◆ことばの話3550「人工島の読み方」

新人のHアナウンサーから質問を受けました。
「『人工島』の読み方は『じんこうじま』でしょうか?それとも『ジンコウトウ』でしょうか?」
うーん、つまり「人工」のあとの「島」を訓読みするか、音読みするか?という問題。
人工の島である関西国際空港の場合、読売テレビでは「空港島」を、
「くうこうじま」
と読みます。二期工事でできた島「二期島」も、
「にきじま」
と読みますから、それに倣うと、
「じんこうじま」
ですが。(「平成ことば事情1895空港島」もをご参照下さい。)
『広辞苑』「人工――」という単語を拾ってみました。(「人工」のあとに続く単語だけ並べます)
「衛星」「栄養」「海水」「甘味料」「気胸」「魚礁」「血液」「言語」「降雨」「公物」「肛門」「呼吸器」「呼吸法」「地震」「芝」「地盤」「授精」「授粉」「照明」「心臓」「心肺」「生命」「臓器」「単為生殖」「知能」「通風」「的」「透析」「登攀」「内臓」「妊娠中絶」「排熱」「孵化」「孵化法」「放射能」「雪」「林」「惑星」
と、38の「人工――」がありましたが、そのほとんどが「音読み」でした。「訓読み」なのは、
「人工芝(しば)」「人工雪(ゆき)」
2語だけでした。ということは、原則、「人工」のあとは「音読み」ということですね。でも「人工島」を「ジンコウトウ」と読むと、「トウ」が「島」なのか「党」なのか「塔」なのか「糖」なのか「棟」なのか、同音異義語が多くてわかりにくいという側面もあります。結局、わかりやすさを優先して、
「じんこうじま」
で読むように指示しました。ちょっと「ひょうたんじま」みたいですが。もっとかみくだくと、
「人工の島」
とする手もあります。逃げですかね?
2009/3/20


◆ことばの話3549「カーネルおじさんか?カーネル人形か?」

そのニュースが飛び込んできたのは、3月10日の午後6時20分頃でした。そうです、“あの”カーネルサンダース人形が、道頓堀川で見つかったというのです!
翌3月11日の新聞各紙の見出しは、
(読売)あのカーネル人形救出
(朝日)カーネルおじさん“救出”
(毎日)あのカーネル人形発見
(産経)虎日本一から24年“おじさん”発見!!(カーネルの呪い解けた)
(日経)カーネルおじさん発見

で、「カーネル人形」が2紙、「カーネルおじさん」が2紙、「おじさん」または「カーネル」が1紙でした。また、スポーツ紙も、
(報知)カーネルおじさん24年ぶり発見
(デイリー)お手柄カーネルおじさん救出
(サンスポ)カーネル人形生還
(スポニチ)カーネル人形
(日刊)カーネルおじさん救出

ということで、「カーネル人形」が2紙、「カーネルおじさん」が3紙という結果でした。「人形」と「おじさん」が、真っ二つに割れ、拮抗しています。Google検索では(3月20日)、
「カーネルおじさん」=76万件
「カーネル人形」  =23万5000件

でした。
「おじさん」というと親しみがありますが、「人形」というと客観的な感じがします。どちらでも間違いではないですが。
それにしても「カーネル・サンダース」の「カーネル」は、
「陸軍大佐」
という意味ですよね。ですから、いわゆる苗字でも名前でもないので、もし苗字を言うのならば、
「サンダース人形」「サンダースおじさん」
とすべきところですが、そうしていた社は1社もありませんでした。これも検索してみると(3月20日)、
「サンダースおじさん」=21万4000件
「サンダース人形」  = 3万2300件

でしたが、この中には「カーネル・サンダース人形」「カーネル・サンダースおじさん」というフルネームに「人形」「おじさん」を付けたものも含まれていました。
「ケンタッキーフライドチキン」のサイトを見ると「Q&Aよくある質問」のコーナーがあって、そこに
「カーネルって名前なの?」
という質問がありました。その答えを引いてみると、
「 カーネルの本名は、ハーランド・サンダース(Harland Sanders)です。「カーネル」というのは、1935年、ケンタッキー州への貢献を称えて州知事から贈られた名誉称号です。「Colonel」には陸軍大佐という意味がありますが、アメリカの南部・西部地区では、軍隊とはまったく関係のない州の名誉職として使われます。カーネル・サンダースの場合も同様で、軍隊とは関係ありません。」
と記されていました。それにしてもこのカーネルおじさんの人形の発見で、「阪神タイガースが日本一になれない」といういわゆる、
「カーネルの呪い」
が解けると良いのですが・・・。その数日後の新聞に、
「大リーグのシカゴ・カブスが、カーネルおじさんの人形発見のニュースを聞いて、貸し出しを希望している」
という記事を見つけ、「ミヤネ屋」の「ヨミ斬りタイムズ」のコーナーで、萩原アナウンサーが紹介しました。その時には、
「カブスもなにか“呪い”があるのかなあ・・・」
と漠然と思っていたのですが、実はあったのですね!『メジャーリーグとても信じられない話』(ロバート・ホワイティング著、松井みどり訳:文藝春秋)に、
「カブスを襲うヤギの呪い」
という章があって読んでみると、1945年、ペットのヤギを連れてカブスの本拠地リグレー・フィ−ルドに入ろうとしたギリシャ移民で居酒屋経営の“ビリー・ゴ−ト”サイニアスという男性に対して、オーナーのリグレー氏(あのチューインガムの!)が
「ヤギは臭いますからね」
と門前払いにしたという“事件”
があり、その屈辱に対して男性が
「うちのヤギが侮辱され幻滅した。リグレーがヤギに謝りにくるまで、カブスは呪われるだろう」
と言ったという説や、
「カブス、もうだめ。二度と勝てん!」
と片言の英語で叫んだという説があり、それ以来カブスは、ワールドシリーズに縁がなくなってしまった、というのです。
そういった“伝説”は、「歴史あるチームにはつきもの」なんですねえ。
2009/3/19


