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野村明大(ytvアナウンサー)『野村明大の徒然なる道』

徒然なる「カコミ」…そもそも……

さて、
ちょっと前にひと悶着あった
「橋下さんの囲み」について。

豆知識を披露します。

知事時代は、
必ずやってTVカメラが勢ぞろいするのは「朝だけ」でしたが、
市長になってから、「朝夕両方」になりました。

主な要因は、やはり、
大阪知事・市長W選挙が大変注目され、
メディアからの質問数が劇的に増えたから。 

知事時代は「朝だけ」で何とかしのげてましたが、
市長になってからは、むしろ、
夕方が「メイン」になった感があります。

夕方のほうが、
「後は帰るだけ」だから、
時間、本当に無制限ですしね。


もちろん知事時代も、
「注目の話題」がある時には、
夕方、各社、囲んでました。

また、テレビが居ないときでも、
新聞記者が少なくとも一人や二人は、
話を聞いていることが多かったですね。

でも、週に1日くらいは、
誰も待っていない時もありました。

今では考えられませんが。


そもそも、橋下さんの「囲み」に関しては、
厳密にルールを決められて設定・主催された「記者会見」とは、
成り立ちが違います。

あくまでベースは、
「自然発生」的に集まった記者達に対し、
「橋下さんが質問に応じる」という事象の、
延長線上です。


ですから、
「記者クラブ主催」でもないし、
「大人どうし」の「暗黙の常識的ルール」はあったとしても、
それ以上でもそれ以下でも、ないのであります。


府知事就任時、
当初は、横山ノック知事時代同様、「大騒ぎ」になりましたが、
実はその後、いったん、
「橋下取材」は沈静化しまして、

朝も夕も、
何か特別なことがない限りは、
テレビカメラは、スタンバイしていませんでした。

つまり、「カコミ」は行われていませんでした。


何か直接政治家に対し聞きたいことが出てきた場合には、
取材陣は、相手は公人ですから、
時と場合によっては、
直接自宅まで出向き、
直接、本人にインタビューするのが通例ですが、

橋下さんの場合、
「自宅はやめてほしい」
「そのかわり、必ず、役所では取材に応える」という意向を示されたと
記憶しています。


そう言っていて、実際に、時間無制限に丁寧に応える相手に対して、
敢えて自宅での取材を敢行し続ける理由も勿論ないわけで、

橋下さんの場合、
「取材は役所で」というのが、
暗黙の流れに、自然となっていった…という経緯がありました。


それでも当初は、
出動するだけで結構なコストが発生するテレビカメラを
「毎日」スタンバイさせるという状況には、
テレビ各局ならず、

「何か、橋下さんに聞きたいことが、朝刊などで出てきた際」のみ
テレビカメラ&記者を出動する、という体制でした。


ある日、文部科学省が、
「全国学力テスト」を巡って「公開」に消極的な姿勢を見せるという動きがあり、
それが朝刊で報じられました。

私は、
「これは、橋下さんが吠える可能性がある」と考え、
本社デスクにお願いして、カメラを発注しました。


朝、大阪府庁に着いてみると、
民放で大きなテレビカメラを持ってきていたのは
我が社だけだったのですが、

いざ、カコミが始まると、
橋下さんは、文部科学省のことを
「バカ」「バカ」「バカ」「バカ」と、連呼し始めたのです。


その映像音声はもちろん報じましたが、
このまさに「橋下流」の発信は、
全国に衝撃を与えました。

もちろん、
良しとする人もいれば、眉をひそめる人もいましたが、
いずれにせよ、
いまだかつて存在しなかった政治家の発信の仕方であったことは、
間違いありませんでした。


この次の日から、
全テレビ局のカメラが、
毎朝、「ケア」で、橋下知事の発言をカメラに収めることが、
常態化しました。

要するに、
「何を言い出すか、わからん」ということです。 

とにかく、
常にマークしていないと、
どんな不規則発言が飛び出すか、
わからんということです。


そしてこの
「自然発生」的に出来上がった状況をうまく活用し、
刺激的な発言でアドバルーンをあげ、
地盤も看板もカバンもない状態から、
「発信」を武器に政治力を増大させてきたのが、
まさにこれまでの「橋下流」でした。


そして今回つまずいたのも、
自ら作り上げたといってもいい、この「システム」によって、
だったわけですが、

そうはいっても、
私は、
政治家としてのこの姿勢自体は、
評価されて然るべきだとは、思っています。

「語ろうとしない」
「語れない」
「逃げる」
「入院する」
政治家が、多いですからね…


橋下さんの「カコミ」は、こういった経緯で続いてきたものですので、
そう考えると、
「これからはやめる」「いや、やってくれ」
といった議論をするようなものでは、
本来、ないのかもしれませんね。 


橋下さんに何か聞きたいことがあれば、
「カコミ」が設定されようとなかろうと、
記者はどこまででも聞きにいきますし、

「発信」と「説明責任」を大事にする政治家であれば、
場所がどこであれ、
これに対しては「応じる」という… 

ただそれだけの、
シンプルな話…

なんだと思います。
もともとは…


正確に数えたことはもちろんありませんが、
私は、橋下さんの「カコミ」を取材した回数は、
恐らく、軽く千回は超えていますので、
やっぱり、一番、
取材回数に関しては、多いんだろうと思います。 


そんなこともあり、「カコミ」については、
絶対にやめないで欲しいと、
思ったというのもあります。

投稿者: 野村明大 日時: 2013年06月02日(日) |

アナウンサー