◆ことばの話3325「アテレコとアフレコ」

7月8日の『ミヤネ屋』で、もうすぐ公開される宮崎アニメ『崖の上のポニョ』の話題を放送しました。それは、ポニョの、
「アフレコ初公開」
という話題でした。この「アフレコ」に関して先日、『ミヤネ屋』のパネリストの一人女優のAさんが、
「あれ、アニメのは『アテレコ』じゃないの?」
とスタッフに言われたそうです。確かにアニメの登場人物の動きに「当てて」ナレーションを録音するのですから、その意味では「当てレコ」ですよね。「アフレコ」は「アフター・レコーディング」、映像を撮って編集したあとから録音する、ということですから、「アテレコ」と「アフレコ」、似ているようでちょっと違うような気もします。
ちなみに「ポニョ」のプレス・リリース(報道用資料)には、
「アフレコ」
と書かれていました。思うに、昔ある一時期に
「当てレコ」
という表現が流行ったのではないか?しかし、だんだん衰退して行き、その後広い意味での「アフレコ」が、「当てレコ」も含めて使われるようになったのではないでしょうか?
Google検索(7月8日)では、
「当てレコ」=    1860件
「アテレコ」= 25万0000件
「アフレコ」=113万0000件
でした。ウィキペディアの「アテレコ」には、
「アテレコ」=「アテレコとは映画やテレビドラマ等の映像作品に於いて、自身が直接演じないキャラクターに声を割り当てる必要がある場合に、声優や俳優がその声の部分だけを演じて録音する事を言う。「アフレコ」から派生した言葉であり、映像に台詞を割り当てる事から「アテレコ」と呼ばれる様になったとされる。海外作品の日本語吹き替え(逆に日本作品の海外版化の際もある)やアニメーション作品での声の割り当て、特撮テレビドラマ作品等でスタントマンやスーツアクターが演じた部分への声の割り当て等がこれに該当する。但し、これらの作業も全てアフレコと呼ぶ場合が多く、当の関係者もアテレコと呼ぶ事は少ない。その為、アテレコは現在認知度の低い言葉と成っており、死語と化しつつある。
とありました。ふーん、知らない間に言葉は変わってきているのだなあと実感させられる出来事ですねぇ・・・・。
2008/7/8


◆ことばの話3324「非公表」

来年から活動を無期限停止する「サザンオールスターズ」の新曲のビデオを、全国5都市の街頭ビジョンで公開した様子を、7月16日の「ミヤネ屋」でご紹介しました。その「街頭ビジョン」が、どこに「該当」するかについては、
「公開場所は、非公表」
と、最初は字幕スーパーを準備していたのですが、
「非公表」
という言葉が見慣れなかったので、
「公表せず」
にしました。「非公開」はあるが「非公表」はあまり耳にしたことがないです、私は。「未公開」「未公表」もありますが。そこで「公表せず」としたのです。
ところが!家に帰って読んだマンガ雑誌『ビッグコミック』(2008年8月17日増刊号)の表紙のエド・はるみさんの似顔絵の説明書きに、
「(年齢非公表)」
とあった。「非公表」という言葉、使われているのでしょうか?Google検索(7月17日)してみると、
「非公表」 = 23万2000件
「非公開」 =1990万0000件
「公表せず」= 60万0000件

「未公開」 = 368万0000件
「未公表」 = 10万2000件
でした。「非公表」も結構使われていますね・・・。ビックリしました。
2008/7/19
(追記)
その7月19日の読売新聞夕刊に、「さかなクン」のインタビュー記事が載っていましたが、写真の下には、
「本名、年齢は非公開。」
「非公開」が使われていました。
2008/7/29


◆ことばの話3323「女社長」

7月14日の『ニュースリアルタイム』で、和歌山の旅館の女性社長が、放火を自作自演していた疑いで逮捕されたニュースを伝えていました。その中で 笛吹キャスターは、
「逮捕されたのは女社長でした」
という原稿を、CM前のQカードで読んでいました。
CM後のニュースでは、
「会社社長・三好なるみ容疑者(43)」
「経営者の女が逮捕されました」
と読み、スーパーも、
「経営者の女 逮捕」
となっていて、「女社長」という表現は出てきませんでした。最近はこの表現はあまり使われずに、
「女性社長」「女性経営者」
が使われますが、これが犯罪の容疑者になると「女性→女」となるため、
「女性社長→女社長」
になったのだと思いますが、こういう場合はあとで使ったように、
「経営者の女」
の方が、落ち着きがいいなと思いました。
2008/7/14


