スープのさめない距離



◆ことばの話3340「犠牲者という表現」

7月28日、神戸市の集中豪雨で、都賀(とが)川の親水公園で遊んでいた人など、子どもを含む5人が濁流に流されて死亡する事故が起きました。
それを伝えるニュースの中で、
「5人が犠牲となりました。」
という表現が気にかかりました。何気ない表現ですが、「犠牲」とは何の犠牲なのでしょうか?これは比喩表現ですよね。素直に、
「5人が亡くなりました」
の方がいいのではないか?と、ふと思ったのです。いかがでしょうか?
2008/7/30


◆ことばの話3339「平和宣言の表外字」

8月6日、広島の「平和宣言」の全文が新聞に掲載されていました。その中の表外字は、以下の9語でした。
「脳裡(のうり)、蘇(よみがえ)る、苛(さいな)む、未(いま)だ、全貌(ぜんぼう)、全(すべ)て、遵守(じゅんしゅ)、御霊(みたま)、捧(ささ)げ」
そして福田首相のあいさつの中の表外字は以下の6語でした。
「御霊(みたま)、捧(ささ)げ、廃墟(はいきょ)、賜(たまもの)、途(みち)、ご冥福(めいふく)」
両方に共通しているのは、
「御霊、捧げ」
の2語です。
また8月9日、長崎の原爆祈念式の「長崎平和宣言」での表外字は4語
「廃墟(はいきょ)、亡骸(なきがら)、真摯(しんし)、御霊(みたま)」
そして福田首相あいさつの表外字は6語
「御霊(みたま)、捧(ささ)げ、賑(にぎ)わう、塞(ふさ)ぎ、途(みち)、冥福(めいふく)」
福田首相が広島・長崎でともに使っているのは、
「御霊、捧げ、途、冥福」
4語でした。
2008/8/11
(追記)
ちょっとあせって書いて、表現が不十分でした。
「表外字」は「常用漢字表に載っていない漢字」ですが、「全て」の「全」は「表内字(=常用漢字)」ですが、訓読み(読み方)に「すべ」というのがないので、これは、
「表外訓」
です。「途」も「表内字」ですが、「みち」と読ませるのは「表外訓」です。また「御霊」は「御」も「霊」も「表内字」ですが、「御」の表内訓は「おん」「ギョ」「ゴ」しかないために、「み」と読ませるのが「表外訓」ということですね。「霊」を「たま」と読ませるのは「表内訓」です。
また、「遵守」の「遵」は、実は「表内字」なのですが、日本新聞協会が「常用漢字でも使わない」と決めている11字(謁、虞、箇、且、遵、但、脹、朕、附、又、濫)のうちの1字です。
NHKの原田邦博さん、ご指摘ありがとうございました。
2008/8/12


◆ことばの話3338「トリビュート・アルバム」

7月30日の「ミヤネ屋」の芸能コーナーで、去年亡くなった作詞家の阿久 悠さんの、
「トリビュート・アルバム」
が出たという話題をご紹介しました。阿久 悠・作詞で一世を風靡した曲を、ヒットさせた歌手ではなく、現在の別のアーティストが歌うという形のアルバムです。
何気なく聞いていたのですが、よく考えるとこの「トリビュート」って何 ?
「貢献」
とかなんとかそんな意味を、はるか昔に受験英語で勉強したような気がするけど・・・。
改めて辞書を引いてみたら、
tribute」=(1)感謝(賞賛・尊敬)の印、(・・・への)ささげ物、記念品、賛辞
あ、これだ!ということで、以下5つの意味は記しませんが、そういうことだったのですね。スッキリしました。
2008/7/30


