◆ことばの話3020「仏教大か佛教大か?」

少し昔の話になりますが・・・。
2005年1月14日朝日新聞
「佛教大山岳部3人捜索続く〜北アルプス」
という見出しで、本文でも「佛教大学」「佛」という旧字体の漢字が使われているのを目にしました。その後、1月18日読売新聞「佛教大」という表記でした。この大学の名称には旧字体を使うことで統一されているのでしょうか?そういう疑問が出ました。大学側は旧字体を使っているようですが。
その後も気にはなっていたのですが、今朝(2007年10月24日)の各紙朝刊に、並んで出てくる記事が!これはチャンスとばかり、各紙の見出しをチェックしました。
「佛教大 仏教学部を復活」(毎日)
「佛教大に仏教学部」(読売)
「佛教大、仏教学部復活」(産経)
「佛教大に仏教学部」(朝日)
「『仏教学部』復活へ〜仏教大」(日経)
ということで、毎日、読売、朝日、産経は「佛教大」と旧字体で大学名を書き、日経のみ新字体(略字体)の「仏教大」でした。(ただし日経は、見出しに大学名はなく、本文中に「仏教大」とあったのですが。)
そして、5紙とも学部の名前は「仏教学部」と新字体で表記しているのも特徴です。
記事の内容を読むと、2010年に予定されている仏教学部の復活はなんと45年ぶり。1965 (昭和40)年当時の「仏教学部」を「文学部仏教学科」に改組して以来とのこと。少子化の現代、特色を前面に押し出し生き残りを掛けるとともに、社会人の生涯学習の場としても売り込むという意図があるそうです。
「佛教大学」のホームページを見てみると、やはり大学名は、
「佛教大学」
旧字体です。現在の文学部にあるコースとしては、人文学科の中に
「浄土・仏教コース」
新字体の「仏」大学院の文学研究科の中にあるコースも、
「仏教学専攻」「仏教文化専攻」
新字体の「仏」を使っていました。大学に電話して聞いてみたところ、
「大学名は固有名詞なので『佛』、学部名、コース名は普通名詞なので、イ・ムの『仏』で結構です。」
というお答えでした。なるほど。
全然関係ないですが、大学名を略すと「佛(仏)大」で、さらにひっくり返すと「大(佛)仏」ですね。
2007/10/24


◆ことばの話3019「息子の『負の連鎖』」

プロ野球・パリーグのクライマックスシリーズ「日ハム対ロッテ」を家で見ていた時のことです。1対5と、日本ハム敗色濃厚の9回裏ワン・アウトで、小学4年生の息子が、
「もうあかんな、終わりやな」
と言うので、
「なに言うとんねん、野球は9回2アウト・ツーストライクからや」
と言うと、
「なんで?」
と聞き返してきました。そこで、
「『もう終わりや』という安心感から、ミスがミスを呼び、それがあせりを誘い、『こんなはずではなかった』と精神的な負担になるからや」
と説明すると、息子は軽い調子で、
「ふーん、『負の連鎖』やな」
な、なんでそんな言葉、知ってんねん!?
驚いている間に、試合はさっさと1対5で終了してしまいました・・・。
それにしても、一体どこで、そんな言葉を覚えてくるんだろうか???息子に聞いてみたところ、
「なんとなく・・・」
という答えでした。
2007/10/24


◆ことばの話3018「静かなお囃子が・・・」

泉南地方出身のKアナウンサーが、9月18日に、その「生きがい」と言ってもよい「岸和田のだんじり」の取材リポートをしていました。その中でのコメントに、こんな言葉が。
「静かなお囃子の音が鳴り響いています」
お囃子にも、やかましい騒々しいものもあれば、静かなものもあるでしょう。それはいいとして、その「静かなお囃子」が「鳴り響いている」というのはいかがなものか。やはり「鳴り響いている」というのであれば、そこらじゅうに聞こえるような大音響でないとそぐわないでしょう。そうなると「静かなお囃子」という表現の「静かな」とは矛盾してしまいます。
ただ単に「鳴っています」ならば「静かなお囃子」にでも使えるでしょうが。きっと「鳴っています」よりも「鳴り響いています」の方が、言葉としての落ち着きがよかったのでしょうね。
このように、耳で聞いた時の心地よさを基準に言葉を選択すると、内容が合致しない表現になることがあります。以前書いたのですが(◆ことばの話526「香ばしい」)、どんなグルメリポートでも、
「香ばしいですね」
で済ませてしまうのと、根は同じだと思います。気をつけたいですね。
2007/10/23


