◆ことばの話3160「マジックペン」

3月11日、奈良県で、虐待した子どもの体に赤いペンで「死ね」「ブタ」などと書いたといういたましい事件が起こりました。
読売テレビのお昼のニュース「ストレイトニュース」でそのニュースを伝えたのですが、その原稿に、
「赤いマジックで」
という一文が出てきたので、
「このマジックは、登録商標ではないのか?」
と、Oアナウンサーから問い合わせがありました。
日本テレビの『日テレ放送用語ガイド』には「マジックインキ」は、
「内田洋行の登録商標」
として載っていますが、「マジック」は記されていません。
国語辞典を引くと「マジック」は、
「マジックインキの略」
と書かれています。そうすると、「マジック」も登録商標になるのでしょうか?
読売新聞社の『読売スタイルブック2005』の「登録商標」の項には、
「マジックインキ、マジックペン→フェルトペン」
と言い換え例が記されています(商標権者は記されていませんが)。
そこで内田洋行の広報部に電話して聞いてみたところ、
「『マジックインキ』も『マジック』も内田洋行の登録商標です。」
という答えでした。「マジック」も商標登録されていたのですね。さらに、「マジックペン」についても聞いてみたところ、
「『マジックペン』では商標登録していないが、うちが登録している『マジック』を上につけて、しかもその下の『ペン』は一般名称ではあるものの、同じ分野の商品であることからこの呼称の使用もしないで欲しい」
という答えでした。
3月11日の夕方の関西各社の夕方のニュースでは、私がチェックしたところ、
(NHK)ペン
(MBS)マジックペン
(ABC)赤いペン
(KTV)赤いマジックのようなペン(スーパーは赤いペン)
(YTV)赤いペン
と出ていました。(間違っていたらごめんなさい。途中で電話がかかってきたので、ちょっと記憶違いがあるかもしれません。)
今後注意したいと思います。
2008/3/13


◆ことばの話3159「『障がい者』という表記」

今年2月の新聞用語懇談会放送分科会で、毎日放送の委員が、
「最近、『障がい者』という表記が各自治体などで増えているようだが、これを取り入れている局はあるか?【障害者基本法】【障害者自立支援法】【障害年金】などは、「害」の字を使わなければならないと思うのだが」
という問題を提起しました。その時は、2003年10月の関西地区新聞用語懇談会で紹介された加盟各社へのアンケート(22社)の結果として、
<障害者>使う=21社、出来るだけ使わない=1社、使わない=0社
だったことや、
『障害者団体から「障害者という言葉はやめて『チャレンジド』という表現にして欲しい」という申し入れがあった。また、「障害」ではなく「障碍」と表記すべきだという声や、「障害を持つ(持っている)人」という表現に対して「(障害を)好きで持っているわけではない」というような抗議が1998年頃にはあったこともある。最近(2003年頃)は、あまりそういった抗議はない。』
といった話や、2004年年5月の春季合同総会で、「障害者」の表記について、北海道新聞の委員から、
『障害者の人から「『障害者』の『がい』を漢字で『害』と書くのはなぜか。自治体で『害』を使わないところも増えているのに、新聞社はなぜ自治体に遅れを取っているのか」と電話があった。北海道では、札幌市、伊達市など3つの自治体が「障がい者」という表記を始めているほか、釧路市でもこの(2004年)6月から「障がい者」と表記することに。北見市も検討している。各社、どう考え対応しているか?』
という質問が出たが特に意見はなかった、という過去の討議内容を紹介した上で、現状に関して話し合いをしました。その時には、
『ニュースでは全社「障害者」という表記だったが、最近自治体で「障がい者」という表記が増えてきている。フジテレビと日本テレビは「採用」のHPでは「障がい者」という表記を使っている。JALも「障がい者割引」という表記。NHKは、自治体や「障がい者団体」と共催する事業(展覧会、展示会など)では、「障がい者」という表記を使うことがある。(例・NHKハート展)特定の団体が「障碍〜」という漢字を使うこともある。』
という報告がされました。
これに関連して3月6日の朝日新聞(大阪版)に、3月5日の大阪府議会の答弁で橋下徹知事が、
「これまで『障害者』としてきた行政文書やパンフレットなどの表記を、4月から『障が
い者』と改める方針を明らかにした。」
と報じています。理由として、
「『害』を平仮名にすることで一人でも心がほっとするのなら、何らためらうことはない」
と答弁したということです。
大阪府障害保健福祉室は、
「今後、新たに作成する文書やパンフレットなどで表記を改める」
とし、
「書き換え費用がかさむ看板などについては、財政難を考慮して現状のままにすることも
ある」
というふうに記事には書かれていました。
なお、全国ではこの「障がい者」という表記を採用しているのは、3月6日現在では、
「7道県」(北海道・福島・大分・山形・三重・宮崎・熊本:4月から大阪に加え、岐阜も)
だそうです。
この件に関して、大阪府障『害』保健福祉室に電話して聞いてみたところ、
「条例や法令の表記を変えるわけではないが、府民に配布したりするものや、簡単に変え
られる表示などは変えていく。『障』の字に対しても、同じような意見があるのは承知しているが、『害』の字ほど強い要望はない。今後表記のみならず、『障害者(しょうがいしゃ)』という呼称自体もいかがなものかというような論議がもっと巻き起これば、その時点で検討することになろう。その意味では、最小限の変更といえよう。他の道県も同じようなスタンスだと思う」
とのことでした。
2008/3/11
(追記)
大阪府は2008年4月から原則「障がい(者)」という表記を採用しました。その「報道発表資料」をHPで見つけましたので、以下に張り付けておきます。

