◆ことばの話3270「セアカゴケグモ」

6月6日、毒グモの「セアカゴケグモ」が、愛知県でも見つかったというニュースが流れました。10年ほど前、大阪の高石市で発見されて以来、日本の温暖化に伴って「セアカゴケグモ」は日本列島に住み着いて北上しているようです。
さて、この「セアカゴケグモ」の「ゴケ」とは何か、若手アナウンサーに聞いてみました。新人と3年目4年目、そしてなんと7年目のアナウンサーまでが、こう答えたのです。
「コケ(苔)ですか?」
・・・違うがな。「ゴケ」は、
「後家」
です。英語で言うと、
「ウイドウ」
だよ。ほら「メリー・ウイドウ」とか、山口百恵の「ロックンロール・ウイドウ」とか。ゴルフ・ウイドウ」なんてのもあったな。それを聞いても皆、
「・・・・」
まだ、わからないか、
「未亡人」
ですよ。これでようやくわかったみたいです。
「ああ、あの『いかず後家』とかいう、あの『ゴケ』」
「そんな言葉は知ってるんだな」
「でも『後家』の意味は知りませんでした。」
わからずに使っていたのか。
「でもなんで『後家』なんですか?」
「カマキリと同じだよ。メスがダンナであるオスを食べちゃうからさ」
「!そうなんだ!」
たぶん視聴者の皆さんも、特に若い方は、「セアカゴケグモ」の「ゴケ」は「苔(コケ)」だと思っている人、多いんでしょうね。いずれにせよ、毒グモなので、皆さん、ご注意を!
2008/6/6


◆ことばの話3269「言語道断」

6月6日、霞ヶ関のお役所の役人が乗ったタクシーの中で、タクシー運転手からビールやおつまみ、商品券や現金をもらうということが、日常的に行われていた事が発覚しました。通称「居酒屋タクシー」です。これを受けて、各省庁の担当大臣が、
「由々しき出来事」
とコメントしていましたが、中でも一番その「接待」を受けていた「財務省」のトップ・額賀福志郎・財務大臣のコメントで、
「大変ショッキング。許されることではない。言語道断」
と言っていたのですが、この「言語道断」額賀大臣は、
「ゲンゴドウダン」
と言っていました。それを聞いた私は、
「大変ショッキング」
でした。(どうして昨今の早稲田の先輩は、そろいもそろって・・・。)額賀さん、文部科学大臣でなくてよかった。
「言語、どうだ、?ン?」
と問い直したいです。これは明らかに、
「ゴンゴドウダン」
しかないでしょ?こんな四字熟語の読み方を間違うこと自体が、
「言語道断」
ではないでしょうか。ハアー・・・。
2008/6/6



◆ことばの話3268「最近気になること」

「今頃、そんなことが気になるなんて。もうずっと前から世の中、そうでしょ。」
といわれるかもしれませんが、最近とみにひどくなってきているように思います。それは、「公共の場所におけるマナー」
です。「ノンバーバル・コミュニケーション」(言葉によらないコミュニケーション)のすれ違いと言いますか、相手への配慮の欠如と言いますか、とにかくこんな行為、ハラが立ちます。
電車の座席に足を組んだまま座っていて、前に人が吊り革に掴まって立っても、足を組んだままの人。→立っている人の邪魔だし、靴の泥がズボンに付くだろ!
二人掛け座席の奥・窓側に座っていた人が、降りるために立って、横に座っている人の前を通るのに、「すみません」ともなんとも言わずにボーッと立ったまま、前をあけてくれるのを待っている。そして、こちらが立って通路をあけてあげたのに、あいさつもなしに当然のごとく降りる奴。→そのくせ、そういうやつに限って、自分が通路側に座った時には、前を通そうとしないのではないか。
本屋の平棚の「本」の上に、カバンや傘を置いて立ち読みしている奴。→本屋さんの商品である「本」が濡れたり汚れたら、どうするつもりなのか?弁償するのか?なぜそこに考えが及ばない?自分のカバンは汚れないように、通路には置かずに、本の上に置くのか?
電車を降りる時にカバンをぶつけておきながら謝らない若い女性。→ケンカ売ってんのか!!
とまあ、本当に信じられない出来事、「ありえない」行為が蔓延しています。若い人だけではありません、いい年をしたおじさん・おばさん、おじいさん・おばあさんまで、同じようにやっています。一体、日本はどうなってしまったんでしょうか?
2008/6/6


