◆ことばの話3560「ビネンデンかウィネンデンか」

3月12日の朝刊に、ドイツのシュツットガルト近郊の町で、男が銃を乱射し15人(16人という情報も。犯人も含む?)が死亡する事件が起きました。その記事、新聞各紙の事件が起きた「町」の表記が微妙に違いました。
(朝日)ビネンデンにあるアルベルトビレ実科学校<クラクフ=ポーランド南部、金井和之>
(日経)シュツッガルト近郊のアルベルトビレ実科学校<デュッセルドルフ=ドイツ西部発、共同)
(毎日)ウィンネンデンにあるアルベルトビレ実科学校<シュツッガルト=独南部発、小谷守彦>
(産経)シュツッガルト近郊の学校で<ベルリン、黒沢 潤>
(読売)ウィネンデン。アルベールビル実業中等学校<?>という具合で、「町」の名前は「ビネンデン」が1社、「ウィネンデン」が2社、「シュッツガルト近郊」としか記していないのが2社でした。
ポイントは、
「『ビ』か『ウィ』か」
というところですね。もう一つのポイントは、現地からの情報ではなく、各社とも少し離れたところからの記事だというところでしょうか。
日ごろ聞きなれない外国の地名の表記は、なかなか統一が図られないうちに、騒ぎは収束してしまうようです。その繰り返しなのでしょうか・・・。
2009/3/27
(追記)

2009年8月19日の日経夕刊に、「ベルリン=時事」のニュースが、ベタ記事で載っていました。それは、
「独で銃乱射、3人死亡」
というもの。読んでみると、
「ドイツ西部のシュワルムタールの民家で18日、男が銃を乱射し、DPA通信によると3人が死亡、1人が重傷を負った。(中略)ドイツでは3月、ウィネンデンで17歳の少年が銃を乱射して15人を殺害したほか、4月にもランツフートの裁判所で起きた乱射事件で1人が死亡。銃による犯罪が社会問題になっている。」
とあります。ここで、3月の少年による銃乱射事件の「場所」の名前が出てきました。
「ウィネンデン」
でした。3月の日経新聞は「共同通信」の記事を使ったので、「場所」の名前は出てこなかったのですが、今回は「時事通信」を使ったら、出てきたということです。
2009/8/20


◆ことばの話3559「規範に違反?」

平田財務副大臣が「大臣規範」「違反」したとして辞任しました。「大臣規範」などというものがあるとは知りませんでしたが、この「規範」に「違反」した、でよいのか?「破った」ではないか?「規範」の後に来る言葉は何か?と、「ミヤネ屋」のWディレクターから質問を受けました。
うーん、けっこう難しい質問です。「法律」なら「違反」「破る」どちらもOKですが、「規範」って、ちょっと「法律」とは違う気がする。
「規範に抵触」
とか、
「規範を逸脱」
なんて言葉が似合いそうだけど・・・。それに「規範に違反」って、「脚韻」を踏んでいて語呂が良すぎるから「オヤジギャグ」みたいに聞こえるし。
Google検索(3月27日)では、
「規範を破る」  =1430件
「規範に抵触」  =8410件
「規範に違反」  =6770件
「規範を逸脱」  =3410件
「規範に反する」=7620件
でした。「抵触」が一番多いけど「反する」「「違反」もけっこうありますね。ちなみに「規範に違反」はネット上ではテレビ朝日、TBS、東京新聞などが上位で出てきました。
結局「ミヤネ屋」では、
「規範を破って・・・」
で放送しました。
2009/3/27


◆ことばの話3558「激化」

3月25日のお昼のニュース原稿で、
「規制緩和で競争が激化し、労働条件が悪化したとして」
という一文が。なんだか硬くて、分かりにくい。特に、
「激化」「悪化」
「〜化」という言葉が2回続けて出てくるのが、具合悪いですね。この「激化」は、
「激しくなり」
でよいですね。その方がわかりやすい。また、「悪化」
「悪くなった」
でもよいですが、まあ全部かみくだくのもテンポがなくなるかもしれないし、「激化」よりは「悪化」の方が、まだ耳で聞いてわかりやすいので、そのままで良いでしょう。
最近よく目にする(耳にする)
「可視化」「見える化」
などもそうですが、「〜化」という言葉は、動詞を名詞化する(名詞にする)のに便利な言葉で、「〜化」とすれば「如何にも分かっているように見える」不思議な言葉ですが、乱用し過ぎないように注意が必要です。かみくだいて表現することを念頭に置いた方がいいですね。
2009/3/26


◆ことばの話3557「居候がそっと出すのは・・・」

「情報ライブ・ミヤネ屋」の新聞紹介のコーナー「ヨミ斬りタイムズ」に初登場の新人のHアナウンサー、打ち合わせの時の話です。小室被告がエイベックス副社長宅に、
「居候」
しているというネタの時に、
『居候 〇〇〇〇〇○○ そっと出し』という川柳があるけど、『〇〇』の中にはなんて言葉が7文字入る?」
と聞いたところ、彼女は、
「あったかいお茶」
と答えました。
「居候 あったかいお茶 そっと出し」
なるほどなるほど7文字で・・・って違うやろ!(正解は「三杯目には」)
また、引き上げられたカーネルサンダース人形に新しいメガネを提供すると申し出た、福井県「鯖江市」を、
「さびえし」
と読んでいました。いくら、カーネル人形がサビていたからって・・・(正解は「さばえし」)
そして、
「『骨肉バトル』の『バトル』の部分には、本来だったらどんな言葉が入る?『骨肉の●●』?」
と聞くと、
「衝突」
骨折か!さらにもう1回チャンスをやると、
「戦い」
と答えました。(正解は「骨肉の争い」)ニュアンスはつかんでるんだけどなあ・・・・。でも、打ち合わせではどんどん間違って、本番前に直すようにしてください。これから、どんどん賢くなっていってくださいね!伸びしろ、大!です。
2009/3/25


◆ことばの話3556「おもんぱかる」

ふと、思いつきました。
「『慮る』という言葉は、なぜ『おもん「ば(B)」かる』ではないのか?」
ということ。
「おもんぱ(P)かる」
という「ぱ」の音は、日本語では珍しいのではないか?そう思いました。その数日後、「ミヤネ屋」のスタッフからも、同じ質問を受けました。そこで考えてみました。
問題は、「ぱ」の前の「ん」だと思います。
この「ん」の形は何なのか?「M」か?「N」か?それによって、そのあとの形が変わってきます。
「おもんぱ(P)かる」が「ぱ」であるということは、「ん」が「N」なのでしょうね。もしこれが「おもんば(B)かる」であれば「ん」は「M」だったのでしょうが。
そう考えて数か月、これと同じような言葉を見つけました。
「何人」
です。「なんぴとたりとも」という場合の、
「何人(なんぴと)」
も、「慮る」と同じく「ぴ(P)」です。この「ん」も「N」だから「ぴ」になるのでしょうね。
ちょっと、すっきりしました。
2009/3/23
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スープのさめない距離