◆ことばの話3275「ノー天気」

平成言葉事情2903「脳天気か能天気か」でも書きましたが、今回は少し驚きがあったので、「追記」ではない形で書きます。

6月3日午後9時過ぎ、会社帰りの電車の中で読んでいた、
米原万理『心臓に毛が生えている理由』(角川学芸出版:2008、4、30)
の中の「わたしの茶道&華道修業」で、
「(前略)などとノー天気にアドバイスする。」
「ノー天気」が出てきました。これは認知症になった母親のことをさしています。
そして家に帰り着いて読んでいた文庫本、
高田 渡『バーボン・ストリート・ブルース』(ちくま文庫:2008、04、10)
の中の「第1章貧乏なんて怖くない」(50P)に、
「ある意味ではノー天気だったのかもしれないが、貧乏で悩んだという記憶が、僕にはない。」
とまたまた「ノー天気」が出てきました。これは父の態度からの自分(=高田渡)のことをさして言っています。米原万理は母。米原は1950年生まれで2006年5月没、55か56歳。高田は1949年1月1日生まれで2005年4月16日没。56歳。ほぼ同年代で、しかも若くして亡くなっている!そして、本を読むとわかりますが、二人ともお父さんが共産党に関係していた!で、「ノー天気」という同じ表記!
なんという偶然でしょうか!
さらに、「本を読む」のを休んで読んでいた「新聞」日経新聞6月3日夕刊のオペラ評で、江原啓之がゲスト出演した、5月17日に尼崎アルカイックホールで開かれた関西二期会のロッシーニ「セヴィリアの理髪師」公演についての音楽評論家の白石知雄の音楽評の中に、
『「次の一手」に向けて、期待を高める「待ち」の場面だ。ところが今回は、ここで全員が脳天気に踊り出す。これでは集中が切れてしまい、「局面」がわからなくなる。』
と今度は「脳天気」が出てきたのです!
まだあります。
新聞を読み終わって、また「別の本」を読んでいたら、ここにも、出てきまたのです!
野口 健『富士山を汚すのは誰か』(角川ONEテーマ21:2008、05、10)
の69Pに、スペイン隊が大声で歌っていて、案の定、高山病になって下山したのに、しばらくしたら、また楽しそうに登ってきた様子をさして、
能天気といえばそうだが、エベレストに来ているということをとても楽しんでいるようだった。」
「能天気」が出てきたんです!こんなことってあるんでしょうか?なぜ「のうてんき」が、いろんな表記で、私の目に付くところに同じ日に出てくるの???
次の日。
会社に向かう電車の中で、また出てきました。午前9時半。
桐野夏生『東京島』(新潮社:2008、05、25)
の105P。
「島の最年少、犬吉は能天気に見えるほど、子供っぽいところがある。」
なんと足掛け2日、たったの12時間の間に、
「ノー天気」=2回
「脳天気」=1回
「能天気」=2回
も出てきたというのは、初めての体験です。どなたかこのような「ノウテンキ」な体験をされた方はいらっしゃいませんか?
2008/6/9


◆ことばの話3274「『当世書生気質』のルビ」

岩波文庫の坪内逍遥『当世書生気質』を読んでいたら、漢字の振り仮名(ルビ)が気になりました。以前、ちょっと読んだ時に、
「拾得」
という漢字の振り仮名に、
「ゲット」
とあったのを見つけて、
「おお!『ゲットする』は、明治10年代からあった言い方なのか!」
と感動したのですが、今回文庫本を手にして、ちょっと最初の方だけチェックしました。46ページまでで、こんなのがありました。
「愛(ラブ)してるぞ」
「泥酔漢(ドランカアド)」
「手助(ヘルプ)すればよかつた」
「無感覚(アンコンシャス)」
「有用(ユウスフル)」
「書籍(ブック)」
「書物(ブック)」
「洋書(ブック)」
「時計(ウオッチ)」
「十分(テンミニツ)」
「歴史(ヒストリー)」
「史論(ヒストリカル・エッセイ)」
「遁辞(プレテキスト)」
「七(セブン)」
「典(ポウン)したか売(セル)したに相違ない」
「放蕩連(インモーラルパーチィ)」
「大食家(グラットン)」
「払ひ(ペイ)するからえいワ」
「後で計算(アツカウント)するから」
「銀時計(シルバア)」
「死子(ロスト・サン)の年ぢゃ」
「洋燧(マツチ)」
「鉛筆(ペンシル)」
「幸甚(サンクス)」
「親父(フアザア)」
「洋銀(ドル)相場」
「肝を語る(シンキングラウドリイ)」
「政略(ポリシイ)」
「君自身(ユーアセルフ)」
「道理(リーズン)」
「脳髄(ブレイン)」
「負債(デット)」
「金満(リッチ)」
そのほか、逆に外来語のカタカナ表記にその意味が( )で示されたものには、
「プレイ(遊廓などへ行くことをいふ書生の通語なり)」
「エム(マネイの略にて貨幣といふ事)」
がありました。
また「七(しち)」のルビの「セブン」は、「質屋」の「しち」に引っ掛けたしゃれ言葉だと思われます。「一六銀行」という言い方もありましたね。あれの方が「あと」なのかな。なんとなく「大正」の感じが。
また、時間があったら、続きを調べます!
2008/6/8