◆ことばの話3267「きょうだいの表記」

2008年6月3日の『情報ライブ・ミヤネ屋』の放送で、「ヨン様」こと「ペ・ヨンジュン」さんが来日し、京セラドーム大阪に登場した話題を放送しました。いまだに根強い人気に驚かされましたが、そのいまだに独身のヨン様の“結婚”に関する発言をフォローした字幕スーパーが、
「きょうだいも(結婚)したので」
とあり、おや?と思いました。「きょうだい」が、なぜか「ひらがな」だったのです。スーパーのチェックをしたKプロデューサーに、
「なんで、ひらがなだったの?」
と聞くと、
「『男ばかりのきょうだい』の場合は問題なく『兄弟』と書きますが、その『きょうだい』の中に『女性がいた場合』、つまり『弟と妹』とか『姉と弟』とか、そういった場合に『兄弟』という漢字で書いてもいいのかな?と思って・・・」
という答えが返ってきました。なるほど、一理あるな。そこで、辞書を引いてみました。 電子辞書の『精選版日本国語大辞典』には二番目の意味で、
「きょうだい(兄弟)」=「(2)同じ父母から生まれた子どもたちを、男女の別に関係なくいう。また、その子どもたち同士の関係をもいう。兄弟姉妹。」
ほら、やっぱり使っていいんだ、「きょうだい」の漢字は「兄弟」しか書かれていないし。さらに「語誌」の(2)には、
「『姉と妹』を示す『姉妹』も同様に中国語から日本語に入ってきたが、日本においては男女によって特に区別することはなかった。そのために、兄と弟に限らず、姉と妹であろうが、姉と弟、兄と妹の場合でもキョウダイが使用されてきた。また、兄と弟を特にオトコキョウダイと言ったり、姉と妹をオンナキョウダイと言ったりすることがあるように、キョウダイは兄弟・姉妹の上位概念として使用されている。」
とありました。なるほど、やはり「兄弟」でもって、男女関係なく使えそうですね。
念のため『三省堂国語辞典・第6版』を引くと、
「きょうだい(兄弟)」=(2)『(自分と)同じ母親から生まれた子どもたち(のひとり)。はらから。(ばあいにより、「兄妹」「きょうだい」などと書く)』
ありゃ?「兄妹」と書いて「きょうだい」と読ませるパターンについて書いているんですよね。これだと「きょうだい」もありか。うーん、難しい。
おそらく原則は、男女混合の「キョウダイ」の場合は、男女の別なく「兄弟」と書いて良いんだと思うけど、どうしても男女別を示したい時は、「兄妹」「姉弟」と書いて「きょうだい」と読ませることも(常用漢字表の読み方にはないけど)「あり」か、と。
また、全部女性の場合は原則「姉妹」と書くでしょうね。読みも「しまい」ですよね。そして例外的に「姉妹」と書いて「きょうだい」と読むことも(これまた常用漢字表にはないけど)あるかな、と。こんなところですかね。
また、各社にも聞いてみたいと思います。
(208、6、3)
(追記)
各社に聞こうかなと思っていた矢先に、NHKの原田邦博さんから、早速メールをいただきました。
『NHKの『ことばのハンドブック』にあるように、「きょうだい(という音)」には、兄弟姉妹を含めています。必要に応じて「男のきょうだい」「女のきょうだい」も使います。
なおテロップ上では「兄弟」のほか「兄妹」「姉弟」も使用していますが、コメントでは「兄と妹」「姉と弟」などとします。「姉妹」は、原則的には「しまい」と読むでしょう。
3人の場合は表記では、(1)「3兄妹」(2)「3姉弟」などもありえますが、(1)は「男男女」または「男女女」、(2)「女女男」または「女男男」の各2通りが含まれます。ですから、間にはさまれた「男女男」「女男女」の場合、表記は「3きょうだい」とでもするしかないでしょう。いずれの場合でも、アナウンス用の原稿では誤読を避けるために、「きょうだい」としていることが多いようです。なお「姉妹喧嘩」は、「きょうだいげんか」と読むしかないでしょう。』
ありがとうございます!参考にさせていただきます。
2008/6/10


◆ことばの話3266「PT」

大阪府が橋下徹知事になってから、よく新聞で目にするようになったのが、
「PT案」
という言葉です。この「PT」は、
「プロジェクトチームの略」
ですが、最初見たときは、
「PTA」
のことかと思いました。まさか「パンティ」の略じゃないでしょうね。「KY語」かも。
Googleで「PT、大阪府」で検索してみたら(6月3日)、
「PT、大阪府」=43万1000件
も出てきました。そのほか、
「PT、プロジェクトチーム」=40万1000件
で、橋下知事の「改革PT」以外でも、日弁連の「法廷用語の日常語化に関するPT」や、「総合科学技術基本政策専門調査会」という何やら難しげな名前の会議にも「分野別推進戦略PT」というのがあったり、「環境PT」「音楽療法・芸術振興推進PT」「児童買春・ポルノ禁止法の見直しPT」「子どもの犯罪防止に関するPT」「耐震安全性に関する調査PT」「新規後援企業・団体開拓PT」「職員PT」「燃料電池PT」など、世はまさに「PTだらけ」!いつの間にこんなに「PT」ばかりになってしまったのか?その割りに、何も良くなっていないように感じるぞ。
こうなったら、何かあったら、即、「PT」を立ち上げちゃうからな!って、誰に対して怒っているのだろう???
2008/6/3
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スープのさめない距離