◆ことばの話3290「圧倒的に不足」

5月14日に放送した『情報ライブ・ミヤネ屋』の中の中国・四川大地震のリポートで、読売テレビの山川記者が、
「圧倒的に物資が不足しています」
と言っていました。この「圧倒的」ですが、普通は「不足」という言葉と結びつかないのではないか?と思うのですが、結構この「圧倒的に不足」という言い方はよく耳にします。ついこのあいだも万城目学のエッセイ集『ザ・万歩計』の中の「大阪経由松山行き」を読んでいたら、
「大阪は東京に比べ、緑が圧倒的に少ない。」?
と出てきました。
「圧倒的」
という言葉は、「他を圧倒する」という意味ですから、イメージとしては
「強い!」
感じがするので、「不足」「少ない」という「マイナスイメージ」の語に付くと、私は何か違和感を覚えるのですが、実際にはよく使われているようです。
これは「ダントツ」に似ていますね。「ダントツ」も本来は、
「断然トップ」
の略ですから、「1位」以外に使うのはおかしいのですが、
「ダントツのビリ」
のような使い方が普通にされています。ネット検索してみましょうか。(Google、6月13日しらべ)
「圧倒的に不足」=   5万8900件
「圧倒的に少ない」=114万0000件
「圧倒的に多い」= 302万0000件
「ダントツビリ」=     6650件
「断トツビリ」=       674件
「ダントツ最下位」=  2万5300件
「断トツ最下位」=     7050件

という結果でした。


2008/6/13
(追記)

『ブログ論壇の誕生』(佐々木俊尚、文春新書:2008、9、20)という本の133ページに、
「医師や看護師、救急隊員の数が圧倒的に足りなくなる。」
と、「圧倒的に足りない」という表現が出てきました。
2009/12/10


◆ことばの話3289「LR」

最近目に付くアルファベットの略語として、先日「PT」(=「プロジェクトチーム」=平成ことば事情3266)を挙げましたが、その後、急速に目に付くようになったアルファベット略語に、
「LR」
があります。
「左・右」(Left Right)
ではありません。北京オリンピックの水泳で話題となっている、イギリス・スピード社の水着の名前、
「レーザー・レーサー」(Laser Racer)

の、アルファベット略語なのです。「JR」ではありません。
で、もうLRで決定かな・と思っていたら6月14日の新聞を読んでいたら、
「LZR」
という略語も出てきました。Google検索(6月14日)では、
「LR、レーザーレーサー」 =2万0100件
「LZR、レーザーレーサー」=2万8100件

でした。しかも調べてみると「レーザーレーサー」の商標の書き方は、
「LZR  RACER®」
となっていました。「レーザー」部分が最初から「LZR RACER®」なのですね。そうすると、「LZR」は略称なのかなあ、それとも商標なのかなあ。悩みますね・・・。

