◆ことばの話3520「癒やすと癒着」

「癒着」
「癒」「常用漢字」かどうか確認していたら、「常用漢字」でした。
あれ?待てよ、この漢字は、
「『癒やし』の『癒』」
ではないか?
なんだか「ゲシュタルト崩壊」を起こして、どんな漢字かわからなくなってきたア!
見比べるとたしかに同じ漢字です。でも、イメージが違うなあ。
「癒(い)やす」という読み方が「表外訓」だったのですね。
それは、イメージもあるのかもしれないなあ。

戦後まもなくの時期に書かれたであろう、今日出海さん「すき焼きの辮(べん)」というエッセイ(『バナナは皮を食う〜暮しの手帳・昭和の「食」ベストエッセイ集』収録)を読んでいたら、
「腹癒(い)せに」
という表記が出てきました。「腹を癒やす」のでしょうね。なるほど。
思うに、当用漢字の訓読み「いやす(癒やす)」「いえる(癒える)」を入れなかったことで、それまでは普通に使われていたであろう、
「腹癒せ」
も、
「腹いせ」
と表記されるようになり、本来の意味が分かりにくくなったのではないでしょうか?
そんなことを考えました。
2009/2/24


◆ことばの話3519「顎が落ちる」

『バナナは皮を食う〜暮しの手帳・昭和の「食」ベストエッセイ集』に収録されている、火野葦平のエッセイ「どんこ料理」を読んでいたら、こんな表現が出てきました。
「うすく切って酢醤油で食べると、顎が落ちるとのこと」
え?「ほっぺた」ではなく、「顎」が落ちるのですか。うーん、聞いたことはあるけど私の語感では「ほっぺた」の方がなじみがあるような・・・。
Google検索(1月28日)では、
「顎が落ちる」 =     2140件
「あごが落ちる」=    1万1300件
「ほっぺたが落ちる」=1万0700件
「ほほが落ちる」=      167件
「ほおが落ちる」=      518件
「頬が落ちる」=    1万8500件
でした。けっこう「あごが落ちる」もあるのですねえ。
今後も注目します!
2009/2/24


◆ことばの話3518「絶対的な存在感」

2月16日の「情報ライブミヤネ屋」小泉元総理に関する原稿で、
「絶対的な存在感を持つ小泉元総理」
という一文が出てきました。これを見て「うん?」と思いました。
「絶対的な」と来たら、その後ろに来るのは普通は、
「権力」「力」
ですね。逆に「存在感」を生かすのなら、
「強烈な」もしくは「圧倒的な」
でしょうね。今回は「存在感」を使いたいところなので、
「強烈な存在感を持つ小泉元総理」
としましたが、「圧倒的な存在感」の方がよかったかな?
しかし実際は、引退を表明しているのですから、「そこまでの存在感なのか?」という疑問は残りますがね。
2009/2/16


◆ことばの話3517「回復か?快復か?」

2008年12月23日天皇誕生日に際しての「天皇陛下のコメント」を載せた新聞各紙ですが、その中の漢字の表記が、日経新聞・朝日新聞・産経新聞は、
「回復」
(毎日新聞は、「次第によい方に向かっているものと思います。」)
だったのですが、読売新聞だけは、同じ「かいふく」でも、
「快復」
という漢字を使っていたので気になりました。この違いは何なのでしょうか?
たぶん読売新聞が本当に書きたかった表記は、
「恢復」
だったのではないか?と思いました。
『新聞用語集2007年版』を見ると、
「恢復→◎回復」
となっています。「◎」の意味は、
「国語審議会『同音の漢字による書きかけ』の語」
となっています。読売新聞社の『読売スタイルブック2008』を見てみると、
「恢復、快復→◎回復」
となっているではないですか!ということは、たまたま「快復」を使っていたのかな、と。
病気の時には「快復」を使いたい気持ちもわからないこともありませんね。
2009/2/23


◆ことばの話3516「狼煙の読み方」

「情報ライブミヤネ屋」のナレーターさんから、先週金曜日(2月13日)の原稿の件で、
「原稿に“狼煙が上がる”と出てきて、この“狼煙”、『広辞苑』で“ロウエン”を引いたら、『太平記』の用例で載っていたので、そのまま“ロウエン”と読んでしまったんですけど、正しくは“のろし”だったんですよね・・・すみませんでした」
「そうでしたか。でもそれは原稿にディレクター側がルビを振るべきですよね。それより平仮名で“のろし”と書けばよかったところですよね。」
という会話がありました。ちなみに、きょうも「のろし」が出てきたそうですが、ちゃんと「平仮名」で書かれていたとのことでした。
「狼煙=のろし」
です。ちなみに『広辞苑』の記述は、
「ロウエン(狼煙・狼烟)」=(昔中国でけむりを直情させるため、狼の糞を入れたからという)敵の襲来などを知らせるために、藁(わら)・生柴などを焚いて上げる煙。のろし。狼火。狼燧(ろうすい)。(例)太平記(19)「狼煙点を焦せり」
というものでした。一応最後のほうに平仮名の「のろし」も載っていますが、見出しが「ろうえん」ですからね・・・。もちろん「のろし」の見出しを引いていれば「狼煙」と書かれていたのですが・・。
2009/2/16
スープのさめない距離