◆ことばの話3635「見える化」

ことばの話3458「気付き」、3624「可視化」でも触れましたが、項目として独立させておこうと思って、「見える化」、項目を立てました。「見える化」の「見える化」。おーい、見えるか?
昨日(6月9日)の夜、テレビを見ていたら、「リコー」のコマーシャルで、
CO2見える化プロジェクト」
というのを放送していました。すっかり「見える化」が企業サイドでは普通の言葉になっているようで。でもあくまで「業界用語」だと思うなあ。
現時点でのGoogle検索(6月10か)を記録しておきましょう。
「見える化」=107万件!
すごい!すっかり定着ですか、ネット上では。
2009/6/10


◆ことばの話3634「まるっと」

『「新しい郊外」の家』(馬場正尊、太田出版:2009、1、25)という本を読んでいたら、
「彼女にはまるっとお見通しだったようだ。」(74ページ)
という表現が出てきました。この、
「まるっと」
というのは、初めて目にした表現です。意味は、
「まるまるすべて」「全部」
ということでしょう、文脈で判断すると。「まるっきり」という意味かもしれません。
Google検索(6月9日)してみると、
「まるっと」=323000
も出てきました!なんじゃ、こりゃあー!すごい!
たしか著者は九州の佐賀県かどこかの出身と書いてあったな。じゃあ、九州の方言か?
ネットでは、愛知、岐阜などの東海地方、島根、山形の方言と出ていますね。映画『TRICK』の監督さんが愛知出身で、それでセリフに「まるっと」がよく出てきて仲間由紀恵さんが使っていたとも・・・見てないから、知らないなあ。
どなたか、「まるっと」はどこの方言か、ご存じの方がいらっしゃったら、教えてください。宜しくお願いします!
2009/6/10


◆ことばの話3633「すべては笑顔のために」

「マルちゃん」でおなじみの「東洋水産」のコマーシャル。最近よく目に付きます。というのは、
Smiles for all
という英語が出てるのですが、その日本語訳が
「すべては笑顔のために」
となっていて、出演しているタレントさんが、そのように叫ぶのです。でも・・・ちょっとおかしくない?Smilesfor all」を直訳すると、
「笑顔はすべてのために」
ではないでしょうか?もし、「すべては笑顔のために」を英訳するとしたら、
All for smiles
ではないのでしょうか?最初にコマーシャルを見たときからずっーとそう思っていました。
が、最近ちょっと考えが変わりました。
というのは、実はこれ、
「『すべては(みなさま=お客様の)笑顔のために』ということの強調形」
「倒置法」を用いているのではないか、そして「みなさまの=お客様の」が省略されているのではないか?元の形に戻すと、
For all Smiles
なのではないか?と思い始めたからです。アメリカの1ドル札の裏側には、
「IN GOD WE TRUST」
と書かれていますが、これは「倒置法」による「強調形」で、通常の文章に戻すと、
「WE TRUST  IN GOD」(われわれは神を信じる)
となるわけです。それと同じではないか、と。
それにしても、このコマーシャルを見るたびに、ラグビーのチームワークの言葉で有名な、
「一人みんなのために、みんなは一人のために」=「One for All, All for One」
を思い出しますね。
いずれにせよ、こうやって「おや?」と思わせるコマーシャルの手法で、わざとやっている可能性が高いですね。なかなかやるなあ。
2009/6/9


◆ことばの話3632「全仏テニスの“土俵際”」

和田みち子さんという方が出してらっしゃる「ビミョーな言葉研究所」というメールマガジンがあります。発行部数5326部で、現在「慣用句編」。もうすでに「332号」続けて出してらっしゃいます。テニスが大好きという和田さんのその2009年6月5日号の「編集後記」に、こんなことが書かれていました。