◆ことばの話3337「パン店かパン屋か」

7月30日の朝、大阪市東住吉区のベーカリーで起きた一酸化炭素中毒で、12人が被害に遭った事故。その店の呼び方、読売テレビでは、中継リポーターもニュース原稿も、
「パン屋」
でした。聞いていると、少し「俗っぽい」感じがしました。
しかしテレビ朝日は、「パン屋」の「屋」を「店」に置き換えて、
「パン店」
としていましたが、これはちょっと違和感があります。少なくとも話し言葉で「パン店」というのは聞いたことがありません。
坂キャスターによると「ベーカリーショップ」の「ショップ」を「店」に置き換えて、
「ベーカリー店」
という表現や、
「パン製造販売店」
という表現もあったそうです。確かにこの店は、他の工場で作ったパンを運んできて店で売っているのではなく、自分の店でパンを焼いて(製造して)売っているのですから、
「ベーカリー店」
という表現もいいような気がします。「パン製造販売店」も、間違いなくそうなのですが、少し硬い表現のように感じます。難しいですね。
「情報ライブミヤネ屋」のスタジオで、司会の宮根さんは、
「パン屋さん」
「さん付け」で呼んでいましたが、スタジオのフリートークでは「パン屋さん」がふさわしいと思います。
新聞各紙、7月30日夕刊は、読売・朝日・毎日・産経・日経の5紙はすべて、
「パン店」
でした。夜、テレビ朝日の「報道ステーション」では、ナレーションは、
「パン製造販売店」
とアナウンサーが原稿を読み、リポーターは、
「パン屋さん」
と言い、スーパーは、
「パン店」
でした。たしかに「パン店」は書き言葉としては収まりがいいので、この組み合わせは、なかなかいいのではないかと思います。
2008/7/30