◆ことばの話3548「腕ぶす」

1月30日の産経新聞朝刊のスポーツ面に、全豪オープンテニスの女子ダブルスで、杉山・ハンチュコバ組が決勝に進出したという記事が載っていました。その見出しが、
「腕ぶす杉山組」
へ?この「腕ぶす」って何?初めて見ました。なんて読むのでしょうか?
「うでぶす」?「わんぶす」?
辞書を引いても載っていません。ネットで検索してみたら(Google検索、1月30日)、
「腕ぶす」=1560件
でした。その中には、「腕ぶす」の読み方や意味を尋ねたものもありました。それらを総合すると、「腕ぶす」は、
「うでぶす」
と読み、本来は、
「腕を撫す」
と書き、「撫す」「なでる」こと。「ブス」とは関係ありません。意味は、
「力をもてあましている状況」「気勢を上げる」「気合いを入れる」「腕をなでる」「自分の腕(能力を)をいたわる」「腕が鳴る」「自分の力を示そうとする」「腕をさする」「自分の力を発揮したくて機会を待つさま」
のような意味のようですね。
「腕ぶす原監督『力と力で勝負できる』」
というよう例も出てきて、それによると、
「実力世界一決定戦にふさわしく、力と力で勝負できる選手がそろっている」
「こちらもいいメンバーがそろっている。しっかり調整して臨みたい」

というような状態を指して「腕ぶす」と言っているようです。Google検索では(1月30日)、
「腕をぶす」=357件
「腕撫す」 =101件
「腕を撫す」=405件

競馬関連の記述でも出てきました。
ついでに「撫す」『精選版日本国語大辞典』で引いてみると、
「撫す」→「撫する」
とあって、
「撫する」=(1)なでる。手のひらでさする。(例)雑俳・松の雨(1750か)「細い手を撫して時まつ鞍馬山」(2)いたわる。慰める。安ずる。(例=略)(3)かわいがる。愛する。(例=略)(4)手本を見て書き写す。そっくりそのまま、しきうつしにする。(例=略)
でした。この(1)の意味の「なでる」の例が、「腕ぶす」状態ですかね。
「腕がなるぜえ!」
出番を待つ感じです。うーん、「時代劇の素浪人」みたいな感じかな。
2009/3/19
(追記)

5月30日、プロ野球中継で、日本テレビの河村 亮アナウンサーが、巨人の攻撃ツーアウト満塁で大道選手が登場した場面で、
「代打で腕を撫していた男がいます」
と言っていました。凝った表現ですが、それほど野球ファンには、よく人口に膾炙した表現なのでしょうか?どうなんでしょう?耳で聞いたら分かりにくい表現ではありますね。しかしよくこんな言葉知ってるなあ。
2009/6/9


◆ことばの話3547「連呼か?連発か?」

3月18日、大阪府の橋下知事が「詐欺」と7回言ったことを指して、
「『詐欺』を連呼』
と言うのか?
「『詐欺』を連発』
と言うか?という質問を「ミヤネ屋」のスタッフから受けました。うーん、
「詐欺、詐欺、詐欺、詐欺、詐欺、詐欺、詐欺」
と言ったのなら、
「連呼」
ですかね。そして、
「詐欺ですねえ・・・本当に詐欺ですね。それにしてもこういった詐欺的なことをやるのは・・・」
という感じで、結果として「詐欺」を7回言ったというなら、
「連発」
でしょう、と答えました。「連呼」というと、イメージでは、選挙カーで候補者の名前を何度も言うのが「連呼」ですね。
結局、司会の宮根誠司さんの原稿は「連呼」、ナレーターさんの原稿は「連発」と、(結果的に)なってしまいました。もちろん「連呼」でも、間違いとまでは言えないんですが・・・ニュアンスの問題ですね。『精選版日本国語大辞典』を引くと、
「連呼」=(1)つづけざまに呼ぶこと。しきりに呼ぶこと。
「連発」=(1)物事が続いて起こること。(2)略。
      (3)同じような内容の言葉などを続けて出すこと。

とありました。「連発」の(3)の意味が今回は適当なのではないでしょうか。「連呼」(1)でもいいのですけどね。

2009/3/19


◆ことばの話3546「かばげ〜子供の言葉」

2008年暮れ、大晦日の会話。当時3歳11か月の娘の言葉が、「オモロー!」です!(あれ?もう「オモロー!」が古く感じる・・・)
どういう言葉かというと、
「おにいちゃん、おきおち」(おきおち=お仕置き)
「コップコーン」(=ポップコーン)
「半袖ズボン、長袖ズボン」(=半ズボン、長ズボン)
「ここまで届ける」(=手を高いところに伸ばして。「ここまで届く」の意)
そして、娘いわく、
『しりとりで「かばげ」っていったら「げぼ」っていうねん。』
「…?『かばげ』って何?」
「海の中にいるおさかな。保育所にいるねん。」
「…それって、もしかして、『くらげ』?」
なんで保育所に「かばげ」がいるんだ?たぶん「工作」で作った「かばげ」なんだと思いますが・・・。それにしてももうすぐ、ちゃんと喋るようになってしまうんだろうなあ・・・
2009/3/18
スープのさめない距離