◆ことばの話3017「いちてん、にてん」

100円ショップの「D」で買い物をしました。100円の品物を「3つ」買いました。それを持ってレジに行くと、レジの女性が品物の数を数えて、こう言いました。
「いちてん、にてん、さんてん」
「1点」を「いってん」ではなく「いちてん」と言ったのを、はっきりと耳にしました!ついに出たか!出る出るとは思っていたが、ついに!
思えば、時間の「3分」「4分」を「さんふん」「よんふん」という読み方をする若い人が増えてきた時に、
「このままで行くと『1分』を『いちふん』と言うヤツが出てくるな・・・」
と思っていましたが、「いちふん」より先に「いちてん」が出ましたか・・・。
この言い方を聞いた日、会社に行くと、外部スタッフの女の子が「4分」を「よんふん」と言っていました。
さらにこの間の土曜日、東京・荻窪に行った時、ブラブラ歩いていたら、自転車に乗った親子連れのうち、小学2、3年生ぐらいの男の子が、
「お父さん、ここからあそこまでは『なんふん』ぐらいかかる?さんふん?よんふん?」
と言っているのを耳にしました。若い世代はここまで来ているのか。これは困ったぞ。
2007/10/23


◆ことばの話3016「キャタピラーの言い換え」

8月30日、神戸でクレーン車が事故を起こしました。その際に、
「キャタピラーが脱落した」
という表現が。この「キャタピラー」は、「新三菱キャタピラーの商標名」 なので、普通放送では「一般名詞」に言い換えます。その言い換えられる一般名詞は、
「無限軌道」
ということになっているのですが、これが言い換えられたのを、私は寡聞にして耳にしたことがない。読売新聞社の『読売スタイルブック2005』には、
「履帯」
という言葉も出ていますが、これも聞いたことも見たこともない。
どうしようか?
そこで、9月に名古屋で開かれた新聞用語懇談会の放送用語分科会で各社の用語担当者に伺ったところ、以下のような意見が返ってきました。
(NHK)「走行用のベルト」「駆動用のベルト」「2メートルほどの部品」「クローラー」という言い方も。「履帯」は軍隊用語。自衛隊なら使うかも。
(日本テレビ)言い換えは「無限軌道」となっているが使っていない。「クレーン車の部品の一部」などとする。
(TBS)「車のタイヤにあたる」「駆動ベルト」「車の駆動輪にあたる」
(フジテレビ)「キャタピラ」で出てきても、あえて直さないであろう。一番わかりやすいから。商標権者から苦情が来るかどうかが問題。その判断はその場でする。
(テレビ朝日)「キャタピラ」と言い換えなしでやる。苦情が来たら、その時に考える
(テレビ東京)「コマツ」のHPを見たら「キャタピラ」のことを「走行装置」「クローラー」と呼ぶ、としていた。
(毎日放送)「クローラー」とかつて言い換えた例がある。
(朝日放送)「重機の部品」
(関西テレビ)「車輪部分」
(テレビ大阪)そのパーツの名前には触れなかった。
(共同通信)新聞用には「無限軌道」、放送用には「走行用のベルト」
というようなことでした。NHKさんの
「走行用のベルト」
は、たしかに、わかりやすいですね。また、
「クローラー」
という表現もあったのですね。知りませんでした。これは「クロールするもの」という意味ですが、「クロール(crawl)」「水泳のクロール」と同じで、元の意味は、
「這う」
ですから、たしかにその通りですね。でも、「日本語」としては、まだ一般になじんでいないので使いにくいことは使いにくいです。しかし大変参考になりました!ありがとうございました。
2007/10/23