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脇浜紀子(ytvアナウンサー)『脇浜紀子のDive into the net』

とても遅れてきた「放送と通信の融合」

日本テレビが「見逃し番組の無料視聴サービス」をはじめた。
新ドラマ「戦力外捜査官」を番組放送直後からパソコン、スマホ、タブレットなどで1週間無料で視聴できる。登録やID取得も必要ない。これを聞いて、ようやく日本でもユーザー(視聴者)目線に立ったサービスが出てきたなと感じた。


放送と通信の融合が叫ばれて久しい。
私がネットバブルに沸くアメリカ留学から戻り、「テレビ局がつぶれる日」(東洋経済新報社)を上梓したのは2001年。デジタルメディアの特性を生かした新たなサービスを創出していく必要性を叫んだが、耳を貸してくれるテレビマンはほとんどいなかった。代わりに目にしてきたのは、ライブドア、楽天によるテレビ局買収の失敗。業界をあげた既得権死守の圧力。


結果、日本はこの10年、ユーザーの効用を高める新メディアサービスを模索する機会を失い、テクノロジーでのイノベーションにおいても他国に大きく遅れをとることになった。


90年代、私がITに目覚め始めたとき、最初に手にした携帯端末はシャープのザウルスだった。利用していたのはニフティ—サーブのパソコン通信。興味のあるフォーラムで有益な情報を得ていた。


しかし現在はiPhoneを肌身離さず持ち、TwitterやFacebookで情報交換し、Huluでアニメを楽しんでいる。


こうした日本の問題が顕在化してきたここ数年、オールドメディア側も某かのチャレンジはしてきている。テレビ番組のネット配信や携帯端末向け新放送サービスをスタートさせているが、残念ながらどれもユーザー本位のサービスとはなっていない。限られた機器でしか見られなかったり、特定の携帯キャリア向けサービスだったり。時代のキーワードである「オープン」や「シェア」という概念をを理解しないまま、短絡的なマネタイズを目指しているから、業界側の都合を優先するサービスとなってしまう。


そんな中で、今回の日本テレビの「見逃し番組無料視聴」はこれまでとは違うサービスだと話題を呼んでいるわけだ。これまで私の周りのテレビマンたちは、「こんなサービスをすると、放送時間に見てくれる人が減って視聴率が下がる」と考えていた。テレビビジネスの基本はexclusiveだ。テレビ側が、「この時間帯はこういう視聴者が多いからこんな番組が見たいよね」と視聴者の都合の最大公約数を考慮して「あげる」ことで、限られた競争相手である他局と視聴者の取り合いをしていた。テレビしかない時代はそれでよかった。


しかし、今はテレビ以外にもメディアはいくらでもある。視聴者一人一人にそれぞれの都合がある。それを考慮して「あげる」ことなど不可能だ。ならば、シンプルにコンテンツとユーザーを結ぼうという発想でいいではないか。テレビ局の都合で決められた番組放送時間にとらわれることなく、「おもしろいよ」という評判を聞いて見たくなったらいつでも見られる。そして「おもしろい」と思ったら放送時間に視聴してくれる。「オープン」「シェア」を理解すると、このサービスが視聴率アップにつながることが見えてくる。


しかしながら、今回のサービスはあくまで「キャンペーン」。恒常的なものではない。想像するに、「キャンペーン」と言わなければ、社内のGoサインがでなかったのではないかな。内部の「圧力」はまだまだ手強い。。。。。ともあれ、今後のこの試みの動向に注目である。

投稿者: 脇浜紀子 日時: 2014年01月15日(水) | コメント (0)

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