スープのさめない距離


◆ことばの話3125「電動車いす」

2月4日の新聞に、2月3日の午前6時40分頃、岡山県倉敷市で101歳の男性と見られる男性が電動車椅子に乗って焼死しているのが見つかったという記事が載っていました。
その男性の乗っていた乗り物の名称が隠しバラバラでした。
(見出し)         (本文)
(朝日)電動車いす   電動車いす
(産経)電動四輪車   「セニアカー」(電動四輪自転車)
(毎日)カート       電動カート

読売新聞と日経新聞では記事が見当たりませんでしたが、毎日の記事には、
「カートの商品名の確認を急ぐ」
と書かれていました。
この商品は、いわゆる電動車椅子ではなく、ハンドルが付いているタイプの「乗り物」のようなもので、
「シニアカー」
などとも呼ばれていますが、まだ一般名称が、確定していないと思われます。
2008/2/7

(追記)

早速、NHKのHさんからメールをいただきました。
『「セニアカー」はスズキが「電動三輪車」として商標登録しています。
「シニアカー」もスズキが登録はしていますが、別の商品です。
「電動車いす」は障害者用の車でしょうから、
「シニアカー」
を一般名として使用するようにするのか、「電動三輪車・四輪車」などとするかが、これからの課題です。』
詳細にありがとうござました!
2008/2/8


◆ことばの話3124「氷雪像」

2月5日、今年も「さっぽろ雪まつり」が始まりました。それを伝えるフジテレビのお昼のニュースを見ていたら、札幌の局の中継で耳慣れない言葉が飛び込んできました。それは、
「ヒョーセツゾー」
という言葉です。漢字で書くと、
「氷雪像」
ああ、何だ、それならわかる、と思いますが、
「雪像(せつぞう)」
は聞き慣れていますが、「ひょうせつぞう」は耳慣れません。その後NHKとテレビ朝日のニュースを見ていると、
「氷と雪の像」
と言っていました。これならわかりやすいですね。おそらく札幌の現地では「氷雪像」という言葉はおなじみなのでしょうが、雪国ではないところに住む私が聞くと、ちょっと違和感がありました。現地の専門用語 と言うべきものかもしれません。意味はわからないこともないだけに、特に気にせず通り過ぎそうですね。
さてその日の夕方、『情報ライブミヤネ屋』のトップニュースの原稿に眼を通していたら、「雪まつり」の原稿が出てきました。それは系列の札幌テレビの記者が書いた原稿で、お昼のニュースでも読まれたものでしたが、そこにはしっかりと、
「氷雪像」
とありました。やっぱり!!早速これを、
「氷と雪の像」
に直して放送しました。おそらく、あまり気にしている人はいないと思いますが・・・・。
Googleの日本語ページ検索(2月7日)では、
「氷雪像」   = 8420件
「氷と雪の像」=   1件
でした。1件!?少なすぎない??
ところで2月5日の日経新聞・夕刊には、
「雪像環境問題訴え、さっぽろ雪まつり開幕」
の見出しが。本文は、
「大小二百九十基の雪像・氷像が並び」
となっていました。「雪像」と「氷像」を分けて表記しています。この問題は、
「国内外」
と、ひとことで言うか(書くか)、
「国内、海外(海外)」
と分けるかという問題と、同じですね。「わかりやすさ」に関しての、書き言葉と話し言葉の問題だと思います。
2008/2/7


◆ことばの話3123「利便性が・・・」

報道局兼
『ウェークアップぷらす』のMディレクターが質問してきました。
「道浦さん、『利便性』は『低い』でしょうか?それとも『薄い』でしょうか?もしかして『小さい』ですか?」
なあるほど・・・そういわれると・・・どっちかな?
1月18日のGoogle検索では、
「利便性が低い」= 11万 4000
「利便性が薄い」= 2万 1300
「利便性が小さい」=   0
で「利便性が低い」がよく使われているようですね。
また逆に、数値大きい「可能性が高い」のような表現では、
「利便性が高い」= 42万 3000
「利便性が濃い」=   0
「利便性が大きい」=   16万
となって、「利便性」の頻度は、
「高い>低い」
のようです。そして単なる炉弁製の「有無」を示した言い方では、
「利便性がある」= 90万
「利便性がない」= 9920
でこの「利便性がある」という言葉が、一番よく使われているようです。
辞書もいくつか引いてみましたが、「利便性」という見出しはありませんでした。また新しい辞書は「利便」を引くと用例の中に、
「利便性がある」
のように「利便性」十「がある」という言葉が出てきましたが、ちょっと古い辞書はそれさえありませんでした。ということは「利便性」という言葉、意外と新しい言葉なのかもしれませんね。