『今、テニスの全仏オープンをやっていますね!私も時間の許す限りWOWOWで録画したものを見ています。(^^)v大会4連覇中のナダルが、とうとう負けてしまいました。で、その中継を見ていたんですが……。ナダルが追い込まれて、もう後がないという状況になったとき、中継のアナウンサーさんが、
「土俵際です! 徳俵(とくだわら)です!」
って叫んだんですよね。トクダワラって……知らない言葉でした。で、すぐに辞書で調べてみると、
「相撲で、土俵の東西南北の中央に俵の幅だけ外側にずらして置いてある俵」
なんですって。あ〜、アレね。まさしくギリギリだわねぇ。それにしても……。画面はパリのローラン・ギャロス。赤土のテニスコート。熱戦を繰り広げるナダル(スペイン)とソダーリング(スウェーデン)。なのに、私の頭の中では「テケテン、テケテン、テケテン……」という相撲の太鼓の音が鳴り響いていたのでした。(-_-;)……まあ、フランス語で中継されても困るけど!』

「徳俵」は、相撲を少しでも知っている人はみんな知っているのではないでしょうか。初めてというのは、かえってちょっとびっくりしました。男性と女性ではやはり興味の向き方が違うのかもしれません。

もう一つの点、「テニスに相撲の表現を持ち込む」点に付いては、私も以前取り上げたことがあります。おもしろいけど、ちょっと違和感があるケースがありますよね。違和感がないケースもあるでしょう。以前書いたのは「平成ことば事情1220決定打」で、このときは、サッカーの欧州チャンピオンズリーグ決勝の記事で、史上初めてイタリア勢同士の決勝戦がACミランとユベントスの間で戦われ、0対0のままPK戦にもつれ込んでACミランが6度目の王座に輝いたときの毎日新聞の見出しが、
「同国対決ミランに軍配」「イタリア復権」「時間稼ぎ、決定打なく」
だったというもの。「軍配」(相撲)、「決定打」(野球)の用語がサッカーで使われたものです。また、実際に新聞には載っていなかったけど、私がその時、「サッカーの記事の見出し」を比喩表現で作ってみたものには、
「ミラン・ユーベ、がっぷり四つ(の好勝負)」
「ミラン、横綱相撲で寄り切り」
「ミラン・ユベントス、初顔合わせ」
「モンテロ、勇み足」
というのがありました。そう考えると、「テニスで徳俵」も、そんなにおかしくはないかも・・・・でもやっぱり、ちょっとヘンかな?
2009/6/9


◆ことばの話3631「カツカザン」

4月24日の「情報ライブミヤネ屋」14時50分のNNNニュースのコーナーで、日本テレビの丸岡いずみキャスターが、「活火山」のことを、
「カツカザン」
と、無声化せずに読んでいました。5つの音がしっかりと母音を伴って発音されていました。それを耳にした私が思い浮かべたのは、
「カツカレー」
でした。「火山」の上に巨大な「カツ」が載っています・・・「カツカザン」一丁!
そもそもは「活(カツ)」と「火山(カザン)」という二つの言葉がくっついて出来た複合語ですから、最初は無声化せずに「カツカザン」と言っていたのかもしれません。でも一語となっていく過程で、「ツ」の母音「ウ」が無声化されて、
「カ(ツ)カザン」=( )は無声(=母音が消えて、子音の響きだけ)
となり、無声化の音は母音を伴わないので聞こえにくい、だからもっと発音しやすくて同じように聞こえる「促音化」されて小さい「ッ」に音が変わって、
「カッカザン」
となったのでしょう。現在の『NHK日本語発音アクセント辞典』には、
(1)「ツ」を無声化した「カ(ツ)カザン」
(2)「ッ」と促音化した「カッカザン」
の順で載っていますが、母音の無声化を伴わない「カツカザン」は載っていません。
思えば「カツカレー」も、促音化こそしていませんが、「ツ」は無声化して、
「カ(ツ)カレー」
と、普通は発音していますよね、気付かないうちに。母音を大切にする関西人は別ですが。そういう意味では、丸岡さんは意外にも“生粋の関西人”なのかもしれません。(徳島県のご出身のようですが)
2009/6/9
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スープのさめない距離