◆ことばの話3240「琴欧か欧洲か」

5月21日の大相撲夏場所10日目、全勝の大関・琴欧洲が、1敗の横綱・朝青龍を破りました。それを報じた5月 22日の新聞の見出しで、「琴欧洲」を表す表記が、新聞によって分かれていました。
(朝日)琴欧寄り一気〜朝青を圧倒11連勝
(産経)琴欧洲 朝青龍破り全勝 グイッ
(毎日)欧洲の万力 うめく朝青
(読売)琴欧洲 朝青撃破
(日経)琴欧洲 理詰めの快勝〜慌てず朝青龍封じ
で、「琴欧洲」を略した見出しは、朝日の「琴欧」毎日の「欧洲」。略し方が違います。そしてスポーツ紙は、
(デイリー)琴欧洲 朝青撃破
(サンスポ)朝青 蹴落とした 琴欧(州)
(報知)朝青に完勝 琴欧洲
(日刊)えいえい欧!!〜朝青斬り11連勝
(スポニチ)朝青突破!!まず欧洲
と、サンスポが朝日と同じ「琴欧」(ただし、小さい文字で「洲」も書かれていましたが、見出しとしては「琴欧」です)、スポニチが毎日と同じ「欧洲」です。日刊の、
「えいえい欧!!」
には、ちょっと笑いました。これは毎日使うわけには行きませんね。この日だけ。
5月23日の朝刊では、
(朝日)初V 琴欧周到
(毎日)欧州奇襲 賜杯見えた
で、やはり朝日新聞は「琴欧」と「洲」を略し、毎日新聞は「欧洲」と「琴」を略しています。朝日の「琴欧周到」「琴欧洲」の「洲」と、「周到」の「周」をかけていて、
「コトオウ・シュウトウ」「コトウシュウ・トウ」
両方の意味にも取れますね。
なお、「朝青龍」に関しては、
「朝青」
と省略することで、各社・読者も了解しているような使われ方です。琴欧洲に比べて、見出しに登場する回数がずっと多かったからでしょうね。
2008/5/23


◆ことばの話3239「鈍器のようなもの」

『ウェークアップ・ぷらす』のMプロデューサーが話しかけてきました。
「舞鶴の女子高生が殺された事件で、凶器に関して、
『鈍器のようなもので殴られた痕』
ってずっと出てくるんですが、あれって、
『鈍器のようなもの』
でいいんですか?本当は、
『鈍器で殴られたような痕』
なんじゃないですか?」
あー!そりゃそうだ!全然気づかずに、スルーして(見逃して)いた!
そうですよね。「鈍器で殴ったような痕」ならば、
「鋭利な刃物などによる傷痕ではない」
ということがわかるけど、
「その鈍器が、具体的にどんな物なのかは、わからない」
ということで、まさに言おうとしていることですよね。
何となく語呂の良さで間違ってるのかなあ・・・。それとも、ニュースによく出てくる、
「バールのような物でこじ開けられた跡があり」
という文章の、
「バールのような物」
「バール」と同じように、「鈍器」を使っちゃったのでしょうか?
でも「バール」は形状がかなり特定されている(でも「バール」そのものかどうかは特定できない)状態での比喩ですが、「鈍器」では、あまりにも範囲が広すぎますもんね。似て非なるものですね。
以後、気をつけます!
2008/5/20


◆ことばの話3238「○時半前」

突然ですが、すみません。最近、放送で時刻を表記するときに、
「午後3時半前」
とか、
「午後6時半前」
というような、
「○時半前」という表現が増えているような気がするのですが、どうでしょう?
って、いきなり「どうでしょう」と聞かれても困ると思いますが、なんだか気になります。私は子どもの頃、「6時28分」のことを、
630分前」
と言ってたら、親から、
「『630分前』というのは、『5時半』のことを言うのだ」
と言われて、
「ボクは『630分・前』って言ってるんで、『6時・30分前』とは言ってないんだ!」
と、納得が行かなかった覚えがありますが、今は、とっても納得できます。
そうなってしまうと、6時半前」はなんだか納得できない表現なんですよね。これって「前」が合わないのだと思います。「過ぎ」であれば、
「6時半過ぎ」
はまったく問題がない表現だと思います。少し「前」ぐらいなら、もう大まかに、
6時半」
でいいじゃないですか。え?いや??じゃあ、
6時半ごろ」
これでどうでしょう?そんなに「前」が必要なのかな?それならば、
628分」「629分」
ときっちり言えば済むのではないでしょうか。いかがでしょうか???
2008/5/20


