◆ことばの話3060「京都四條南座」

11月25日の読売テレビのお昼のニュースで、京都の南座「まねきあげ」の様子を伝えていました。「まねきあげ」とは、南座・年末の恒例公演「顔見世興行」に出演する東西の歌舞伎役者の名前を「勘亭流」と呼ばれる太い相撲文字のような字で書かれた檜の一枚板を、南座の正面にかかがるものです。その数57枚。なかなか威風堂々です。そのニュースの字幕が、
「京都四條南座」
と出ていたので、おやっと思いました。
まず引っかかったのが、「四條」旧字体にする必要があるのか?ということです。夕方の関西テレビのニュースの字幕は、
「南座(京都・東山区)」
でした。これでいいんじゃないかな?そのニュースを翌日の早朝のニュースでもやると言うので、その旨デスクに話したところ、
「確かにそうですね」
といって直してくれました。しかし、南座のホームページを見てみると、看板のような感じで、
「京都四條南座」
と書かれています。もしかしたら南座側が、そういうふうにしてくれとアピールしているのかもしれません。南座の広報の方に電話で聞いてみたところ、
「正式には『京都四條南座』です。しかし、関西ではもう『南座』で通っていますので、報道される場合には、それで結構です。また、東京向けや、東京で報道される場合は、それに『京都』をつけて、『京都・南座』でも結構ですよ。」
ということでした。じゃあ、「南座」ということで・・・。
2007/11/26


◆ことばの話3059「違反者即決五千円」

先週、京都の立命館大学で講義をしました。ここ数年、「読売マスコミ講座」の講師の一人として、年に1回だけ話をしに行っています。京阪・出町柳駅からタクシーで向かう途中、北野天満宮の前で見かけた「駐車禁止の看板」には、次のように書かれていました。
「違反者即決五千円」
このフレーズは初めて見るものでした。「即決」というあたりと、「五千円」という、この手の禁止フレーズの相場としては微妙に低い額あたりに新鮮さを感じました。これがもし、
「即決三万円」
だと、
「まさか、即決でそんなには取らないだろう」
という「甘え」が出そうですが、「五千円」という額は、
「もしかしたらすぐに取り立てられるかもしれない。しかも取られると、その金額は持ってないことはないけど、ちょっと痛い」
と思わせるのにはピッタリの絶妙な金額のような気がします。
実は私は、10年ほど前からこういった有料駐車場などの駐車禁止の看板に書かれたフレーズに注目していました。その「罰金」の額が、土地土地によって違うのでそのチェックと、禁止する言い回しの違いを観察していたのです。
たとえば、2002年の年頭に書いた「平成ことば事情530『この1年の手帳から』」には、
「本当は、2001年中に書くはずだったこのタイトルで、年明けに去年の『まとめ』をしておきましょう。」
として、2001年に手帳に走り書きしたまま「平成ことば事情」には書かずにおいたものを箇条書きで残してあります。それによると、こんなフレーズがあったようです。
*2001年5月30日(水)北海道・釧路市で、
・「しんくみ駐車場」〜「信用組合」の駐車場の表記。もしも用もないのに勝手に停めたときの罰金に関しては、釧路では書いてないことが多かった。どこにでも止められるということか、広いから。
2001 6月6日(水)京都・上賀茂の有料駐車場
・「罰金2万円申し付けます。」(「申し付けます」は、200011月に熊本でも見つけました。)
・「二カ月分(\12000/月×2)申し受けます」
・「1万円申し受けます。」
*2001年7月2日(月)北海道・札幌市で、
・「無断駐車禁止。罰金3万円の上レッカーします」〜無断駐車に寛容だった釧路と違い、札幌では厳しい。
以前、これも札幌だったか、
「レッカー移動した上、タイヤに穴を開けます」
という、
「そりゃ、犯罪だろ!」
という看板を見たこともあります。今後も駐車場の看板には注目したいと思います。
2007/11/26


