◆ことばの話3490「ルーズベルトかローズヴェルトか」

1月20日(現地時間)、第44代アメリカ大統領にバラク・フセイン・オバマ氏が就任しました。世界大恐慌のあとの1933年に第32代大統領に就任したフランクリン・ルーズベルト大統領が「ニューディール政策」で雇用を創出したのに倣って、エコ事業に投資する「グリーンディール政策」を標榜しているオバマ新大統領ですが、その「ルーズベルト」の表記、これでいいのか?「ローズベルト」という表記も見たことがあるが・・・と思って検索してみました。
Google検索(1月21日)
「フランクリン・ルーズベルト」 =5万5000件
「フランクリン・ルーズヴェルト」=   2210件
「フランクリン・ローズベルト」 =    721件
「フランクリン・ローズヴェルト」=   2000件
でした。「ルーズベルト」「ルーズヴェルト」「ローズベルト」「ローズヴェルト」単独では(1月22日)、
「ルーズベルト」 =42万0000件
「ルーズヴェルト」= 3万9900件
「ローズベルト」 = 1万0100件
「ローズヴェルト」= 1万4700件
で、やはり「ルーズベルト」がダントツです。発音的には「ローズヴェルト」の方が原音に近い、という声もあるようですが、カタカナ表記は「ルーズベルト」が定着していると考えていいでしょうね。
2009/1/22


◆ことばの話3489「オータムジャンボ」

皆さんは、「年末ジャンボ宝くじ」、お買いになりましたか?
買った?そうですか。で、当たりましたか?え!2億円が2本当たった!!?なんてわきゃないか。
私は個人では買っていないのですが、アナウンス部のみんなと「グループ買い」(=1人10枚)に参加しました。当たったのかなあ、だとすれば億万長者なのになあ・・と思いながら過ごすこと数日、年が明けて一週間ほどして幹事のY君から、
「年末ジャンボ宝くじを購入された皆様へ」
というメールが届きました。
「お疲れ様です。年明けに宝くじの精算に行ってきました。当選金額は、1人当たり1005円でした。この後、すぐにオータムジャンボが始まりますが、引き続きよろしくお願いします。」
一人当たりの金額よりもビックリしたのは、
「このあと、すぐにオータムジャンボが始まりますので」
というくだり。次はもう「オータムジャンボ」なの?その前にも「○○ジャンボ宝くじ」があったのでは?そのような疑問を書き送ると、すぐにまた「訂正です」というメールが。そこには、
「とても恥ずかしいです。確認して送ったにもかかわらず、間違っていました。オータムジャンボではなく、グリーンジャンボ宝くじです。本当に申し訳ございません。」
と書かれていました。そりゃそうだろう。
でも、年が明けたと思ったらもう20日。この分だと、本当に次は「オータム」かも・・・・。はてさて、月日の経つのは早いものじゃのオ。
2009/1/20


◆ことばの話3488「眠育」

以前、「抱き枕」の取材をした寝具の会社から『プレスリリース』が届きました。そこには、
「眠育のすすめ」
とありました。「眠育」、初めて聞いた言葉です。その刷り物によると、「眠育」とは、
「睡眠教育のこと。生涯を通じた健全な睡眠生活の実現、健康の確保等が図れるよう、水方の睡眠について考える習慣や、眠りに関する様々な知識や正しい情報を身に付けるための学習当の取り組み」
とありました。そして、
「子どもの健康な発育のために睡眠は必要不可欠です。子どもの心身の成長のために、『眠育』が大切だと考えています」
と記されていました。なるほどね。その「子どもがイキイキする5つの眠りの魔法」といして、
(1)決まった時間に寝る
(2)朝の光を浴びる
(3)朝ごはんを食べる
(4)日中は活動的に
(5)夜ごはん・お風呂は子ども時間で
という5項目が記されていました。わかっちゃいるけど、なかなか実行できないんですよね・・・。
「眠育」を、ネット検索(Google)してみると、(1月20日)
「眠育」=209件
でした。まだ随分少ないですね。『現代用語の基礎知識2009年版』にも載っていませんでした。これからの言葉でしょうかね。
2009/1/20


◆ことばの話3487「アラ還」

去年のNHK紅白歌合戦に、史上最高齢の61歳で“初出場”した歌手の秋元順子さんの新曲が、今度はオリコン・シングルチャートで、60代で初めて1位に輝いたという記事が、1月20日の新聞各紙に載っていました。そこで秋元さんは、
「“アラ還”の星として頑張ります」
とコメントしていましたが、この「アラ還」とは、
「アラウンド還暦」
つまり「60歳前後」という意味のようです。「アラカン」と聞いて私の世代でも思い浮かぶのは、
「アラカン=嵐寛十郎」
ですが、今後はこの「アラ還」が増えるかも。もちろんこれは、「30歳前後」の「アラサー」、そして去年の流行語大賞にもなった「40歳前後」の「アラフォー」を踏まえての言い方だと思いますが、「60歳前後」を英語で言うと、
「アラシク」(アラウンド・シックスティ)
とかなってしまって今ひとつ語呂がよくないので、「還暦」を持ってきたというのは、なかなか!「50歳前後」も「アラフィフ」なんて言いにくいし、どうすればいいんだろうか?「70歳前後」は、「還暦」に倣って、
「アラコキ」(アラウンド古稀)
なんていかがでしょ?もちろん「80歳前後」は、
「アラサン」(アラウンド傘寿)
「90歳前後」は、
「アラソツ」(アラウンド卒寿)
「100歳前後」は・・・もういいですか?70歳以上は、別に「アラウンド」なんて言わなくても、いろいろ呼び方があるから、ほおっておいてよい感じがしますね。
2009/1/20
(追記)

