◆ことばの話3095「ほろこる」

先日、青森県弘前市出身の虎谷温子アナウンサーと話していたら、
「大阪に出てきて、共通語だと思ってしゃべったら通じなくて、どうやら津軽弁であるらしいことがわかった」
という言葉として、
「ほろこる」
という言葉を上げていました。濁って「ほろごる」とも言うそうです。意味は、
「払うこと」
で、使い方としては、
「雪をほろこる」
「ほこりをほろこる」
というふうに使うんだそうです。へー、初めて聞きました、「ほろこる」。青森の人は共通語だと思っているのかな。
大学の時に、北海道出身者から教わった北海道弁で、
「うるかす」
というのがありましたが、これは、
「茶碗をうるかしておく」
というように、
「水に浸す」
ことだそうですが、これも私は知りませんでした。北海道人は普通に使っているようです。「しばれる」は有名ですけどね。こういった方言には、なんだか温かみを感じますね。
2007/12/21


◆ことばの話3094「おいか甥か」

昔のスクラップを引っ張り出していると、2003年12月12日の新聞が出てきました。各紙の見出しを並べてみると、
(日経)「野中元幹事長 おいを逮捕」
(毎日)「公選法違反容疑 野中氏おい逮捕」
(朝日)「野中・薗部町儀買収容疑で逮捕」
(読売)「野中氏の甥逮捕」
朝日は本文中では、
「野中広務.・元幹事長のおい」
とありました。つまり漢字で「甥」としていたのは読売新聞だけだったわけです。その後どうなっているのでしょうかね?あれから4年も経つからな。また確認しなくちゃ。
2007/12/21


◆ことばの話3093「極度額」

近くのMS銀行に行って機械で通帳記入をしていたら、機械の上に張ってあったカードローンの広告ポスターに、
「ご契約極度額」
という文字が。なんだこの「極度額」というのは?「限度額」の間違いでは?それとも「限度額」を強調する造語か?と思いましたが、そもそも何と読むのかよくわかりません。一体何と読むのでしょうか?案内係のおじさんに聞いてもわかりません。窓口の女性に、
「『きょくどがく』ですか?『ごくどがく』ですか?」
と聞いたのですが、首をかしげ、挙句の果てに、
「これは、カードローン担当の者しかわかりません。私たち窓口の者が声に出して読むことはありません」
とキッパリ・・・それって単なる勉強不足の言い訳?そもそもこの「極度額」という言葉は、MS銀行だけで使われているのかどうか? そこで近辺の銀行・信用金庫4行を回って聞いてみました。それによると、 MTUFJ銀行は、
「ローンご利用限度額」
という表記。R銀行は、パンフレットには、
「当座貸し越し限度額」
と書かれていましたが、案内係の年配のジェントルマンに「これ、なんと読みますか?」とMS銀行の「極度額」と書かれたパンフを見せると、ちょっと老眼なのかメガネを右手で軽く上げながらパンフレットを覗き込み、
「えーと、げんどがく・・・ですね。」
と言うので、
「いや違うでしょ、そうは書いてないでしょ。」
と言いながらネームプレートを見ると「研修生」の文字が。
「ああ、研修生ですか。それじゃわからないですよね。聞いたほうが悪かった。」
と言うと、
「いえ、わかります」
と言うので、
「いつから研修してるんですか?」
と聞くと、
「3日前から・・・」
そりゃ無理やろ。窓口にいってカードローン担当の男性に聞くと、即座に、
「『きょくどがく』ですね」
と言って、危うくカードローンに申し込みをさせられるところでした。
H信用金庫は、パンフレットには、
「限度額」
と書かれていましたが、銀行内では「極度額(きょくどがく)」という言葉は使っているとのこと。意味は「限度額」と同じ。
K信用金庫は、窓口では「限度額」と言っていますが、申し込み用紙には
「極度額」
と書いてありました。そこでK信用金庫で話を聞きました。それによると、
「確かに銀行内部では『極度額』という言葉を使っています。読み方は『極度額』で、意味は『限度額』と同じです。法務局に提出する書類にも根抵当権設定などで『極度額』は使いますので、法律用語ではないでしょうか?」
ということでした。
ちなみに電子版の『精選版日本国語大辞典』には載っていませんでした。
こういった言葉を内部で使うのは結構ですが、お客さん向けには「限度額」 というわかりやすい言葉を使ったほうが、よりお客様の立場に立った対応と言えるのではないでしょうか?
2007/12/21