*報道発表資料〜「障害」の「害」のひらがな表記の取扱いについて〜
平成20年3月26日(水曜日)
代表連絡先・障がい保健福祉室企画調整グループ

 大阪府では、障がいのある方の思いを大切にし、府民の障がい者理解を深めていくため、
大阪府が作成する文書等においてマイナスのイメージがある「害」の漢字をできるだけ用いないで、ひらがなで表記することとしましたのでお知らせします。
1 取扱いの原則
 「障害」という言葉が、前後の文脈から人や人の状態を表す場合は、「害」の漢字をひらがな表記とします。
 ※ただし、次に掲げる場合は、引き続き、「障害」を漢字で表記します。
 ・法令、条例、規則、訓令等の例規文書(ただし、法令や条例・規則・訓令等に基づき定義されている制度・事業・府の組織の名称について、法的効力を伴わない一般的な文書等において使用する場合は、ひらがな表記を基本とします。)
 ・団体名などの固有名詞
 ・医学用語・学術用語等の専門用語として漢字使用が適当な場合
 ・他の文書や法令等を引用する場合
 ・その他漢字使用が適切と認められる場合
2 対象の文書等
 原則として、平成20年4月以降、新たに作成・発出及び改定する文書等(ただし、法令、
条例、規則、訓令等の例規文書は除きます。)

以上です。もう10か月ほどたっていますが、特にこれに対する反応(良いとも悪いとも)を私は聞いたことがありません。もちろん、大阪府にはいろいろと意見が届いていると思いますので、今度、聞いてみます。
2009/1/7
(追記2)

2009年1月23日の朝日新聞の「私の視点」東海聴覚障害者連盟相談役後藤勝美さんという方が、
「行政用語 障害を『障がい』とする意味は」
という意見を寄せていました。
後藤さんは岐阜市在住で、岐阜県の福祉課が「障がい福祉課」に名称表記を変えたのだが
「なぜ『害』がいけないのか?」
と疑問を呈してらっしゃいました。
ところが、この間、ネットを検索していたら、この後藤さんが3月にお亡くなりになっていたのです・・・合掌。

ところで、7月28日の各新聞に載った「民主党のマニフェスト」を読んでいたら、
「障害者自立法を廃止して、障がい者福祉制度を抜本的に見直す」
とありました。民主党は、
「障がい者」
という、平仮名を交えた表記を採用しているようです。
2009/7/31
(追記3)