◆ことばの話3058「南高梅の読み方」

『ズームイン!!SUPER』の大田アナウンサーから、朝の5時半にアナウンス部に電話です。ちょうど泊り明けで朝のニュースに備えて起きてきたばかりの私の耳に飛び込んできたのは、
「和歌山の梅干の『南高梅』の『梅』の読み方は、『バイ』でしょうか?それとも『ウメ』でしょうか?たしか『バイ』だったような気がするんですが・・・」
という質問でした。
「うーん、『ウメ』じゃないかな?『バイ』というと、『紅梅・白梅』のような梅の木、梅の花のような木がするけど。たしか何ヶ月構えの商品紹介かプレゼントのコーナーで『南高梅』の梅干、出てきたような気がするぞ。その時、どっち読んだか覚えていない?」
「そうでしたっけ・・・覚えていません。」
「それと、確か『南高梅』って商標登録されてたんじゃないか?特許庁のホームページに載ってるかも知れないよ。ちょっと調べて折り返すわ。」
と言って電話を切り、早速調べてみると・・・・果たして載っていました!平成18年といいますから、去年、2006年ですね、その10 月27日、経済産業省特許庁の「地域団体商標に係る登録査定について」という項目の文書が掲載されていて、
「本年4月1日に地域団体商標制度がスタートし、その商標登録の出願の受付を開始しましたところ、現在までに600件以上の出願が行われています。特許庁では、関係省庁とも密接に連携しつつ、これらの出願について審査を行っているところですが、本日、4月に出願された374件のうち以下の52件について商標登録をすべき旨の査定をし、出願人に通知しました。」
と書かれた下に、
「紀州みなべの南高梅(きしゅうみなべのなんこううめ)
が、和歌山県のみなべいなみ農業協同組合が出願者となって登録されていました。やっぱり梅干しは、
「なんこうウメ」
なんだ!ちなみに関西からは、この去年10月27日の段階では、
「雄琴温泉(おごとおんせん)」  雄琴温泉旅館協同組合 滋賀県
「京あられ(きょうあられ)」  京都米菓工業協同組合京都府
「京おかき(きょうおかき)」  京都米菓工業協同組合京都府
「京仏壇(きょうぶつだん)」  京都府仏具協同組合 京都府
「京人形(きょうにんぎょう) 」 京人形商工業協同組合京都府
「京石工芸品(きょういしこうげいひん) 」 京都府石材業協同組合京都府
「舞鶴かまぼこ(まいづるかまぼこ)」  舞鶴蒲鉾協同組合 京都府
「間人ガニ(たいざがに)」  丹後町漁業協同組合 京都府
「鴨川納涼床(かもがわのうりょうゆか)」  京都鴨川納涼床協同組合京都府
「大阪欄間(おおさからんま)」 大阪欄間工芸協同組合 大阪府
「和泉木綿(いずみもめん)」  泉州織物工業協同組合 泉州織物構造改善工業組合大阪府
「豊岡鞄(とよおかかばん)」  兵庫県鞄工業組合 兵庫県
「高山茶筌(たかやまちゃせん)」  奈良県高山茶筌生産協同組合奈良県
「紀州うすい(きしゅううすい)」  和歌山県農業協同組合連合会和歌山県
「しもつみかん(しもつみかん)」  ながみね農業協同組合和歌山県
「有田みかん(ありだみかん) 」 ありだ農業協同組合和歌山県
「和歌山ラーメン(わかやまらーめん)」  和歌山県製麺協同組合和歌山県
「紀州備長炭(きしゅうびんちょうたん) 」 和歌山県木炭協同組合和歌山県
「すさみケンケン鰹 (すさみけんけんかつお)」  すさみ漁業協同組合
が商標登録されていました。「有田みかん」や「紀州備長炭」「間人ガニ」まで登録されていたんですねえ。でもだからと言ってこの名称をつかっちゃいけないというわけでもなさそうな感じですね、そのもの自体を指す場合には。しかも「地域団体商標」 なので、特定の業者の商標とは一線を画するものだと思われます。同じく特許庁のホームページに「地域商標登録の部屋」というページがあったので覗いてみると(下線は道浦)、
『近年、特色ある地域づくりの一環として、地域の特産品等を他の地域のものと差別化を図るための地域ブランド作りが全国的に盛んになっています。このような地域ブランド化の取組では、地域の特産品にその産地の地域名を付す等、地域名と商品名からなる商標が数多く用いられています。しかしながら、従来の商標法では、このような地域名と商品名からなる商標は、商標としての識別力を有しない、特定の者の独占になじまない等の理由により、図形と組み合わされた場合や全国的な知名度を獲得した場合を除き、商標登録を受けることはできませんでした。このような地域名と商品名からなる商標がより早い段階で商標登録を受けられるようにすることにより、地域ブランドの育成に資するため、平成17年の通常国会で「商標法の一部を改正する法律」が成立しました。平成18年4月1日に同法が施行され、地域団体商標制度がスタートしました。現在までに600件以上の出願が行われており、高い関心を集めています。』
とのことでした。
最新の2007年11月20日に登録査定されたものの中に、
「有馬温泉(ありまおんせん) 有馬温泉旅館協同組合 兵庫県」
がありました。そして10月31日までに受付が確認された件数(出願件数)は、
「769件」
で、地域別の件数では、
北海道=32、 東北=55、 関東=71、 甲信越=50、
北陸=57、 東海=96
近畿=230、 中国=43、 四国=25、
九州=73、 沖縄=33、 その他=4