2008/2/7


◆平成ことば事情3122
  「メガチューズデーか?スーパーチューズデーか?」


民主・共和両党の大統領候補指名を争う予備選・党員集会が集中する、例年3月初めの火曜日を、従来、
「スーパーチューズデー(決戦の火曜日)」
と呼んでいましたが、今年は、日程が例年より大幅に前倒しされ2月5日に集中。しかも大票田を抱えるニューヨーク、カリフォルニアを含む民主党は22州(共和党は21州。両党で重ならない州もあるので、予備選などを行う州の数は、全部で24州)となったため、アメリカのメディアはこの日を、「スーパー」をしのぐ、
「メガ(巨大な)チューズデー」
と命名しました。日本経済新聞(2月5日)によると、このほか一部の米メディアは、
「スーパー・デューパー(大騒ぎの)・チューズデイ」
「ツナミ(津波)チューズデー」
などとも呼んでいるそうです。
しかし、日本のメディアで「メガチューズデー」を使っているのは、現在、
「読売新聞と日本テレビ系列のみ」。
あとは従来の「スーパーチューズデー」という呼称を使っています。TBSは最初「ズーパーチューズデー」を超える「メガチューズデー」と言っていましたが、今は「スーパーチューズデー」に戻っています。
毎日新聞の外信部は「メガ」を使わない理由を、
「アメリカのメディアも、基本的にニュースでは『スーパーチューズデー』を使っているから」
と答えていますが、「メガ」は「100万倍」の意味だから、比喩表現としても「ちょっとおおげさ」という声もあります。
Google検索(2月4日)では、
「メガチューズデー」    =  7260件
「スーパーチューズデー」 =4万1700件
と、「スーパー」の方が6倍近く使われています。
各社に念のため、どちらを使っているか聞いてみたものを記しておきます(一部重複)。
(テレビ朝日)外報では、「スーパー」が定着しているため今回は「スーパーチューズデー」で統一する申し合わせがなされた。
(共同通信)原則、「メガチューズデー」は使わず「スーパーチューズデー」でやることを昨秋(2007年)に決めている。去年の夏の原稿では、両方使ったものもある。
「来年十一月の大統領選投票日はまだ一年以上先。だが選挙準備は異例の早さで本格化している。それは民主、共和両党の大統領候補指名を争う全米の州予備選、党員集会が例年よりも大幅に前倒しされるからだ。多くの州の予備選などが集中する『スーパーチューズデー』は通常は三月初めだが、来年は二月五日。しかも同日に予備選などを実施するのは大票田を抱えるニューヨーク、カリフォルニアを含む二十州以上となり、米メディアは二月五日を「スーパー」をしのぐ「メガ(巨大な)チューズデー」と命名。この日が指名レースの行方を決める「決選の日」となるのは確実だ。
 メガチューズデー前に少しでも優位を確保するため、二月五日以前に予備選などが行われる数州の重要性も「例年より増す」(共和党マケイン上院議員陣営の元幹部)とみられる。」
(朝日新聞)朝日は「スーパーチューズデー」一本槍。
(毎日新聞)「メガチューズデー」使用記事はわずか1件。その例外も「とも呼ばれる」との内容であり、事実上すべて「スーパーチューズデー」。理由を外信部は、
「アメリカのメディアも基本的にニュースでは『スーパーチューズデー』を使っているから」ということ。形容詞的に「メガ」が使われることもあるようだが。
(読売新聞)なぜ「メガチューズデー」と言うかについては、紙面で何回か説明しているが、昨日(2月4日)付けにミニ解説が載ったので以下に記す。
「2008/02/04 〈解〉メガチューズデー
予備選、党員集会が最も多くの州で実施される日。過去の大統領選では、候補者選びの行方を左右してきた。これまでは3月上旬の火曜日で、『スーパーチューズデー』と呼ばれてきた。今回は選挙日程の前倒しに伴い、ニューヨークやカリフォルニアなど大規模州を含め、民主党が22州、共和党は21州で実施するため、『メガ』(「巨大な」の意)の名が付いた。」
もちろん、「スーパーチューズデー」の言い方も使われているのだろう。
(テレビ東京)「スーパーチューズデー」。これまでも「スーパーチューズデー」で、米国メディアも基本的には「スーパーチューズデー」。一部米メディアと国内メディアが「メガチューズデー」とセンセーショナルに呼んでいるが、その必要性をテレビ東京としては感じていない。
(TBS)最初「ズーパーチューズデー」を超える「メガ・チューズデー」と言っていたが、今は、「スーパーチューズデー」に戻った。
(日本テレビ)アメリカで「メガチューズデー」を使い始めたことから、今年になって使うようにした。
ということです。なお2月5日の日経新聞によると、一部の米メディアは、
「スーパー・デューパー(大騒ぎの)・チューズデイ」
「ツナミ(津波)チューズデー」などとも呼んでいるそうです。
2008/2/5