2009年12月4日の読売新聞朝刊に、内閣府から「政府広報」として出ていた広告が、 「障害者週間(12月3日から9日)」
「障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会は、あなたのちょっとした配慮や工夫で実現できます。障害のある方について知り、身近なこととして考えましょう。詳細は、内閣府の『障害者施策』HPまで。」
これが全文です。「障害者」は「害」を使っていました。内容は良いのでしょうが、文章は硬くて分かりにくい“悪文”ですね。典型的な「お役所文章」と言えましょう。なんと言っても、最初の一文、センテンスが長い!あとは良いけど。最初の文章、ぼくなら、 「障害があってもなくても、みんながお互いに『人格』と『個性』を尊重し、支えあう。そういった『共生社会』は、あなたのちょっとした気配りや工夫で実現できます。」
こっちの方が、柔らかい表現だとは思いませんか?
2010/7/25


◆ことばの話3158「ご安心です」

2月15日、出張で東京に行ったときのこと。帰りに東京駅で、お土産の「東京ばな奈」を買ったら、売り子のきれいなお姉さんが、代金を受け取って品物を渡しながら、こう言いました。
「3月8日まで、ご安心です」
!?ヘンな日本語!
「正しい日本語」、いや「フツウの日本語」に直すとしたら、
「3月8日まで、安心してお召し上がりになれます」
「3月8日まで、召し上がっても大丈夫です」
「ご安心下さい、3月8日まではお召し上がりになれます」
といったところでしょうか。いずれも文章がやや長い。そこでそれを縮めると、
「3月8日までご安心です」
という文になるのかなあ・・・でも「ご」を取って
「3月8日まで、安心です」
ならおかしくないよな。これを丁寧にしようとして不用意に「ご」をつけたという可能性が高いな。あ、もしかしたら、
「3月8日まで(火災予防週間で)、火の用心です」
と言おうとして、言い間違えたとか・・・・なわきゃないか。
そう言えば、例の「A定食になります」とか「1000円からお預かりします」といった「マニュアル敬語」を最初に耳にしたのも、たしか東京駅だっけ。これからこの、
「ご安心です」
は、東海道新幹線や東北新幹線、上越新幹線などで、全国のキオスクや売店に、「スムース」に広がるかもしれません。全国の皆さん、「ご注意です」!
あ、この「安心です」は、例の、
「次です」「続いてです」「まずです」(平成ことば事情2554「続いてです」「2627まずです」参照)
と同じようなイメージがありますね。「名詞+です」「接続詞+です」「副詞+です」という形の一つですね。これは本当に、すでに広がっているかもしれません。

2008/3/12


◆ことばの話3157「スムース」

3月15日にJRのダイヤが大幅に改正されます。そのJR東海のPRポスターを、2月中旬の東京出張の際に東京駅と京都駅で見かけました(写真をご覧下さい)。N700型のぞみが大増発されるようです。ポスターにはこのように書かれていました。
「あたらしいダイヤ。
あたらしい乗り方。
あたらしい新幹線。
そのすべてで、あなたに『スムース』という品質を」
ここに大きな文字で、
「スムース。」
と書かれていたのに目が留まりました。あれ?正しくは、最後が濁って、
「スムーズ。」
じゃないのかな?もちろん年配の人なんかで「スムース」と言う人はいるけど。
『精選版日本国語大辞典』(電子辞書)では、見出しは「スムーズ」と濁り、意味の中に(スムース)とも書かれていますから「許容」ということでしょう。『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』『新潮現代国語辞典』『明鏡国語辞典』『日本語新辞典』『岩波国語辞典』も、見出しは「スムーズ」で意味の中に「スムース」とも書かれています。『広辞苑(第6版)』には、なんと「スムース」が見出しにありました!意味としては、
「スムーズの訛」
と書かれているではありませんか!やっぱりそうか!ついでなので、
「ナフキン」「ベット」「デバート」
も引いてみると、果たして、
「ナフキン」=ナプキンの訛
は載っていましたが「ベット」「デバート」は載っていませんでした。
『NHK日本語発音アクセント辞典』『新聞用語集2007年版』『共同通信社記者ハンドブック第10版』「スムーズ」しか載っていません。
こう見てくると、新聞や放送の世界では、
「スムーズ」
と濁るほうに統一されていて本来の表記はそうなんだけど、一般社会では「スムーズ」と「スムース」が並存しているということでしょうか。
ネットの世界はどうかな?Google検索(3月12日)では、
「スムーズ」=3000万件
「スムース」= 539万件
と、どちらも大変たくさん使われていましたが、比率はおよそ、
「スムーズ:スムース=11:2」
でした。よく考えると、英語では、
「smooth」
でこの語尾の「th」の発音は、「ズ」と濁る場合と、「ス」と舌の先を噛むような音を出す場合と両方ありそうですから、「スムース」でもまったく誤り、というわけでもなさそうなのですがね。外来語は、こんなに定着してもやはりややこしいッス。

