ」と、得意満面の私が鼻の穴を膨らましながら、
なぜか東京弁で吉田君に話しかけとところ、彼がこう言うのです。

「フジ、ってフジテレビか?」
「そう」
「で、結果は?」!
「当然落ちた」
「ありゃ、一言言ってくれりゃ良かったのに」
「なんで?」
「いやなに、俺のおじさんフジテレビの社長だから」
「えー!!!」
「面接のときに、靴脱いで足掻いてたおっさん居なかったか?」
「いたいた、真ん中にいた」
「あれが俺のおじさんよ。おふくろの兄貴。何でも戦争中に南方でも
らった水虫がどうやっても治らないらしいんだよねえ。」
「ぬわんだとー!?俺はあの足掻いてるのが気になって気になって、
それで気もそぞろで面接落ちたんだよ!」
「ふーん、聞いといてやるわ。」
 そして後日彼がこういいました。
「いやあ、お前惜しかったらしいぞ。最終三人の一人に入っていたん
だけど、どうも最終面接で元気がなかった上に、やりたい番組を聴い
たら、リビング11だって言うんで、こりゃダメだってなったらしい。
一言事前に言っといてくれたら入れてやったのにっ、てさ。」

そんなこといまさら言われてもどうにもなりません。


正直な電話
 まあ、縁がなかったんだろうと考えていたところに電話が鳴りまし
た。電話の主はなぜか、大阪の読売テレビのアナウンサー部次長でし
た。

「君、フジテレビ落ちたそうだけど、よかったらウチにこないか?」
「入れていただけるんですか?」
「いや、試験を受けに来ないか、ということだ。実は十月に正規の採
用試験をしたんだが、最終試験で残した男に逃げられてなあ。ははは。」

逃げられて、「ははは」じゃねえだろ、と思ったものの、とりあえず
話を聞いてみることにしました。聞けば、どうしても男性のアナウン
サーが採りたいと試験をしたところ、ほとんど応募者がなく、それで
もわずかな応募者から採用を決めたのに、その一人にも逃げられて、
このまま採用無しということになったら、自分の立場が危うくなる、
というのです。

 いやに正直な人です。ちょっと好感を持ちました。
「で、どのくらいの人数が受験するんですか?」
「いやもうこの時期になったら、公募をかけても誰もこんから、各局
のコネを使って、採用試験に落ちた人と、アナウンサーの養成学校の
推薦だね」
「はあ。で、交通費は出ますか?」
「出す出す!どうせ俺の金じゃないしな。ガッツーんと飛行機代出す
から、飛んできて頂戴。」
「はあ、行かしていただきます。」


就職試験の秘密
 これは今なら、完全に個人情報保護法違反です。でもある意味当時
はいい時代でした。もちろん、各局のアナウンス部の上同士が筒抜け
になっているのですから、A社を受験した人が、仮にB社を受験しな
がら「いや、御社しか受けてません」なんて言っても嘘がすぐばれる
という、受験者にとっての不都合があったのも事実です。でも今は絶
対こんなやり取りは出来ません。誰がどこの会社を受験しているかな
んていう情報は絶対に洩らさないし、また洩れることはありません。
どうぞ、受験生の皆さん、安心して嘘をついて下さい。なんて話はと
もかく、いよいよ、読売テレビの採用試験が始まりました。

 集まったのは、各局のアナウンサー試験を落ちまくったり、アナウ
ンサーの養成所に通いながら、どこにも就職を決められずにいる、選
りすぐりのオチこぼればかり八人です。
さあ、これから、という話はまた次回に。

2006年10月11日

上海市トップ更迭の衝撃

大泉 純子大泉 純子
読売テレビ放送 報道局 報道部記者

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絵に描いたような汚職事件
先月末のこと。夕方飛び込んできた『上海市書記、陳良宇氏解任』の
一報に、私の周りにいた記者やスタッフは誰も反応しませんでしたが、
私は『うぇぇぇぇぇぇ!!!』と心の中で叫んでいました。

