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2006年06月30日

「東海地震の緊急放送とは?」

坂 泰知のプロフィール坂 泰知
読売テレビ放送報道局解説委員


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 先日、名古屋の中京テレビで行なわれた「東海地震緊急放送訓練」を見学してきました。
もちろん、私たち読売テレビでも、万一の災害に備えて訓練を行なっているのですが、東
海地震というある意味で特別な地震を想定した訓練は、私にとっても「目から鱗」という
意外性がありましたので、おさらいの意味も込めて、皆さんにもご紹介しておこうと思い
ます。

 皆さんご存知の通り、私たちの地球の表面はプレートと呼ばれる十数枚の岩盤に覆われ
ています。この内、日本列島の近くでは「ユーラシアプレート」と「フィリピン海プレー
ト」という2つの岩盤がぶつかり合い、ここで溜まった歪みを解消するために、100年
から150年に1度の間隔で大規模な地震が繰り返されてきました。これが東海地震や東
南海・南海地震と呼ばれるものです。直近では1944年と46年に、昭和の東南海・南
海地震が発生しました。ところが、この時に一緒に発生してもおかしくなかった東海地震
だけが残ってしまい、いつ起きてもおかしくない状態だとされるのです。

 そんな東海地震に対応するため、国は「大規模地震対策特別措置法(大震法)」という法
律を作りました。この法律は東海地震の発生が予知できるということを前提にしています。
その地震予知の切り札とされるのが、「体積歪計」と呼ばれる装置です。ここで異常なデー
タをキャッチした場合、気象庁は3段階に分けて情報を発表します。まず第1段階が「観
測情報」。東海地震につながるかどうかはまだわからないものの、異常なデータが観測され
ているということが公表されます。ただし、社会生活はまだ通常のままです。次の段階が
「注意情報」。東海地震の前兆現象である可能性が高まった場合に出されるもので、判定会
が招集されます。この段階で学校は休校、会社や工場は休業となり、帰宅促進のために交
通機関が増発されます。災害弱者や病人などの避難も開始となります。その対応の仕方は、
全て「大震法」で定められているのです。そして、いよいよ東海地震が発生する危険が高
まったと判断された場合、総理大臣自らが発表するのが「警戒宣言」です。あらかじめ、
大きな被害が予想される地域では交通機関が全面ストップし、新幹線も運行停止となりま
す。社会機能はほぼ停止して、後は地震の発生に備えて警戒することになるわけです。

 と、かなり、お勉強めいたお話になってしまいましたが、私が見学した緊急放送訓練は
この一連の流れを辿り、地震発生までをおさらいするというものでした。想像してみてく
ださい。「観測情報」が出された段階で、次のようなコメントがテレビ画面から流れてきま
す。『先ほど、○○に設置された体積歪計と呼ばれる計器で異常なデータが観測されました。
まだ東海地震との関連はわかりませんが、今後の情報に注意が必要です』。

 さあ、次は「注意情報」です。テレビのコメントは概ね、次のようなものでしょう。『先
ほど、気象庁が設置した観測機器のデータに複数の異常が認められました。東海地震に結
びつく可能性が高まってきたことを意味します。学校は休校です。また、仕事などで外出
している人にも帰宅が促されています。落ち着いて行動して下さい。現在、地震学者によ
る判定会が招集され、大規模地震が発生するかどうか検討が行なわれています』。

 そして、最後に「警戒宣言」が出されると、アナウンサーの呼びかけは、より緊迫した
ものになるはずです。『先ほど、警戒宣言が発令されました。東海地震発生の可能性が高ま
っています。がけ崩れや津波の危険がある地域の方は、直ちに指定された場所に避難して
下さい。その他の方も、自宅や安全な場所で地震の発生に備えて下さい。間もなく、東海
地震が発生する恐れが高まっています』。

 ここまでお読みいただいて、お気付きになったでしょうか。私たちがいつも放送し、皆
さんもお馴染みの地震速報は「地震が発生した後の緊急放送」です。ところが、東海地震
の緊急放送は地震が来る前から始まり、時間と共に「地震の発生を待つ番組」なのです。
あくまでも予知できることを前提にしているため、こんな流れになるわけですが、もちろ
ん、「警戒宣言」が出される前に突然発生する可能性もあります。そして、東海地震は南海・
東南海と同時に発生する可能性がかなり高いという有力な学説もあります。そうなると、
関西地区に住む私たちも他人事ではいられません。いずれにしても、巨大地震はいつか必
ずやってきます。だからこそ、放送局は放送局なりに、行政は行政なりに、更には個人一
人一人も、万一を想定した備えと訓練が大切なのです。


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