朝の情報番組を見ていたら、水上バイクと海水浴客の事故のニュースを伝えていた。
出演者はこぞって、無免許での操船だったことを非難。
無論、無免許は言語道断。
でも、本質はそこか???
事故は、遊泳者を避けようとしてアクセルを緩めたことで舵(ハンドル)が効かなくなり、
衝突してしまったらしい。
水上バイクを含め、船にはブレーキはない。
小型船ならバックギアに入れて、強引に前進を止めるような方法もあるが、
水上バイクにはバックギアはないので、慣性が水の抵抗で止まるのを待つしかない。
衝突までに止まれないなら、当然、舵を切って避けるわけだが、
舵は、アクセルを吹かさず慣性で動いている状態では効かなくなる。
番組のプレゼンター曰く、上記のことは免許取得時にきちっと勉強するはずで、
無免許であったことが事故を招いた、と。
これに出演者一同同調していたわけだが、私の中には釈然としない思いが残った。
免許を持っていないことはもちろんいけないが、
免許さえ持っていればいいか、というと、決してそうではない。
自動車にも「ペーパードライバー」という言葉があるが、
船の操船においても、特に重要なのは、どれだけ経験を積んでいるかである。
しかも、自動車免許の場合は、教習所で30時間ほどの技能教習を受けるが、
水上バイクの免許取得のための実技講習は、たったの1時間半ほどだ。
そんな短時間で操船技術がマスターできるわけがない。
要するに、免許取得後に何度も乗船して技術を磨いていくことが必要なのである。
どうして、ここにひっかかるかというと、同じく海のスポーツ、スキューバダイビングと
重ね合わせてしまうからだ。
私自身、スキューバダイビングを長く趣味として(かつては仕事として)続けているが、
よく人から言われて違和感を覚えるのが、
「キャリアは何年くらいですか?」
という質問。この一言で質問者がスキューバダイビングをやってないことがわかる。
何故なら、ダイバーなら、
「キャリアは何本くらいですか?」
と、年数ではなく、潜った本数で聞くからだ。
ちなみに、スキューバダイビングの場合は、免許、といっても公的なものではなく、
いくつかの民間団体が発行しているもので、免許がないからといって
潜れないわけではない。
但し、スキューバダイビングの場合、エアタンクを必ずどこかで借りる
(まれにタンクを自前で持っている場合でも充填してもらう)
ことになるので、貸す側としては、その人がちゃんと潜れる人かどうかの証明がほしい。
実質、ライセンスがないと潜れない仕組みになっている。
もっと一般的には、ダイビングショップの主催するツアーに参加するわけだが、
その時に、ライセンスの提示と一緒に必ず聞かれるのが、それまでの潜水本数である。
私の独断でいうと、
100本潜っていれば、だいたいは自立したダイバーだな、と判断できる。
最低でも50本は潜っていないと、まだまだ上級者ポイントには連れて行くのがはばかられる
初心者ダイバーのカテゴリー。
つまり、免許や年数よりも、経験がすべて、というわけである。
ちなみに私のダイビング本数は900本弱。
もっというと、先ほどスキューバダイビングの免許は公的なものではない、と書いたが、
実は、国家試験の潜水士という免許がある。
私も取得しているが、この潜水士免許にいたっては、実技講習も実技試験もない。
学科試験の内容も(十数年前のことだが)、あまりに時代遅れの内容で、
現実に即しておらず、いったい何のための免許なのかと大層驚いた。
上記の番組コメンテーターの中で、1人だけ、本質的な問題を指摘しかけた人がいた。
日本は海に囲まれた国なのに、海に親しんで楽しめるところが少ない
単に、事故が起こるから水上バイクを閉め出す、ということではなく、
海岸線を皆が利用しやすいように整備するなどすればどうか、という主旨だった。
直後の、「無免許が悪い」の大合唱にかき消されてしまったが、
私もこの人の考えに賛成だ。
水上バイクでも、ダイビングでも、ヨットでも、海水浴でも、
もっと海と親しんで、海での経験値を多くの人が高めていくことが、、
長期的には、事故防止につながっていくのではないだろうか。