◆ことばの話3375「エスキモーかイヌイットか」

9月4日の「情報ライブミヤネ屋」の「アサ漬け」のコーナーで、アメリカ共和党のペイリン副大統領候補(アラスカ州知事)の夫が、
「エスキモー出身」
という表現がありました。「エスキモー」は、読売テレビの用語ガイドラインによると、
「一般的にはロシアのチュトコ半島からアラスカ、カナダ、グリーンランドまでのツンドラ地域にすむ人たちの総称であるが『生肉を食う人』の意味もある。特にカナダでは差別的な言葉とされる」
として、「カナダでのエスキモー」の言い換え語として、
「イヌイット」(=「人間」の意味)
が挙げられています。しかし、ロシアでは「エスキモー」と自称しているので、使用はOK。また、全体を指しての総称としては他に言い方がないために、
「エスキモーも許容範囲」
となっています。が、
「安易な使用は慎むこと」
と最後にありますので、「夫がエスキモー出身」という情報自体が必要かどうか、そのあたりを考える必要はあるでしょう。
なお、辞書を引くと、「アラスカ」ではどう呼ばれているかと言うと、
「イヌピアック」(北アラスカ)
「ユピック」(西南アラスカ
(その民族は)自称しているそうです。(私は初めて聞いた呼び方ですが・・・)
しかし、このアラスカでの呼び方を使っても、視聴者には意味が通じないでしょうね。そういう意味では、初めて「イヌイット」という呼び方を聞いた時も、隣にいたイヌイ君と顔を見合わせて、
「そりゃ、通じないだろ」
と思ったものでしたが、いまは随分通じるようになってきたと思います。それでも「エスキモー」の方が、一般にはよく通じると思いますが。
もしかしたら「ユピック」「イヌピアック」という呼び方も、20年後ぐらいには定着するかもしれません・・・
2008/9/10


◆ことばの話3374「卒業と降板と勇退」

2006年版の『現代用語の基礎知識』「卒業」という項目で、こう書きました。
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「卒業」
テレビ番組で、「○○さんは、今日でこの番組を”卒業”することになりました」のように「降板」をオブラートに包んだ婉曲表現・言い換え語として用いられる。たいていの場合視聴率不振の番組のプロデューサーが「てこ入れ」のために行う方策の一つ。表面上、手っ取り早く「何か対策を立てた」というエクスキューズになるからである。
降板の理由が出演者側にある場合は、出演者へ配慮するケースにのみ「卒業」を使うが、プロデューサー側に原因がある場合には、出演者へ対する申し訳なさから、つい「卒業」という言葉を使ってしまうのではないか。「降板」だと「志し半ばにして無念・・・」というマイナス・イメージがあるが、「卒業」となると「やるべきことはやった。次のステップに進むべき時が来た」というプラス・イメージがある。しかしいずれの場合にも「卒業」後に新たな「入学」「就職」先は、特に保証されているわけではない。
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2008年8月19日のスポーツ紙各紙
に、読売テレビの番組『なるトモ!』の司会を担当している陣内智則さんが9月で番組司会を降りることになったという記事が出ていました。その記事の見出しの表記が、2種類に分かれていました。
「卒業」=デイリー、スポーツ報知、日刊スポーツ
「降板」=スポーツニッポン、サンケイスポーツ
記事でみると、「降板」は、やはりきつい印象がありますね。
また、2008年9月10日のスポーツ紙各紙に、今度はテレビ朝日の「報道ステーション」のご意見番(解説委員)である朝日新聞編集委員の加藤千洋氏(60)が、10月2日の放送を最後に交代するという記事が出ていました。その際の表現は各紙、
「勇退」
でした。「勇退」は、対象の人が、ある程度の年齢の方でないと使えない感じがしました。「役員勇退」など、余力を残して退く感じですかね。
2008/9/10


