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脇浜紀子(ytvアナウンサー)『脇浜紀子のDive into the net』

バリ島沖で日本人ダイバー7人行方不明

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7人のダイバーが行方不明になって、もう3日目。現地では懸命の捜索が行なわれているらしい。なんとか無事に見つかってほしい。


バリの南東沖にある島、ヌサ・レンボンガン、ヌサ・ペニダ海域は、バリ島随一のダイビングスポット。私ももちろん潜ったことがある。サヌールからスピードボートで数十分というアクセスの良さ、潮通しがよく透明度も高い、そして何より大物も期待できる、ということで世界あちこちの海で潜り歩いて通算900本以上潜った中でも、最高のダイビングの1本をここで経験した。


当時のダイビングログブックを見ると、ヌサ・ペニダのブルーコーナーというポイントにこう記している。


「でました!マンボウの大群!大群は大袈裟かもしれないけど全部で18匹!!」


ジンベイザメやマンタなどと同様に、マンボウもダイバー憧れの魚。運良く遭遇すると興奮でアドレナリンが回る。それが次から次に18匹も現れたのだから、あの興奮は今でも覚えている。興奮しすぎて、深度チェックや残圧チェックを忘れないよう自分に言い聞かせていた。


同日、ログブックの次のページは、サケナンポイント。まさに、今回日本人女性ダイバー7人が行方不明になったところ。そこには一言、


「せんたくき〜」


と書いている。


そう、この海域は流れが速いことでも知られている。写真はダイビングを始める前、ボートの上からダイビングスポットの海面を写したもの。あまりに川のように流れているので撮影していたのだ。上級者スポットにはそれなりに潜り慣れている私も、「ここ本当に潜るの?」と思った。オーストラリアのヨンガレレック、タヒチのランギロア、沖縄・慶良間の下曽根、など、激流といっていいようなところを潜ることはけっこうある。こういう場合はドリフトダイビングになる。(ヨンガラレックは沈船なのでアンカーロープを使うが、これもすぐにロープをつかまないとあっという間に流されてしまう。)


ドリフトダイビングとは、ボートから海にエントリーしたらそのまま流れにのってダイビングをして、ダイビングの終わりにボートにピックアップしてもらうスタイル。船長はダイバーの吐く息がバブルとなって水面に上がってくるのを目印に後を追い、最終的にはダイビングガイドが細長いフロート(多くの場合目立つオレンジ色で空気をいれて膨らませる)を上げるのでそれでダイバーたちの位置を知る。今回はダイビング中に大雨が降ってきたと報道されている。海上で大雨で海が荒れると、空と海との境目がわからなくなるくらい見通しが悪くなる。それで見つけることができなかったのだろうか。


流れの速いところでは、アップカレントやダウンカレントも起こる。ダイビング中は急激な浮上や潜行をせず、深度を常にコントロールすることが大切なのだが、こうした流れに巻き込まれると、コントロールを失い、まさに「洗濯機の中」のような状況になる。自分の排気のバブルに巻き込まれて、視界を失い、上下さえもわからなくなることもある。こうなると、とにかくダイビングコンピュータや水深計に集中して、ゆっくりと水面に浮上することが重要だ。


行方不明になったダイバーはそれなりに経験もあり、現地でガイドをしている2人もついていたということだから、おそらくはこうして浮上する手順は踏めているのではないだろうか。BCDジャケットという空気を出し入れして浮力をコントロールするジャケットに空気を入れれば浮かんでいることはできる。そのジャケットを連結して離ればなれにならないようにして、救助をひたすら待っている、そう信じたい。そして、救助隊が一刻も早く彼女たちを見つけることを。


どうしても頭をよぎるのが、パラオ・ペリリューでの漂流事故。水面で救助を待っていたダイバーが水中ノートに「救助の飛行機や船がこちらからは見えていて、合図をしているのに見つけてもらえない」ことを書き残して亡くなっている。この事故の前までは、私自身、浮いてさえいれば助けてもらえる、と思っていた。ダイバー仲間によると、欧米人主導のダイビングクルーズ(船に寝泊まりしながらダイビングをする。Liveabordやダイブサファリなどとも呼ばれる)では、GPS機能付きの防水無線を装備する動きもでてきているそうだ。もちろん、それとて完璧ではない。


また、水温も気がかりのひとつ。南国の海だが、実は、バリのこのあたりの水温は低い。先ほどの私のログブックにも、水面は25度なのに、水中では冷たい流れが入って19度まで下がったことが記録されている。その流れに乗ってマンボウたちはやってきたのだが。


自然の中に身体ごと飛び込んで行くダイビング。海を感じ、地球を感じ、生を感じる。今はただ、7人が無事に見つかることを願うだけだ。

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投稿者: 脇浜紀子 日時: 2014年02月17日(月) | コメント (0)

アナウンサー