◆ことばの話3535「目ウロコ」

2月の新聞用語懇談会放送分科会で、テレビ朝日の委員から、
「最近『目からウロコが落ちる』のことを『目ウロコ』と言うのを聞いたが、こういった言葉も正しい形で言うように注意喚起をしなければいけないのではないか?」
という意見が出ました。その場にいたほかの委員は、
『目ウロコ』
という言葉は初耳。
「『目からウロコ』は言うけれども・・・」
という反応でした。しかしその中で、
「そもそも『目からウロコ』も省略形なので、本来の『目からウロコが落ちる』まで言わなければいけないのではないか?」
という意見も飛び出し、ハッとさせられましたが、
「『目からウロコ』は、もう定着した省略形だよなあ・・・」
という空気も満ちて、「まあそこまでは・・・」というようなことになりました。
その会議から帰ってきてから、「常套句・ことわざの省略形」には、神経がピクッと動きます。まず新聞(何新聞だったのか、忘れました、すみません)で見つけたのが、
「麻生総理に反旗」
という表現。これも正しく長く書けば、
「麻生総理に反旗を翻した」
ですが、最後の動詞部分が省略されています。「見出し」としてはOKでしょう。本記として書く(読む)なら、「翻した」まで書く(言う)べきでしょうね。
きのう(3月11日)見つけたのは、日経新聞夕刊の書評欄「ベストセラーの裏側」の見出しで、
「人気にアカデミー賞が火」
というもの。青木新門著『納棺夫日記』の書評。アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した映画『おくりびと』の“原作”と言われている本です。本文には、
「その人気にアカデミー賞が火をつけた」
とありました。やはり正確に書くと「火をつけた」で、見出しでは「人気にアカデミー賞が火」と体言止めでも許容なんでしょうね。
ただ、意地悪な引っ掛けとしては、日本語は最後に来る動詞で、肯定か否定かが決まるので、この体言止めだと、
「人気にアカデミー賞が火をつけなかった
かもしれない。
「麻生総理に反旗を翻さ(せ)なかった
かもしれない、という部分は残りますが、それは、あまりにも天邪鬼でしょう。
ちなみにGoogle検索(3月12日)では、
「目ウロコ」     =    1万7700件
「目うろこ」      =     4060件
「目鱗」        =    1万3200件
「目からウロコ」   =  200万0000件
「目からうろこ」   =  147万0000件
「目から鱗」     =  85万0000件
「目からウロコが落ちる」=6万6300件
「目からうろこが落ちる」 =2万9600件
「目から鱗が落ちる」   =7万2600件
「目からウロコが落ちた」=2万0300件
「目からうろこが落ちた」 =1万5200件
「目から鱗が落ちた」   =2万9600件
でした。
2009/3/12


◆ことばの話3534「ラインアップか、ラインナップか?」

「ミヤネ屋」のADのYさん(女性)から質問を受けました。
「『Line Up』はカタカナで書くと『ラインアップ』でしょうか?それとも『ラインナップ』でしょうか?」
だんだん質問のレベルが高くなってきた感じがします。これって結構、難問ですよね。『新聞用語集2007年版』を見ると、表記は、
「ラインップ」
となっていました。野球の打順の3番から5番を、
「クリーンップ」
と言いますが、これも表記は、
「クリーンップ」
になっていました。ただ読む時は、書かれたとおり「アップ」と言わなくても「リエゾン」(=子音と母音をつなげて発音する)させて、「ナップ」と読めばいいと思います。その方が「ツウ」に聞こえます。
書かれたものと発音が違うものは、いくつかあります。たとえば、
「シンポジウム」
は「ジウム」と書きますが、読み方で言うと、
「シンポジューム」
と長音で発音しますし、同じように、
「アルミニウム」
も、声に出す時は、
「アルミニューム」
となります。うーん、ちょっと例が違ったかな?ま、いいか。
2009/3/9


◆ことばの話3533「揃い踏み」

「ミヤネ屋」のWディレクターからの質問です。
「麻生総理と、渦中の中川大臣が予算委員会で顔を合わすんですが、これを“揃い踏み”と表現してもいいですかね?」
辞書を引きながら、答えました。
「うーん、もともとの意味は、『大相撲で大関以下幕内の全力士が東西別に土俵に並び、しこを踏むこと』だから、人数多いよね。『三役揃い踏み』でも3人だから、やはり『そろい踏み』は、せめて『複数=3人以上』じゃないかなあ。」
ということで、今回はこの表現は使いませんでした。
2009/3/9


◆ことばの話3532「興が乗る」

2月中旬、放送前に「ミヤネ屋」のSプロデューサーから質問が。
「『興が乗る』という表現はあるか?国語辞典(広辞苑)には『興に乗る』はあるのだが、『が』はない。『エクシード和英辞典』には『興が乗る』も載っているが・・・」
と聞かれて、調べてみると、たしかに『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』『三省堂国語辞典』には『に』しか載っていません。しかし『新明解国語辞典』には、
「興に(が)乗る」
( )内にではありますが、「が」がありました。
また『デジタル大辞泉』は、
「興が乗る」
と出ていました。こうやって見ると、
「もともとは『に』だったが、現在は『が』もOK」
ということのようです。
2009/3/9


◆ことばの話3531「激レア映像」

2月5日、「ミヤネ屋」のSプロデューサーからら、
「『激レア映像』という表現はわかりにくいのではないか?」
と指摘がありました。文字で見れば分かりますが、たしかに耳で、
「ゲキレアエイゾウ」
聞いても分かりにくいですね。しかも「レア」という言葉が、
「レアもの」「レアグッズ」
などの場合はまだ聞き慣れていますが、後ろに、
「映像」
が来ると、ちょっとマニアの世界かも。俗語っぽさ(のニュアンス)を残しつつも、
「超レア映像」「貴重な映像」
などの方が(インパクトには欠けるかもしれないけど)、まだわかりやすいのでは?という話をしました。
その後、スーパーとコメントが一致するところに関しては「激レア映像」も使ったようです。でもなんだか「お下品」な感じ・・・。
2009/3/9
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スープのさめない距離