◆ことばの話3365「ナンバーワンの表記」

「情報ライブミヤネ屋」のスタッフのKさんから「ナンバーワン」の表記について質問を受けました。
「No.1」「NO.1」「No1」「NO1」
のいずれが正解か?ということです。
うーん、難しいですね。もともとは「省略語」なので「.」を付けて「No.1」が正しいと思うのですが、見出しや字幕スーパーなどの中で「.」が省略されているケース(もう既に「省略語」ではなく「一語」として認識されている場合にはありうる)もあるでしょう。
なぜ「ナンバー(number)」なのに省略形が「Nu.」ではなく「No.」なのか?という点については、 『新明解国語辞典』によると、ラテン語の、
Numero」(=番号で言えば)
の略だとか書れています。その最初の「N」と最後の「o」を取ったのです。(ちなみにスペイン語でも「数字」は「Numero(ヌーメロ)」です。)またフランス語では、
「ノンブル(nombre)」
と言い、本の「ページ数」のことを、その筋の人(出版社など)は「ノンブル」と言うのを聞いたことがあります。
共同通信社の『記者ハンドブック』では、そういった略語形は使わずに、
「ナンバーワン」
カタカナ書きすることになっていて、これが「2、3・・」と続く時は、
「ナンバー2」「ナンバー3」
とすると書いてあります。『広辞苑』(第6版)の表記は、
「No.1」
「.」が入って、「N」は大文字、「o」は小文字です。
『三省堂国語辞典』も「ナンバー」は、
「略してNo.と書く」
と記されています。『新潮現代国語辞典』には、
「No.などとも書く」
とあります。こうやって見てくると、やはり「No.1」が正式のようです。
ついでにKさんから、
「ニューヨークを略す時も『.』を入れて『N.Y.』とするのか?」
という質問が出ましたが、これは『オックスフォード現代英英辞典』によると、
「『NY』で良い」
ようです。
2008/8/28


◆ことばの話3364「生死の淵か?境か?」

8月25日の「情報ライブミヤネ屋」で紹介した全盲の高校生演歌歌手の原稿に、
「生死のふちをさまよい」
とありました。それをKプロデューサーが、
「生死の境をさまよい」
というふうにチェックして修正したのですが、あとで考えてみると、どちらもあるような気がしてきました。この場合の「ふち」は「淵」です。「縁」ではありません。
Google検索では(8月25日)、
「生死の淵」=       28110
「生死の境」=       117000
「生死の淵をさまよう」= 10500
「生死の境をさまよう」= 42300
で、「境」が優勢ではありますが、「淵」も相当数あるというのが現状でした。
どちらもまだ、経験したくありませんが・・・。
2008/8/28


◆ことばの話3363「クレームは強い?激しい?強硬な?」

「情報ライブミヤネ屋」のSプロデューサーから、
「道浦さん、『クレーム』は『強いクレーム』ですかね?それとも『激しいクレーム』 ですかね?」
いくらぼくが、よくクレームをつけたりするからと言って、そのあたりはわからないなあ。言葉のつながりに関して載っている『日本語コロケーション辞典』にも、「クレーム」は載っていませんでした。そこでいつものようにGoogle検索(8月28日)。
「強いクレーム」=  1980
「激しいクレーム」= 2290
あまり件数は変わりませんね。同じくらい。そのほかにも「強硬な」「厳しい」というクレームもあるかも。
「強硬なクレーム」= 1200
「厳しいクレーム」=  1940
うーん、どれも似たり寄ったりですね。そこでSプロデューサーが、
「『激しくクレームする』ってのは、どうですかね?」
と言ってきたので、
「『クレームする』は、まだ『ない』だろ、なんかヘンだよ」
と言いながら検索してみたら、なんと、
「クレームする」= 45800
も出てきてしまいました。えー!「クレームする」?馴染まんよなあ。そんなの使ったらクレームつけちゃうゾ。お。「クレームをつける」があるな。
「クレームをつける」= 23万0000
ね!これが一番しっくり来ますよね。ということで、
「激しくクレームをつける」
が、「一番落ち着く表現」ということになりました。
で、これ、何に使う表現なの?S君???
2008/8/28


◆ことばの話3362「戦うか?闘うか?」

『情報ライブミヤネ屋』のスタッフが、パネルの文字の確認をしています。北京五輪女子サッカー「なでしこジャパン」の3位決定戦を報じるものです。そこには
「激闘」
という文字と、
「最後の戦い」
と書かれていました。それを見たスタッフのW君が、
「あれ?『激闘』で『闘』を使っているんだったら、『たたかい』は『戦い』じゃなくて『闘い』じゃないのか????」
それを聞いた私は、早速『新聞用語集2007年版』を開きました。漢字の使い分けについて書かれているからです。そこには具体的事例として、
「戦う」=[戦争・勝負・競技、競争相手と優劣を争う]意見を戦わせる、強豪校と互角に戦う、源平の戦い、言論の戦い、告示前の戦い、投手と打者の戦い
「闘う」=[闘争・格闘、利害・主張の対立で争う、困難などに打ち勝とうと努める]基地返還の闘い、自然との闘い、精神と肉体との闘い、病魔との闘い、暴漢と闘う、要求を闘い取る、労使の闘い
と書かれていました。
「じゃあ、どっちなんでしょう?」
そう聞かれた私は、
「きっと勝負がかかっているか“たたかい”は『戦い』、その『戦い』の中での内容に関するものは『闘い』という使い分けじゃないのかな?」
と答えたところ、納得してもらえました。
結論から言うと、五輪での最後の試合である3位決定戦は「戦い」で、その中での「たたかいの内容」に関しては「激闘」のように「闘い」を使うと。この場合「激闘」「最後の戦い」は両立するということです。
類似語としては、
「激戦」
がありますね。
「激闘」を繰り広げた「戦い」=「激戦」
ということでしょうね。
2008/8/22


◆ことばの話3361「ベタホメか?ベタボメか?」

8月7日の「情報ライブミヤネ屋」で、ハリウッド女優のキャメロン・ディアスさんが、宮根誠司さんのことを・・・
「ベタぼめ」
と原稿にありました。しかし私は、
「ベタほめ」
濁らない方がいいと思いました。理由は、「ほめ(る)」という「プラス評価の言葉」が複合語になった場合には、「ほめ」と清音のままで、連濁しない方がきれいだと思うからです。
その後「日刊ゲンダイ」(8月21日付)で、マラドーナの娘婿のFWアグエロ選手が、北京五輪サッカー準決勝のブラジル戦で3ー0の勝った際に、3点のうちの2点をアグエロ選手が取った記事の中に、
『「すぐにA代表に入れるべき」とベタボメするようになった』
「ベタボメ」が出てきました。世間では「ベタボメ」と濁るのも、結構使われているみたいですね。
Google検索では(8月21日調べ)、
「ベタホメ」=  6470
「ベタボメ」=  46200
「べたほめ」=  8920
「べたぼめ」=  9380
でした。
ありゃ、カタカナでは、濁った「ベタボメ」が一番多いですね。平仮名は拮抗しています!できたら濁らない方が好きなんですがねえ・・・でも、「名セリフ」は濁らないで下さいね。
2008/8/28
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スープのさめない距離