◆ことばの話3580「落とし込む」

『起きていることはすべて正しい』(勝間和代、ダイヤモンド社)
という本を読んでいたら、さりげなく気に留まった言葉がありました。それは、
「落とし込む」
という言葉です。たとえば、
「なかなかこれを日常生活にまず落とし込んで、無駄をなくそうと考えることは、発想の転換が必要です。」
「あらゆることは『技術』に落とし込むことができます。」
という具合です。他の言葉でいうと、
「当てはめる」「応用する」
といった感じでしょうか?でも、これを耳にするとなんだか、
「落とし込まれた」
気がして、落ち込みます。また、
「パーソナル資産を絞り込むことでもあります。」
という一文では、
「絞り込む」
というのも出てきました。勝間さんは「〜込む」が好きですね。きっと「ドットコム」もお好きでしょう。Google検索してみると(4月8日)、
「落とし込む」=16万3000件
「落し込む」 =   4240件

もありました。トップに出てきたサイトは、
「『落とし込む』というのはどういう意味なのでしょうか?会議や書類などで頻出する言葉なのですが、意味が分かりません」
という質問のページでした。その答えの書き込みは、
「会議などで出された意見などを、書類などに反映することです。」
とありました。「落とし込む」は、ビジネスシーンではよく使われている言葉なのでしょうね。会社の同期の管理部長が口にするのを、よく聞きます。私は使いませんが。ところが家に帰って妻に、
「『落とし込む』って言葉、使う?」
と聞くと、
「使う」
と答えるではありませんか!私より妻の方がビジネスシーンに対応しているということなんでしょうね・・・。
2009/4/8


◆ことばの話3579「するなどしていたばかり」

2009年3月5日の産経新聞に載っていた、高一男子が大麻を所持していたという記事、内容を読んでみたら、
「…同校では、大麻所持事件の続発を受け、昨年12月、全校生徒に薬物乱用防止のためのパンフレットを配布するなどしていたばかりだった。」
と書かれていました。この中の、
「するなどしていたばかり」
というのは日本語としていかがなものか?つい、笑ってしまいませんか?
「するなどした疑い」
なんて表現は、いわゆる「新聞や放送の常套句」で、あまりいい表現とは言えません。だって、「するなどする」って、
「一体何をしたのよ?」
と、つい突っ込みたくなるでしょ?それにさらに、
「していたばかり」
をくっつけたら、みょうちきりんなものになっちまった、というわけですね。
ここは、もっとシンプルに、
「パンフレットを配布したばかりだった」
にするか、どうしても「するなどして」を使いたいのなら、
「パンフレットを配布するなどして、注意を喚起したばかりだった」
とすべきところではないでしょうか?
字数の制限があるとは言え、いくらなんでも全部くっつけて短くするのは、どないなもんかなあ・・・と、クスッと笑うなどしながら思ったばかりでした。あ、いかん、うつった!
2009/4/8


◆ことばの話3578「JR大阪三越伊勢丹」

「JR京都駅ビル」
はどこで切って読めばいいか?という質問を受けた話を書きましたが、先日、さらに頭を悩ませるような記事を新聞で発見しました。JR大阪駅北貨物ヤードの再開発でできる予定のデパートの名前が、
「JR大阪三越伊勢丹」
になるというのです。ひえー、一体どこで切って読んだらいいんだい?うーん、
「JR・大阪・三越・伊勢丹」
かなあ、やっぱり・・・。なんだか「寿限無」みたいだな。
その昔、銀行がいろいろと統合された際に、
「太陽神戸銀行と三井銀行で、『太陽神戸三井銀行』」
という、「全部くっつけた長い名前」になったけど、その後、
「さくら銀行」
というシンプルな名前になった(さらにそれが住友銀行とくっついたら「昔の名前」が顔を出して現在は「三井住友銀行」になった)のですが、このデパート業界の名前も、最初はお互いの顔を立てて、「全部くっつけた長い名前」でしょうが、慣れてきたら新しい別の名前になるんでしょうかね?あんまり長いと覚えにくいし、読みにくいんですけど・・・。
記事を読んでみると、こんなことも書かれていました。
「『ジェイアール西日本伊勢丹』の親会社は、『JR西日本』」
つまり、親会社の表記はアルファベットで「JR」でも、子会社の百貨店の方の表記はカタカナで「ジェイアール」だというのです。ややこしいなあ。また、
「三越と伊勢丹の統括会社は『三越伊勢丹ホールディングス』」
だとも書いてありました。「ホールディングス」も流行ですね。「CEO」とか「COO」も流行りましたが、日本の企業風土に馴染むのかなあ・・・。
2009/4/8


◆ことばの話3577「『JR京都駅ビル』はどこで切る?」

読売テレビ報道の新番組『関西情報ネットten』のSプロデューサーから、質問を受けました。
「『JR京都駅ビル』というのは、どこで切って読めばいいのでしょうか?
『JR・京都・駅ビル』
でしょうか?それとも、
『JR京都・駅ビル』
でしょうか?それとも、
『JR・京都駅ビル』
でしょうか??」

???
考えれば考えるほど、どこで切ってもいいような、悪いような気になりますね・・・。
「JR」を外してしまえば、
「京都・駅ビル」
として、京都の「駅ビル」でいいような気がしますが、「JR」が付くと、その部分で切った方がいいような。それに「京都駅」の「ビル」だと考えると、
「JR・京都駅・ビル」
あるいは、
「JR京都駅・ビル」
のような感じもするし。でもそう読むと、なんかヘンな感じなんですが・・・。また、「JR」と「京都」をくっつけて読んでもいいのか?という疑問も浮かんできますし・・・。
うーーーーーんと考えて、
「JR・京都・駅ビル」
かなあ、ということになりました。
2009/4/8


◆ことばの話3576「貧乏とビンボー」

翌日放送の「情報ライブミヤネ屋」の内容を、翌日朝刊のテレビ欄に載せるときの原稿をチェックしていたら、
「貧乏芸人の衝撃告白に、彼女の父は」
というものが出てきました。この
「貧乏」
という表現がストレートすぎて「負の印象」が強く刺激的過ぎるので、ちょっと何か変えられないか?と考えて、
「ビンボー」
カタカナにしました。カタカナって、漢字とはまた違うニュアンスを伝えられるのですね。音で聞くとどちらも同じなんだけど。
この手の表記はもちろんこれまでにもたくさん行われていますが、「ビンボー」はぱっと見ると、
「ブラボー」
にも似ているし、「貧乏」という漢字が持つ暗さを払拭し、一気に明るい感じにさせますよね?
昨今の不況で、これまで一般の「中流家庭」からは縁遠かった「貧乏」が、急に身近に感じられるようになってきた感がありますが、だからこそこの言葉を使うときには、注意したいと思います。
2009/4/9
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スープのさめない距離