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小澤昭博(ytvアナウンサー)『小澤昭博のゴルフナビ』

「PGAツアーデビュー5」

初めてのPGAツアー挑戦で見事に予選通過を果たしたヒョンソン。いよいよ決勝ラウンドです。


コースまでの道中、カハラの別荘地に立ち並ぶヤシの木が、昨日までよりも強く風に揺れているのを見たヒョンソンは「先輩、今日が本当のワイアラエですね。我慢ですね!」と、早くも風の中でのイメージを沸かせています。ヒョンソンのゴルフは日に日に良くなってきています。それと共に充実感が見て取れます。


三日目のペアリングは、アメリカのピーター・マルナティ26歳と同じくアメリカのブライス・ガーネット30歳。初日同様インスタート、353ヤード短いパー4からのティーオフ。ヒョンソンのティーショットは左のラフへ。初めてスタートホールのティーショットが曲がりました。それでも、残り58ヤードを6メートルに付けバーディー逃しのパースタートです。


この日は流れも良く、3番パー4では残り127ヤードをサンドウェッジで1.5メートルにつけ、バーディーが先行しました。その後も好調なショットはフェアウェイをとらえ続け、何度もバーディーチャンスを迎えるものの、中々決めきれずという展開。


迎えた17番189ヤードのパー3。ワイアラエの中で海に一番近い、風光明媚なショートホールです。ホールの左側がすぐ海で、常に左からの風がホールを抜けていきます。この日のピンまでの実測は197ヤード。風は左からのアゲンスト。ヒョンソンが放った5番アイアンのショットは風に流されてグリーン右のバンカーに捕まりました。これまでチャンスの連続だった流れの中に突然訪れたピンチです。


ピンまで20ヤードのバンカーショットですが、アゴが高く、バンカーの中に入ったヒョンソンにはピンが見えていない状況です。「ヒョンソン、ケンチャナヨ(大丈夫)!これまでバンカーのフィーリングも良いから!」と伝えサンドウェッジを手渡しました。「はい、任せてください!」と答えたヒョンソンのバンカーショットは2メートルに。バンカーショットとしては最高のショットですが、パーを確信できる距離でもありません。これを入れるか外すかで今日の流れが決まる大事なパーパット。ヒョンソンも慎重にラインを読み、見事にど真ん中からこのパーパットを決めてくれました。バーディーにも匹敵するナイスパーセーブです。


このパーで気を良くしたヒョンソン。ワイアラエ名物18番ホールのパー5に向かいます。初日、二日目は、左ドッグレッグの右コーナーに飛び出したティーショット。この日もやや右サイドだったものの、初めてフェアウェイにボールが残りました。“ピンチの後にチャンスあり”とは正にこのことです。


セカンドショットは残り269ヤード。「ヒョンソン、どんなイメージで行く?」と訊ねると、「スプーンでライナー気味の低いボールを打ちます。そうすればアゲンストにも負けないし、手前から転がって2オンしますから。」と。


軽いアゲンストの中、ヒョンソンは宣言どおりのショットを繰り出して見事2オンに成功。その距離10メートル。イーグルこそならなかったものの、イージーバーディーでこの日のスコアを2アンダーに伸ばしてハーフターンです。


常にポジティブなヒョンソンは、この流れに入ると益々乗ってきます。
後半のアウトに入ると、2番、3番で連続バーディー。これでこの日のスコアが4アンダーまで伸びました。


しかしこの後、この日最大のピンチが7番ホールで訪れます。
7番ホールは166ヤードのパー3。ワイアラエの風がこの日一番の強さになりました。
ヒョンソンのイメージは“7番アイアンでライナー性のショット”。


そのイメージ通りに放ったティーショットは、強いアゲンストの風にグイグイ押し戻され、グリーン手前にあるバンカーの更に手前にショートしました。距離にしたらピンから25ヤード手前に落ちたことになります。いくら風が強まったとは言え、グリーンには届くであろうと考えていましたが、ここまでショートするとは思いも寄りませんでした。


今だから話せますが、「このホールはボギーかな・・・」と覚悟を決めました。セカンドはバンカー越えの25ヤードのアプローチショット。ピンはバンカーを越えてすぐの所に切られています。この日迎えた2度目のピンチです。しかしヒョンソンはこのピンチも、絶妙なアプローチで見事にパーセーブし、流れを手放しません。


8番ホールも難なくパー。この時点でこの日のスコアは4アンダーでトータル6アンダー。首位とは5打差まで詰め寄っていました。最終ホールでイーグルを奪えば、最終日は優勝を狙える位置でプレーすることが出来ます。


最終ホールは510ヤードのパー5。ノリノリのヒョンソンはこの日一番のティーショットを放ちました。フェアウェイセンターに飛んだボールからピンまでは残り177ヤード。


8番アイアンでしっかりヒットさせピンをまっすぐ狙っていくか、7番アイアンでピンの左から軽いフェードで狙っていくか。イーグルを狙うのであれば8番アイアンでピンをデッドに狙っていくべきなのですが、少しでも薄く当たれば手前バンカーに捕まるリスクを背負います。


何度もヒョンソンと確認をしました。「イーグル狙い?確実にバーディー狙い?」
ヒョンソンも私も出した答えは同じです。「イーグル狙い、8番アイアンでピンをデッドに攻めていこう!!」


8番アイアンで攻めたパー5のセカンドショット、ボールはピン方向にまっすぐ飛び出しましたが、無常にも手前バンカーの目玉に・・・。手前のピンを狙うには最悪の状況となってしまいました。


結局、バーディーも奪うことが出来ず、パーでホールアウト。ここがゴルフの難しいところですが、二人で導き出した答えを悔やむことはありませんでした。ヒョンソンも「アメリカで優勝争いに食い込む為には、攻め方として間違ってなかったです。」と。


それでも最終日を27位タイという絶好のポジションで迎えられ、スタート前に目標に掲げた“最終日をアウトスタート、いわゆる“表”スタートの位置で迎える“ことが出来るのですから。


そして最終日は、世界のトップランカー・マット・クーチャーと同組というご褒美付き。
「先輩、明日は本当のPGAツアーです。クーチャーと一緒です!!」とヒョンソンも興奮気味です。それがその最終日に、本当のPGAツアーの厳しさを味わうことになるとは・・・。   <6>へ続く


おまけ



PGAツアーでは先輩の、ノ・スンヨル、ドンファンからは練習ラウンドで色々と教わりました。



(撮影・ゴルフスタイル 鎌田俊夫さん)

日時: 2014年04月17日(木) |

アナウンサー