◆平成ことば事情3430「チンジャオロースかチンジャオロースーか」

『情報ライブミヤネ屋』林繁和先生が出演している「愛のスパルタ料理塾」のコーナーで、今週(11月18日放送)取り上げた料理は、
「青椒牛肉絲」
でした。これをカタカナ表記するのに、
「チンジャオロース」
なのか、それとも後ろを伸ばして、
「チンジャオロースー」
なのか、迷いました。辞書を引いても載っているものがありません。私が調べた中では唯一載っていた『三省堂国語辞典』には、
「チンジャオロース(ー)」
と最後の「−」は( )つきでした。どちらでも良いということでしょうか?揺れている表記ですね、きっと。「ゴーヤ」と「ゴーヤー」、「ジャージ」と「ジャージー」、「パーカ」と「パーカー」のような仲間がいます。
Google検索(11月17日)では、
「チンジャオロース」  =184万件
「チンジャオロースー」 =7万6900件
「チンジャオロウス」  =3310件
「チンジャオルースー」 =707件
でした。
2008/11/25


◆ことばの話3429「G20の読み方」

11月15日、アメリカに20か国の首脳が集まって「金融サミット」が開かれました。これを「G7」「G8」にちなんで、
「G20」
と表現していましたが、この「20」は何と読むか?
「ニジュー」
でしょうか?それとも、
「トゥエンティ」
でしょうか?「G7」「G8」の場合は「セブン」「エイト」と英語読みしましたが、それはひとケタの数字だから。普通は「11」以上の数字になると、急に日本語になります。ゴルフのスコアなどでよくわかります。「10アンダー」は、
「テン・アンダー」
ですが、「11アンダー」「12アンダー」は普通は、
「ジューイチ・アンダー」(「イレブン・アンダー」と言うこともありますが)
「ジューニ・アンダー」(「トゥエルブ・アンダー」と言うこともありますが)
です。「13以上」は間違いなく日本語です。「F15戦闘機」の「F15」も、
「エフ・ジューゴ」
です。「フィフティーン」とは言いません。それで言うと「G20」は、
「ジー・ニジュー」
のはずですが、テレビのニュースを見ていると、どうも、
「ジー・トゥエンティ」
と言っているような気がします。そこで 新聞用語懇談会の放送分科会所属の各社に聞いてみたところ、
(日本テレビ)「トゥエンティ」
(ABC)「トゥエンティ」
(TBS)「じー、トゥエンティー」
(共同通信)放送原稿では「20の国や地域の首脳らが集まって/世界的な金融危機への対策を話し合う/金融サミットが…」という表現をとり「Gにじゅう」や「Gトゥエンティ」は使わなかった。
(NHK)ニュース原稿を何年分か見ると、あえて言う場合は「トゥエンティー」となっている。ただ最近は、テロップ表記はあるものの、本文ではほとんど使っていない。G7やG8と明確に区別するためだろうか。誰かの発言の「引用」で出ることはあるようだ。
(静岡放送)「G20」は使わなかった。枠組みも流動的になっている現在、「G20(Groupof 20)」がどうしても必要な語だとは思えない。「20カ国首脳による金融会議」で良いのでは、と考えている。
<余談だが、7〜8カ国時代は、わりに疑問を抱かず使っていた「サミット」も、20カ国も集まれば、「山頂(summit)」も高原「(plateau)」になってしまう?「首脳会議」という日本語のままで良いと思っている。>

ということで、「ジー・ニジュー」と言っている社は、いまのところ確認できません。言うとしたら「ジー・トゥエンティ」のようですね。数字の読み方は難しい・・・。
2008/11/18


◆ことばの話3428「薄幸大王殿」

帰宅途中、クリスマス・イルミネーションを見ている人のしゃべり声が耳に入りました。
「これ、あれやで。薄幸大王殿…」
え!薄幸大王殿!?幸(さち)の薄い人のことをそんなふうに呼ぶのか??一体どんな大王なんだ?
・・という考えが1、5秒ほど頭の中を駆け巡り、その後ようやくこれは、
「発光ダイオード」
のことだと理解しました・・・。おお、ミステイク!(古い!!)脳みその変換ミス!!
ちょっとはやいけど、クリスマス“おめでたい”!
2008/11/19


◆ことばの話3427「806曲の読み方」

小室哲哉容疑者が著作権を売り渡そうとした詐欺事件で、その曲の数が、
「806曲」
でしたが、この読み方に関して「なんと読めばいいんでしょうか?」と2人から質問を受けました。普通に、
「ハッピャク・ロキョク」
と読めばいいと思うのですが、何となく、
「ハッピャク・ロキョク」
「6」を「ロッキョク」と促音便化せずに、「ロクキョク」と言いたくなるようなのですね。おそらくその理由は、
「ハク・ロク」
というふうに言うと、促音や拗音の「小さい文字の音」が4回も続くので、
「日本語として、何かおかしい・・・」
という不安感に捉われるからではないかと思います。同じようなことは、たとえば、北朝鮮の船の名前、
「マンギョンボンゴウ(万景峰号)」
と言う時に、発音と拗音がリズムよく混ざるので、その規則性につられて最後の「ゴウ」を「ゴン」と撥音で言ってしまう心理と表裏一体なのではないかと感じましたが、いかがでしょうか。人間の“脳”ってどこかでバランスを取ろうと“ひとりでに”考えているみたいなんですね。「順応性」というのはそういう「ホメオスタシス(恒常性)」のことを指しているのではないでしょうか。そんな気がしました。
2008/11/11