◆ことばの話3373「ロシア人力士の名前」

大相撲の大麻問題で、解雇されたロシア人力士たちの本名がスポーツ紙に載っていました。
若ノ鵬=ガグロエフ・ソスラン
露鵬=ボラーゾフ・ソスラン・フェーリクソヴィッチ
白露山=ボラーゾフ・バドラズ・フェーリクソヴィッチ
露鵬(兄)と白露山(弟)の兄弟は、ロシアのウラジカフカス地方出身だそうですが、この本名を見てまず思ったのは、
「露鵬のミドルネームと若ノ鵬のファーストネームが同じ『ソスラン』」
ということです。次に、
「露鵬と白露山の兄弟の名前で違うのは、真ん中のミドルネームの部分(ソスランとバドラズ)。ということはミドルネームと思われるこの部分がファーストネームなのではないか?」
ということでした。ロシア語に詳しい同期のH君に聞いてみると、
「最初の『ボラーゾフ』というのが苗字で、最後の『フェーリクソヴィッチ』というのが父の名前。真ん中のが個人の名前、つまりいわゆる『ファーストネーム』」
とのこと。だとすると、
「若ノ鵬の『ガグロエフ・ソスラン』はどうなるの?『ソスラン』が『一郎』みたいに『個人の名前』と考えていいの?父の名前は?」
と聞くと、
「『ソスラン』が個人の名前だろうね。おそらく、父の名前が本当は後ろにあるんじゃない?省略されてるんじゃない?」
という話でした。
2008/9/9
(追記)
ロシア語に詳しい同期のH君の推測が当たっていました。元・若ノ鵬の本名は、
「ガグロエフ・ソスラン・アレクサンドルヴィチ」
と、最後に「アレクサンドルヴィッチ」が付くとのことです。
2008/9/18


◆ことばの話3372「勝負スーツ」

2008年9月9日の日刊スポーツに、自民党総裁選に名乗りを上げた小池百合子・元防衛大臣の記事が載っていました。黒いスーツを身にまとった小池元大臣の記事の見出しにあった言葉は、
「勝負スーツ」
でした。「勝負服」ではなく。Google検索(9月9日)では、
「勝負スーツ」=   6540
「勝負服」  =1320000
で、「勝負服」の圧勝でした。ちなみにどういうところで「勝負スーツ」が使われているかと言うと、
「学会の発表」「面接」「大事な会議」「仕事帰りにデートする日」「彼のご両親に会う日」
など、男女ともにありそうです。またその具体的には、
「黒いタイトスカートのスーツ」「オーダーメイドのスーツ」「10万円以上のスーツ」
などが挙がっていました。
「平成ことば事情600勝負服」もお読みください。
2008/9/9


◆ことばの話3371「インドのメダル数」

北京オリンピックが終わった翌日、昼食にインド人が経営するカレー屋さんで、カレーを食べていて、ふと思ったのは、
「主催国の中国は、ものすごくたくさんメダルを取ったけど(金51個、銀21個、銅28個の計99個)、やっぱり10億人もいれば、このぐらい取るよな・・・ところでもう一つの大国(人口が多いという意味での)インドは、一体、何個メダルを取ったのだろうか?」
ということでした。そこで調べてみたら・・・
「金」=1(射撃男子エアライフル)
「銅」=2(レスリング、ボクシング)
3でした。プロレスラーの「タイガー・ジェット・シン」のイメージで、
「レスリングはメダル取ってるかな?」
とは思いましたが、金を取ったのは「エアライフル」とは、思いもしませんでした。
で、3個か。インドも、もしオリンピックに力を入れてきたら、たくさん取るんだろうなあ。
ところで、「メダル3個」というのは「インド史上最高」なんだそうで、
「インド中が大歓喜の嵐に包まれ、活気づいている」
と報じているサイトもありました。インドではこれまで、
「1952年のヘルシンキ大会でホッケーチームが獲得した金と、レスリングのジャタブ選手が獲得した銅の合計2個が、五輪メダルの最高獲得数」
で、この記録が56年ぶりに塗り替えられたのだそうです。なおインドの鉄道省金メダルを取った射撃男子エアライフルのアブナビ・ビンドラ選手に対して、
「生涯鉄道1等車両乗り放題」
を与えたそうです。インドって鉄道王国でもあるんですよね。
2008/9/8
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