ニュースから生まれた教育DVD
坂 泰知
読売テレビ放送報道局解説委員
今、私の手元に一枚のDVDがあります。タイトルは「幸せ、運ぼう」。あの阪神大震災が発生した後、被災地・神戸で歌い継がれてきた伝説の歌「しあわせ、はこべるように」を連想させる題名です。実はこのDVD、読売テレビが取材した阪神大震災の映像を元に、神戸市教育委員会と共同で制作した副読本のビジュアル版で、この春から、神戸市内の中学生たちが、あの日の出来事を学ぶ震災教材として活用しているのです。
1995年1月17日。大阪市内の自宅で大きな揺れに見舞われた私は、その直後から八尾空港に入り、ヘリコプターに乗って丸2日間、被災地上空から未曾有の災害の様子を伝え続けました。その時の放送素材を含む震災関連の取材テープは、この11年間、読売テレビの社内で大切に保管されてきました。総時間数にして、およそ9000時間。様々な映像素材を保存してある報道ライブラリー室でそれらの取材テープが並ぶ姿を見る時、ある意味で圧倒される感覚を覚えます。〝歴史の生き証人〟がここに眠っているのです。今回のDVDは、この貴重な資料映像の中から当時の様子を抜粋し、次なる災害で少しでも多くの命を救うためにという思いで制作されました。
本来、報道を目的に取材したテープが、その他の用途で使用されることはありません。しかし、読売テレビでは、このDVDが教育を目的としたものであること、収益を得るものではないこと、そして、11年以上の月日が流れ、歴史的な映像として次の世代に伝えていく意義が増していることなどを考慮して、教材の制作に踏み切りました。このDVDに触れる中学生たちは、恐らく当時の記憶はほとんど残っていないでしょう。しかし、そんな彼らが社会の主役になる日は近いのです。あの日の経験と教訓が、このDVDを通じて、しっかりと語り継がれていくことを願って止みません。
実はこのDVDを紹介する特別番組が5月20日(土)に放送されます。番組では、教材の制作にあたり、教育現場の最前線に立つ先生たちとどのように連携してきたかも克明に記録されています。放送開始時間は午前5時14分とかなり早い時間帯ではあります。しかし、奇しくも阪神大震災の発生は午前5時46分でした。夜も明けきらぬ早朝に、いったい何が起きたのか・・・・この番組を通じて、もう一度、忘れてはいけない記憶を蘇らせていただければと思っています。