◆ことばの話3336「新明解の老人語」


2004年の11月に出た『新
明解国語辞典』の第6版。出てすぐに買いました。そしていつものように「恋愛」の語釈を見ると、やはりちょっと変っていました。さすが新解さん。
それはさておき、2005年2月の新聞用語懇談会・放送分科会で「発疹」の読み方について、調べたときのこと。「新明解」には以前、
「ほっしん」=「はっしんの老人語」
と出ていて、ふだん「ほっしん」と言っていた私は、
「老人語とはなんじゃ!」
と思って、それ以来「ほっしん」と「老人語」には注意していました。そこで、さっそく「発疹」の読み方を第6版で見てみると、
「ほっしん」=「はっしんの古風な表現」
となっているではありませんか!
「え?老人語じゃない?古風な表現って何?より古くなったってこと?」
と思ってこの際だから全部調べてみよう!ということになって、2か月かけて新明解の1620ページ全部を読破、「老人語」と「古風な表現」をピックアップしてみました。
・・・・・・それからあっという間に3年半。書きかけてこれ、置きっぱなし。というのも調べたノートが、1年以上行方不明になっていたのです。
ようやくでてきたので、 ちょっと書いておこうかな、と。
私がピックアップした「老人語」は200語でした。以下にすべて書き出します。
*「老人語」=200語
「あいじゃく(愛着)」=「あいちゃく」の老人語
「あきゅうど(商人)」=「あきんど」の老人語
「あきらめる(明らめる)」=「明らかにする(さとる)」の老人語
「あさゆ(朝湯)」=「朝ぶろ」の老人語
「あつかい(扱い)」=「仲裁」の意の老人語。(例)けんかのあつかい
「たしゅつ(他出)」=「外出」の老人語
「あとしき(跡式)」=「家督(相続)」の意の老人語
「あまもよい(雨催い)」=「あまもよう」の意の老人語
「あんき(安気)」=「安心。気楽」の意の老人語
「いかつい」=「ごっつい」の意の老人語
「いきしな(行きしな)」=「ゆきがけ」の意の老人語
「いける(生ける)」=「生かす」の意の 老人語。(例)「生けておけぬ奴(ヤツ)」
「いちごん(一言)」=「いちげん」の老人語
「いちじょう(一定)」=「きっと」の意の老人語
「いちどきに(一時に)」=「一度に」の意の老人語
「いっかど(一廉)」=「ひとかど」の老人語
「いっけ(一家)」=「いっか」の老人語(例)「一国一家の首相たるもの(=たとえその器量でなくとも、現実に総理尾大臣として内閣を統率する人)」
「いぬい(乾)」=(戊亥の意)「北西」の老人語
「いのふ(胃の腑)」=「胃袋」の意の老人語
「いまじぶん(今時分)」=「今ごろ」の意の老人語
「いまもって(今以て)」=「いまだに」の意の老人語
「うしとら(艮)」=(丑寅(ウシトラ)の意)「北東」の意の老人語。鬼門にあたる。
「おぼえる(覚える)」=「思われる」意の老人語(例)お言葉とも覚えませぬ
「えず(絵図)」=「画像」の意の老人語
「えつねん(越年)」=「おつねん」は老人語
「えよう(栄耀)」=「えいよう」の老人語
「えりにえって(選りに選って)」=「よりによって」の老人語
「えんじゃ(縁者)」=「親類」の意の老人語
「おおとし(大年)」=「おおみそか」の老人語
「おうふう(大風)」=「おうへい」の意の老人語
「おたから(御宝)」=老人語ではお金を指す
「おなご(女子)」=「女の子供」の意の老人語
「おなじい」=「同じ」の老人語
「かいぶん(回文)」=(二)「回覧状」の意の老人語
「かくし(隠し)」=(二)「ポケット」の意の老人語(例)内隠し
「かくらん(霍乱)」=「日射病・急性腸カタルなど、夏引き起こしやすい急逝の症状」の意の老人語(例)鬼の霍乱
「かけ(欠け)」=(一)「かけら」の老人語(例)「窓ガラスの欠け」「一かけのドロのかたまり」
「かげごと(陰言)」=「陰口」の意の老人語