確かに、「上海市の書記」と言われても、「誰やそれ?」ですよね。
しかも「書記」とはどういう立場の人なのか……。
政党や労働組合には「書記」という肩書きがあるものですが、日本の
行政機構の中では「書記」といわれてもピンと来ないもの。
実は中国の行政機構の中で、「書記」は市長より上……ナンバー1の
幹部なのです。
解任の原因は、市民の社会保障のために積み立てられた公的なお金、
日本円にして約500億円を、陳氏が知り合いの企業に不正に融資し
ていたというものです。絵に描いたような汚職事件です。
一般的に、権力をもつ党や政府の幹部に対する賄賂・汚職はあっても
不思議ではないとは思います。
中国でのこうした汚職や政府幹部の腐敗は、これまでにも言われては
いたものの、どちらかといえば地方政府で問題になっていました。
一部の特権階級にはびこる黒い金。しわ寄せを食らうのは農民や低所
得者層です。
それが、地方での暴動の原因のひとつであると指摘されています。
しかし、今回の事案は中国経済の牽引役であると自他共に認める上海。
そこで、冒頭の『うぇぇぇぇぇぇぇ』なわけです。
これまでに何度もお伝えしていますが、中国は中国共産党の国。
全ての司法も立法も行政も、あらゆる公的組織の上に、必ず中国共産
党があります。
中国共産党のナンバー1が、胡錦涛総書記です。
共産党の最高政策決定機関は政治局という組織です。
このメンバーである政治局員の数は、たったの25人。
陳良宇氏はその一人でした。
上海市のトップであり、党中央の幹部の一人でもある陳氏による汚職
事件摘発は、私個人的には今年の10大ニュースにランクインするはず
です。


それでも詳しいことはわからないのが中国
中国の人口はおよそ13億人……そのうち、共産党員であるのは公式
発表によると、7000万人あまりとされています。
党員は、人口の一割にも満たないのです。
共産党員だけでも胡錦涛氏をトップとする巨大な組織のピラミッド。
当然、党員でない一般の国民は底辺に広がります。
その底辺の大きさ、組織のいびつさがご想像いただけるかと思います。
中央の組織のもとに各地方にも共産党組織があります。
上海の場合は、正式には「中国共産党上海市委員会」といってその
トップが「書記」。
その下に「上海市人民政府」があり、市長がいて、市長という立場は
ナンバー2ということになります。
上海市は、その経済的発展と、上海出身の党中央幹部の力を後ろ盾に、
時には中央の指示に従わず独自の政策を推し進めてきました。
党中央が陳氏の解任を発表した直後、市長の韓正氏が書記代行に任命
されました。
これまでは陳良宇氏の後ろに控え、陳氏に従えていた(ように表向き
は見えた)韓正氏は一転、陳氏の事件を非難し、公式の場で中央への
忠誠を誓いました。
権力闘争の一端を垣間見た気がしました。怖いなぁ……と思いました。
今回の事件本記のその後については、まだ中国でも詳しく報道されて
いないので、引き続きフォローしていきたいと思います。
日本でこの種の汚職事件が起きたなら、新聞、テレビ、各社独自の
取材を展開し、続報のスクープ合戦になるところですが、中国では
党の宣伝部の許可なしに勝手に記事にできないので、どの新聞も記事
は横並びで面白くないというのが現状です。

2006年10月10日

北朝鮮核実験実施

岩田 公雄岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)


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愚かな地下核実験を強行、日本でも地震波検知
『北朝鮮』は、昨日午前10時35分頃、日本を始め世界各国が懸念
しいていた「核実験」を実施しました。
これまでの情報によると、核実験は北朝鮮北東部の山間部(咸鏡北道
花台郡地域)の地下トンネルの中で行われた模様で、韓国や日本などで
通常の地震とは異なる地震波を観測しており、TNT火薬800トン
規模の爆発があったと分析されています。

『北朝鮮』は今月3日に、「核実験を行う」と予告していて、アメリ
カなどは「近日中の実施もあり得る」と警告していましたが、その恐
れが現実のものとなってしまいました。
この北朝鮮の愚行は、国連で日米中韓などが足並みを揃えて「北朝鮮
の核実験中止への議長声明」を採択した直後に実施されただけに、
各国は大きな衝撃を受けました。
特に『日本』にとっては、安倍総理が“初の外遊”として『中国』を
訪問し、その特別機で『韓国』に向かう途中、空港に降り立つ直前に
知らされた「核実験強行」の報せでした。
総理は留守でも直ちに総理官邸に対策室が設置され、関係者は情報の
収集や対応に追われることになりました。