2008/6/14
(追記)
読売新聞が「LZR」を使ってきました。
2008/6/27


◆ことばの話3288「名セリフと捨てセリフ」

6月11日の「ミヤネ屋」で、映画評論家で映画監督の水野晴郎さん(76)が亡くなったニュースをお伝えしました。水野さんと言うと、私などは例の、
「いやあ、映画って、ほんっとーに、いいものですね」
の名ゼリフで有名ですが、このニュースを読む女性ナレーターのYさんが、質問にやってきました。
「この『名台詞』って、『名セリフ』でしょうか?それとも『名ゼリフ』と濁るんでしょうか?」
あ!気づかなかった!「メイゼリフ」と濁るものだとばかり思っていました。
早速、手持ちの電子辞書『精選版日本国語大辞典』を引いてみると、なんと濁らない
「名セリフ」
で載っているではないですか!知らなかった!他に「台詞」が付く言葉も引いてみようっと。「捨て台詞」はどうだろうか?
「捨てゼリフ」
あ!こっちは濁っている!
思うに、きれいなイメージの「名台詞」は濁らず、汚いイメージの「捨て台詞」は濁るのではないでしょうか?
この話をスタッフにすると、
「じゃあ、『迷台詞』は、濁るんですか?濁らないんですか?」
と聞かれました。
「これはマイナスのイメージだから濁って『迷ゼリフ』かなあ・・・」
と答えましたが、自信はありません。
『広辞苑』にも『三省堂国語辞典』にも「名台詞」は載っていませんでした。Google検索では、
「名台詞」=84万4000件
「名せりふ」= 3万4300件
「名セリフ」=64万7000件
「名ぜりふ」= 2万0600件
「名ゼリフ」=18万5000件
でした。そして、
「捨て台詞」= 45万5000件
「捨てせりふ」=   2840件
「捨てセリフ」= 2万9200件
「捨てぜりふ」= 5万0800件
「捨てゼリフ」= 9万9800件
そして、問題の(?)、
「迷台詞」=  3万0000件
「迷せりふ」=   1120件
「迷セリフ」= 1万2700件
「迷ぜりふ」=    178件
「迷ゼリフ」=   7030件
でした。やはり、
「名セリフ」>「名ゼリフ」
「捨てセリフ」<「捨てゼリフ」
で、「日国大」と同じ結果が。そして「迷台詞」に関しては、「意味」よりも「音」を重視したためか、
「迷セリフ」>「迷ゼリフ」
濁らない方が多かったです。
番組終了後にデスクに戻ると、翌日(12日)の新聞テレビ欄の「ミヤネ屋」の番組内容の原稿が、ディレクターのFさんから送られていました。それを見ると、
「名ゼリフ」
と濁った表記が!すぐに、
「Fさん、これ、濁らないみたいよ。」
と伝えて「名セリフ」に直してもらいました。
家に帰って本棚を探したら、NHKアナウンサーの葛西聖司さんの著書で、
『名セリフの力』(展望社、2000年)
という本がありました。やっぱり濁っていない!
中を読むと、こんなことも書かれていました。
『なお、「せりふ」という文字は、ひらがなのほか台詞、科白などの漢字もあるが、印象的な「セリフ」という表記で統一した。」
なるほど、納得です。
2008/6/12


◆ことばの話3287「カレールーか?カレールウか?」

6月11日の『ミヤネ屋』の番組の内容に関して、スタッフが質問して来ました。
「道浦さん、カレーのルーは、表記は『ルー』ですかね?それとも『ルウ』ですかね?」
「うーん、『ルー』でいいと思うよ。原則、長音符号を使うからね」
「でも『ルー』だと、『ルー大柴』みたいじゃありませんか?」
「たしかに・・・」

ということで、辞書を引いてみました。『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』とも、
「ルー」
でした。『三省堂国語辞典』も見出しは、
「ルー」
でしたが、内容説明の中には、
「ルウ」
という表記もありました。
ネットではどうでしょうか?Google検索では(6月11日)、
「カレールー」=43万6000件
「カレールウ」= 8万8700件
と「カレールー」の方が5倍ほどよく使われていました。「カレー」をつけないで、「ルー」と「ルウ」だけを検索してみましたら、
「ルー」=706万0000件
「ルウ」= 47万5000件
と、件数がひと桁上がりましたが、「ルー」の一番初めに出てきたサイトは、
「ルー大柴オフィシャルサイト『TOGETHER』」
でした。2番目は、
「ルー語変換」
でした。やはり今や「ルー」と言えば「カレー」よりも「ルー大柴」のようですが・・・。
2008/6/11


◆ことばの話3286「韓国を降す」

6月4日の毎日新聞朝刊のスポーツ面に、男子バレー五輪最終予選の記事が載っていました。
見出しは、
「日本、韓国を降す」
この「降す」ですが、読み方は、
「くだす」
ですよね。
「おろす」
じゃないですよね。でも「くだす」というのは、普通は、
「下す」
と書くのじゃなかったかな?『新聞用語集』と読売新聞社の『読売スタイルブック2005』、朝日新聞社の『朝日新聞の用語の手引』、共同通信社の『記者ハンドブック第11版』を見ましたが、すべて、
「『降す』は常用漢字外なので『下す』と書く」
ことになっています。ところが、毎日新聞社の『毎日新聞用語集』だけは、
「降す」
の表記も載っていました。この件について毎日新聞のK記者に聞いてみたところ、
「『降す』の表記、勝負事の場合は認められています」
とのお返事をいただきました。
ふーん、微妙な漢字の使い分けが、新聞社によってあるんですね。勉強になりました。
2008/6/10