「かけはし(架け橋)」=(三)(「なかだち」の意の老人語に基づく)橋渡し的存在。(例)「西洋と東洋の架け橋であったシルクロード」「日本と朝鮮半島のかけはしとなった古代  対馬」「平和への架け橋」「スポーツが豊かな人生へのかけはしに、の願いを込めたシンポジウム」
「かさけ(瘡気)」=「梅毒の気味」意の老人語(例)うぬぼれと瘡気の無い者は無い
「かしま(貸(し)間)」=「貸室」の意の老人語
「かぜここち(風邪心地)」=「かぜけ」の意の老人語
「かたかた(片片)」=「かたほう」の意の老人語
「かたじん(堅人)」=「堅物(かたぶつ)」の意の老人語
「かちゅう(家中)」=(一)「一緒に寝起きしている家族」の意の老人語
「かっけい(活計)」=「生計」の意の老人語
「かつどう(活動)」=【二】(一)(活動写真)「映画」の意の老人語(例)「活動屋」「活動小屋」(二)(活動写真館)「映画館」の意の老人語
「かなやま(金山)」=「鉱山」の意の老人語
「かね」=「おはぐろ」の意の老人語
「がまん(我慢)」=(一)少しくらい自説に無理が有るとわかっていても意地で主張を通す様子。【老人語】
「かよう(斯様)」=「このよう」の意の老人語
「がんたて(願立て)」=「願かけ」の意の老人語
「きがふれる(気がふれる)」=「気が狂う」の老人語
「ぎこちない」=(「ぎごちない」は老人語)
「きずい(気随)」=「気まま」の老人語。(例)「気随気まま」
「きすぐ(気直ぐ)」=「まじめで、言行を飾らない」の意の老人語
「きっそう(吉左右)」=(一)「吉報」の意の老人語
「きなか」=[もと、一寸(いっすん)を意味した「寸(き)」の半(なかば)の意から転じて、半文(はんもん)の意]「わずかなもの」の意の老人語(例)「一文きなか」
「きびしょ」=「急須」の意の老人語
「ギヤマン」=(=オランダ語diamantを江戸時代の人が耳で聞いたままの形。硝子切断用のダイヤモンドの意)「カットグラス」の意の老人語。ギヤマン
「ぎょくがん(玉顔)」=「天皇の顔色」の意の老人語
「きるい(着類)」=「衣類」の意の老人語
「きんじょがっぺき(近所合壁)」=「近所の家」の意の老人語
「くぜつ(口舌)」=「(男女間の)言い争い」の意の老人語
「ぐんし(軍師)」=「参謀」の意の老人語(相手に勝つために計略・手段をもっぱら考える人の意にも使われる。)
「けいかい(境界)」=「土地のさかい」の意の老人語。きょうかい
「けっく(結句)」=「結局」の意の老人語
「ケビン」=「キャビン」の老人語
「けわい(気わい)」=「気配」の老人語
「げんとう(幻灯)」=スライドの老人語
「けんもん(見聞)」=「けんぶん」の老人語
「ごいっしん(御一新)」=「明治維新」の老人語
「こうか(後架)」=(もと禅宗で洗面所の意)「便所」の意の老人語
「こうじき(高直)」=「高価」の意の老人語
「こうしつ(後室)」=「未亡人」の意の老人語
「こうせん(工銭)」=「工賃」の意の老人語
「ごうのもの(剛の者)」=「豪傑」の意の老人語
「こうべ」=「くびから上の部分」の意の老人語
「こうみょう(高名)」=「こうめい(高名)」・手柄の意の老人語
「こぐすり(粉薬)」=「こなぐすり」の老人語
「ごくや(獄屋)」=「牢獄」の意の老人語
「ござんす」=「ございます」の意の老人語【高年の女性や商人、またやくざの間でも用いられる。】
「こしゅう(固執)」=「こしつ」の老人語
「こしおび(腰帯)」=「腰ひも」の意の老人語
「こしゅ(故主)」=「旧主」の意の老人語
「こつねん(忽然)」=「こつぜん」の意の老人語
「ごにち(後日)」=「ごじつ」の意の老人語
「こむら(腓)」=「ふくらはぎ」の意の老人語
「こやつ(此奴)」=「こいつ」の意の老人語
「こよう(小用)」=(一)ちょっとした用事(二)小便「――を足す」「――に立つ」(一、二とも老人語的)