◆ことばの話3322「サヨナラとさいなら」

7月8日、大阪・道頓堀の大衆食堂「大阪名物くいだおれ」が、59年の歴史に幕を閉じました。翌日(9日)の新聞各紙は、この記事が満載。その中で、看板人形の「くいだおれ太郎」について記したものも多かったのですが、その中に太郎のセリフとして(?)使われていた部分に、大阪弁を使ったものとそうでないものがありました。
(スポニチ)さいなら
(日 刊)サヨナラ
(デイリー)ほな、また
(日経)さいなら
スポニチ、デイリー、日経は「さいなら」「ほな、また」というふうに大阪弁を取り入れていました。これは太郎のセリフと考えていいのではないでしょうか。それに対して日刊「サヨナラ」外国人の日本語みたい。これは客の側から言ったものか、それとも人形を外国人風にとらえてカタカナ日本語にしたのか?どちらかはわかりませんが、大阪弁の方が気が利いている気がしました。
また、新聞には、「くいだおれ」を惜しむ声ばかりではなく、やや辛口コメントも。
「閉店でこれほど名残を惜しむのなら、なくなる前に、通ってやればよかったのに」
「最後だけ、人が集まるなんて、電車の廃線の時みたい」
たしかになー、おっしゃるとおり。そのことを「ミヤネ屋」のスタッフに言うと、
「道浦さん、これは大阪が得意な『店じまい商法』ですよ。」
あ、そうか!「店じまいセール」の話は前に書きましたよね。(平成ことば事情2258「店じまい」)そうだったのか。大阪人は「店じまい」に弱いんだった。だから「毎日が店じまい」というところも。
そうすると、別にみんなも本当になくなるのを惜しんでいる、というわけでもないのかもしれませんね。
2008/7/10


◆ことばの話3321「ビール類とビール系飲料」

7月10日の夕刊各紙やテレビで、「サントリー」が「ビール・発泡酒・第3のビール」の分野で業界4位から、初めて3位になったというニュースが流れました。この「ビール・発泡酒・第3のビール」を含めた総称を何と呼ぶか?ということですが、『ミヤネ屋』のニュースでは、
「ビール類」
と原稿にあり、そう読んでいました。でも「ビール類」って、「る」が続くから、ちょっと言いにくくもあるわけですが。私のチェックした限りで新聞・他局では(7月10日)、
「ビール類」=読売新聞、産経新聞、毎日新聞・MBS、YTV
「ビール系飲料」=朝日新聞、日経新聞・NHK
でした。
「ビール」かそうでないか、また「発泡酒」かそうでないか、「第3のビール」かそうでないかで税率が変わってくるために、ここ10年ほど、業界では涙ぐましい努力が続けられてきましたが、サントリーが3位の座を占めた原因の一つには、第3のビールの値上げを他社よりも半年ほど遅らせたことも挙がっているようです。だとすると、やはり品質での競争の差はつきにくくて「価格戦争」に突入しているということもわかるわけですね。
そんな中、先日スーパーの前を通ったら、おなじみの『ジプシーキングス』の歌う『バンボレイロ』(だっけ?違ったかな?)のメロディが流れてきて、それにかぶさる男性の声のナレーションが、
「おかげさまで、10年連続発泡酒売り上げNO1」
と言っていました。それを聞いて思ったのは、
「そうか、発泡酒が出てきて、もう10年以上経つのか・・・」
という感慨でした。そりゃぁ、辞書にも載るよなあ。
2008/7/10
(追記)
7月11日の朝刊では、朝日新聞は見出しで「ビール類」として、本文では「ビール系飲料」でした。スペースの関係で文字数の制限が厳しい見出しでは文字数が少ない「ビール類」を使うなどの「使い分け」をしているのですね。つまり「意味としてはほぼ同じ」ということでしょうね。
2008/7/11
Copyright (C) YOMIURI TELECASTING CORPORATION. All rights reserved
スープのさめない距離