◆ことばの話3660「動き始めた汽車」

この前の休みに、家でゆっくりCDで音楽を聴いていました。
お気に入りの、ちあきなおみ『喝采』を、歌詞カードを見ながらじっくり聴いていたら、「あれ?」と思いました。
「動き始めた汽車に ひとり飛び乗った」
当時は、まだそんなことができたのか?まだ「汽車」があったんですね。『喝采』はたしか1972年、昭和47年だったのでは?作詞・吉田 旺、作曲・中村泰士

そう思いながら、次のCDを。イルカの『なごり雪』。何とここにも「動き始めた汽車」が出てきたのです!
「動き始めた汽車の窓に 顔をつけて」
歌詞はもちろん知っていて覚えていましたが、あらためて『喝采』と比べて、ともに、
「動き始めた汽車」
という、単なる汽車ではなく「動き始めた」という状態の「汽車」が歌詞に織り込まれていることの一致に驚きました。もっとも、こちら「汽車の窓」は「汽車の内側」だから可能といえば可能、「飛び乗る」ことにくらべると、特に難しくはないのですが。イルカさんの『なごり雪』のヒットは、1975年、昭和50年。伊勢正三さんが作って発表したのは1974年、昭和49年。
ついでに調べて見ましょう、「汽車」はいつまで定期的に走っていたか。うーん、すぐに調べられる時代なんだな。「汽車=蒸気機関車」の全廃は、1976年3月だそうです。じゃあもう、「汽車」を歌詞に織り込むことができた最後の時期ということですねぇ・・・。
ただ、東北や北海道の人は、今も「電車」のことを「汽車」と呼んでいると聞いたことがありますから、とくに違和感なく、昔と同じようにこれらの歌詞を感じているのかもしれません。それ以外の地域の今の若い人は「汽車」に違和感を持っているのだろうか。

次に井上陽水さんのCDも聞きました。その中にあった曲で、これまで聴いたことがなかった曲に
「移動電話」
という曲がありました。当然今なら「携帯電話=ケータイ」ですが、「移動電話」と呼ばれた時代もあったのですね。1994年10月21日リリース。平成6年です。
うーん、まさに「歌は世につれ、世は歌につれ」だなあ・・・。
2009/7/15


◆ことばの話3659「麻生降ろしか?麻生おろしか?」

都議選惨敗を受けて、ついに麻生さんが決断、総選挙は8月30日に。これで、
「麻生おろし」
は終わるのかどうか。その「麻生降ろし」、新聞は、
「麻生降ろし」
漢字で、
「降ろし」
と書く社が多いですが、「情報ライブミヤネ屋」では、
「おろし」
「平仮名」にしています。理由は「麻生」という名前(苗字)の漢字が際立つ(わかりやすい)からです。そもそも総理大臣を引きずり降ろすこの言葉の端緒は、私の記憶では、
「三木武夫総理大臣」
を引きずり降ろそうとした、1976(昭和51)年の、
「三木おろし」
でした。そこで、会社の図書室197610月・11月の「読売新聞の縮刷版」で確認したところ、案の定、当時は、
「三木おろし」
「おろし」は「平仮名表記」でした。ま、「おろし」と言うと、私たちには、
「六甲おろし」
の印象が強いですが、あの「おろし」、漢字では、
「颪」
と書きます。「下に向かって吹きおろす風」です。やっぱり引きずり降ろそうとするのですね、いずれにせよ。前代未聞の解散予告、8月の総選挙は19世紀・明治時代に大隈重信内閣で1度、20世紀に入った1902年に桂太郎内閣で1度の計2度しかなく(ともに8月10日投票)、107年ぶりの珍事とか。そういった意味では麻生総理、歴史に名を残せたかもしれません。
2009/7/14


◆ことばの話3658「ハッピ」

夏祭りのシーズンです。
4歳の娘の保育所の夏祭りも近づいてきました。自分たちで、ダンボールと新聞紙で作った「恐竜のおみこし」
を担ぐそうです。その時に、
「ハッピ(法被)」
を着るのですが、おみこし担ぎが終わったら「浴衣」に着替えます。その浴衣の裾を、去年より少し伸ばさないといけないなあ・・・という話を妻としていたら、「ハッピ」という言葉に反応した娘が、いきなり、こんなことを言い出しました。
「ザニガニ、ハッピしたら、しむねんで!」
??なんのこと???
2秒後ぐらいに、意味が分かりました。通訳すると、

