◆ことばの話3225「夜露死苦」

出社途中にすれ違った男性が着ていた黒いTシャツの左胸に、小さな字で四つの漢字が書かれているのが目に入りました。その漢字とは、
「夜露死苦」
でした。よく暴走族やツッパリなどが落書きする時に書く漢字ですね。そう、
「ヨロシク」
と読ませるのです。それを見て、ハタと思いつきました。
「『夜露死苦』には『死苦』という『忌み言葉』が含まれている。これは世の中から忌み嫌われているということを表現するため、あえて忌み言葉を使っているということが考えられる。また『露』は、音だけで言えば『呂』でも良いのだが、それでは漢字の画数が少なく重みがない。そこで画数が多い『露』を使うことで、強く見せようとしているのではないか。『露』には『ロシア』という北の強国のイメージも付いている。そして、こういった連中の主な活動時間帯は『夜』なのでそれを示すとともに、『夜』という時間帯が持つ不気味さ、恐さ、色で言うと『黒』というものもイメージされる。その意味では、この『夜露死苦』という四字熟語(?)は、表意文字と表音文字をうまく使っていると言えるのではないだろうか。辞書にも載せていいんじゃないのかな。」
てなことを、ゴールデンウィークの間の通勤電車の中で考えていたのでした。
なお、Google検索(5月2日)では、
「夜露死苦」=61万7000件
でした。
2008/5/2


◆ことばの話3224「Jポップの起源

2008年3月24日の読売新聞朝刊を読んでいたら、「平成を歩く」という特集記事の中に
「Jという日本」
という記事が載っていました。
平成になって増えた「J」の付く名前について取材したもので、その中に、
「J−POP(Jポップ)」
も載っていました。
記事によると、1988年に開局した「J−WAVE」の現在の編成局長・斎藤日出夫さんという人が、各レコード会社の担当者と話し合って、
「都会的で、洋楽と同じように流せる邦楽をJポップと呼ぶことにした」
と書かれていました。
そうだったのか!実は去年(2007年)の秋に、武庫川女子大学言語研究所主催の講演会「Jポップ」に関する講演を聴いたことがあったので、気になっていました。
以前から、
「歌謡曲とJポップPの違いは?」
「いつからJポップという言葉が使われるようになったのか?」
が気になっていたのですが、
なかなか興味深い記事でした。

2008/4/25


◆ことばの話3223「深川言葉

菊池 寛の『半自叙伝』に出てきた言葉の一つに、
「深川言葉」
というのがありました。「東京深川」の方言というわけではなく、どういうものかと言うと、
「一つの音の下に、それと同じ段のカ行なり、ナ行なりの音を加えて話をする寸法で、『お前』と云うのを、『オコマカエケ』と云うの類である。」
と記されていました。つまり、暗号のように、
め」(晴れてよかったね)
とすることば遊びで、「直前の言葉と同じ段の、別の列の言葉をはめる」んですね。ちょっと難しいかな。こういった言い方は言葉遊びとして知ってはいましたが、それに、
「深川言葉」
という名前があるとは知りませんでした。これって昔は常識だったのでしょうか?今はこの手の言葉遊びが流行らなくなって、名称も忘れられてしまったのでしょうか。

大阪にも「しゃれ言葉」というのが昔はあって、もうほとんど廃れてしまったと思われますが、福井栄一さんの『大阪人の「うまいこと言う」技術』(PHP新書、2005年)の目次によると、「仏の碗、夜明けの幽霊、石垣のうなぎ、猿の病気、深草の団扇、蛸の天麩羅、京の大仏、下手な将棋、京細工、夏の蛤、赤子の行水」などの「しゃれ言葉」があるそうで、これも言葉遊びの一種ですね。え?意味ですか?それは本を読んでください。私も読んだけど、もう忘れてもた。一つ二つ覚えているのは、
「赤子の行水」
かな。「赤子」は「赤ちゃん」で「泣く」のが商売、「行水」は「盥(たらい)の中で行う」ものだから、
「赤子の行水」=「たらいで泣いている」=「足らいで泣いている」=「お金が足りなくて泣いている」
という意味。
「夏の蛤(ハマグリ)」
は、身が腐って貝は腐らないから、買わないで見ていくだけのお客さん(ウインドウショッピングか)のことを毒気づいて言う時に、
「身ィ腐って、貝、腐らん」=「見ィくさって、買いくさらん」
という意味だそうです。わかるか、こんなもん。でも、商売関連の言葉がけっこうあるように感じますね。そう言えば、平賀源内の頃からある、
「スワルトバートル」(座ると場ァ取る=はかま)
「オストアンデル」(押すと餡出る=まんじゅう)
のような言葉遊びともつながりますね。
いまや「オヤジギャグ」と呼ばれるダジャレしか流行らないのは、ちょっと寂しいと言えば寂しいですねえ・・・。
2008/4/25


◆ことばの話3222「ナビします」

週に1回通っている甲南大学。JRの最寄り駅「摂津本山」駅近くの不動産屋さんの店頭に、上戸彩さんが宣伝の「のぼり」に出ていました。そこには、こんな言葉が記されていました。
「カウンターで理想のお部屋へナビします。」
この中の、
「ナビします」
という言葉が新鮮でした。もう「ナビする」という言葉は日本語になってしまったのだなあという意味で、新鮮だったのです。これまでならば、
「カウンターで理想のお部屋へご案内します。」
と書かれていたであろうところに、「案内する」ではなく「ナビする」を持ってきているので、「おっ!」と思うわけですね。Google検索(4月21日)では、
「ナビする」 2万7200件
「ナビします」 3万0100件
「お部屋にナビします」 8件
「お部屋にご案内します」 3410件
「ナビします」になると、「ご案内します」の時にあった「ご」という接頭語が外れてしまっていますね。その分、「丁寧さがちょっと欠ける」ような気もするけど、逆に「親しみやすさ」がわくのでしょうね。「ご」をはずした「お部屋に案内します」は、
「お部屋に案内します」=201件
でした。
2008/4/21


◆ことばの話3221「トレーニー」

地下鉄御堂筋線・淀屋橋の駅の改札を出たところにある本屋さん、ついつい立ち寄ってしまいます。ここは「双葉文庫」が、結構充実しているんですよね。「いしいひさいち」とか「呉 智英」の本が結構並んでいます。
そこに先日も立ち寄って、何冊か本を求めて精算しようとカウンターに行ったら、カウンターの女性の胸につけていた名札に、こう書かれていました。
「トレーニー」
「トレーナー」なら、よく耳にしますが、「トレーニー」というのは聞き慣れません。でも「トレーナー」が「トレーニングをしてくれる人」ならば「トレーニー」は・・・と、ちょっと頭を働かせて、おそらくこれは、
「トレーニングを受け(てい)る人」
すなわち、
「研修生」
だなと思い当たりました。辞書を引くと・・・ピンポーン正解!しかしそれなら、ちゃんと日本語で、
「研修生」
と書けばいいのに・・と同時に思ったのでした。ちなみにGoogle検索(4月21日)では、
「トレーナー」 1120万0000件
「トレーニー」 4万8900件
「研修生」 334万0000件
でした。
2007/4/21