断じて容認できず、断固たる姿勢で対処する
「北朝鮮の核実験」に対する各国の反応は、大変厳しいものとなりま
した。
『アメリカ』は「北東アジアの安定と調和に対する挑戦だ」と非難し、
“北朝鮮の後ろ盾”の存在だった『中国』も[断じて許すことのできな
い行為]と、異例な強い表現で非難しました。
また“北朝鮮への宥和政策=太陽政策”を実施してきた『韓国』の盧
武鉉政権も、さすがに今回の核実験には衝撃を受けたようで、直ちに
「北朝鮮の水害に対する食料支援の中止」を決め、さらに「宥和政策
の変更」を示唆しました。
韓国訪問中の安倍総理は、盧武鉉大統領との会談の後の記者会見で、
「核兵器開発は世界への脅威であり、断じて容認できず、韓国とも
連携をとり、断固たる姿勢で対処する」と強い姿勢で表明しました。
『日本』政府は、「北朝鮮に対する経済制裁」をさらに強化すること
になりますが、今後は「中国と韓国との具体的な連携が進むか」が
焦点になると思います。
また、『国連』では7月の「弾道ミサイル発射」を上回る強硬な措置
の「制裁論議が必至です。『日・米』は『国連憲章7章』に基づく「制
裁決議案」の早期採択を目指すことになるのでしょう。

今日10日は『北朝鮮』の「朝鮮労働党創建日」に当たります。
今回の核実験はこの日に合わせたものと見られ、『朝鮮中央通信』は
「強力な自衛的国防力を熱望してきた我が軍隊と人民に大きな刺激
と喜びを抱かせる歴史的な出来事だ」と成功を讃えています。
『北朝鮮』は、これで「核保有国」になったことを誇示し、行き詰ま
りになっている対外政策の打開を図る狙いなのでしょうが、国際的な
孤立がさらに深まることも否定できません。
安倍新政権にとって「北朝鮮問題」は最初の“試練”となりそうです。

2006年10月09日

訪中・訪韓、首脳会談が実現

岩田 公雄岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)


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安倍外交は東アジアにも思いを馳せる
小泉時代に長いこと途絶えていた「日中首脳会談」が昨日実現し、今日
は「日韓首脳会談」が行われます。

日本の首相が『北京』を訪れたのは5年ぶり、『ソウル』は1年4ヶ
月ぶりのことになります。それほど長く途絶えていたのです。
今や日本と中国・韓国は、投資や貿易・文化・観光などの面で深く
結びついています。それが「政冷経熱」と喩えられるように、政治だ
けは冷え切っていました。
しかし、「靖国問題で首脳会談が開けないのは異常である」というの
が3カ国の共通の思惑となってきていました。
実は、総裁選の最中から、「新しい首相が誕生したら、新しい首脳外
交をしよう」という動きが、3カ国にはありました。
安倍氏は「総裁選」でも、総理になっての「所信表明」でも「中韓は
大事な隣国」と述べてきました。この動きを察知した安倍氏は「首相
交替を機に関係修復を図る」という思いがあったのでしょう。そして、
それをまず実現させました。
安倍首相が「最初の訪問国に中国と韓国を選んだ」ことにも、意義が
あります。
「小泉外交」は「日米同盟を主軸にしていればすべてがうまくいく」
との主張でしたが、「安倍外交」は「東アジアにも思いを馳せている」
ことを明らかにしたことになるからです。
またこれは「小泉の亜流!」と非難する民主党など野党の攻撃に先手
を打ったことになります。
「小泉流」にこだわらず、「安倍流」を見せたことで、政界や財界に
も「安倍はやるじゃないか!」という声が強くなってきているのも事
実です。
それにしても、これほど早く2つの「首脳会談」が実現するとは驚き
でした。

北朝鮮の核実験はどうなる
「日中・日韓」2つの「首脳会談」は、実に微妙なタイミンクで行われ
ました。
『北朝鮮』が「核実験声明」を出した直後だからです。
「北朝鮮の核実験」でもっとも脅威を受けるのは、『日中韓』の3カ
国です。
『北朝鮮』と国境を接する『中国・韓国』は、これまで「親北朝鮮の
姿勢」を取り続けてきましたが、「核実験」が実施された後はどうな
るのでしょうか。
北朝鮮をどう説得し、核実験をどう打開するか……3カ国が協力して
行動することも話し合われるのでしょう。
また『韓国』では、「北朝鮮寄り」の盧武鉉政権が国民の支持を失っ
ているので、今後は「日韓関係」の強化を打ち出してくるものと思わ
れます。

「首脳会談」が開かれたとはいえ、『東アジア』には様々な問題が山
積しています。
『竹島や尖閣諸島』などの「領土問題」、「ガス田開発」などの「海洋
資源問題」、そして「ナショナリズム」と「歴史認識」……『中・韓』
とも「首相の靖国参拝に反対」の原則は変えていません。
今回は「東アジアの平和と安定・調和」への第一歩……。
これからが「安倍外交」の見せ場になることは、間違いありません。