で、近畿が群を抜いて多いですね!「その他」というのは、なんと外国(ジャマイカ、カナダ、イタリア、インド)からの出願なんだそうです!また、都道府県別出願件数のベスト3は、
1位:京都=137件、2位:兵庫=45件、 3位:岐阜=36件
とのことです。
念のため「みなべいなみ農業協同組合 梅部会」に電話をして聞いてみたところ、
「『なんこうウメ』です。品種登録も『ウメ』でしています。しかし、関東の方では一般的に『なんこうバイ』と呼ばれているようで、市場関係者も『なんこうバイ』と読んでいるようですねえ。音読みだとそうなりますからねえ。でもこちらではみなべ町など行政も『なんこうウメ』と読んでいます。ただ・・・」
「ただ?なんですか?」
「意匠登録の方は、『なんこうウメ』『なんこうバイ』『みなみたかうめ』の3種類の読み方を登録しています」
「・・・そうなんですか。それはどの読み方でも『南高梅』という文字のものを確保できるためにですね?」
「そういうことです。」
「わかりました!ありがとうございます」
ということで、「なんこうウメ」でよい!ということですね。ただ関東では「なんこうバイ」と呼ばれていると。結局このあたりが問題なんだなあ。
2007/11/26
(追記)

2011年7月12日、和歌山県の「南高梅」の組合が「カルテル」を結んでいた疑い、という記事が、各紙に出ました。読売新聞と朝日新聞は「南高梅」に振り仮名はありませんでしたが、毎日新聞は、
「南高梅(なんこううめ)」
とちゃんとルビが振ってありました。
読売テレビ、NHK
のニュースでも
「なんこううめ」
と読んでいました。
ちなみに、私の周辺でこの新聞記事を見た人、2人が、「カルテル」を、
「カクテル」
と思い込んで読み間違っていました。「梅酒」からの連想が誤読させたのかもしれませんね。飲んでもいないのに酔いが回ったか?
2011/7/12


◆ことばの話3057「コウシュウの立ち入り」

先日、帰りの電車の中で繰り返し車内放送しているアナウンスに、聞くとはなしに耳を傾けると、車掌さんは、こう言っていました。
「線路内、コウシュウ立ち入りのため、列車が遅れましたことをお詫びします。」
へ?コウシュウ?それってもしかしたら「コウシュウ便所」「コウシュウ電話」の、
「公衆」
ということですか?と思った時に、まさに、つい先日読んだばかりの本の中にそういった一説があったことを思い出しました。
元・共同通信記者で現在は横浜国立大学講師の鷲見徹也さん『話のわかるやつを呼べ!』(ポプラ社)という本の中で、
「いっぱんこうしゅうが線路内に立ち入り、電車が遅れています」
というアナウンスを聞いて、その意味がわかったのは「4秒後」だったと。そして、要するに「一般の人が線路の中に入った」ということならそう言えばいいと、鷲見さんは強い口調で書き記していました。そのとおりだと思いますね。業界用語を客に使うな、ということです、ハイ。ま、一番それをやっているのがテレビ業界なんですけど・・・シュン・・・。
2007/11/26


◆ことばの話3056「ななじ」

大阪市長選挙は、元・毎日放送アナウンサーで新人の平松邦夫さん(59)が、これまで44年続いた助役出身者が市長になるという構図を崩して、当選を果たしました。
「市長(しちょう)」だけに「視聴(しちょう)者」の支持を受けたとか??山積する大阪市の難題が、囲碁の「しちょう(征・四丁・止長・翅鳥・四張とも書くそうです)」 のように追い詰めていくことができるんでしょうか?
さて、その投票日を前日に控えた11月17日、大阪市営地下鉄に乗っていたら、女性の声の車内放送で、投票を促すアナウンスをしていました。その中で投票時間を、
「朝七時(ななじ)から」
と言ってました。関西では「ななじ」という言い方はごく普通に受け入れられていることの一つの証拠だと思います。そのくせ(?)お役所だけに、「期日前投票」に関しては、
「期日前(ぜん)投票」
と言ってました。「期日まえ投票」の方がわかりやすいのになあ・・・。
2007/11/19
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