「こればかり」=(二)「これと言えるほどの」の意の老人語。「これっぱかし」は口頭語的表現。(例)「こればかりの事で弱音をはくな」
「ごろうじろ(御覧じろ)」=「御覧なさい」の意の老人語
「ごんすけ(権助)」=「下男」の意の老人語
「こんち(根治)」=「こんじ(根治)」の老人語
「こんぼう(懇望)」=「こんもう」の老人語
「さい(妻)」=「家内」の老人語
「ざいかた(在方)」=「いなか」の意の老人語
「ざいしゅく(在宿)」=「在宅」の意の老人語
「さくじば(作事場)」=「工事現場」の意の老人語
「さしあい(差(し)合(い))」=「さしつかえ」の意の老人語
「さっき(数奇)」=「すうき」の老人語
「さっしゃる」=(二)「お(ご)・・・なさる」の意の老人語(例)「見さっしゃる」「やめさっしゃい」
「されば(然れば)」=(二)それでは。さらば。(例)「されば出かけよう」(三)さて。(例)「されば天保十二年」:(二)(三)は老人語
「じかた(地方)」=(一)「いなか」の意の老人語
「じきだん(直談)」=「じか談判」の意の老人語
「じじい」=(一)祖父の老人語
「したためる(認める)」=(一)「食事をする」意の老人語
「じっしょう(実正)」=「確か・本当」の意の老人語
「じってい(実体)」=「実直」の意の老人語
「じつもって(実以って)」=「実に」の意の老人語
「じぶくる」=「だだをこねる・理屈をこね回す」意の老人語
「じまま(自儘)」=「気まま」の意の老人語
「しむけ(仕向け)」=(二)「待遇」の意の老人語
「しゃく(癪)」(一)腹痛・胃けいれんなどのために起こる胸部・腹部の劇痛で、中高年の女性に多い【老人語】
「しゃくせん(借銭)」=「借金」の意の老人語
「しゃけい(舎兄)」=「自分の兄」の意の老人語。家兄。(もと、「しゃきょう」と言った。⇔舎弟
「しゃべつ(差別)」=「さべつ」の老人語
「しゅう(主)」=「主人・主君」の意の老人語(例)「主(しゅう)思い」
「しゅくりょう(宿料)」=「やどちん」の意の老人語
「じょう(定)」=(一)「その通り」の意の老人語(例)「知らぬが定か」(知らないと言うことが本当か)「案の定」
「じょうざ(上座)」=「かみざ」の老人語⇔「下座(げざ)」
「しょうし(生死)」=「せいし」の老人語
「じょうしょ(情緒)」=「じょうちょ」の老人語
「しょうねん(生年)」=「とし(二)」の意の老人語
「じょうぶくろ(状袋)」=「封筒」の意の老人語
「しょけん(書見)」=「読書」の意の老人語
「じょっちゃん(嬢ちゃん)」=「お嬢さん」の意の老人語
「しりびと(知り人)」=「知合い」の意の老人語
「しれごと(痴れ言)」=「ばかげた言葉」の意の老人語
「しんぷ(親父)」=「ちち」の意の老人語(例)「ご親父(しんぷ)」
「しんみょう(身命)」=「しんめい」の老人語
「しんや(新家)」=「新宅」の意の老人語
「すいき(水気)」=(二)「水腫(すいしゅ)」の意の老人語
「ずえ(図絵)」=「絵・図面」の意の老人語
「すえしじゅう(末始終)」=「のちのち(まで)」の意の老人語。将来ずっと(例)「末始終しっかり頼みますぞ」
「すえずえ(末々)」=「のちのち」の意の老人語
「すさる(退る)」=「しりぞく」の意の老人語
「すみがね(墨金)」=「曲尺(かなじゃく)」の意の老人語
「ずんと」=「ずっと」の老人語
「せんど(先度)」=「さきごろ」の意の老人語
「そにん(訴人)」=【もと、告訴人・原告の意】「訴え出る」意の老人語
「そのぎ(其の儀)」=「その事」の意の老人語(例)「其の儀ならば」
「そらあい(空合)」=「空模様」の意の老人語<物事の成行きの意にも用いられる>
(例)「曇った空合」
「そらんじる(諳んじる)」=(一)「暗誦する」意の老人語
「たしゅつ(他出)」=「外出」の意の老人語
「たつみ(巽)」=南東の意の老人語
「たんさつ(探察)」=「探索」の意の老人語
