◆ことばの話3320「マネー難民」

少し前の新聞ですが、2008年1月6日の日本経済新聞朝刊1面の「YEN漂流 縮む日本4」で、
「78歳マネー難民」
という「難民」が出てきました。この78歳の男性は、50年以上続けてきた日本株投資をやめて持ち株をすべて売り払い、BRICsや東南アジア、東欧などの新興国中心の外貨建て投資信託を購入したというのです。つまり、
「個人マネーの海外流出」
です。また、「海外投資を楽しむ会」の創立メンバーで作家の橘玲さん(48)も、
「『国内運用は安心』という迷信は消失した」
と言っています。(この「迷信の消失」は「神話の崩壊」と同じ使われ方ですね。)
そのぐらい、海外へ投資している人が増えているという記事ですが、その影響で、香港上海銀行の本店では、2007年夏から、
「通訳付き日本人は口座開設お断り」
としているそうです。というのも、日本人ツアー客が一度に数十人もガイドに連れてこられて口座を開設するために、窓口業務に支障が出たからとか。すごいな、どうも。
どうやら、日本株投資をやめて海外の投資に走る人たちのことを、
「マネー難民」
と呼ぶようです。記事は、
「老いも若きも『マネー難民』の漂流は続く」
と結んでいます。なお、Google検索(7月10日)では、
「マネー難民」=105件
でした。一番最初に出てきたのはこの日経の記事でしたから、あまり普及している言葉ではないようですね。「平成ことば事情3099ネット難民」「平成ことば事情3140ポジション難民」もお読み下さい。「難民」という言葉、流行っているのかもしれません。


2008/7/10


◆ことばの話3319「座」

7月9日の朝刊各紙に、
「竹内さん10座目登頂」
という見出しが載りました。世界に14座ある8000メートル峰のうち、10座目にあたるガッシャーブルムII峰の登頂に、登山家の竹内洋岳(ひろたか)さん(37)が成功したというニュースです。
私が注目したのは、山を数えるのに使われた助数詞である、
「座」
です。これは高い山の場合などに使われるんでしょうね。
日本新聞協会の新聞用語懇談会放送分科会で、ここ3年がかりで作った「序数詞の数え方」によると、
『山を数えるときには、山(やま・ざん)、座、峰(ほう)、岳(がく)などを使います。「山(ざん)」は、「出羽三山」「五山の送り火」のように、名前のある個別の山を数えるときに使い、特に名前にこだわらずに数えるときは、「ひと山(やま)」や「五つの山」などのように「山(やま)」や「つ」「個」を使います。
また、登山家の間では、大きなどっしりとした山は「座」、険しい山は「峰」とも数えます。
そして「岳(がく)」についてですが、この言葉自体は「山に山が重なっている状態」のことを指します。ただ、序数詞というより、「阿蘇五岳」のように、おおむね固有名詞として使われます。ちなみに「鎌倉五山」などというときの「山」は、山そのものではなく、お寺のことを指しています。』
と記されていて、「座」は、登山家の間では、
「大きくどっしりした山」
を数える時に使われるようです。今回は、世界にたった14しかない8000メートル超えの山々ですから、当然「座」がふさわしいのでしょうね。


2008/7/10


◆ことばの話3318「海外のガソリン代」

6月に入りまたガソリン代が値上がりし、1リッター170円ぐらいになっています。(7月に入って190円が目前になって来ました。)
ひところはリッター100円を切っていたことを考えると、ものすごい値上がりです。しかし原油価格が上がっているのですから、日本だけ税金のせいでガソリン代が高い、というわけではないのですね、これが。
他の国のガソリン代の状況ですが、先週の土曜日(6月7日)にNHKの『地球ラジオ』という番組でオランダ在住の方がリポートしていましたが、それによると、オランダはレギュラーガソリン・1リッターが約260円。そして今日(6月11日)、ポルトガル在住の画家・武本比登志さんという方からの情報によると、ポルトガルも1リッターが1、5ユーロ=249円という情報が入ってきました。なんと日本よりもずっと高いじゃないですか!
アメリカは例外的に(?)安く、リッター116円ぐらい。それでも高いために、スクールバスの運行が出来にくくなり、「週休3日になる」という記事が、6月11日の産経新聞夕刊(大阪のみ夕刊発行)に載っていました。
また、「イカ漁」も重油代が高くなって休漁になるという記事が6月11日の朝刊に載っていました。重油は今でリッター100円ぐらい。これが130円になると廃業せざるを得ないとのことです。

