◆ことばの話3035「コーミンカ」

『ズームイン!!SUPER』のTディレクターがアナウンス部にやってきて、こう言いました。
「あのう、明日なんですが、大田アナウンサーのコーナーの取材で、ですね、田舎暮らしの現状を探るということで、兵庫県に行って『コーミンカ』をいくつか回ろうと思うんですが・・・」
「え?何?『公民館』?そこで田舎暮らしのシンポジウムでもあるの?なんでいくつか回るの?公民館を」
と聞きなおすと、
「いえ、違うんです、『コミンカ=古い民家』です。」
「ああ、古民家!」
と、ようやく話が合ったのでした。
しかし最近はそういった「古民家」にそのまま住んだり、解体して移築して住んだりするのがブームだとも聞きました。作家の服部真澄さんが、実際に古民家を移築して住んでいるというのも、本で読んだことがありますが、文字を見ずに耳で、
「コミンカ」
と聞いても、なかなか「古民家」という漢字が浮かんで来ず、イメージが像を結ばなかったのも事実です。近い発音の、
「コーミンカン」(公民館)
に惹かれたのもしょうがないかな、と自分で納得しています。Google検索(11月1日)では、
「古民家」=163万件
す、すごい!そんなにあるのか!こりゃ、ブームだわ。トップに出てきたのは、
「古民家再生20年の実績 古民家センター」
次に出てきたもののタイトルは、
「田舎暮らし情報館」
なるほど、「田舎暮らし」と「古民家」は密接に結びついていそうですね。なお、
「古い民家」= 23万5000件
「公民館」 = 715万件
でした。
2007/11/1


◆ことばの話3034「引き出物」

広報番組で『秘密のケンミンSHOW』のPRをする川田裕美アナウンサーが、その原稿を持って質問に来ました。
「道浦さん、仏事の時に集まってくれた方に出すものを『引き出物』って呼ぶでしょうか?」
「うーん、呼ばないんじゃないかな?『引き出物』というと結婚披露宴などのイメージが強いよね。」
辞書で「引き出物」を引いてみると、
(広辞苑)=饗宴の時、主人から来客へ贈る物。古く馬を庭に引き出して贈ったことから起り、後には武具を贈った。現在は鰹節(かつおぶし)・砂糖などに饗応の膳に添える土産(みやげ)物、さらに広くは招待客への土産物をいう。(例)源氏物語(幻)「御引出物品々の禄どもなど」「結婚式の引出物」
(新明解国語辞典)=(人を招いて、祝いやごちそうをした時に)帰りに主人から客へ贈る贈り物。ひきもの。
(新潮現代国語辞典)=祝宴の時などの、主人から客への贈り物。
(明鏡国語辞典)=祝宴のときなど、主人から招待客に贈るみやげ物。▽古く馬を庭に引き出して贈ったことから。
(岩波国語辞典)=祝宴などの時に主人からお客に贈る贈り物。ひきもの。▽古く、馬を庭に引き出して贈ったことから。
(三省堂国語辞典)=[宴会、祝いなどで]おみやげとして主人が客にくばるもの。→引き物
と、「祝宴などで」と書かれたものが多いようです。そこで関西の大手葬儀会社に電話して聞いたところ
「引き出物とは言いませんねえ。」
との答え。
「じゃあ、なんて呼ぶんでしょうか?」
「『くよう(供養)』と言いますね。」
「その『供養』には、何を出すんですか?」
「それはもう、いろいろで・・・食べ物を出すお家もあれば、物を出されるところもありますね。」
「いわゆる『葬式饅頭』は出しますか?」
「それは関西では少ないと思いますよ。」
そこで、東京の和菓子屋さんに電話をしてみました。
「不祝儀用の『引出物』と言いますね。その『引出物』としてはいわゆる『葬式饅頭』という白と蓬で緑のお饅頭を出しますね。そのほか、『黒飯(こくはん)』と呼ばれる、白いご飯に黒い豆をまぶしたもの出すこともありますが、これは珍しいですね。」
とのことでした。
この広報番組は、関西ローカル放送だったので、原稿では「引出物」は使わずに表現するようにディレクターにお願いするようにアドバイスしました。
それにしてもよく気付いたな。今回の川田アナウンサーのように、書かれていることを頭から信じるのではなく、
「あれ?本当にそうなのかな?」
と疑問を持って、確認してから読むという態度は、なかなかいいんじゃないの、と感心したのでした。
2007/10/24


◆ことばの話3033「音コン」

若手演奏家の登竜門と言われる「ロン・ティボー国際音楽コンクール」のピアノ部門で、20歳の日本人・田村 響さんが優勝したニュースが、10月29日各紙夕刊に載っていました。その中で、このところの毎日新聞の記事でよく見かけた、
「音コン」
という表現を、また毎日新聞が使っていたので注目して、他紙はどうか、ピックアップしてみました。
(読売)「ロン・ティボー」田村さん優勝
(朝日)ロン=ティボー国際音楽コン 20歳の田村さん優勝
(産経)ロン・ティボー国際コンクール 田村さんピアノ優勝
(日経)ロン・ティボーコンクール ピアノ部門田村さん優勝
(毎日)国際音コンで 田村響さん優勝
ということで、毎日以外は朝日の、
「音楽コン」
というのがありますが、「音コン」は毎日だけでした。昔は、よく「音楽コンクール」の略語で「音コン」が使われたようですが(鈴木孝夫先生の本で、日本人は「コン」という略語が好きだと分析したものがあって、その中にも「音コン」は出てきました)、最近はあまり目に(耳に)しないような気がします。それと読売・産経・日経は「ロン・ティボー」と「・」を使っていますが、朝日は「ロン=ティボー」と「=」を使っているんですね。なぜだろう? Google検索(10月29日)では、
「音コン」=  5万9400件
「音楽コン」=   9780件
でした。また「音コン」の検索で一番最初に出てきたのはなんと「毎日新聞」のサイトで、
「学生音コン:東京大会 ピアノ中学校の部、本選へ19人 第60回全日本学生音楽コンクール」
という見出しでした。このコンクールは、
「毎日新聞社主催、NHK後援、都築総合学園協力」
というもので、つまり自社主催イベントなのですね。しかも歴史があります。
しかし毎日新聞の「ネットニュース」を伝える「毎日jp(ネット版の記事)」の見出しは、
「国際音楽コン:ピアノで田村響さん優勝 ロン=ティボー」
「音楽コン」を使っていました。また「=」も使ってますね。これは「紙」の整理部(見出しをつける部署。今は校閲部が兼ねているところもあるようですが)と「サイト」の整理部では、「紙」の方がベテランの記者がいるせいではないか?と推測しますが、いかがでしょうか?。                    
2007/10/29