「だんだん(段段)」=(二)「あの事やこの事」の意の老人語(例)「段段(=いろいろ)のおもてなし、痛み入ります」「段段(=あれこれ)考えてようやく分かってきた」
「ちさん(遅参)」=「遅刻」の意の老人語
「ちゃばなし(茶話)」=「茶のみ話」の意の老人語
「ちゅうき(中気)」=「中風(ちゅうぶう)」の老人語(例)「中気の親分役で舞台に立つ」
「ちゅうじき(昼食)」=「ひるめし」の意の老人語。「中食」とも書く。
「つけふだ(付け札)」=(二)「付箋」の意の老人語
「つみする(罪する)」=「罰する」の意の老人語。罪す
「てりあめ(照雨)」=「天気雨」の意の老人語
「てんがんすい(点眼水)」=「目薬」の意の老人語
「でんじ(田地)」=「でんち」の老人語
「どうみょう(同名)」=「同じみょうじ」の意の老人語
「とくぶん(得分)」=(二)「もうけ」の意の老人語
「としばい(年配)」=「ねんぱい」の意の老人語
「とど」=(二)「結局」の意の老人語→「とどのつまり」
「とりあげばば(取(り)上(げ)婆)」=「産婆」の意の老人語
「ないぎ(内儀)」=「商家の主婦」の意の老人語(例)「呉服問屋の内儀に納まる」「お内儀」
「なにさま(何様)」(二)「なにしろ」の意の老人語
「ぬ」=「ない」の老人語・方言形、もしくは改まった表現として用いられる(例)「あらぬ方(かた)」「長からぬ命」「まだ見ぬ国」「知らぬが仏」「なければならぬ」
「ね(値)」=「値段の意の老人語
「ばつえい(末裔)」=「まつえい」の老人語
「ばっし(末子)」=「まっし」の老人語
「ばばあ」=「祖母」の老人語
「ばんがた(晩方)」=「夕方」の意の老人語
「びけい(美形)」=<一>(二)美人、特に美人芸者の意の老人語(例)「美形をそろえる」
「ふうじゃ(風邪)」=「かぜ(ひき)」の意の老人語
「ふち(不治)」=「ふじ」の老人語
「べつぎ(別儀)」=「ほかの事」の意の老人語(例)「別儀ではないか」
「へんがえ(変換)」=「変改(へんかい)」の意の老人語
「へんしゅう(偏執)」=「へんしつ」の老人語
「へんめい(変名)」=[老人語は「へんみょう」]
「ほうがんびいき(判官贔屓)」=「はんがんびいき」の老人語
「ほぞ(臍)」=「へそ」の老人語(例)「ほぞを固める(=決心する)」「ほぞをかむ(=後悔する)
「ほっしゅ(法主)」=「ほうしゅ」(二)の老人語
「ほんに(本に)」=(関西方言、老人語)どんな点から見ても疑い無く、そうだと判断される様子。(例)「本にいい男だ」「本にそのとおりじゃ」
「またたく(瞬く)」=(目叩く<マタタク>)の意。(一)「まばたく」意の老人語
「みたけ(身丈)=「身長」の意の老人語
「みちなか(道中)」=(二)「目的地に行く途中」の意の老人語
「みょうと」=「めおと」の老人語・方言形
「もそっと」=「もすこし」の意の老人語(例)「もそっと前に」
「やいと」=(焼処<ヤイト>の変化)「灸(キュウ)の意の老人語
「ゆうけい(夕景)」=(一)「夕方」の意の老人後・方言形。ゆうけ
「ゆさん(遊山)」=「ピクニック」の意の老人後(例)「遊山や息抜きの旅はまったくしたことがない」
「ゆせん(湯銭)」=「入浴料金」の意の老人語
「ゆどの(湯殿)」=「ふろ場」の意の老人語
「よしなに」=「いいように・よろしく」の意の老人語(例)「よしなにお取り計らいのほどを」
「よじゅう(夜中)」=「一晩じゅう」の意の老人語
「よめじょ(嫁女)」=「よめ」の意の老人語
「らくちゃく(落着)」=(老人語は「らくじゃく」)
「りょうじ(療治)」=「治療」の意の老人語(例)「荒療治」「もみ療治」
「れんじゅう(連中)」=「れんちゅう(二)」の老人語
「ろうばしんせつ(老婆心切)」=「老婆心」の老人語
「わずらい(患(い))」=<一>「病気でぐずぐずしていること」の意の老人語(例)「長の患い」「恋煩い」