4月6日、IT関連の人材派遣会社のアメリカ人社長との結婚を発表した、演歌歌手の長山洋子さん(41)。そのブログの中で自分のことを指して、
「ど・アラフォー」
と呼んでいました。この「ど」は、もちろんフランス語ではなく、「強め」意味の「ど」でしょうね。
「正にアラフォーのど真ん中」
というような意味だと思うのですが、初めて聞く「ど」の使い方です。「どあほ」とか「ど真ん中」はよく聞くのですが。「ど」の後に、一応外来語(?)の「アラフォー」が来るのは、「どはずれた」感じがしますね。ちなみに、Google検索では(4月7日)、
「どアラフォー」=4330件
「ど・アラフォー」=4330件(変わらず)
でした。既に、
「どアラフォー婚」
なる見出しもついていました。今年は流行るかも?なお、「平成ことば事情486どキレイ」「平成ことば事情2402ど」もお読み下さい。
2009/4/7


◆ことばの話3486「立派な犯罪」

「立派な」
という形容動詞は、
「おまえも立派な大人になったなあ」
というように、
「誰に恥じることのない、まごうことなく、正真正銘の」
というように使うのが、まあ普通の使い方だと思いますが、たまに、
「チカンは立派な犯罪です」
というふうに、全然立派じゃない、「チカン」というある意味卑劣な性犯罪に使われることがあります。この場合は、
「チカンは、たんなる迷惑行為のように思っているかもしれないが、れっきとした犯罪行為なのだ。だからダメなのだ」
という意味で使うのですが(「れっきとした」も、悪いことに使ってはダメ、ということも聞いたことがあります)、
「立派な犯罪」
だけを取り出して聞くと、
「おやまあ、立派な犯罪を犯して、おまえも一人前だねえ」
のように受け取られかねないので、この手の「立派な」の使い方はやめた方がいい、と以前どこかで聞いたか読んだかした覚えがあるのですが、なかなかどこに書いてあったのか、見つけられません。しかし、実際には一般的には使われています。
奥田英朗の『オリンピックの身代金』という小説の中では、
「連日の最高気温二十七、八度は、立派な残暑だが」(65ページ)
『立派な残暑』という表現が出てきました。また、
「とにかく、いまや二人は立派なコンビです」(386ページ)
というふうに『立派なコンビ』というのも出てきました。これらが『立派な犯罪』とどう違うか?考えてみました。
この「立派な」は、「立派な」のあとにくる語・事象の必要条件を満たしているという意味ですね。「百点満点」ではなく、「六十点」、いや「赤点」はクリアしているというような意味でしょう。ならば、「立派な犯罪」と同じような使われ方と言えるのではないでしょうか?「立派な犯罪」は、立派に、その「立派な」の使い方を満たしていると思います。
ただ、放送では「誤解を招かないように」使うな、ということなのでしょうね、きっと。
『精選版日本国語大辞典』「立派」を引いてみると、
「立派」=(1)(派を立てるの意。一説に「立破」の意から)おごそかで美しいこと、あるいは、すぐれていること。見事なこと。また、そのさま。(用例略)
(2)十分に整っているさま。不足や欠点のないさま。(例)「佐渡流人行」(1957)<松本清張>二「立派な前科者だ、佐渡送りにしても、どこからも文句の出る尻は無い筈だ」
というふうに、
「立派な前科者」
という表現が使われています。「立派な犯罪」と同じ使い方です。『広辞苑』は、
「(2)(ア)美しいこと。見事なこと。すぐれていること。(例)「立派な家」
(イ)文句のつけようもなく十分なさま。(例)「もう立派な大人だ」「立派にやり遂げる」
としていて、(2)の(イ)の意味なんですが、用例は「立派な犯罪」を裏付けるには不十分ですね。『明鏡国語辞典』は、
「(2)条件・資格などが十分に備わっているさま。欠点や不足がないさま。(例)「君も立派な(=ちゃんとした)大人なのだから、自分で決めなさい」「最後まで立派にやりとげる」「そんな卑劣な行為は立派な(=まぎれもない)犯罪だ」
「立派な犯罪」、載っていましたね。こういう時の用例は、やはり『新明解国語辞典』に期待しますね。
「(二)(予測されていた段階を超えて)最低限必要な条件を満たしており、非難すべき点は無いとされる様子だ」(例)「失業中とは言え立派に生活している」「しろうとでこれだけ出来れば立派だ」「初出場ながら強豪相手に立派に戦った」「そんなことをすると立派な(=どう見ても疑う余地の無い)犯罪になる」
おお、やはり用例が豊富で納得ですね。しかも普通の「立派」の意味である(一)の方でも最後の所に、
「七十歳をすぎてパイロットの資格をとろうとは、ご立派なことだ(=からかいや驚きの気持ちを含意する)」
という、とてつもない用例まで用意してくれています。すごい!
2009/1/19
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スープのさめない距離