◆ことばの話3092「ふらふら、ぷらぷら、ぶらぶら」

重松 清『定年ゴジラ』を読んでいたら、
「ぶらぶら」
という言葉が出てきました。それを見ていて、
「『ふらふら』を半濁音にしたら『ぷらぷら』、濁音にしたら『ぶらぶら』で、どれも擬態語もよく似た意味合いだが、微妙にニュアンスが違う。このニュアンスの違いが、清音と半濁音と濁音の性質の違いを、端的に表しているのではないか?」
というふうに、急に思いつきました。
「ふっくら、ぷっくら(ぷっくり)、ぶっくら」
あまり「ぶっくら」は言いませんね。
「ふよふよ、ぷよぴよ、ぶよぶよ」
の違いもありますね。「ふよふよ」は言わないな。「ぷよぴよ」は、 押したら少し押し返してくる感じがしますが、「ぶよぶよ」は、もっと緩んで、押しても返ってこない感じですね。半濁音から濁音になると、程度が進んで好ましい感じではなくなっています。
これに、
「ぷにょぷにょ」
を付け加えて「ぷっくり」と比較すると、「ぷっくり」は膨らんだ感じがするのに対して、「ぷにょぷにょ」は触ってみた感じの柔らかさを示していますね。触感。しかも、かわいい。ほかにも 「ふ、ぷ、ぶ」、気付いたら比べてみたいと思います。
2007/12/21


◆ことばの話3091「ビジターとアウエイ」

先に「大アウエイ」を書いてしまいましたが(「平成ことば事情3070」)、その大元の「アウエイ」(と書くか、「アウェイ」なのか、「アウェー」なのかという話は置いておいて)という言葉は、いまや一般的によく使われていますね。
その原因の一つは、サッカーブーム(=Jリーグブーム=Jリーグ開幕の1993年)の時に小学生だった子供たちが、大人になり始めたということで、一般にも使われるようになってきたのではないか?という気がします。現在は、サッカー以外の競技にまで援用されるようになっています。たとえば「野球」では、本来「相手チームのホーム」にやってきたチームは、
「ビジター」
と呼んでいたのですが、最近では「アウェイ」が使われることも増えているようなのです。その証拠に、2007(平成19)年10月16日、日本ハムのホーム・札幌ドームでパリーグのクライマックスシリーズを戦ったロッテの里崎選手がヒーローインタビューで、
「アウェイにもかかわらず、大勢のファンの声援があって・・・」
と話していました。
また以前、酒井順子著『都と京』(新潮社)という本を読んでいたら、143ページに、
「アウェイ感覚」
という言葉が出てきたことがありました。女性の、サッカーとは縁遠そうな酒井順子さんまでこうやって「アウェイ」を使うのですから、一般化しているのでしょうね。
なお、『新聞用語集2007年版』での表記は、
「アウェー(サッカーなどで使う場合)」
と小さい「ェ」と、語尾には長音符号の「−」を使うことになっています。
Google検索(12月20日)では、
「アウエイ」=253000
「アウエー」=259000
「アウェイ」=277000
「アウェー」=277000
ということで、小さい「ェ」は語尾が長音符号でも「イ」でも同じ検索件数でした。大きい「エ」の場合は長音符号の方が、少し多かったです。


2007/12/20
(追記)

なお12月21日の日経新聞のスポーツ面、オシム前監督の戦績表では、
「アウエー」
「エ」が大きかったです。
2007/12/21

(追記2)
2008年1月22日のテレビ朝日のお昼前のニュースで、上山アナウンサーが、
「福田総理にはアウェイでの論戦です。」
という原稿を読んでいました。サッカー用語が、いまやテレビ朝日では政界用語として使われているようです。ちょっとやりすぎでは?このニュースがターゲットとしている視聴者は「アウェイ」という言葉の方がわかりやすいと考えているのか?それとも書き手の自己満足か?どうなんでしょうか?
2008/1/25
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スープのさめない距離