以上、200語です。この中で、「〜の意の老人語」と「〜の老人語」の違いは、
「れんじゅう(連中)」=「れんちゅう(二)」の老人語
「よめじょ(嫁女)」=「よめ」の意の老人語
で分かるように、同じ漢字で読み方だけがちょっと訛っているようなものが「〜の老人語」で、言葉自体が違うものが「〜の意の老人語」のようです。

そのほか気になったのとして「老人語的」というのがあります。まだ「老人語」にはなっていないが、限りなく近いというものでしょうか。
*「いっかな」=[もと、雅語「いかな」の強調形。つまりどんな事が有っても、の意。いつまで経っても。(老人語的)]
*「がってん(合点)」=相手の発言の趣旨を理解(して、了解の意を表明)すること。【老人語的】
「しょもう(所望)」=(して)ほしいと望むこと【老人語的】(例)「お料理の本を絵本がわりに見る五歳の長男は、私が作ったこともない料理をしばしば所望する」

この用例は、なんでだか妙に長いです。どんな「5歳の長男」なんだ!?
そして「老人語」と書かれていないけど既に「老人語」ではないか?と個人的に思ったものには、
※「きび(気味)」=「きみ」の古形・方言形(例)「きび(が)悪い」⇒老人語では?東京方言か?
※「ケット」=ブランケットの略。毛布(例)「赤ゲット」
※「ゲル」=「お金」の意の、往年の学生語
※「字消し」→老人語ではないのか?
があります。

さらに気になった表現としては、「新しい表現」として出ていたものがあります。
※「ほのお(炎)」=「火(ホ)の穂(ホ)」の意→「頬(ホオ)」・・・ほほえみ
※「ほほ(頬)」=「ほお」の新しい言い方
※「ほほじろ(頬白)」=「ほおじえお」の新しい言い方

また、「お、自慢してるなあ」と思った用例に、
※「本格的」(例)「『新明解国語辞典』は本格的な小型辞書だ』
がありました。逆に「え!そんなこと言っていいの?」という用例では、
「おそかれはやかれ(遅かれ早かれ)」=(例)「遅かれ早かれ電子辞書の時代になる」
というのもありました(これは以前、書きました)。

そして、「ほっしん(発疹)=『はっしん』の古風な表現」と同じような「古風な表現」とされたものには、
*「みずがし(水菓子)」=「果物」の意の古風な表現
がありました。そして、[高年層の用語]というのもありました。
*「めっぽうかい」」=(滅法界(口頭)「めっぽう」の強調表現[高年層の用語](例)「滅法界な事を言うものだ」「このウイスキーはブレンドされていない。こいつがまた滅法買い(に)うまい」

そもそも「古語」の定義は?と引いてみると、
「こご(古語)」=古文献に用いられ、現代語としては通用しなくなった言語。一般には、雅語・字音語・漢語を含むが、本辞典では漢語を主なる対象とした。(いわゆる「古語辞典」の古語は、古文の教科書に多く用いられる雅語で、主として近世中期までのものを指す。)→死語
とありました。

それと「旧称」となっていたけど今も普通に使われていて「旧称」ではないものに、
※「こつそしょうしょう(骨粗鬆症)」=「骨多孔症」の旧称
がありました。

3年前に、大阪外国語大学(当時。現大阪大学)の小矢野哲夫先生は、『毎日新聞』大阪本社版・2005年9月1日夕刊のコラムで、「老人語」を取り上げていました。そこには、「老人語」の、1972年の『新明解国語辞典・初版』の定義が、
「すでに青少年の常用語彙(い)の中には無いが、中年・高年の人ならば日常普通のものとして用いており、まだ文章語・古語の扱いは出来ない語」
と載っています。1981年の第3版から「文章語」が「死語」に変わっているのだそうです。そして小矢野先生が「一番驚いた」のが、「出生」という言葉。「しゅっしょう」と読むべきと信じていたが、「しゅっせい」の老人語だったと。放送局のアナウンサーは、今も「しゅっしょう」と読むように指導しています。「しゅっせい」=「出征」と間違うといけないので。
小矢野先生が拾った「老人語」は、「明らめる」(明らかにする)「活動」(映画)「せっちん」(便所)「先度」(さきごろ)「はすかい」(斜め)「夜前(やぜん)」(昨夜)「ゆきがた」(ゆくえ)「老若(ろうにゃく)」など。そして、
「高齢社会にあって、国民の4分の1が老人になる日が近い。元気のいい老人のことばが若者語を駆逐する事態が来るかもしれない。」
と結んでいました。
2008/8/11
スープのさめない距離