◆ことばの話3090「一等のアクセント」

11月26日、「年末ジャンボ宝くじ発売」のニュースをお昼に各社やっていました。
その際の、
「一等」
のアクセントが、各アナウンサー、微妙に違いました。
(テレビ朝日)上山アナ  「イットウ(LHL)」=「中高アクセント」
(MBS)加藤康裕アナ   「イットウ(LHH)」=「平板アクセント」
(TBS)男性アナ      「イットウ(LHL)」=「中高アクセント」
それを聞いた隣の席のHアナウンサーが、
「『一等』が『順位』の場合は『中高アクセント』で、『等級』の場合は『平板アクセント』ではないか?」
というのです。たしかに、
「列車の切符」の「一等」「二等」「三等」は「平板アクセント」
の気がしますが、
「運動会のかけっこの順位」は「中高アクセント」
のような気がします。関西では「中高アクセント」が主流のような気もします。
また、「一等」が「名詞」の場合は「中高」で、「副詞」の場合は「平板アクセント」のような気もします。そこで、
「『一等』のアクセントは『NHK日本語発音アクセント辞典』では、
(1)平板 (2)中高
で載っていますが、『年末ジャンボ宝くじ』の場合は『平板』のような気がするのですが、
どうなんでしょうか?「平板」と「中高」で、意味上の使い分けはあるんでしょうか?」
と、NHKのHさんにメールしたところ、こんな返事が。
『これは推測ですが、
(1)「ランク(等級)」の意味で「一等」「二等」としか使わないもの(昔の国鉄など)と、
(2)「プライズ(賞)」を意味する「一等賞」「二等賞」の場合とで、
何となく使い分けているような気がします。
「イット\ーショー」「ニト\ーショー」から「中高」が生まれたのではないでしょうか。
「宝くじ」は(2)のケースとも考えられますが、「一等2億円」となると、平板になるとも考えられます。』
ということでした。身近な言葉でも、アナウンサー自身が気付かずに入る「アクセントの違い」って、まだまだありそうですね。
2007/12/18


