北朝鮮ミサイル連続発射に思う
岩田 公雄
報道局解説委員長(局長待遇)
7発目発射の背景
数日前から「いつあってもおかしくない」と見られていた「北朝鮮の
ミサイル発射」も、7発連続には驚かされました。
アメリカ時間の7月4日は、『独立記念日』。しかも1発目がスペース
シャトル『ディスカバリー』の打ち上げの数分前。さらに6月25日
から続く『反米闘争月間』中です。
このタイミングを見計らったような打ち上げも、従来なら「アメリカ
を同じテーブルに引っ張り出すパフォーマンス」で済まされたのかも
知れません。98年8月の「テポドン打ち上げ」で、クリントン政権
から経済制裁の一部解除を引き出した例があるからです。
しかし7発連続となると、その意味がどこにあるのか考えざるを得ま
せん。それも7発目は、日米だけではなく、国際的に北朝鮮に対する
批判が高まっている中での発射で、6発目から9時間余り後でした。
北朝鮮の専門家の間には、「軍部の暴走」という声が強くあります。
しかも「金正日総書記の統制力が利かないまま、軍の一部が突出した」
と「金正日体制の揺らぎ」を指摘する人もいます。
「6発目からの9時間余りが、総書記との駆け引きの時間だった」と
見ているのです。
先軍政治の突っ走りか
北朝鮮には「先軍政治」という言葉があります。「先軍」とは「軍を
優先する」という意味です。
『平壌』はまさに「先軍政治のショーウィンドー」で、あらゆるとこ
ろで「軍人に対する待遇の良さ」を感じさせられます。
軍の幹部=将軍クラスは、故・金日成主席と共に「抗日戦」を戦い、
『北朝鮮』の建国に参加し、「朝鮮戦争」を戦った人々で、もうかな
りの高齢です。金正日総書記が映像に映る時に、その背後にいる勲章
だらけの軍服を着た将軍が、その代表とされる人々です。
彼らのアパートは広く、食料も豊富で、子弟の教育環境は整い、出勤
の時は『ベンツ』です。
総書記は「金正日体制」を維持するためには、彼らの既得権を壊さず、
不満を最小限に抑えることが必要でした。
父の戦友・同士とその子弟である「軍部」を大事にしてきたのには、
このような理由があったからです。
しかし今、「軍部」には不満が募っています。燃料が不足し、「戦闘機
の訓練」はほとんど出来ない状況ですし、「核弾頭を飛ばすミサイル
の開発」も思うようにいっていません。
そして『北朝鮮』では今、この「軍部」に対し、「中国式の経済開放
路線を取りたい技術閣僚」が台頭してきました。これも「軍部」には
面白くない状況です。
だからこそ「金融制裁の解除」と「米朝2国間協議の開催」を求めて、
「軍部は己の力を占めさん」と「ミサイル発射」に踏み切ったと見ら
れています。
「アメリカへの牽制」なら「テポドン1発」でよかったのに、7発に
したのは、「スカッドやノドンはいつも日本を射程内においている」
というアピールを込めていたのでしょう。
「テポドン」は「技術的失敗なのか、燃料不足のためなのか」分かり
ませんが、「スカッドとノドン」は着水点が近くて性能が向上してい
たようです。
金正日総書記が、この「7発連続のミサイル発射」を認めたことは、
私にも「金正日体制の揺らぎ」と感じられます。
98年8月の「テポドン打ち上げ」の時には、「ロケットの打ち上げ」
と言い逃れした北朝鮮は、今度は「軍事訓練の一環で、成功した」と
ミサイルの発射を認めました。
小泉首相の言うように、「どういう意図があるにせよ、北朝鮮にとっ
てプラスはない」のは間違いありません。