◆ことばの話3273「ウロトラマンとシュビレダイ」

3歳4か月の娘、よくしゃべります。でも、まだまだ赤ちゃん言葉の名残りが。女の子の方がそんな感じが残るんでしょうかね?
先日のこと、こんなことを教えてくれました。
「むかしむかし、ウロトラマンのチーズみつけたで!冷蔵庫で、みつけちゃってん!」
「むかしむかし」
というのが面白いなあ。おとぎ話みたい。それと、
「ウトロマン」
舌が回っていません。でも、そこがかわいい。
「みつけちゃってん」
と、「全編・大阪弁」の中に、なぜかそこだけ「ちゃった」という東京風のしゃべりが混じります。そして、舌が回らない今だけの言葉に、
「シュビレダイ」
があります。別に「毒をもった鯛」のことではありません。しびれたりは、しません・・・・そう、それは、
「滑り台」
のことです。この年代の子どもが一生懸命しゃべる様子は、本当にかわいいですよね!
以上、「親バカ日記」でした。
2008/6/9
(追記)

けさ、娘を起こそうとしたら、
「あし、いてえ」
と言われたので、
「え!足が痛いの?」
と聞き直すと、はっきりとした“不機嫌な口調”で、
「あっち、行って!」
と言い直されました・・・。
2008/6/10


◆ことばの話3272「甦る、蘇る、よみがえる」

『ミヤネ屋』のスタッフからの質問です。
「『よみがえって欲しい大スター』という特集をするんですが、漢字で『甦』を使いたいのですが、どうでしょうか?」
見てみると、スタジオで紹介する大きなパネルのタイトルに使うようです。
「うーん、ちょっと待ってね。『新聞用語集』を見ると、やはり『甦』も『蘇』も常用漢字外だから、平仮名で書くか、振り仮名を振るかだねえ。」
「ぼくは『甦』が一番イメージに合うんですけど・・・」
「でも松田優作が出ていた大藪晴彦原作の映画は、たしか『蘇』を使って『蘇る金狼』だったろ?ほら。『蘇る』も結構あるよ。草ナギ君が出ていた映画は『黄泉がえり』だったっけ。これは関係ないか。こういう時は、Googleで検索して、その件数を比べるという手もあるよ。ネット上でどのくらい使われているかを調べるんだよ。」
やってみました。(6月8日)
「蘇る」=   304万件
「甦る」=   171万件
「よみがえる」=292万件
「おやおや、これを見る限り、一番多いのは『蘇る』で、ほぼそれと同じぐらいのが平仮名の『よみがえる』で、一番少ないのが『甦る』だね。ま、少ないといっても171万件もあるけど。大体ワープロで漢字に変換すると最初に出て来るのは『蘇る』だろ。そこで考えるのをやめる人が多いってことかな。平仮名が多いのは、漢字に変換することさえも思いいつかないのかもしれないよ。どうする?平仮名にする?」
「うーん、でもそのあとの『ほしい』も平仮名なので、『よみがえってほしい大スター』って、なんか平仮名ばかりだと、しまらないと言うか・・・。」
「たしかになあ。この『ほしい』は、『してほしい』の意味だから、原則、漢字の『欲しい』は使えないわなあ。じゃ、『甦る』にして、上に『よみがえ』と振り仮名をつけるか。」
「・・・それでいきます」
ということになりました。
2008/6/9


◆ことばの話3271「糖質ゼロ」

最近、例の「メタボ検診」が始まった関係からか、
「糖質ゼロ」
とか、
「カロリーゼロ」
といった表記のある飲み物や食べ物が増えているということを、先日の「ミヤネ屋」の「夕やけプラス1」のコーナーで特集しました。
その時からなんとなく気になっていたのが、
「『糖質ゼロ』や『カロリーゼロ』って、本当に『ゼロ=0』なのかな?」
ということです。
答えはすぐ身近にありました。先日、何気なく飲んでいた発泡酒「麒麟ZERO」の缶に、こう書かれていたのです。
「『カロリーオフ』は100ml当たり20キロカロリー以下のもの、『糖質ゼロ』は100ml当たり糖質0.5g未満のものに表示可能です。(栄養表示基準による)」
やはりそうだったのか!「糖質ゼロ」「カロリーゼロ」の「ゼロ」は、本当に「0」ではなかったのですね!
「ゼロ」だからと言って、どれだけ飲んでも「0」というわけではないので、そのあたりはご注意くださいね。
2008/6/9