2008/3/15
(追記)

NHKの原田さんからメールをいただきました。 『「スムース」で思い出すのが、「LOOSE」です。日本では「ルーズ」と言いますが、英語では「ルース」です。ちょうど「SMOOTH」と反対の現象ですね。』
ああ、たしかにその通りですね。こちらは「ルーズ」で定着していますね。
また『日本一愉快な国語授業』(佐久 協、祥伝社)にも、この「スムース」と「ルーズ」の問題が出ていました。
2008/3/17
(追記2)
また東京に出張で行って、今度は新宿駅で見つけました。新宿西口地下にあった大きな広告看板に、
「山手トンネル、2年後、渋谷へ。」
と書かれた横に、
『東京SMOOTH(トーキョー スムース)〜首都圏の流れが、地下から変わる。」
と書かれていました。首都高速道路株式会社の広告です。ここでも「スムーズ」と濁る形ではなく、
「スムース」
と濁らない形でした。もしかしたら東京の人は、
「スムーズよりスムースが好き」
なのでしょうか?


Google検索(6月23日)では、
「スムーズ」=4000万件
「スムース」= 648万件
で、その比率は、
「スムーズ:スムース=4000:648=1000:162」
でした。やはり「スムーズ」と濁る方が8倍ほど使われているようです。
2008/6/23
(追記3)
キリンビールから新しく出た発泡酒の名前が、
「スムース」
濁りませんでした。ビールだけに、泡が濁らないほうがいいのかな?
2008/9/23
(追記4)

新聞用語懇談会の会議で新潟に行ってきました。その新潟空港で、金属探知機などのチェックをする直前の所に張ってあったポスターのタイトルが、
「スムースな保安検査の為に!」
とあって、濁らない「スムース」を使っていました。誰が書いたかと言うと、
「国土交通省と定期航空協会」
の連名でした。

2009/6/1
(追記5)

会社の近くのコンビニに張ってあったタバコのポスターに、
「スムースを極めた革新の黒〜ラークブラックラベル」
という文字が。やはりどうも関東方面の方が「スムース」を使う素地がありそうな感じがします。ポスターなんかで「文字として」見るのは、東の地域か、東で作られたもののような気がするのです。
2009/11/23


