◆ことばの話3140「ポジション難民」

2008年2月20日の夕刊フジに、
『「ポジション難民」いつまで翔?』
という見出しで、プロ野球・日本ハムのルーキー・中田翔内野手の話題が載っていました。大型スラッガーではあるものの、守備に難があってなかなか守備位置が決まらない中田選手は、キャンプで、3塁→1塁→外野と守らされてみたものの、コーチからは、
「ダメ出し」
ポジションが決まらない、その状態を、
「ポジション難民」
と名付けていたのです。
「平成ことば事情3099」「ネット難民」について書きましたが、その際に「○○難民」という表現が、やや気安くやや差別的に使われている現状について書きましたが、ひと昔前ならこの「難民」に当たる部分「ジプシー球団」のように、
「ジプシー」
が使われたのではないでしょうか?この「ジプシー」が差別に当たるとして使われなくなってきた。しかし、それに代わる手軽な表現はないものか?と思っていたところに「難民」が登場したのではないでしょうか。そう考えると気軽に「○○難民」という表現は使えなくなりますね・・・。
あ、でも私が見出しをつけるなら、「で」を一つ増やして、
『「ポジション難民」、いつまで翔?』
にしているところですが・・・
2008/2/26

(追記)

『週刊朝日』2008年4月18日号の、後ろの方のグラビア特集のタイトルが、
「環境難民最新報告」
でした。気候の異変によって住む土地を追われる人々が急増しているとしてフランス人ジャーナリストによる写真の特集をしています。モルディブ、アラスカ、アフリカ・チャド湖、ネパール、ドイツ・ハリゲン諸島。温暖化や海水面の上昇、干上がる湖などを見ていると、「地球温暖化」の影響は、じわじわと地球全体を覆っているんだなと感じました。
Google検索(4月11日)では、
「環境難民」    = 1万6200件
「ポジション難民」 =      4件(そのうち2件は私が書いた分)
「ネットカフェ難民」=90万5000件

でした。

2008/4/11


◆ことばの話3139「防寒具に身を包んだ受験生」

2月25日、国公立大学の2次試験日です。お昼のニュースでその模様を伝えていました。その原稿の中に、
「防寒具に身を包んだ受験生」
という表現がありましたが、それを聞いて感じたのは、
「表現、固いなあ」
と言うこと。いかにも常套句ですよね。画面には、制服のブレザーだけでコートも着ていない元気なイガグリ頭の受験生の姿もあったし、受験生を励ますチアリーダーの女性(そう、あのユニフォーム姿で。素足をさらけ出したミニスカート姿で。寒そう・・・・)の映像もありました。画面に映っていたたいがいの受験生は「マフラーだけ」とか「ダッフルコート姿」で、結構元気そうでした。ここは普通に、
「コートにマフラー姿の受験生」
で、よかったんじゃないかな。
いずれにせよ、受験生のみなさん、がんばってくださいね!!
2008/2/25


◆ことばの話3138「という人間から」

制作フロアを歩いていると、スタッフが取材の電話を掛けている声が聞こえてきました。
「・・・・ということで、○○という人間から電話が入っているかと思うんですが」
なんということもない言葉ですが、この中の、
「○○という人間」
というフレーズに、耳が引っかかりました。たまに耳にする言葉ではありますが、これ、なぜ「人間」という言い方をするのでしょうか?人間でないものから電話がかかってくることは、まあありえないですよね。
「○○という『ライオン』から電話が入っていると思うんですが」
「▽▽という『ゾウ』から電話が入っていると思うんですが」
入るか、そんなもん!
この「人間」という言い方は、関西弁なのかな?普通は、
「○○という者から電話が入っているかと思うのですが」
というふうに、
「者」
を使いますよね。それを「人間」とすると、なにやらおどろおどろしい感じも・・・・。これが、
「人」
だと、子どもっぽくって、しかもぞんざいな感じ。
「○○って人から電話が入ってると思うんだけどお」
ぞんざいですねえ、どうも。ビジネスでは×でしょう。
それにしても「人間」、奥が深い?
2008/2/25


