◆ことばの話3570「半殺し」

実家に行ったときに母から、
「料理用語で『半殺し』って言うけど、あれの語源は何?」
と聞かれたので、「調べておく」と答えて、その後、国語辞典を引きましたが載っていません。そこで、早稲田大学非常勤講師の飯間浩明さんにうかがったところ、以下のようなメールが返って来ました。
『「はんごろし」はもともと東北南部・関東あたりの方言ではないでしょうか。『日国』で見ると、山形・福島・群馬・埼玉・新潟・長野・兵庫・島根で「ぼた餅」を言う方言となっていますね。栃木・茨城がぽっかり空いていますが、これは単にデータがないだけでしょう。金田一春彦『ことばの歳時記』(新潮文庫)p.104には、
〈栃木県の山村、栗山の集落ではこのオハギかボタモチかのことを、もち米を半分つぶして作るところからハンゴロシという。〉
とあり、栃木にも「はんごろし」の言い方があることが分かります。
同時に、語源も金田一の文章で納得できます。半分つぶすことを大げさに「半分殺す」と言うのですから、誇張表現としては無理がないと思います。違和感があるとすれば、上品であるべき料理の用語で「殺す」とはこれいかに?という点かもしれませんが、もともと飾らない田舎ことばであったとすれば、理解できるものです。
『三国』では載せていませんが、現時点では、まだ方言的だと見ておきたいですね。』

なるほど、方言なんですか。でも、関東中心の方言を、なぜ関西出身のうちの母が知っていて使っていたのか?よくみると西日本でも「兵庫・島根」では使われているとありますから、その後関西でも広がったということか?それとも、もっと詳しく調べると、各地に点在して使われている言葉なのか?うーん、謎は一部解けましたが、完全には解けなかったのでした。今後の検討課題ですね。
「半殺し」について、なにかご存知の方、情報をお待ちしています!
2009/3/31
(追記)
『ビッグコミック・オリジナル』(小学館、2009、7、20号)に連載中の、『江戸和菓子職人物語・あんどーなつ』(作・西ゆうじ、画・テリー山本)の中に、「半殺し」が出てきました。和菓子の世界では「夏のおはぎ」を「夜舟」と呼ぶ、という女将さんの言葉のあとに、親方のセリフとして、
「夜の舟は桟橋に音もなく静かに着くんで いつ着いたかわからねぇっていうのと、おはぎの糯米を半殺しにする搗き方が静かだっていうのを掛けた言葉だって 知ってもらうのさ。」
舞台は東京・浅草、親方も江戸っ子という設定だと思われます。主人公の和菓子職人見習いの女の子「安藤奈津(あんどーなつ)」は福井出身という設定です。
2009/7/4


◆ことばの話3569「麻生総理がきのう・・・」

麻生総理がきのう(3月31日)、「5月解散」を匂わせる発言をした、真の理由は・・・・
「きょう(4月1日)だと、エープリルフールだと思われるから」
ではないでしょうか(笑、半分本気)
(2009、4、1)


◆ことばの話3568「Qカット」

CMに入る直前に、CMの後のコーナーの予告を10秒ほど流すことがあります。(もっと長いものもあります)これを
「Qカット」
と呼びますが、それ以外にもいろんな言い方があります。たとえば、
「Qショット」
「Qカード」
「予告」
「アバン(タイトル)」
など。現場では特に区別なく、どの呼称も使われているように思われますが、これらに本当に違いはないのか?夕方のローカルワイドニュース担当者に聞いてみたところ、
「僕らは『アバン』というのは「さわり」。つまり「見所」をダイジェストで紹介した、少し長めVTRのことを言いますね」
という答えが返ってきました。
私も加わって2001年に編纂した『読売テレビ放送用語ガイドライン・第1版』には、付録として「知ってるつもりの放送業界用語集」というコーナーがあります。そこには「アバン」「Qカット」「予告」は載っていませんでしたが、かろうじて「キューカード」は載っていました。
「キューカード(cue card)」=「現在は、CMに入る前の5から7秒の「Qカット(ショット)」を指します。この間に、APSのCMテイクをすると、3秒後に自動的にCMに入ります。APSのなかった時代には、こうした画面を頼りに、MDがマニュアルでCMを入れていた。」
とありました。
2009/4/1


◆ことばの話3567「お返事とご返事」

だいぶ前の話ですが・・・・2007年の秋に、NHKのHさんから、日大の荻野綱男教授の話として、
「『返事』を丁寧に言うには『ご返事』しかないと思っていたが、学生に聞いたら、ほとんどが『お返事』だった」
という話を聞きました。漢語の場合は原則「ご」ですが、自分や身内の場合には「お」を付け、相手には「ご」を付ける傾向もあるようだと、Hさんは話していました。
それが頭の片隅に残っていたのでしょう、ある日突然、こんな考えが浮かびました。

「『お』返事」は「女言葉」、「『ご』返事」は男言葉」
「お返事」は「話し言葉」、「ご返事」は「書き言葉」

いかがでしょうか、Hさん、こういう解釈は?
2009/2/26


◆ことばの話3566「また暴走族が・・・」

昨年10月頃のことです。
夜中、それもかなり夜更けて(午前2時頃)、遠くに暴走族のバイクの音が、
「ブルンブルン・・・」
と聞こえてきました。それを聞いて、
「あれ、ずい分久しぶりだなあ・・・」
と思ってさらに、
「そう言えば、例年なら夏は毎週末に暴走族のバイクの音に悩まされるのに、今年の夏はほとんどそういったことがなかったな」
ということに思い当たりました。「なんでやろ?」と思ったときに「あ!」と思いました。
「今年の夏はガソリンの値段が高かったから、暴走族も自由に走ることができなかったんだ!」
その暴走族が、また走り出したのは・・・・
「ガソリン代がまた安くなって来たから」
なのでしょうね。だから久々にバイクの音が夜中に聞こえたと。暴走族の騒音から、ガソリンの値段が分かるという「暴走族から見る経済」の話でした。
これを去年秋に書くつもりが、延ばし延ばしになっている間に、また暴走族の騒音があまり聞こえなくなっていました。それほど気にしていなかったのですが、つい先日、3月の初めに、また久々に暴走族のバイクの音が聞こえました。
「ガソリン代は安くなっているのに、これまでなぜ、あまりバイクの音が聞こえなかったんだろう?」
と考えたのは一瞬、理由はすぐにわかりました。
「冬の間、寒かったから」
そしてまたバイクの音が聞こえるようになってきたのは、
「暖かくなってきたから」
つまり「バイクの『啓蟄』」みたいなものですね。バイクの音は、ガソリンの値段のほかに「春」も告げてくれると。ちょっとうるさくて迷惑ですが・・・・。「俳句の季語」になるかも・・・無理か。「バイクの季語」になりますね。
2009/3/31
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