「ザリガニ、脱皮したら、死ぬねんで!」

ああ、「ハッピ」と「ダッピ」!
たしかに難しいよな、漢字で覚えているわけではなく「音」で覚えている言葉だからなあ!「ザニガニ」「シム」
も、かわいい!しばらく妻と笑ったあと、ちょっと「ハッピ」な気分になったのでした。
2009/7/14


◆ことばの話3657「ごしんきん」

7月3日の『情報ライブ ミヤネ屋』で、町村元官房長官(元文部大臣)の発言をフォローするスーパーの発注がありました。放送前にそれをチェックしていたら、
「天皇陛下の『ごしんきん』」
とひらがなで「ごしんきん」という言葉が出ていました。うん?漢字ではどう書くんだ?ディレクターもそれが分からず、あとで調べるつもりで、とりあえず平仮名で発注したのかな?と思い辞書を引いたところ、いくつか「しんきん」という言葉はありましたが、一番ピッタリ来るのは、
「ご宸襟(しんきん)」
でした。『精選版日本国語大辞典』には、
「宸襟」=天子の御心。おおみこころ。
とあります。初めて知りました。念のため「天子(てんし)」というのは「天皇」のことです。「天使」ではありません。もちろん「表外字」ですので、ルビは振りましたが、それだけだと、視聴者もわからないだろうから、
「ご宸襟(しんきん)(お心)」
と、カッコ付きで意味を添えてスーパーしました。
町村さんは、さすが難しい言葉を知っているなあと思う一方で、
「元文部大臣なのだから、常用漢字の範囲内でしゃべってほしいなあ」
とも、ちょっと思いました。
2009/7/14


◆ことばの話3656「マニフェストのアクセント」

今回の衆議院選挙で、久々に注目を浴びている
「マニフェスト」
このアクセントですが、私はこのあいだから「頭高アクセント」で、
「マ\ニフェスト」
と読んできましたが、先日、萩原アナウンサーが、
「マ/ニフェ\スト」
「中高アクセント」で読んでいたので、あわてて『NHK日本語発音アクセント辞典』を引いてみましたが載っていません。そこで、英和辞典で原語 (英語。でも起源はイタリア語)のアクセントを引いてみると、
「マニフェスト」 というふうに「フェ」のところにアクセントがあるようです。そうすると、外来語としては「中高アクセント」の、
「マ/ニフェ\スト」
の方が良いようですね。
2009/7/14
(追記)

NHKの原田邦博さんから、
『「マニフェスト」はスペルも書いたほうがいいでしょう。「manifesto」がいわゆる「マニフェスト」で「中高」ですが、形容詞や動詞の「manifest」は「マ\ニフェスト」です。』
というご指摘を受けました。ありがとうございます。
そもそも「政権公約」という意味での「マニフェスト(manifesto)」という言葉が初めて出てきた時に、私は以前、「医療廃棄物の不法投棄」の取材をした時に知った、
「ゴミ処理の手順をきっちりと記録する用紙=マニフェスト(manifest)」
と同じだと思っていました。その後、それとは別の言葉でイタリア語起源であり、スペルも違う単語であることを知ったのです。整理しておくと、
「manifesto」=(名)政権公約、政策、宣言(書)、声明(書)、マニフェスト
「manifest」=(形)明らかな、はっきりした、わかりきった
        (動)存在している、見られる、あきらかにする、感情を表す
        (名)積荷目録、乗客名簿
                         (以上『ジーニアス英和辞典』)
原田さんのご指摘通り、動詞・形容詞の場合は「マ」にアクセントのある「頭高アクセント」ですが、私が最初に知った「マニフェスト」は「manifest」の名詞の意味「積荷目録・乗客名簿」の「医療廃棄物版」だったものは、もしかしたら「フェ」にアクセントがあるのでは?
「プレゼント(present)」が、名詞の「贈り物」の意味の時は、「プゼント」と「レ」にアクセントがあるのに、動詞の「贈る」の意味の時は「プゼント」と「ゼ」にアクセントがあるのにも似ていますね。
2009/7/16
(追記2)

