◆ことばの話3105「ぱ・ば・ま」

唐突ですが、「ぱ(PA)」と「ば(BA)」と「は(HA)」の区別について、実感を交えて考えました。
「ぱ(PA)」という「半濁音」よりは、「ば(BA)」という「濁音」の方が、唇に力が入っていますね。単に息を吐くだけなら、たとえばプールで泳いで息継ぎの時に「息を吐く時の音」は、
「ぱ」
「半濁音」ですね。溺れそうな時は、
「ンバッ(NBA)」
「濁音」になりますがね。力が入り過ぎると「ば(BA)」になるのでしょう。決して息継ぎの時に、
「は(HA)」
とは出ませんね。水上ではなく陸上で気合を入れる時に、たとえば空手の「突き」をする時の気合の息吐きは、
「ハッ(HATTU)」
ですが。
ここからの連想。「韓国語に半濁音が多い」のは、
「唇の力が弱いから」
ではないのでしょうか?平成ことば事情3101「あぷた」で書いたように、アイヌの人たちも「唇の力が弱かった」のかもしれませんね。

一方、西日本〜九州の方言で「ばり」とか「がばい」とか若者語の「がっつり」などは「濁音」。「強調語」には、力強い「濁音」が好まれるのでしょうね。
以上「唐突」でしたあ!
2007/12/29


◆ことばの話3104「ピギーバッグ」

年末、家族旅行で北海道に行ってきました。写真は、その帰りの新千歳空港で、荷物を預ける際に見つけた張り紙です。


この中に書かれている、 「ピギーバッグ」 というものが何なのか、わかりません。その場にいた係のおじさん(おじいさん?)に聞いても、

「うーん、普段そんな詳しいことは考えてないからね」
という答え。いや、詳しいことではなくて、具体的なことだと思うんですけど。「ピギー」って、「子豚」が入ったバッグか?「おみやげ袋」と並列なので、そのような、「誰でもが持っていそうな没個性的なカバン」なのでしょうが・・・。
妻に聞くと、
「形がはっきりしない、布やナイロン製の黒いバッグじゃないの?」
とのこと。本当かな。何だ、誰もわかっていないじゃないか。
『精選版日本国語大辞典』の電子辞書にも載っていません。
こういうときはやはりインターネットかなあ。早速google検索してみると、
「ピギーバッグ」=4380件
出てきました。
「ゴロゴロ引っ張る『ピギーバッグ』、便利なのでしょうが、街中ではとっても邪魔です。」
「ギャップにピギーバッグのキャスターがハマッタ瞬間、ピギーバッグの下部は、いつもバシッ!!と、大きな音がでるくらい」
「丈夫さと軽量さを併せ持つ活動的なピギーバッグ」
などなどと出ていました。カバン販売のホームページを見ると、
「スーツケース・ピギーバッグ・ローラーバッグ」
というふうに分類されていました。この「ソフトピギーバッグ」というのは、引き手の取っ手が付いていて、本体はナイロンや布でできた柔らかくて四角いカバンで、ゴロゴロと転がして引っ張れるタイプのようです。「ソフト」というのはカバン本体のことでしょうから、「ピギーバッグ」というのは、
「引き手が付いていて、ゴロゴロと転がせるタイプのカバン」
のことのようですね。
「ピギーケース」
という表現もあります。
「ピギーケース」=9290件
「ピギーケースって『機内に持ち込めるサイズでカートつきのスーツケースっぽいもの』」
という記述も。確かに最近よく見かける国内出張や旅行に使うあのカバンね。しかも色は「黒」。これは数が多いですから、預けた場合には区別をつけるのが難しいですね・・・て、この写真の張り紙を見ながら私が持っていたカバン(妻の所有物ですが)は2つとも、
「ピギーバッグ」
ではありませんか。「灯台下暗し」というヤツですね・・・。
私の旅行用の大型スーツケースは、今から25年前の1982年、初めて海外旅行に行く時に買ったもので、それ以来、行った国のシールをベタベタ張り付けたので、もうスーツケースの地の色が見えないくらいになっていて、おそらくイマドキこんなスーツケースを使っている人は少ないから、結構目立つんですけどね。最近は、旅行中に壊れると怖いので、使っていませんが・・・もうお蔵入りですかね?

2007/12/28


◆ことばの話3103「宇宙一

北海道の洞爺湖に行ってきました。ホテルでテレビを見ていたら、洞爺湖のスーパー銭湯のようなところのコマーシャルが流れていました。そのセリフ(コピー)が、
「宇宙一の大浴場」
でした。「宇宙一」のアクセントは、「ちゅ」のところが上がる
「うちゅういち(LHLLL)」
と、コンパウンドした「中高アクセント」でした。
大きく出たな!google検索では、
「宇宙一」=47万3000件
あれま、結構あるのね。
これと似た「中高アクセント」の表現には、
「世界一(せかいいち・LHLLL)」
がありますね。こちらは、
「世界一」=744万件
当然、腐るほどある。さらに例のトヨタプレゼンツ・クラブのワールドカップの時に、
「地球一」
という表現もありましたね。これも「中高アクセント」でした。
「地球一」=31万3000件
これも思った以上にありますね。「世界一」と同義だと思いますが。それにしても誇張しすぎじゃないのかな。もちろん、
「日本一(にっぽんいち・LHLLL、にほんいち・LHLLL)」
もありますね。
「日本一」=749万件
「世界一」よりも5万件多い・・・ゴマンとあると。
こうなってくるとこれ以上の表現・・・もしくはこれと同等だけどインパクトが強い表現が求められるところですが・・・・
「銀河一」
はどうでしょうか?スペインのサッカーチーム「レアル・マドリード」「銀河系軍団」と呼ばれたことがありましたね。「世界一」を超えていると。
「銀河一」=1万9200件
ほら、あることはあるけど「世界一」や「地球一」「宇宙一」よりずっと少ない。希少価値のある表現だと思いませんか?これからはどんどん使っちゃおう!っと。
「『平成ことば事情』は『銀河一』の言葉コラムを目指します!」
とかね!