◆ことばの話3089「レギンス」

12月17日の読売新聞(大阪版)夕刊に、
「『おばさんみたい』一転〜ベージュのパンスト10年ぶり売り上げ増」
という見出しが出ました。そう言えば若い女性が、なんだか黄緑とか紫とかいろんな色のタイツ(なのか「パンスト」なのか)をはいているなあ、と何となく感じていましたが、「ベージュ」が復活しているとは知りませんでした。その小見出しには、
「タイツ、レギンス流行 “生足”世代の抵抗感薄れ」
とありました。この中の
「レギンス」
というのは、初めて目にしました。本文を見ると、
「レギンス(スパッツ)」
とありました。なんだ「スパッツ」か。それならそうと言ってくれれば良いのに。「スパッツ」、知っていますよ、「タイツ」の一種でしょ。
そう思って野村明大アナのブログを読んでいたら、既に12月13日に、
「徒然なる『年の差』レギンス??」
というタイトルのコラムが。読んでみると、
「今、レギンスというアイテムが、(若い)女性の間で流行っているんだとか。。。
それは、我々世代が若かりし頃、「スパッツ」という名で流行ったアイテム、、、、のことだそうですが、、、、、、」
とありました。くー、4日、気付くのが遅れたかあ。
なかなか明大アナ、流行に敏感ですね・・・ってこれが年の差かあ?
Google検索では(12月18日)
「レギンス」= 36万6000件
「スパッツ」= 227万件
でした。2006年07月17日 に書かれた「ファッション用語中辞典」というサイトでは、
(http://blog.livedoor.jp/fashion_chiteki/archives/50733349.html)
「レギンスとはスパッツのように脚にぴたっと張り付く、パンツの仲間。今年になって急に耳にするようになってきたけど、ふたを開けてみればなんだ、スパッツのことじゃない。と気づいた方も多いのでは?」
と書かれていました。
また、「レギンス!めちゃ可愛くて、ちょう便利大好きです。レギンス」というブログでは、「最近、レギンスがとっても人気ですが、レギンスとスパッツの違いについて調べてみました」として、こう書かれていました。
(http://ギ1ばん.jugem.jp/?eid=1)
「本来、レギンスとは、乳幼児が冬に用いる足先まで包み込む形になったニット製のパンツのことを、いうそうです。(中略)また、軍隊用革ゲードルやこの様なデザインのジャージ製のフィットウェアも同じ様にレギンスと呼ばれていたという事です。」
「もともと、レギンスは、防寒用の幼児パンツで、スパッツは、もともとバレエの練習着ということです。でも、今は旧スパッツが現在のレギンスと呼ばれています。」
なるほどなるほど。ところで「レギンス」、英語で書くと、
leggings
のようです。あれ?これだと、
「レギングス(またはズ)」
では?「グ」はどこへ行った?
アナウンス部内で、
「レギンス(HLLL)って、知ってる」
「頭高アクセント」で聞いてみたところ、女性のMSアナウンサーが「フフフ」と笑いながら、
「道浦さん、『頭高アクセント』じゃなくて、『平板アクセント』の『レギンス(LHHH)』です」
そして周りの女性陣はみな知っていて「持っています」とのことでしたが、男性は一人を除いて
「????」
という感じでした。MSアナに、
「スパッツと同じなの?」
と解説を求めると、
「うーん、スパッツとはちょっと違いますね。スパッツよりも色や柄のバリエーションが豊富で、スパッツは単独ではいていたけど、レギンスはミニスカートとブーツの服装に合わせたり、長さもいろいろで、『十五分丈』って言って、下の方がクシュクシュってなっている長いものもあります。」
とのこと。
「それじゃあ、タイツとどう違うの?」
「タイツは靴下のように足先までつながっているでしょ、レギンスはスパッツと同じで、くるぶしぐらいまでで、足先まではありません」
とのことでした。 
2007/12/18


◆ことばの話3088「舌苔」

生協(コープ)のレジで順番待ちをしていたときのこと。ふと横のほうを見ると、何か、チュウインガムやらチョコレートやら、ブレスケア商品がさりげなく置いてあります。レジを待っている間に、つい手を伸ばしておまけで買ってしまいそうになる、そういったちょっとした商品が並んでいるところです。そこにあった「ブレスケア商品」の中に、こんな文字を見つけました。「舌の苔」と書いて、
「舌苔」
なんて読むんだろ?と思ってよく見ると、ちゃんと、
「ぜったい」
と振り仮名がふってありました。この「舌苔」とは何か、大体想像はできますが、説明を読むと、
「舌の汚れ」
のことだそうです。やっぱり。本物のコケが生えたら、なんかヘンな味がするものな、きっと。「苔そのもの」ではないようです。当たり前か。商品コピーは、
「舌キレイ、きれい、息キレイ」
ふーん、そこまで、する?すごいですねー。そう言えば以前、歯ブラシの売り場でも、舌をベロベロと剥ぎ取るように掃除する道具が置いてあったのを見たことがあったな。あれも「舌苔」を取るためのものかな?
日本語のページでのGoogle検索(12月18日)では、
「舌苔」=5万9000件
でした。思った以上に多いなあ。どうやら医学の専門用語のようですね、「舌苔」は。
でも「ぜったい」とは読まずに、
「したこけ」
とか
「したごけ」
と読んでしまいそうな。「ぜったい」そう読むわ。したこけ、いや、うそこけ!
2007/12/18

(追記)

『三省堂国語辞典(第5版)』には、ちゃんと「舌苔(ぜったい)」、載っていました。また『精選版・日本国語大辞典』にも載っていました。意味は、
「種々の疾患のさいに舌の表面に生じるこけ状の付着物。特に胃腸疾患、熱性疾患のある場合に生じやすい。(医語類聚1872年)」
とありました。病気の時にできるのね。

