「ニュースとスポンサー」
坂 泰知
読売テレビ放送報道局解説委員
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私が読売テレビに入社して間もない頃、祇園祭の宵山にリポータ
ーとして中継に出たことがありました。夕方のニュース番組の中で、
古都の夏を彩る山鉾の様子を伝えるためです。一通り、予定の
コメントを終えた後、スタジオとの掛け合いになりました。
「坂さん、その鉾が並んでいる場所には、大阪からどう行ったら
いいんですか?」・・・・北海道で生まれ育ち、大学を東京で過ごした
私にはその当時、当然のことながら関西の詳しい交通網に関する
知識がありません。咄嗟に口を突いて出たのは、会社からどのよう
なルートで辿り着いたかでした。「えー、京橋駅から京阪電車に乗り
まして・・・・」。本来、大阪を起点にするならば阪急やJRで説明する
のが妥当でしょう。ところが、意気消沈して会社に戻った私にプロ
デューサーがかけてくれた言葉は意外なものでした。
「いやー、よくぞ京阪電車で説明したなぁ。今日の番組、
スポンサーが京阪電車だったんだよ。お疲れさん!」。
皆さん、ご存知の通り、民間放送は提供スポンサーのCMで成り
立っています。商品名を一切、放送に乗せないNHKに比べ、その
運用は民放のほうがややこしいかもしれません。例えばガス会社が
提供する料理番組があったとします。この中で、電子レンジや電磁
調理器を使うことはご法度です。ガス会社と電力会社はライバル
関係にあるからです。また、コカコーラ提供の番組で商品名を言
うことはいくらでも可能ですが、まかり間違って、ペプシの商品名
を言おうものならお目玉を食らいます。ニュース番組と言えども、
こういった事情は注意しなければならないのです。ただし、提供C
Mがあるから、その会社の不祥事を取り上げないというようなこと
は勿論ありません。むしろ、私たちが気にするのは視聴者の皆さん
の印象です。A社の商品や社内事情を好意的に紹介した後で、その
ままA社のCMが流れたとしたら、それはまるで意図的な宣伝に映
ってしまうかもしれません。あるいはB社の不祥事を取り上げた後、
ライバル関係にあるC社のCMが流れたら、これまた、いらぬ曲解
を呼び込む恐れがあります。事実を正確に伝え、判断を惑わすよう
な情報は排除する・・・・やはり、ニュース番組の信条は中立なのです。
と、ここまで書いたところで、先日行なわれたジーコジャパンの日
本代表選手発表のシーンを思い出しました。2006FIFAワー
ルドカップ。注目の記者会見の模様はNHK・民放を問わず、全社
が生中継しました。ジーコ監督と川淵キャプテンが並ぶ机の前に、
何本ものドリンクが置かれています。「NUDA」「アルカリイオン
の水」「AMINOSUPURI+9」・・・・どの角度から捉えても映
り込むそのドリンクは全て、キリンビバレッジの商品。そう、キリ
ンは日本代表チームのオフィシャルスポンサーなのです。こうなる
と、NHKといえども商品を映さざるを得なくなります。まあ、こ
の会見はテレビ局が商売として流すCMとは関係ありませんが、中
立なニュース番組の中で意図せぬ商品がどのように映り込んでいる
か、斜め目線で見つめてみるのも楽しいかもしれません。