◆ことばの話3032「病客のみなさま」

実家で両親と話していた時のこと。
「最近は病院で『患者様』って言うんだけど、あれは嫌やな」
と言うと、母が、
「あんた、そんなの別に普通やない。それより、東京にいた時やからもう10年以上前に、ねっ」
と父と顔を見合わせて、
「『病客のみなさま』って言ってたのは、違和感あったわ」
「ええ!『病客』?それは聞いたことないなあ。なんか嫌やね、それ」
という話になったのでした。「病人」でしかも「客」かいな。病院にとっての「患者」は。
Google検索(「日本語のページ」10月29日)では、
「病客」=623件
ありました。対象を「全体のページ」にすると、
「病客」=1万0700件
と多いので、 もしかしたら中国語のページでよく使われているのかな?さらに、
「病客様」=  6件
「病客さま」= 6件
というのもありました。実際、ある病院では「病院の理念」が、
病客さま一人ひとりの権利を尊重し、心のこもった安全で、質の高い医療の提供」
で、「基本方針」は、
「ご理解いただける説明責任を果たし、病客さま自身の治療選択権を尊重いたします 」
「医の倫理にかなった、心のこもった医療を提供し、病客さまにご満足いただけるよう努めます」
「最新医療の研鑽につとめ、病客さまの要望にそった最高の医療の提供に努めます」
「病客さま」のオンパレードでした。
「健客」を競ったりして・・・。
2007/10/30


◆ことばの話3031「じょじょはいて」

2007年3月23日、NHKのお昼12時20分からの番組デュークエイセスが、童謡「春よ来い」を歌っていました。その歌詞の中で、
「じょじょはいて」
というのが出てきました。それを聞いていていまさらながら、
「『じょじょ』って何だろう?」
と思いました。
・・・・・
と、思ってから半年以上経った10月29日、Googleで検索してみました。
「じょじょはいて」=783件
ネットでは、
「『草履』のこと。幼児語。藁や竹の皮で編んで、鼻緒に赤い布を使った物。起源は東北地方説があったり、京言葉説があったりする」
と出ていました。『精選版日本国語大辞典』を引いてみると、ありました、ありました。
「じょじょ」=草履(ぞうり)をいう幼児語。ぞぞ。*雑俳・柳多留一二(1777)「毛のじょじょはいやとくれ人の前でいひ」*童謡・春よ来い(1923)相馬御風「赤い鼻緒のじょじょはいて おんもへ出たいと 待ってゐる」
とありました。この「春よ来い」の作詞は、相馬御風(そうま・ぎょふう)だったのか!って言っても知らない人は全然知らないと思いますが、相馬御風は、私の母校・早稲田大学校歌『都の西北』の作詞者なんです!1883年(明治16年)、新潟県糸魚川生まれで、1950(昭和25年)まで生きていたんですね。
で、『都の西北』は今年、できて100周年なんです。私の所属していた早稲田大学グリークラブも今年100周年。最初に『都の西北』を歌ったのは、グリークラブの前身の合唱団だったと聞いています。そして大学は今年、125年を迎えました。
先週、グリークラブ100周年の記念イベントが杉並公会堂で行われ、現役のグリーメンとOBら800人(!)が集まり、各年代ごとに演奏を行い、私も参加しました。最年長はなんと昭和12年卒業のOBで90ウン歳!!元気にステージで立って歌い切りました!すごい!
全員で歌ったクラブソング『輝く太陽』、校歌『都の西北』、応援歌『紺碧の空』『早稲田の栄光』は、新しくなった杉並公会堂ホールの高い天井によく響いて感動的でした。こんなにハモれるのに、普段の練習ではなぜハモれないんだろ?「スケール・メリット」ということでしょうか(人数が多いので、アラが目立たない?)
さらにそのあと、早稲田の大隈講堂まで移動、午後6時を機に、700人ほどのグリーメンが『校歌・都の西北』『紺碧の空』『早稲田の栄光』を歌いました。あまりにも人が多くて、指揮者の棒(タクト)が見えない中で、奇跡的にちゃんと歌うことが出来て満足でした。
私が司会を担当したホテルグランドパレスでの祝賀会でも、500人を超える方が参加され、また歌いました。100年に一度の出来事ですからね。参加できてよかったです。
あれ?ものすごく話がそれてしまいましたが、要は、
「『じょじょ』は『草履の幼児語』」
ということですね。「ぞうり」が「ぞぞ」あるいは「じょじょ」となっているのでしょう。うちの2歳の娘の言葉を聞いていると、「ぞ」→ 「じょ」となって、繰り返しの言葉になることは容易に想像がつきますので、納得です!
2007/10/29