◆ことばの話3156「片栗粉のアクセント」

先日、「情報ライブミヤネ屋」と「ニューススクランブル」の外部のナレーターの方を対象にした放送用語勉強会を開いたのですが、その中で、
「『かたくり粉』のアクセントは、NHKアクセント辞典も新明解アクセント辞典も、
(1)カ/タク\リコ
(2)カ/タクリ\コ
しか載っていないが、この間ディレクターに、
(3)カ/タクリコ
という『平板アクセント』でお願いしますと言われた。平板アクセントも一般的には使われていると思うが、間違いなのか?」
という質問を受けました。アクセント辞典を見ると、確かに「平板アクセント」は載っていません。
ただ『新明解国語辞典』では、「平板アクセント」も載っています。
NHKでは「平板」はまだ採用されないのか?と、知り合いに聞いてみたところ、
「私見では、当分採用されないと思う。本来「カ/タクリ\コ」が、アクセントが移動して、「カ/タク\リコ」も登場したと考えられるが、平板アクセントはカタカナ語と同じように、何でも平らになる傾向の現れではないか。「コムギコ」の平板は、4拍なので、参考にはならない。また「薄力粉」は「ハ/クリキ\コ」と「ハ/クリキコ」、「強力粉」は「キョ/ーリキコ」のみと、規則性はない。かたくりの粉」と「強力な粉」の、修飾上の差があるのかもしれないが。」
そうなのか、採用されそうもないのか・・・そこで、
「カ/タクリ\コ」
だと、「糠平湖」「河口湖」のように、
「○○○○湖」
と同じアクセントになって、
「片栗湖」
のイメージがあるのではないでしょうか?
5拍の湖名だと、「平板」はないですよね?
それに対して、5拍の「粉」の
「○○○○粉」
は、「平板」のイメージがあります。」
というメールを送ったところ、
「多分それは関東(共通語)と関西の感覚の違いだろう。『日本国語大辞典』では、
標準アクセントが「中高」の2種、「平板」は京式アクセントになっている。私の中には50数年、「カ/タクリ\コ」しかない。
なお複合語のアクセントについては、『NHKアクセント辞典』の付録の178ページあたりに詳しく書かれているが、一般的に後部要素の前で下がる傾向にある。また、「薄力」「強力」は漢語だが、「かたくり」は和語。「粉(こ)」も本来は和語だから、「湖」と同じにはならないかもしれないが・・・。単に音や拍数で、アクセントを同一視することはやめたほうがいいと思う。「4拍(和語)+粉」のほかの例があれば参考になると考える。俗語で「天ぷら粉」はどうか。私は「テ/ンプラ\コ 」しか思い浮かばないが、もし「テ/ンプラコ」があるというのなら、それはやはり『東西の差』ではないだろうか。」
という返事が。
おお「てんぷら粉」!「てんぷら粉」も、私の場合は「平板アクセント」ですね!
ということは、これは、
「京阪アクセント」
なんですね!そうすると「気づかない大阪弁」ならぬ、
「気づかない関西アクセント」
なのかもしれません。さらに、
「もちろん『ウ/ドンコ』は『平板アクセント』。もう一つ、
『上新粉(ジョ/ウシ\ンコ)』(『シン』は別字もある)
というメールも。
その後、新聞用語懇談会放送分科会のメンバーにと、メールで聞いてみたところ、
「アナウンス部内の狭い範囲の話でしたが、『片栗粉』は、(1)「カ/タク\リコ」派が圧倒的に多く、私も同様です。」(テレビ東京)
「わたくし個人的な感覚では、(1)「カ/タク\リコです。」(フジテレビ)
「 私は、(1)カ/タク\リコ(中高)です。」(静岡放送)
と、東京〜静岡勢は(1)カ/タク\リコ派が優勢のようです。私は、同じ「クリコ」なら、
「ヴ/ーヴク\リコ」
は好きですが、「カ/タク\リコ」はなじめないなあ。あ、「ヴィーヴクリコ」はシャンパンです。
そして大阪勢は、
「『片栗粉』のアクセントですが、東日本出身アナは(1)「カ/タク\リコ」で、平板アクセントの(3)「カ/タクリコ」は気持ち悪いらしいです。関西・西日本出身アナは、アクセント辞典に載っていない平板アクセントの(3)「カ/タクリコ」が多かったです。