2007/12/21

(追記2)

2008年1月7日の読売新聞夕刊「舌苔」、出てきました!「MONOローグ」という記事で「口臭予防、舌も磨こう」という見出しのもとで、
「口臭原因としてよく指摘されるのは歯周病だが、舌の表面に白くこびりついた舌苔(ぜったい)も悪臭の発生源として大きい。」
と書かれていました。「発生源として大きい」という表現は「日本語としておかしい」ような気がしますが、それはさておき、振り仮名つきで「舌苔(ぜったい)」と出てきました。
2008/1/8


◆ことばの話3087「交通科学博物館にて」

2か月ほど前の話です(10月13日)。小学4年生の息子の希望で、大阪・弁天町にある『交通化学博物館』に父子二人で行きました。そこで気付いた言葉の数々をメモしておきます。
まず、1968(昭和43)年に作られた、この交通科学博物館を紹介するビデオでの男性ナレーターの読み方で、「1500ボルト」を、
「せんごひゃくぼると(LHHHHHLL)」(Hは高く、Lは低く発音します)
コンパウンドして「中高アクセント」で読んでいました。また「電車」は、「頭高アクセント」の、
「でんしゃ(HLL)」
「平板アクセント」の、
「でんしゃ(LHH)」
が、今から40年ほど前のこの時点でも混在していました。(あくまでこの男性ナレーターが、ですが。読みは、今聞くととっても古臭く感じました。)
また「花形」「中高アクセント」で、
「はながた(LHLL)」
でした。ちょうど『巨人の星』のアニメをテレビで放送していた頃でしょう。主人公・星飛雄馬のライバル、
「花形 満」
「花形」と同じアクセントでした。今なら「平板アクセント」で、
「はながた(LHHH)」
と言うところでしょうが。「歌舞伎」っぽいアクセントですね、中高の「はながた(LHLL)」は。
そのほか「コンピュータ(ー)」ではなく、
「電子頭脳」
と言っていましたし、「旅客」を「りょかく」ではく、
「りょきゃく」
と読んでいました。コンピューターは「電子計算機」と呼ばれた時代もありましたが、計算をするだけではなくなって、その呼び名は廃れましたね。「電子頭脳」は、「頭脳」の部分の呼び名が「人間ぽい」ので、恐がられて消えたのでしょうか???わかりませんが、最近耳にしない、目にしない言葉です。「人工知能」は、たまに目にしますね。
それから、写真を撮ってきたのですが、昔の電車の表示板で、北海道の「旭川」アルファベット表記 が、
「ASAHIGAWA」
と濁っているのがありました。

これはどちらが正しいのか、どちらでもいいのか?音の清濁に対して、昔はおおらかだったのでしょうね。
私はそんなのを目にして、充実した秋の一日でした。
2007/12/18


◆ことばの話3086「お立ち呑み」

JR京橋駅南口前。
そこにあった元・小さな旅行会社の事務所が入っていたビルの前を久々に通ると、何とその旅行会社は「飲み屋」になっていました・・・。最近、私は会社の周囲をあまりウロウロしていなかったのだということがわかるとともに、小さな会社がやっていくのは大変なのだなということも、改めてわかったしだいです。
幾許(いくばく)かの感慨を持ちながら、その前を通り過ぎようとして目に入ったのは、
「お立ち呑み」
と書かれた看板です。「立ち呑み」に「お」が付くのか?と気になりました。
例によってGoogleで検索してみると(12月18日)、
「お立ち呑み」= 614件
「お立ち飲み」= 522件
でした。「お立飲み処」という表現が、どうやらあるようですね。その「処」を省略した形ですかね。ただ、ざっと見た感じでは、それらは大阪や京都など「関西」にあるようです。全国的かどうかはわかりません。もしこれが、
「お立ち寄り処」
というのなら、うなずけるな。今度、一度寄ってみようかなと思いました。店は結構はやっていましたよ。
2007/12/18
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