◆ことばの話3220「携帯ロッカー」

昼休み、食事を摂りに外に出かけたら、飲み物の自動販売機の横にあったコインロッカーに、こう書かれていました。
「このロッカーは携帯電話がないとお使いになれません。」
おおそうか、これが話題の携帯電話を使って使用できるコインロッカーなのか、と注目しました。正確に言うと、支払いに、
「携帯電話を使って、コインは使わない」
ので、
「コインロッカーではない」
のですが。さらによく見てみると、もう一つ注意書きが。
「このロッカーには、お使いの携帯電話は入れないでください。」
そっかー、
「荷物と一緒に(カギ代わりに使う)携帯電話まで入れてしまう人がいる」んだ!
「事実は小説より奇なり」という感じですかねえ。結構、「閉じ込め」による苦情(?)や問い合わせが多いのでしょうね。でも、問い合わせの電話をかけようにも、携帯電話はロッカーの中・・・。
車のキーを中に入れたままカギを閉めてしまって「JAF」を呼ぶようなことと同じことが起きているのかと思うと、携帯ロッカーも慣れるまでは大変かな、と思ったのでした。
2008/4/17


◆ことばの話3219「はちはいどうふ」

去年、助数詞の読み方に関して調べていた時に、特に「8」という数詞が付いた時に、
促音を使うのか、それとも使わないのかについて、いろいろ調べました。その中で、こんな言葉(もの)を見つけました。
「はちはいどうふ(八杯豆腐)」
これの読み方は、
「『はっぱい』ではなく『はちはい』」
でした。どんな豆腐かと言うと、
「豆腐を細長く切って煮た料理。煮出し汁が水四杯、だし二杯、醤油二杯の割合であったので八杯と名付けたとも、豆腐一丁で八人前とれたので名付けたともいう。八杯。」
として、用例は1744年の「浮世草子・風俗遊仙窟」を挙げています。(が、具体例は『精選版日本国語大辞典』=電子手帳には載っていません)
また、2008年3月29日に、大阪天満橋の八軒家浜の船着き場が復活したという各紙の記事(3月30日)では、「八軒家浜」の地名の読み方に、
「はちけんやはま」
とルビが振ってありました。「『はっけんや』ではなく『はちけんや』でした。
新聞用語懇談会の放送分科会で「数詞・助数詞」についての討議をした時には、
「関東は促音を好み、関西は促音を好まない」
というような傾向がはっきりと見られました。
この「はちはいどうふ」も「はちけんやはま」も、「関西的な呼び方だ」ということが言えるかもしれません。
2008/4/16


◆ことばの話3218「後期高齢者医療制度」

論議を呼んでいる「後期高齢者医療制度」。内容もさることながら、
「『後期高齢者』という呼び方が良くない」
という声も出ていることから、福田総理自ら4月1日に、
「長寿医療製度」
としてはどうかと提案し、「通称」として採用されたそうですが、
「名前が問題じゃない、制度そのものが問題なんだ」
という声も出ています。そして今日4月15日、初めてその制度での保険料が天引きされました。4月15日の各紙朝刊での、この制度の表現は以下の通りでした。(夕刊にも記事があった読売、朝日、産経は同じ表現)
<読売>
(見出し)長寿医療
(本文)後期高齢者医療制度(長寿医療制度)
<朝日>
(見出し)新医療制度
(本文)後期高齢者医療制度(通称・長寿医療制度)
<毎日>
(見出し)後期高齢者医療制度
(本文)後期高齢者(長寿)医療制度
<産経>
(見出し)長寿医療制度
(本文)後期高齢者医療制度(長寿医療制度)
<日経>
(本文)後期高齢者医療制度(長寿医療制度)

このほか 読売新聞に載った「政府広報」では、
「長寿医療制度(後期高齢者医療制度)」
と書かれていました。また、読売新聞の本文に書かれていた厚生労働省と総務省が合同で作っているのは、
「『長寿医療制度』実施本部」
という名前でした。そして、この日のNHKのお昼のニュースでは、
「新しい医療制度」
としか呼びませんでした。字幕スーパーも、
「新医療制度」
として「後期高齢者」とも「長寿」とも呼んでいませんでした。そのニュースで写っていた相談窓口の現場の映像には、看板に、
「長寿(後期高齢者)医療制度」
と書かれていました。直接窓口に来られる75歳以上の高齢者に配慮した看板なのでしょうね。
2008/4/15


◆ことばの話3217「DIMMEL」

いつも『情報ライブ・ミヤネ屋』でナレーションを生で読んでいる、読売テレビ3サブのブース。この金魚鉢みたいな部屋の机の上にある白熱灯のライトには、3つのスイッチがあります。
「FULL」「DIMMER」「OFF」
の3つです。「FULL」と「OFF」はわかるのですが、不勉強な私は、この、
「DIMMER」
という英語の意味がわかりません。でも電気をつけると、ちょっと暗い、というか、「フル」よりは明るくない。ということは「夕闇(?)」の「ドーン」(DAWN)みたいな意味なのかなぁと、勝手に想像していました。そこで英和辞典を引いてみました。
「dimmer」=薄暗くするもの(人)。(ヘッドライトの)制光器。(舞台照明の)調光器。
とありました。そのちょっと上には、
「diminish」(ディミニッシュ)
という単語も載っていました。これは、合唱をやっているので、時々耳にします。意味は、
「半音下げる」
と書かれていて、用例に「ディミニッシュ・フィフス」(減5度)というのがありましたが、これだな、時々耳にする 「ディミニッシュ」は。(20年以上合唱やってて、このぐらいです。)その 「diminish」の最初の意味として書かれていたのは、
「減少(低減)させる(する)」
ということでした。音楽用語の、
「dim(ディミネンド)」
も、(イタリア語だろうけど)音量を低減して行くのですから、この「dim」には「減らす」という意味があるのですね。だから「dimmer」「光を弱くさせる」という意味なのでしょうね。納得しました。
2008/4/11



◆ことばの話3216「政争の具」

4月10日の日経新聞に、前日行われた福田総理(自民党総裁)と小沢民主党代表との党首討論の様子を伝えている中で、
「政争の具」
という見出しが出ていました。日銀総裁の席を巡っての、例のいざこざについてのことと思われますが、この言葉、なんだか古色蒼然としているなあ(この四字熟語こそ古色蒼然?)。
同じような内容を指して、産経新聞は少し噛み砕いてわかりやすく
「政治の道具」
と表現していました。こちらの方がわかりやすいことは間違いないのですが、実際にそういう見出しを見てしまうと、逆に、
「『政争の具』の方が、重みがあって偉く見えちゃうなあ・・」
などと感じてしまうのですね。一体どうすればいいんでしょうねえ・・・・。
Google検索(4月10日)では、
「政争の具」 =11万1000件
「政治の道具」=13万8000件

と、拮抗していました。3月21日の「琉球新報」でも、「政争の具」という言葉が、日銀総裁の件を巡って使われていました。日銀総裁問題だけじゃなくて、チベット問題を巡る北京五輪の聖火リレー妨なども含め、オリンピック自体も「政争の具」になりかかっている今、国内も国際的にも「具がおいしい政治」をして欲しいと思います。
2008/4/10
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