と、ここまで書いてほったらかしになっていました。1か月も。あっという間です。
「イカ漁」に関しては、イカで有名な佐賀県・呼子ではイカ漁を続けているとのこと。7月8日の「ミヤネ屋」でご紹介しました。
また、7月10日の『夕刊フジ』の記事で、アメリカの宝くじの2等の商品が、
「ガソリン生涯無料」(ただし年間2600ドル=28万円まで)
というのが出たそうで、「ミヤネ屋」の「夕やけかわら版」でご紹介しました。アメリカでは今、ガソリンは大体1リットル116円ぐらいだそうです。
洞爺湖サミットでの合意を元に、「投機マネー」を早く排除してください!お願いします。

2008/7/10

(追記)
夏休みでニュージーランドに行ってきました。向こうではガソリンの値段は、
「1リットル=2、1ニュージーランド・ドル」
ぐらいでした。「ニュージーランド・ドル」のレートは、
「1ドル=84円〜94円」
でしたから、「1ドル=89円」で計算すると、
「1リットル=187円」
と、日本とほぼ同じぐらいだなあという感じですかね。

2008/7/29


◆ことばの話3317「署名の数え方」

7月8日、大阪・道頓堀の「くいだおれ」閉店のニュースを扱った『ミヤネ屋』の原稿で、通天閣が「くいだおれ太郎」を譲り受けたいと主張して、そのための署名をしたというくだりがありました。そこで出てきたのが、
「署名は、なんと2万1000通」
という表現。これはちょっと・・・というのは「署名」を数える助数詞は「通」ではなく、
「筆(ひつ)」
なんですね。ただ、「ひつ」は、耳で聴いてわかりにくいので、「署名の数」にするのではなく、「署名をした人の数」に原稿を変え、
「署名をした人は、なんと2万1000人」
としました。この方がわかりやすいですよね。あらためて、助数詞って難しいなあと感じました。

2008/7/8


◆ことばの話3316「オファー」

7月8日、大阪名物「くいだおれ」が閉店。看板人形の「くいだおれ太郎」も、59年というお勤めを終えて、「旅に出る」そうです。『情報ライブ・ミネヤ屋』では、その閉店の一日の模様を、中継を交えてお伝えしました。私も原稿を読んだのですが、その中で、「太郎」に対して買い取り手が殺到したという内容を示す原稿が、
「オファーが殺到」
となっていたのです。この「オファー」という外来語、まだそれほど(テレビの前のおばちゃんまで)浸透した外来語とは思えなかったので、読み原稿では、
「申し出」
としました。でも「申し入れ」の方が正しいかな?あとで『三省堂国語辞典』で「オファー」を引いたら、意味の説明の中に「申し出」とありました。よかった。
これについて、ニューススクランブルの坂キャスターに、意見を聞いたところ、
「くいだおれに関する『オファー』という表現は、産経新聞が紙面で使っているようですね。ほかに同様の表現で見かけたのは、
○引き合い○企業などからのラブコール○買い取りの申し入れ○買い取りの打診
といったところでしょうか。」

というメールが返ってきました。
そうですよね、やはり「オファー」はそぐわないよね。
そう思って報道フロアからの帰り道、『ミヤネ屋』スタッフの机の上に何気なく目をやると、なんと、
『くいだおれ太郎のつぶやき』(マガジンハウス)
という本が置いてあるではないですか!パラパラとめくっていると、46ページの見出しの文字が目に入りました。
「オファー殺到!」
なーんだ、本人が使っていたのか。太郎は「団塊の世代」だそうですが(59歳だから)、結構「オファ−」なんて外来語、使うんだねえ。


2008/7/8
(追記)
7月9日のデイリースポーツには、
「太郎“争奪戦”10億円オファーも」
とありました。
2008/7/9
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