2006年10月04日

中国の建国記念日『国慶節』

大泉 純子大泉 純子
読売テレビ放送 報道局 報道部記者

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一週間の連休となる中国
10月1日は『中華人民共和国』の『建国記念日』した。
1949年10月1日、毛沢東主席は『中華人民共和国』の成立を宣言。
『中華人民共和国』は、57歳になりました。

「中国何千年の歴史」・・・などと巷ではよく言われますが、実は
『中華人民共和国』としては57年の歴史しかないんです。
(上海に駐在されているあるメーカーの所長さんは、年齢を聞かれる
と、「中華人民共和国と同じ歳だと答えておられました)

さて、10月1日の建国記念日を中国では『国慶節』といいます。
1日を含む3日間は「国定休日」、さらに最近では前後の週末を振り替
えて、一週間の連休となるのが一般的です。
お役所も休みになってしまううえ、現地スタッフを休ませなければな
らないといった事情から、「国慶節の期間はお休み」という日系企業
も多いのです……ということは、一時帰国や旅行のチャンス。
国慶節が近づくと、「休みはどう過ごす?」が挨拶代わりになります。
これは我々外国人に限ったことではなく、「ここ数年中国での旅行
ブームはもうすさまじい」と言ってよく、ものすごい“民族大移動”が発生します。
中国国内の観光地はどこもものすごい人出……出歩くものではありま
せん。海外旅行もめずらしいことではなくなりました。
日本のお盆や年末年始のように、『出国ラッシュピーク、○万人が
海外へ』などというニュースも放送されます。
旅行先は東南アジアや韓国、オーストラリア。ヨーロッパやアフリカ
へのツアーも人気のようです。
日本はどうかというと、ビザの取得条件が厳しいうえ、まだまだ
値段が高く、人気の旅行先とはいえないのが現状のようです。


『国慶節』も休めない日本のテレビ局
中国全土がお休みモードでも日本のニュースがお休みになるわけでは
当然ないので、我々にとってはこの休暇はやっかいなものでした。

突発で起こる事件事故は別として、いわゆる「企画モノのニュース」
の場合、事前にいろいろとリサーチをしたあと、実際に取材先とアポ
イントを取る作業があります。
上海以外の地方都市へ取材に行く場合は、我々外国メディアは現地の
地方政府に許可を得なければなりません。
ところが、お休みに入ってしまうと、アポイントを取ろうにも役所と
連絡がつかず、日本のお盆や年末年始と同じ状態になってしまいます。
というわけで、私も毎年この時期に遅めの「夏休み」をいただいてい
ました。
今年は、もちろん日本のカレンダー通りに仕事をしています。

2006年10月03日

論功行賞と仲良しで『チーム安倍』の誕生

岩田 公雄岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)


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新内閣の支持率70%強
安倍内閣が誕生して、今日で1週間になります。
各紙の世論調査によると、内閣支持率は60数%から70%強まで。
小泉内閣誕生の時の80%には及ばないものの、かなりの高水準にあ
ると言えそうです。

「組閣」の興味は、「小泉流独断専行か」、「合議制復活か」にあった
のですが、発表される名前を聞いて、私は思わず「チーム安倍の誕生」
と呟いてしまいました。

先ず目についたのは「論功行賞組」…‥柳沢伯夫金融相、菅儀偉総務
相、山本有三金融相の3人は、安倍政権誕生に主導的役割を果たした
『再チャレンジ支援議員連盟』の中核メンバーですし、松岡利勝農水
相も早くから安倍支持を唱えていました。
塩崎久恭官房長官は安倍首相と同期でブレーンも務める仲良しです
し、甘利明経済産業相も仲良しの一人です。
派閥別に見ると、『森派』と『丹羽・古賀派』が4人ずつで、『伊吹派』
と『津島派』は2人ですが、伊吹文明氏が「教育再生」に取り組む
文部科学相で、久間章生氏が「庁」から「省昇格」を狙う防衛庁長官
という注目のポストに就きました。
そして、総裁選を争った麻生太郎氏が外務相に再任されたのに対し、
谷垣禎一氏と『谷垣派』からは誰も選ばれず、政治信条が相容れない
場合は外しています。
年齢的に見ると、最年長・73歳の尾身幸次財務相を含む70代が
4人で、60代が6人、50代が7人で最も多く、最年少は45歳の
高市早苗沖縄・北方相で、40代は1人きりです。
そして平均年齢60.9歳は、最近では若い方ではありません。
サプライズといえば、民間から太田弘子経済財政相を起用したことで
しょうが、彼女は首相と同じ年で旧知の仲だと言います。
全体的に見ると、地味で派手さがなく、意外性もありません。
誰もが実務型で、首相と考えが一致している人ばかりです。
『森派』の領袖・森喜朗氏に相談し、少し入れ替えたようですが、
実にバランスのとれた、安倍氏が気を遣った内閣だと言えます。
『チーム安倍』が“安倍カラー”を出すのはこれからです。