7月20日のテレビ朝日『報道ステーション』を見ていたら、古舘伊知郎さん「頭高アクセント」で、
「マ\ニフェスト」
と言っていました。そして7月21日の、自民党の両院議員懇談会で、声高に意見を述べている議員の方「頭高アクセント」で、
「マ\ニフェスト」
と言っていました。それを聴いていて、ふと思いました。
「頭高アクセントの『マ\ニフェスト』というのは、いわゆる『演説アクセント』ないか?」
と。これに関しては「平成ことば事情2049防犯・判決・支援のアクセント」をお読み下さい。また、同じく7月21日の夕方のテレビ朝日の番組で、キャスターの小宮悦子さんは、「中高アクセント」で、
「マ/ニフェ\スト」
と言っていて、リポートをしている男性記者は、最初「中高アクセント」の、
「マ/ニフェ\スト」
といい、2回目には、
「マ\ニフェスト」
「頭高アクセント」と、揺れているようでした。
また7月21日の午後6時からの麻生総理大臣の記者会見では、麻生総理は、
「マ/ニフェ\スト」
「中高アクセント」で話していました。
それにしても、赤いビロードのカーテンをバックにした会見の映像は、昔見たアメリカのドラマ『ツインピークス』を思わせるものでした。また、麻生総理のいつものしゃべり方、語尾を伸ばす話し方は、学生運動で演説をするリーダーの「語尾伸ばししゃべり」をほうふつさせるものでした。
2009/7/21
(追記3)

7月31日のお昼の日本テレビ『ニュースダッシュ』では、丸岡キャスターも枡キャスターも、「頭高アクセント」
「マ\ニフェスト」
と言ってました。7月28日の日経新聞朝刊1面のコラム「春秋」で、「マニフェスト」のアクセントに関する記述があり、こう書かれていました。
「発音の力点はフェ。マに力点を置く人が多いが、これだと『明白な』という意味の綴りの違う形容詞になる。中身が明白ならそれもよしか。」
また、7月29日には、TBSの柴田秀一アナウンサーから「マニフェストのアクセント」に対する問い合わせがあったので、

『読売テレビアナウンス部では、
「マ/ニフェ\スト」
という「中高アクセントで」と指示していますが、昨日(7月28日)の「情報ライブ・ミヤネ屋」で、司会の宮根誠司さんと、パネリストの日大教授・木美也子「
「マ\ニフェスト」
と「頭高アクセント」で話してらっしゃいました。』
『「頭高アクセント」は、結構、政治家に多いので、「教育」「国会」「防犯」「治療」「支援」など、本来「頭高ではない」単語を、演説などをする際に「頭高アクセント」で強調して言う「演説アクセント」ではないかと、にらんでいます。(これを使うのは、政治家、医者、教師に多い)』
と答えました。
2009/7/31
(追記4)

7月31日の『情報ライブミヤネ屋』の中のVTRで出てきた政治家の皆さんの「マニフェストのアクセントに注目していたら、
*「マ\ニフェスト」=<頭高アクセント>
・亀井静香(国民新党・代表代行)
・北側一雄(公明党・幹事長)

*「マ/ニフェ\スト」=<中高アクセント>
・岡田克也(民主党・幹事長)
でした。
2009/7/31
(追記5)