◆ことばの話3426「ゲキを飛ばす」

もう半年以上も前になりますか・・・4月1日。各社で新入社員の入社式が行われました。大阪府庁もその一つ(会社じゃないけど)。その入庁式で、大阪府の橋下知事が、入庁者たちにあいさつする様子を、4月1日のお昼のニュース(「ストレイトニュース」)でMアナウンサーが伝えていました。その原稿に、
「橋下知事がゲキを飛ばしました」
とあったので、「おいおい」と引っかかり、デスクに事情を聴きに行きました。
というのも、本来「ゲキを飛ばす」の「ゲキ」は、
「檄」
と書き(木へんです。さんずいではありません)、「檄文」つまり「文書」なんですね。それを伝令に持たせて、前線に伝える、そんなイメージを私は持っています。
ところが最近は、
「激励する」
の意味で、しかも「文書」ではなく「口頭で」激励すること、励ますことに、「ゲキを飛ばす」と使うことが多くなっています。
『放送で気になる言葉・改訂新版』の26ページにも、スポーツ紙やテレビのワイドショーで使われる「ゲキを飛ばす」の例として、
「長嶋監督は選手を集めてゲキを飛ばしました」
という例を上げて、これは本来の意味と違うことを注意喚起をし、さらに、『新明解国語辞典』では、
「俗に激励の意味に使うのは全くの誤り」
わざわざ注記してあることを挙げて、
「放送での乱用は避けたい」
と締めくくっているぐらいのものなのです。
「そのあたりはどうなのか」報道の担当デスクに尋ねたところ、さすがにデスクはそれを認識していました。わかった上で、
「今回は、その表現(ゲキを飛ばす)が一番合っていると判断したので使った。辞書も引いてみたが、『広辞苑』の2番目の意味で『激励する』も載っていた。」
ということでした。え?『広辞苑』の第6版は、「激励する」の意味を載せたの?
確認してみると、「檄を飛ばす」の2番目の意味として
「(2)俗に、元気のない者に刺激を与えて活気づける」
と載っているではありませんか!1番目の意味は、
「(1)考えや主張を広く人々に知らせて同意を求める」
とあります。また「檄」の意味は、
「(1)昔の中国の徴召または説諭の文書。木札に書いたという。めしぶみ。さとしぶみ。(2)敵の罪悪などを挙げ、自分の信義を述べて、衆人に告げる文書。ふれぶみ。」
とありました。
ということで、「それも『あり』かな」ということになったのでしたが、今後また用語懇談会でも議題に挙げたいと思います。
2008/7/7
(追記)

『広辞苑』第6版に載ったからかどうかは知りませんが、7月7日の毎日新聞のメディア欄に、俗な意味での「ゲキを飛ばす」が出てきました。
『「報道機関なら、不祥事をみずから検証する番組を作ればいい」。今年3月、NHKの労組、日本放送労働組合(日放労)取材の勉強会で、「サンデープロジェクト」の司会で知られる田原総一郎氏が檄(げき)を飛ばした。』
というものです。この「檄」は、
「叱咤激励」
のような感じで使われているように見えます。
2008/7/7
(追記2)

読売新聞の関根健一さんから、
「『広辞苑』は、すでに第4版から「また、元気のない者に刺激を与えて活気づける」と載せている。今回第6版で、『俗に』としたのは、むしろこの使い方が、放送分科会の冊子をはじめ、誤用と指摘されることが多くなったのを受けての『保守回帰』ではないだろうか。」
というご指摘をいただきました。
また、NHKの原田邦博さんからは、
「『檄』については、2000年にNHK文化研究所が行った調査で、年齢に関係なく90%の人が、新しい(?)用法に違和感を持っていなかった。ただマスコミ(特に放送)では、『はっぱをかける』『活を入れる』などに言い換えるべきだろう。」
というメールをいただきました。
朝日新聞の福田 亮さんからは、
「『げきをとばす』の俗用法は、『至上命題』と並んで『三大俗用』と呼んでいるほどの頻度で、『広辞苑』の改訂前から使われている。『激』にはしないで、できたらカタカナでも書いてほしいと思っている。私の語感では『伝令に持たせて、前線に伝える』文書というのとは、ちょっと違う。一揆とか反乱を、各地の勢力に『こういう趣旨でやろう!』と呼びかけるために『とばす』文書というイメージ。それから、聴衆に広く自分の主張を述べる行為も当てはまるように思う。」
というご意見をいただきました。ありがとうございます。

(追記3)

海堂 尊の『ひかりの剣』(文藝春秋:2008、8、10)の中に「檄を飛ばす」2か所、出てきました。記しておきます。
「絶体絶命の窮地から、たったひとことの檄を飛ばして大逆転に導いた張本人。その撃破、さまざまなバリエーションとして後輩に伝えられ」(35ページ)
「後輩には医鷲旗を奪還せよ、と檄を飛ばしておいて、」(267ページ)
2008/11/11
スープのさめない距離