ホワイトハウスを真似た官邸機能強化
安倍首相は、官邸機能の強化に乗り出しました。
各政策ごとに配置された「大統領補佐官」が閣僚以上の影響力を発揮
するアメリカの『ホワイトハウス』に倣って、5人の「首相補佐官」
を起用しました。
「首相補佐官」は、「内閣の重要政策に関して首相に意見具申できる
補佐官」で、首相官邸に個室を持つ“首相の分身”という役所です。
首相としては、これまでの「官僚主導」から「官邸主導」へ切り替え
て、短期間で成果を上げようという狙いがあるようです。
小池百合子氏が「国家安全保障」担当、根本匠氏が「経済財政」担当、
山谷えり子氏が「教育再生」担当、世耕弘成氏が「広報」担当、以上
4人は国会議員で、民間からの中山恭子氏が「拉致」担当です。
例えば、先日の「安倍首相と盧武鉉韓国大統領との電話会談」の内容
を記者団に説明したのは、外務省の担当者ではなく、世耕弘成・広報
担当補佐官でした。
このようなケースが多くなるのでしょうが、担当大臣や省庁の官僚も
主導権を譲れるものではありません。
「首相補佐官」がどこまで活躍できるかは、これからのことです。

2006年10月02日

所信表明と代表質問

岩田 公雄岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)


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カタカナ多用とキャッチコピー
先週の金曜日に安倍晋三首相の就任後初の所信表明演説が行われ、
今日から野党の代表質問が行われます。
所信表明の骨子は、自民党総裁選で主張してきた持論と大きく変わる
ことはありませんでした。


首相の目指す『美しい国・日本』は、「文化・伝統・自然・歴史を
大切にする国」「自由な社会を基本とし、規律を知る、凛とした国」
「未来へ向かって成長するエネルギーを持ち続ける国」「世界に信頼
され、尊敬され、愛される、リーダーシップのある国」であると説き、
「この『美しい国』の実現のため、『美しい国創り内閣』を組織した」
と所信表明は始まりました。

そして「集団的自衛権の行使」について具体例を研究する考えを表明
し、「憲法」については改正の必要性を指摘し、憲法改正の手続きを
定める「国民投票法案」の早期成立に期待を示しました。
さらに「教育再生」に取り組むことを謳い、「財政再建」については
「成長なくして財政再建なし」とし、経済成長を高め、歳出削減を
徹底することにより、「国民負担の最小化」を目指す方針を明らかに
しました。
「外交」について、特に「日中・日韓関係」については「大事な隣国」
とした上で、「未来志向で率直に話し合えるようお互いに努めていく」
と述べています。

また、重要課題として、「都市と地方の不均衡」や「勝ち組・負け組
の固定化」への対応を挙げています。
このように全体的には、戦後生まれの初の首相として「新たな国創り
を進める決意」を協調しています。
しかし、カタカナとキャッチコピーが多いことが気になります。
「イノベーション25」「カントリー・アイデンティティー」「ライブ
トーク官邸」「アジアゲートウエー構想」「子育てフレンドリー社会」
「プライマリーバランス」「筋肉質の政府」「人生二毛作」など……
聞いただけで意味が分かりますか。
代表質問では、これらの “言語明瞭・意味不明”の「安倍語録」に
質問が集中することになるのでしょう。


手ぐすねを引く野党共闘
小泉時代に冷え込んだ「日中・日韓」の関係を改善するために、水面
下で「首脳会談」の交渉が進んでいて、「日韓首脳会談」は8日にも
安倍首相の訪韓で実現しそうです。
しかし、野党は各党とも先ず「靖国参拝問題」を安倍首相にぶつけて
くるでしょう。そして、その答えによっては「日韓首脳会談」は、
またもや暗礁に乗り上げてしまいます。
「日中首脳会談」も、中国側は「首相の靖国参拝自粛」を求めており、
その答えによっては、これも実現不能になってしまいます。

今回の「代表質問」では、野党が共闘の姿勢を見せています。
「憲法改正」「国民投票法案」「教育再生」「集団自衛権」や様々な
「改革路線」など重要問題が山積しているだけに、野党4党は協力し
て「安倍首相の姿勢」に立ち向かうことになります。
安倍首相がどう対応するのか、新首相としての技量が問われます。
今日と明日が衆議院で、明日と明後日か参議院……激しい質疑応答に
なることは間違いありません。


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