『小麦粉』の平板アクセントと対のような感覚があるのでしょうか?(1)の中高アクセントだと、『プエルトリコ』みたいに聞こえて気持ち悪いそうです。(2)「カ/タクリ\コ」はもっと違和感あるようです(笑)『コナモン文化』の中心地としては、『片栗粉』は関西アクセントの『平板読み』違和感がないようです。(1)(2)がOKなら、(3)は当然、OKという認識が感じられます。全国では『片栗粉』の平板アクセントは、やはり気持ち悪いのでしょうか?(テレビ大阪)
と、私と同じ感覚ですね。でも東京でも「平板派」がいました。
「個人的には『平板アクセント』です。順不同ですが以下はすべて個人的に『平板』です。
『カレー粉、小麦粉、中力粉、強力粉、薄力粉、ふくらし粉、打ち粉、そば粉、う
どん粉、汁粉、メリケン粉、パン粉』
ただ、『火の粉』は『頭高アクセント』ですね。
『かたくり粉』のアクセントは、おそらく『アクセント辞典』次回改訂の対象になろうかと想像しています。」(NHK)
うーん、同じ東京のNHKでも意見が違うのですねえ。年代差もあるのでしょうか?
あ、そうだ、このパターンで「平板アクセント」のものを見つけたぞ!
「ハミガキ粉」
はどうでしょうか?『NHKアクセント辞典』には、「平板」も3番目に載っています(全部で3種類のアクセントが載っています)。
私は「平板」と「ハ/ミガキ\コ」、両方使います。
その後またNHKの知り合いに
「『メリケン粉』 はどうでしょうか?これは『平板』しかアクセント辞典に載っていませんよね。5拍でも『粉』の前が『ん』なので例外でしょうか?」
とメールしたところ、
『「メリケン粉」は「平板」しかないだろう。アクセントの型は、規則ではなく傾向だから、いろいろあっても不思議ではないし、無理に型に押し込めようとするのはどうかと思う。
前にも書いたが、共通語アクセントでは、複合名詞で後部が1拍の場合はその前で落ちる傾向はあるようだ。ただ、よく使われると平板化することもある。「メリケン粉」については、小麦粉の俗称だから、「ウドンコ」「コムギコ」などと併用することで「平板」が自然なアクセントになったとも考えられる。また「メリケン」をカタカナ語と考えると、別の規則性が生まれるのかもしれない。仮に「ブラジル粉」とか「メキシコ粉」があったとすると、私でも「平板」で読みたくなるので。
もう一つの仮説だが、共通語の場合、特殊拍、特に「ん」と「ー」を独立した1拍として意識しない傾向があるような気がする。「ん」だからアクセントが置けないということではなく、メリケン粉なら、「メ・リ・ケン・コ」のように理解して、結果として4拍のように発音しているのではないか、という意味。(4拍なら平板が普通)以前、東京のアナウンサーが、発音を縮めているという指摘があったが、もともと「ん」や「ー」を、完全な1拍としない傾向が、共通語にはあるのかもしれない。あるいは「メ・リ・ケ・ン・コ」ではなく、実際には「メリ・ケン・コ」と2拍ずつまとめて発音しているのかもしれない。
「歯磨き粉」は、私も(1)の「ハミガキ\コ」しかないが、(2)の「ハミガ\キコ」は「キ」の無声化による移動だろう。『日本国語大辞典』では、(1)(2)が標準、(3)の平板が京式となっていた。
料理、特に和食のことばは、京都で使われて全国に広まることが多いと考えられるので、「○○○○粉」についても、いずれ平板が有力になる可能性もあると思う。』
と詳しく分析したメールをいただきました。ありがとうございました。
読売テレビのアナウンス部でも聞いてみたところ、

(1) カ/タク\リコ=3人
(2) カ/タクリ\コ=0人

(3) カ/タクリコ =10人

「平板アクセント」が圧倒的でした。
(1)の「中高アクセント」と答えた3人の出身地は、
「埼玉、千葉、長崎」
で、(3)の「平板アクセント」と答えた人の出身地は、
「埼玉、兵庫2、北海道、静岡、東京、青森、神奈川、大阪2」
でした。


2008/3/10
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