◆ことばの話3470「ポッチャンかボットンか」

お食事中の方、ゴメンナサイ。読まない方が言いと思います。ごはん、終わってから読んでくさい。いや、ください。
2009年1月7日の読売新聞の連載コラム「牛のごとく」の4回目で、みうらじゅんさんが書いた中に、こんな文章が。
「美大時代、特に夏場はポッチャン式共同トイレのニオイがアパート全体を包み込み」
あ、だから、ごはんの最中に読んじゃダメだって言ったのに!
これを読んで私が「おや?」と思ったのは、もちろん
「ポッチャン式」
という部分です。わが家においては、というか道浦家では、このスタイルのトイレのことを、
「ボットン便所」
と呼んでいたからです。わが家はもうずっと「水洗」ですが、父母の実家、つまり私の祖父母の家はその昔はもちろん、このスタイルの「汲み取り式」のものでした。父母は「ボットン便所」と呼んでいました。いまだに呼んでいます。
「ポッチャン」と「ボットン」、どう違うか・・・「ポッチャン」は軽くて「水」っぽいけど、「ボットン」には「重量感」があります。古池に「かはず」が飛び込んでも、決して「ボットン」ではなく、どちらかと言えば「ポッチャン」です。あ、でもウシガエルこと食用ガエルが飛び込んだら「ボットン」かも。そのぐらい、ブツの「重量の差」があります。「十両と大関」ぐらいの差はあるね、相撲でたとえると。たとえるなよ、相撲で。(堀井憲一郎ふうの一人突っ込み)
Googleで検索してみました。(1月7日)
「ポッチャン便所」=  251件
「ポッチャン式便所」=  1件
「ポッチャン式トイレ」= 39件
「ポッチャントイレ」= 369件

「ボットン便所」=4万2200件
「ボットン式便所」=  299件
「ボットン式トイレ」= 981件
「ボットントイレ」=  3590件
このぐらいでよろしいでしょうか?
やはり、みうらじゅん画伯の表現よりも、道浦家の方が世間一般並みの表現だと言えますよね、この結果から言うと。ダントツで「ボットン便所」の圧勝です。
勝ってもそんなにうれしくないのは、なぜでしょうか・・・・。
2009/1/7


◆ことばの話3469「スバらしい年に」

年末に、家族旅行で沖縄に行ってきました。その際に見た新聞に、沖縄県内の生麺所で、
「年越しそばの生産がピーク」
という記事が、2008年12月30日の「琉球新報」に載っていました、その記事の見出しが、
「スバらしい年に」
なぜ「スバ」だけカタカナで強調されているのか?疑問に思いました。しばらく考えて、
「あ、そうか!」
と理由がわかりました。「沖縄方言」のことを、沖縄では、
「ウチナーグチ」
と言いますが、この「ウチナー」は「おきなわ」が訛ったもの。つまり、
お→う
き→ち
な→な
わ→あ
と音韻変換しています。それに従うと、「スバ」
そ←ス
ば←バ
となって、沖縄方言では「そば→スバ」になるから、「スバ」をカタカナにして「ダジャレ」にしているのだ!と気付きました。
皆さんにとって平成21年、2009年がスバらしい年になりますように!!
2009/1/6


◆ことばの話3468「タグかタッグか」

報道のSさんが「お忙しいところすみません・・・」と、スーパーの発注用紙を持ってきました。
「大阪府の橋下知事の発言のスーパーなんですが、力を合わせていくという意味での言葉は「タグを組んで」でしょうか・それとも小さい『ッ』を入れて『タッグを組んで』でしょうか?辞書には両方載ってるようなんですが・・・」
私は、
「そりゃあ、『タッグを組んで』でしょう。プロレスでも『タッグ・マッチ』だし」
と言いかけて、
「ちょっと待てよ。『タグ・ボート』は『タグ』だな。セーターなどについているのも『タグ』だな」
と思って、こういう時はやはり『新聞用語集2007年版』!と緑の表紙の小冊子を引き出しから引っ張り出してきました。カタカナ語の表記のところで「タグ」か「タッグ」かを引いてみると・・・ない!載っていない!!
そこで、読売新聞が出している『読売スタイルブック2008』を出してきて、やはりカタカナ表記の欄を引いてみましたが、載っていません。うーん、どうしよう?新聞や放送でどちらかに統一していないのかな?
辞書は『広辞苑』「タグ」を引くと「タッグとも」とあり、「タッグ」を引くと2番目の意味「二人が組みになること」とあり、用例として、
「タッグを組む」
が出てきました!『精選版日本国語大辞典』「タグ」を引くと1番目の意味のところが「空見出し」で「タッグ」を見よとなっています。そこで「タグ」を見ると、
(英tag)((タグ))
となっています。どっちやねん!?しかも2番目の意味で「タグ」の2番目の意味を見よと。そこで「タグ」の2番目の意味を見ると、
「コンピューターで、データのはじめやおわりであることを示したり、ファイルの書式を設定したりするためにつける記号をいう」
とあります。関係ないな。そこで「タッグマッチ」を引くとちゃんと載っていました。やはり、「組む」のは「タッグ」の方がふさわしいようです。そのようにSさんには答えました。あとで共同通信社の『記者ハンドブック第11集』を引いたら、カタカナ表記の欄に、
「タッグマッチ」
は載っていました。やはりこの意味では「タッグ」のようです。
2009/1/7