平成ことば事情1392「世界一のアクセント」もお読みください。
2007/12/28



◆ことばの話3102「全道的に

北海道に行ってきました。系列の札幌テレビを見ていたら『情報ワイド・ミヤネ屋』をちゃんと放送しているではありませんか。(まあ、当たり前なのですが、実際に目にすると感激します)コマーシャルが、北海道の企業のコマーシャルなので、
「ああ、ここまで大阪のスタジオから流れているのだな」
と、20数年前に稚内のホテルで感じたのと同じような感動を覚えました。
そして15時48分になると『どさんこワイド180』が、継ぎ目なく流れてきます。同期で札幌テレビ・アナウンス部長の明石英一郎アナウンサーが、スタジオで頑張っていました。その『どさんこワイド』の天気予報を見ていたら、
「きょうの札幌は、雪が降ったりでした。全道的に気温が上がりませんでした。」
と言っていました。
これを聞いて「ホオ」と思った箇所が2か所。まず、
「全道的に」
という言い方。これに似た言い方は近畿地方ではできませんね。単一の県ならば、あるいは九州や東北、北陸、四国のように、
「一つの地域がすべて『県』」
ならば、
「全県的に」
という表現もできましょうが、近畿地方のように「府」と「県」が混じっていると、どう頑張っても、
「全府県的に」
というところで、こなれない表現になってしまいます。関東地方も「東京都」があるので、
「全都県的に」
というのは、こなれないですよね。念のためにそれぞれgoogle検索してみましょう(12月28日しらべ)。
「全道的に」= 2万4500件
「全県的に」= 4万3800件
「全府県的に」=     2件
「全都県的に」=     0件
「全都道府県的に」=  1件
.ということで、やはり「道」と「県」はありますが、「府」や「都」はほとんど使われていないようです。
「全道的に」と来ると、続きは「雨」とか「晴れ」とか、やはり「天気」が多いようですね。一方、「全府県的に」の使用例は、
「生息する全種について、全府県的に継続的な調査を実施することは事実上不可能である」
(www.mus-nh.city.osaka.jp/rdb-bird/PS.html - 5k)
というものと、参議院会議録第94回国会逓信委員会第8号
「全府県的にこれをいろいろアプローチしてみました」
というものでした。
それからもう一つ、気になった言い方は、
「雪が降ったりでした」
というもの。本来ならば、
「雪が降ったりやんだりでした」
と言うべきところを、「やんだり」を省略して言っていました。これは北海道特有なのでしょうか?「雪がふったり」で検索したところ、1万件以上出てきましたが、そのうち、それが単独で使われていそうなものは、
「3月は道路の雪がすっかり解けたと思いきや、冬の忘れ物なのか、急に雪が 降ったりでしたね。」
「今年はもう春なはずの時期に雪が降ったりでしたもんね。」
「ここ数日は雪が降ったりでした」
とあまり数はありませんでしたが、「ないことはない」というところでしょうか。
また、札幌テレビの人にも聞いておきますね。たまに違う地方に行くと、新しい発見がいくつもありますね。


2007/12/28



◆ことばの話3101「あぷた」

北海道へ行ってきました。来年7月にサミットが開かれる洞爺湖のホテルに泊りました。帰りに、JR洞爺湖駅で列車を待っている時のこと。駅構内にある洞爺湖周辺の絵地図を見ていたら、
「道の駅あぷた」
という表記が。洞爺湖町のあるのは、
「虻田郡」
で、ローマ字表記は、
「ABUTA」
なので、当然、地名は、
「あぶた郡」
「虻」は「ぶ」と濁るのだと思っていたのですが、このひらがな表記に従うと、もしかして半濁音?そこで、JR洞爺湖駅の駅員さんに聞いてみたところ、
「あぷた・・・『ぷ』と『ぶ』の中間ぐらいですかねえ・・・虻田郡と続けて言う時は『ぶ』と濁りますねえ。」
「『道の駅あぷた』って半濁音で書いてあったんですけど・・・」
と言うと、
「そうですか、あんまり気にしたことないからねえ・・・」
ということでした。
私がこれを聞いて思ったのは、
「この地方の人たちは、濁音と半濁音の区別が、あまりないのではないか?」 ということ。それは韓国で「プサン」と「ブサン」の両方通用して言うように、韓国の人と同じような音の感覚を、北海道のこの地方の人は持っているのかな?と。そして当然のことながらこういった地名は、
「アイヌ語」
に由来しているので、
「アイヌの言葉は、濁音の半濁音の区別があまりないのかもしれない」
と思いました。「コロポックル」と「コロボックル」、両方、言いそうですもんね。「ピリカ」とか「ウポポ」とか「アンヌプリ」とか、一般の日本語より明らかに「半濁音が多い」ように感じます。


2007/12/28
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