◆ことばの話3137「手袋をはめる?はく?」

社内のWさんからの質問です。
「手袋を装着する動作は、なんと言うのが正しいのでしょうか?『はめる』ですか『はく』?それとも『装着する』と言った方がいいのでしょうか?」
「うーん、『はめる』でいいと思いますが、『はく』というのも耳にしますね。『装着する』は間違いではないですけど、堅いですよね、表現が」
と答えるにとどまりました。それぞれの反対語を考えると、
<手袋をはめる⇔はずす、はく⇔脱ぐ、装着する⇔脱着する?>
うーん、あまり参考にならないな。ネットでちょっと調べてみると、なんとNHKの言葉おじさん・梅津正樹アナウンサーのHP(2005年1月27日)に答えが。
それによると、「手袋を○○○」というタイトルで「“手袋を装着する”ことを何と言いますか?」と問いを発して全国から寄せられたお便りを分類すると、大きく二派に分かれたそうです。
まず、「関東甲信越・東海・近畿・中国・九州」など広い範囲で使われているのが、
(手袋を)「はめる」「する」
で、“している状態”を「する」、“装着する時”を「はめる」と使い分けているという意見もあったそうです。
もう一派は、「北海道・東北・信越・近畿・四国・沖縄」で使われている、
(手袋を)「はく」
という言葉。「はく」は、「ズボンをはく」「靴下をはく」など、下半身につけるものをイメージしますが、漢字は、「腰から下の部分を覆う衣類を身につける」ことを表す、
「穿く」
のほか、「靴や靴下などを足先につける状態」を意味する、
「履く」
他にも、「刀などを腰につける」意味の、
「佩く」
があると言い、「いずれも腰から下の動作を意味」しています。
また徳島県の方からは、
「手袋をはくの他に、“手ぐつをはく”と言う。」
と意見が届いたそうです。「手ぐつ」の「くつ」は「沓(くつ)」のことで、足を包むものを「くつ」と言い、手につけるのは「手ぐつ」と言ったようだと書かれています。さらに、
(手袋を)「さす」「かげる」「やる」
という表現も寄せられたそうです。地域によって様々な言い方がある事を、さすが言葉おじさん、しっかりとまとめてらっしゃいますね。
ふと思いついて、北海道・釧路出身のSキャスターにメールして、
「『手袋を○○』、という場合、『○○』には何が入る?」
とメールで聞いたところ、すぐに、
「はく」
というメールが返ってきました。やっぱり!さらに、
「推測でしかありませんが、うちの田舎は寒くて、いわゆる毛糸の手袋などではもたず、スキーウエアとセットのような厚手の手袋が普通でした。従って、五本指に分かれておらず、親指だけが別になっているタイプが主流。靴のように、スポっとはめる感じです。そこから「履く」なんて表現がでたのかも。」
なるほど、「ミトン型」と「5本指型」で表現方法が違う(かもしれない)のですね!
ふーん、興味深いですね。Google検索(2月21日)では、
「手袋をはめる」= 7万0800件
「手袋をはめた」=12万6000件
「手袋をはめ」 = 13万2000件
「手袋をはく」 =    3730件
「手袋をはいた」=   8630件
「手袋をする」 = 42万9000件
「手袋をした」 = 31万6000件
「手袋を装着」 =  2万6700件
でした。
2008/2/21


◆ことばの話3136「ムチャぶり大作戦」

2月20日の読売新聞夕刊に、
「ムチャぶり大作戦」
という文字がありました。そこには「ムチャぶり」の意味も書かれていました。
「ムチャぶりとは無理を承知で難しいネタを相手に振るというお笑い用語です。」
確かに最近耳にしたことはありましたが、お笑い業界の「業界用語」にとどまっているのかと思っていたんですが、ついに新聞にも出てきましたか。
もう少し具体例が欲しかったな。ネット検索してみると(2月21日)、
「ムチャぶり」=1万8500件
でした。おお、結構出てきたな!具体的な例を引っ張り出すと、
「若手芸人に無理難題を押し付ける『ムチャぶり集』」
「Sさんからのムチャぶり」
「どんどん『ムチャぶり』していい、ということなので、ここは『Sキャラ』全開でいったほうがいいのかしら?」
「オモロいこと言って、次の人にムチャぶりしちゃえ」
うーん、よくわかるような、わからないような・・・。でもこの言葉、確実に浸透しているようですね。


2008/2/21
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