「マニフェスト」をキーワードにして自分のファイルを検索したら、自分でももう忘れていた2003年10月6日午後11時10分に、自分のケータイからパソコンに送ったメールが出てきました。そこには、
「マニフェスト=菅 直人は頭高アクセント。筑紫哲也とTBS男性アナは中高アクセント」
とありました。おそらくTBS(MBS)の『ニュース23』を見ていたのでしょうね。今は亡き筑紫さんは「中高アクセント」の、
「マ/ニフェ\スト」
だったと。合掌。菅さんが「頭高」なのは、「政治家」で「演説アクセント」だからでしょう。それにしてもパソコンの検索能力って凄いな・・・。
2009/8/3
(追記6)
8月8日の読売テレビ『ウェークアップ!ぷらす』で、司会の辛坊治郎キャスター、五十嵐竜馬アナウンサーは、
「マ\ニフェスト」
「頭高アクセント」で、岩田公雄解説委員は、
「マ/ニフェ\スト」
「中高アクセント」、VTRの中に出てきたイワイ・リサーチセンターの有沢正一さんという方も「中高アクセント」
「マ/ニフェ\スト」
8月12日の20時45分のNHKの関西ローカルニュースでインタビューに答えた平松大阪市長は、
「マニフェ\スト」
という「関西弁アクセント(第1音と第2音の高さが変わらない)」で、「どちらかと言うと中高アクセント」でした。

8月10日の毎日新聞のメディア欄『ニュースの匠』では、「カタカナ語が大嫌い」だという鳥越俊太郎さんが、
「『マニフェスト』ですが、なぜ日本語の『公約』では駄目なのでしょう。」
「私は実は正確にはわからないまま使っていたんで今回調べました。」
と書いています。たしかに日本語の「公約」でもよいと思いますが、「こうやく」は効きめが4年も持たないのでは?(冗談です)それにしても、鳥越さんともあろう方がと「manifesto」と「manifest」の違いを知らなかったとは・・・あ、そうか、本当は知っていたけど、わざと知らないふりをして書いていたんですね?
また、新聞各紙は、
「マニフェスト(政権公約)」
という書き方をしていますが、読売新聞はその逆で、
「政権公約(マニフェスト)」
「日本語優位」の書き方をしています。鳥越さん、読売新聞を購読なさってはいかがでしょうか?
2009/8/13

(追記7)

8月17日(と18日)の「ミヤネ屋」に登場した人たちの「マニフェスト」のアクセントは、
<頭高・マ\ニフェスト>
岩井奉信・日大教授
日本テレビ政治部・青山記者(18日)
<中高・マ/ニフェ\スト>
鳩山由紀夫・民主党代表
福島瑞穂・社民党党首
直嶋正行・民主党政調会長
「ミヤネ屋」松尾ナレーター
でした。
また、8月19日の産経新聞『from Editor』というコラムで、外信部の西田令一部長は「『ウ』があるとないとでは・・・」というタイトルで、「マニフェスト」のアクセントに付いて書いていました。それによると、
「政権公約という英語のつづりは『manifesto』で、末尾に『o』が入り、『マニフェストウ』という表記が現音に近い。加えて『マニフェスト』と表記すると、似た発音の英語に、最期の『o』がない『manifest』という名詞があり、港の税関などに提出される船荷目録や航空機の乗客名簿という全く違う意味になり、混同されかねない。日英の事情に詳しい在京英国人は『日本の「マニフェスト」は原語の発音とは違う。これだと船荷目録。でも、公約文書には英語で「manifesto」と書いてあったりする』と不思議がる。」
のだそうです。「原語の発音と違う」のは当然でしょう、「原語」ではなく「日本語の外来語」なんですから。でもたしかに区別するために、
「マニフェストウ」
と書くのは一案かもしれませんが、はたしてその通りに発音するでしょうか?
「マニフェス党」
みたいになりませんかね?ちなみに今朝の朝日新聞朝刊も、
「マニフェスト(政権公約)」
という、日本語を後ろに記した表記になっていました。(読売新聞は「政権公約(マニフェスト)」

また8月11日の産経新聞朝刊の政治面(4面)も、
「マニフェスト(政権公約)」 になっていました。

2009/8/19
(追記8)

2009年10月13日の日本テレビ『ニュースZARO』で、民主党の小沢鋭仁(さきひと)環境大臣は、
「マ\ニフェスト」
「頭高アクセント」でした。
2009/10/14
(追記9)

10月14日の「ニュースゼロ」で、民主党の藤井裕久財務大臣が、
「マ\ニフェスト」
「頭高アクセント」で話していました。また「ゼロ」の村尾キャスターも「頭高」で、
「マ\ニフェスト」
でした。
2009/10/15
スープのさめない距離