◆ことばの話3025「シンカーを見せました」

メジャーリーグのワールドシリーズ第1戦、ボストンレッドソックス対コロラドロッキーズの試合、NHKの放送で、レッドソックスのピッチャーのベケットが、この日6個目・7個目の連続三振を取った場面で、アナウンサーは、
「シンカーを見せました」
と言いました。これは球種のことを言ったのだと思いますが、これが
「真価を見せました」
のようにも思えました。
「シンカーで三振を取って真価を見せた」
ということを、まとめて言ったのかもしれませんね。それとも、駄洒落だったのかな?
2007/10/25


◆ことばの話3024「ポッチャかわ」

先日(10月4日)、外国の映画の宣伝に出てきたタレントの柳原可奈子さんに対して、取材陣が遠慮がちに、しかしストレートに、
「もてる・・・・デブ?」
という失礼な言い方をしたことに、柳原さんは鋭く反応して、ただし笑顔で、
「『ポッチャかわ』とか、言葉を選んでください」
と答えていたのをワイドショーで見て、拍手を送りたい気持ちになりました。この子は頭がいいな、と。
Googleで検索したところ(10月4日)、
「ポッチャかわ」=0件
「ぽっちゃかわ」=  0件
「ぽっちゃカワ」=  2件
「ポッチャかわいい」= 1件
「ぽっちゃかわいい」= 3件
「ぽっちゃカワイイ」= 0件
「ポッチャカワイイ」= 0件
「ポチャカワ」= 738件
「ポチャかわ」= 130件
「ぽちゃかわ」= 2970件
ということで、ちっちゃい「っ」の入らない形の「ぽちゃかわ」「ぽちゃかわ」「ポチャカワ」は、相当件数出てきました。一部では使われているようですね。柳原さんも、
「ぽちゃかわ」
のつもりで、
「ぽっちゃかわ」
と言ったのかもしれませんね。でも、いい表現だと思います。
2007/10/4


◆ことばの話3023「消極さ」

10月12日の日経新聞夕刊に、阪神タイガースの鳥谷 敬選手についての特集記事が出ていました。その見出しに、
「クールさが魅力 消極さも」
とあったのですが、この、
「消極さ」
が気になりました。反対語の、
「積極さ」
はよく見かけますが、「消極さ」はあまり目にしない気が・・・Googleで検索すると(10月15日)、
「積極さ」=2万9200件
「消極さ」=  1890件
でした。やはり「消極さ」の件数はかなり少ないですね。これが「的」が付いた、
「積極的」「消極的」
ならば、よく目にするのですが。
思うに、世の中で注目され評価されるのは「積極さ」であり、もしも消極的な場合も、それを指して、
「消極さが問題」
とは言わずに、
「もう少し積極さが欲しい」
などのように「積極さ」を使って表現しているからではないでしょうか?だから「消極さ」という言葉は、あまり使われていないと。こういうことではないでしょうか?
2007/10/15

◆ことばの話3022「ウルッとくる」

10月26日午前9時6分、プロボクサーの亀田興毅選手が記者会見場に現れました。渋滞に巻き込まれて6分の遅刻です。亀田家を代表して、父・史郎氏ではなく、長男・興毅選手が謝罪しました。
その様子を日本テレビ『スッキリ!!』で中継していて、それをスタジオで見ていたパネリストの一人・女優かとうかずこさんの顔が、画面左下の小さな画面に写っていました。かとうさんは、若干20歳の興毅選手が、これまでの突っ張りスタイルのパフォーマンス会見ではなく、父になりかわって真摯に精一杯答えている様子を見て、
「えらいじゃない!」
というふうに感動して、目がウルウルしている様子が見て取れました。
さらに、その加藤さんの表情をテレビで見ていた女性のMアナウンサー(20代)が、
「ウルッときました」
と話していました。それを聞いた私は、
「これまでは『ウルウルしました』と言っていたであろうこの表現を『ウルッときました』と言うのは、『イライラする』を『イラッとする』と言うのに通じるのではないか?」
と思いました。
そもそも「ウルウルする」も、
「涙で目が『潤む』様子」
をさした若者の擬態語で、「ウルッと(する・くる)」は、それをさらに縮めているのですね。どちらかというと、男性よりも(若い)女性がよく使うのではないでしょうか?
(ある意味父親の不祥事に関して)息子がこんなに頑張っているのに姿を現さない父親に「イラッと」して、その頑張っている息子の姿を見て「ウルッと」くるのが、現代の若者のようです。
Google検索(10月26日)では、
「イラッと」= 23万3000件
「イラッとする」= 6万4900件
「イラッとくる」=  4万1200件
「イラッと来る」=  1万2700件
「ウルッと」=   3万5800件
「ウルッとする」=   1060件
「ウルッとくる」=     538件
「ウルッと来る」=    1160件
でした。「平成ことば事情2916いらっとする」もお読みください。

2007/10/26
(追記)

「ウルウルする」も「ウルッとくる」も、動詞「潤む」からきていると思われますが、「潤む」の語幹を使った言葉としては、
「うるめ(潤目)いわし」
がありますね。
2007/10/29


◆ことばの話3021「洋行」

防衛省の守屋元次官の接待疑惑で盛んに名前が出てくる兵器会社、
「山田洋行(ようこう)」
「ひろゆき」ではありません。人名みたいですね。この「洋行」ですが、Hアナウンサーが、
「『洋行』ってどういう意味なんでしょうね?『内田洋行』ってのもあるけど、あれは事務機器の会社ですよね?」
あ、たしかに。「洋行」で検索してみると、
「内田洋行、小林洋行、山田洋行、鳥羽洋行、神戸洋行、細川洋行、津川洋行、須賀原洋行、平泉洋行、ウチダ洋行」
といろいろありました。
『精選版日本国語大辞典』の電子手帳版を引いてみると、「洋行」の2番目の意味で載っていました!
「洋行」(2)中国で、外国人の商店の称。*大阪の宿(192526)<水上滝太郎>四「日華洋行といふのは、雑貨を支那に輸出する店だといふ事を調べた外には、何の発展する事も無く」
また、『広辞苑』には、
「中国で、外国人の商店の称」
『大辞林』には、
「中国で、外国人経営の商社」
とありました。 なるほど、つまり外国の品物を扱ったりするわけだから、
「貿易会社」
だと考えたらいいのかな。「洋行」にそんな意味があるとは知りませんでした。
「洋行する」
というと「海外に行くこと」だと思っていましたから、そのイメージが強いんでしょうね。それと、「洋行」と名の付く会社は、ある程度古い歴史を持っているのでしょうね。
2007/10/25
(追記)
10月26日、この「山田洋行」という会社の名前の上についている説明が気になって、朝刊各紙から抜き書きしました。すると、
(産経)防衛専門商社
(毎日)防衛専門商社
(読売)航空・防衛分野の専門商社
(日経)防衛・航空分野の専門商社
(朝日)軍需専門商社
と微妙に違います。特に朝日新聞の「軍需専門商社」というのが目を引きますね。そのほかは「防衛」という言葉を使ってますが、朝日は「軍需」、つまり「軍」です。指している内容は同じでも、それをその新聞社がどう捉えているかということで、表現は変わるということですね。以前「侵攻と進攻」(平成ことば事情1127)の使い分け、あるいは「空爆と空襲1、2」(平成ことば事情 1107&1469)でも書きましたので、お読みください。なお、次回の読売新聞「日めくり」でも「洋行」を取り上げるようですから、是非お読みください。(10月26日の「日めくり」に予告が出ていました)
2007/10/26
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