(追記)

今朝(2月6日)の読売新聞は「スーパーチューズデー」を使っていました。
2008/2/6

(追記2)

結局2月5日の「メガチューズデー」(スーパーチューズデー)は、バラク・オバマ候補が13州、ヒラリー・クリントン候補が8州を獲得、獲得代大議員数はほぼ互角の大接戦で、この日では決着がつかなかったわけですが、2月6日夜の日本テレビ『ニュースゼロ』を見ていたら、オバマ候補自身が、
「スーパー・デューパーチューズデー」
と英語で言ってましたね。その発言の字幕を、日本テレビは、
「メガチューズデー」
としてましたが。Yプロデューサーに聞いたのですが、英語では、
「ギガチューズデー」
とも言うそうです。大きければなんでもありか。ってことは日本語訳も、
「メチャ・チューズデー」
とか、
「デラ・チューズデー」
とか、
「めちゃんこチューズデー」
とか、
「バリチューズデー」
とか、勝手に呼んで良いってことかな?と北海道出身のSキャスターにメールしたところ、「北海道は、『なまらチューズデー』」
というメールが返ってきました。
2008/2/7

(追記3)

2月8日の毎日新聞の見出しは、
「焦点はミニ火曜日決戦へ」
次にまとまって予備選・党員集会が行われる3月4日を、
「ミニ・チューズデー」
と呼ぶんだそうです。Google検索(2月8日)では、
「ミニ・チューズデー」 = 4020件
「ミニチューズデー」 =  951件 (「・」なし)
でした。
2008/2/8



◆ことばの話3121「さくらジャパン」

先日の新聞で見たのですが、「女子ホッケー日本代表」の愛称は、
「さくらジャパン」
なんだそうです。さくらは日本の国の花。その意味では「さくらジャパン」、悪くないネーミングですね。
そういえば、「女子サッカー日本代表」のニックネームは、
「なでしこジャパン」
でしたね。これは「大和撫子(なでしこ)」を連想させ、賛否両論あったような気もしますが、それにしても、
「なぜ、『女子日本代表チーム』の愛称は、花の名前」
なのでしょうか?男子の場合は、
「トルシエ・ジャパン」「オシム・ジャパン」「岡田ジャパン」「長嶋ジャパン」「王ジャパン」「星野ジャパン」
というふうに、
「監督の名前+ジャパン」
なのに。男子の方が、チームに対する監督の権限や影響力が強いのでしょうか???
最初の女子サッカーが、男子と区別して目立つことを意識して花の名前にしたことを、女子ホッケーも踏襲したということでしょうか?
不思議ですよねえ・・・。
2008/2/5
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