◆ことばの話3467「酒代の読み方」

1月7日の「情報ライブミヤネ屋」の放送中、ナレーターのNさんに、こう聞かれました。
「『酒代』の読み方は『さけだい』でしょうか?それとも『さかだい』でしょうか?アクセント辞典を見ると『さかだい』しか載っていないんですが・・・『さけだい』じゃ、ダメですかね?』
歌舞伎町に住むストリートチルドレンの女の子の話で、母親が稼いできたわずかなお金も、父親が全て「酒代」にしてしまう、というくだりでの話です。
実は、似たような話には、
「飲み代」
の読み方があります。『広辞苑』「のみしろ」という読み方では載っていても「のみだい」では載っていないのです。
「うーん、辞書に従えば『さかだい』なんでしょうけど、『さけ(酒)』の“代金”だということをアピールするには、『さけだい』の方がいいですよねえ・・・」
と考えて、結局、
「さけだい」
で放送しました。
『精選版日本国語大辞典』を見ると、「のみしろ」と同じく、もともとは「酒代」と書いて、
「さかしろ」
と読んでいたようですが、今では『NHK日本語発音アクセント辞典』「飲み代」の読み方(アクセント)で、
「ノミシロ」と「ノミダイ」
両方を載せています。ですから流れとして「○○代」、昔(江戸時代から明治・大正・昭和の中ごろぐらいまで)は「○○シロ」と呼んでいたものが、次第に「○○ダイ」に変わってきたのでしょう。
そして、古く馴染んだ言葉だからこそ「サケ」→「サカ(シロ)」と「酒」の語尾が変わったのでしょうが、後ろの「代」の読みが「シロ」→「ダイ」と変わることで、新しい言葉になったので、そこでも前の部分の「酒」の読み方が「サカ」のままであるとは限らない、むしろ元の「サケ」に戻るという考え方は、腑に落ちます。納得できます。
いかがでしょうか?
2008/1/7


◆ことばの話3466「ゲボとカバゲ」

3歳11か月の娘を保育所に送って行く朝の道で、二人で「しりとり」しました。
私「しりとり」
娘「りんご」
私「ごま」
娘「まくら」
私「ラッパ」
娘「パンツ」
私「積み木」
娘「きのこ」
私「子供」
娘「森川」(?)
私「輪投げ」

私が「げ」で終わったら、娘は即座に、
「ゲボ!」
と答えました。「ゲボ」というのはつまりその・・・体調の悪い時などに口から・・・そのそういう音を出して・・・わかりますね!?
その後も、何事もなかったかのように
私「帽子」
娘「シマウマ」

と「しりとり」が続いたところで、保育所に着きました。
後日・・・その娘が、
娘「しりとりで『カバゲ』っていったら『ゲボ』」っていうねん。」
私「…?『カバゲ』って何?」
娘「海の中にいるおさかな。保育所にいるねん。」
私「…それって、もしかして、『クラゲ』?」
娘「うん!」
2008年暮れ、大晦日の会話でした。カバゲ!ゲボッ!!
2009/1/7
(追記)

「ゲボ」という言葉は、娘の保育所でのみ使われている「幼児語」かと思ったら、もう少し一般的のようですね。古田新太さんのエッセイ集『柳に風』(新潮文庫)の中に出てきました。
「小学校の時に大好きだった女の子(もしくは男の子)に大学生くらいで出会って、そのあまりの変わり様にゲボがでそうになったことってありませんか?」
「ゲボが出そう」
という表現です。Google検索(4月22日)では、
「ゲボ」   =4万6000件
「ゲボが出る」 =263件
「ゲボが出た」 =719件
「ゲボが出そう」=267件

でした。「ゲボ」の筆頭で出てきたのが、「ゲロのことをゲボって言うんですか?」という質問が載った掲示板。それによると、岩手・大阪・岐阜・埼玉・広島でも「ゲボ」と言うそうです。へえー。
2009/4/22
スープのさめない距離