◆ことばの話3237「婚活

5月15日の『ズームイン!!SUPER』で、
「婚活」
というものを特集していました。「婚活」とは、
「結婚できるように、いろいろと準備の活動をすること」
のようで、最近は、「就職活動」のことを縮めて、「就活」と言うのと似た感じですね。そういうふうにきっちりと準備をしないと「結婚」が出来ない時代だと。ふーん。大変な時代になっています。
ところで「言葉」に注目すると、略し方「就活」は、
動」
 
「1番目と3番目」複合語のそれぞれ上の文字を取って作られていますが、「婚活」は、
「結婚活動」
 123
「2番目と3番目」、複合語の最初の下の文字と、二番目の複合語の最初の文字を取っています。もし、「就活」と同じ略し方をするならば、
「結活」
になったはずですが、「結婚」の「結」は「けっ」と促音になるので、
「結活(けっかつ)」
は、何となく言いにくいので避けられたのでしょうか?それとも、促音の「っ」が大きく「つ」となって有声音にした場合に、
「けつかつ」
となると、音の響きが悪いと考えられたのでしょうか。その辺りの事情はわかりませんが。Googleの日本語のページで検索しますと(5月15日)、
「婚活」=5万1400件
「結活」=  5550件
でした。しかもその中に『「婚活」時代』(山田 昌弘・白河 桃子著)という本が出てきて、
「もはや結婚はデフォルト(初期設定)ではない!だれでもそのうち自然に結婚することになるわけではない。」
という文のあとに著者の言葉としてこういった記述が・・・!
「婚活」は、「結婚活動」の略です。 わたし(山田昌弘)は、家族研究を専門としています。(中略)結婚や恋愛を中心に精力的に取材しているジャーナリストの白河桃子さんからAERAの取材を受けていたときに「結婚活動」についてどう思うかと聞かれました。結婚活動とは、就職活動のアナロジーとして作られた言葉です。(中略)学生たちは、これらの就職活動を、「就活」と称しています。同じように、よりよい結婚を目指して、合コンや見合い、自分磨きなど、積極的に行動をする人が出てきています。
それらの活動を結婚活動と呼ぶことにしました。就職活動は略して「就活」だから「結活」でしょうか、いや、結活は発音がしにくいから「婚活」にしたらと提案したのが、このことばの由来です(初出『AERA』2007年11月5日号)。
やはり想像したとおりでしたね。検索では5万件を超えて出てきたので、既にかなり広がっている言葉のようです。

2008/5/15


◆ことばの話3236「炭水化物まつり

『ミヤネ屋』担当のMアナウンサーが、
「道浦さんみたいに、ちょっと調べてみたんですけど・・・」
と遠慮がちに話しかけてきました。
「最近、『炭水化物まつり』って言葉が使われているのに気づいたんですけど、ご存知ですか?」
「いや?知らない。何それ?」
「パスタにごはん、みたいに、炭水化物のものばかり食べちゃった時なんかに言うみたいなんですよね。」
「ふーん、知らない。でも『○○まつり』という言い方は、もしかしたら、ネット上でよく使われる言い方なんじゃない?」
と言って、いろいろ検索してみましたら、Googleで(5月7日検索)
「炭水化物まつり」=2200件
ありました。その内容を見てみると、「炭水化物まつり」とは、
「炭水化物メインの食品が2つ以上合わさったメニューのこと」
のようです。例えば、
「焼きそばパン」「そばめし」「半チャンラーメン」
などを「炭水化物まつり」と呼んでいるみたいなんですね。ふーん。おもいしろい呼び方ですね。「ハレ」と「ケ」で言うところの「ハレ」ですね、「まつり」は。でも栄養のバランスはよくないですね。
ハッ!でも、「うどん定食」「お好み焼き定食」が、ごくごく一般的な関西においては、「炭水化物まつり」は毎日行われているわけだから、むしろ「炭水化物まつり」ではない日の方が「ハレ」なのかな?・・・なんだかよくわからなくなってきました・・・。
ついでに、1週間経ったので、もう一度検索。(5月15日)
「炭水化物まつり」=2170件
あまり変わっていません。それと、
「炭水化物祭り」=6440件
この表記の方が多いみたいですね。ついでだ!
「炭水化物祭」=956件
青木さやかのブログで使われていました。
こんなのもあるのかな?
「甘いものまつり」=42件
ありましたねー。
「甘いもの祭り」=767件
「甘いもの祭」=137件
日本人は「まつり好き」のようです。

2008/5/15
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スープのさめない距離