◆ことばの話2985「すっごいクリがおいしそうですね」

9月7日の『ズームイン!!SUPER』の関西ローカル中継は、Rアナウンサーとタレントの小塚舞子さんが奈良県信貴山から、秋の味覚たっぷりの中継でした。
Rアナウンサーはニワトリの有精卵の生卵をごはんにかけて味わうというリポート、次に小塚さんはクリを拾って焼く「焼きグリ」のリポート。有精卵のリポートを終えたRアナウンサーは、焼きグリの小塚さんの方に合流しました。その際の第一声が、
「あ、すっごいクリがおいしそうですね。」
中継を見ていて、これにはビックリ。あまりに驚いたのでこうして書いているわけでございます。これはアカンやろ。 クリの中継やってるんだから、「クリが」おいしそうなのは当たり前じゃないか。あまりにあまりにもの当たり前のコメントにガックリ。 小学生が言うのならご愛嬌ですが、プロのアナウンサーが言うコメントではございません。ギャグで言ったのならともかく(ギャグには聞こえなかったけど)、当たり前すぎて、
「だから、何!?」
と怒気を含んだ声で、テレビ画面に向かって聞き返したくなりました。まだこれが、
「おいしそうですね」
なら当たり前すぎるけど、ここまでは怒らなかったでしょう。言い方にもよるけど。
なぜこれがおかしいのか。それがわからないのなら、プロとは言いがたいと思います・・・。
映像で見てわかることは言わなくてもいいし、映像ではわからない匂いなどの情報を伝えることで、立体的に視聴者にイメージさせることが、テレビのアナウンサーの仕事です。「おいしい」だけでなく「どのように」おいしいのか、際立った特徴は何か、そういったことを的確に表現する技術が、「プロの話し手」には求められているのです。ちょっと厳しかったかもしれませんが、そういうことです。
2007/9/7


◆ことばの話2984「世代により」

JR京都駅に先日できたばかりの家電販売店に行ってきました。開店してすぐの日曜日ということで、ものすごい人でした。長い列に並んでエスカレーターを降りようとした際に目に留まったのが、「携帯音楽プレーヤー」・・・小さな声で言いますと「i-pod」なんですが、そのケースの売り場に張ってあった表示です。そこには、
「世代によりケースが異なります。詳しくは係員にお尋ねください。」
と書かれていたのです。この、
「世代により」
というのは、おそらく、
i-podの世代」
を指しているのだと思います。同じ「i-pod」でも新しいのと古いものでケースが違うのでしょう。でもこういう場合、これまでだと、
「バージョン」
という言葉を使っていたと思うのですが、ここでは「世代」を使うのですね。なんだか、
「世代間格差」
を感じてしまいました。この張り紙を見て、お客さんの方が、
「そうか『世代』によってケースが違うのか。オレは『40(歳)代』だけど、子どもは『10代』だから、世代が違うからケースは違うのかな?でも、オレが子どもに買ってやる場合は、40代用のケースなのかな?それとも10代用のケースなのかな???」
なーんて、迷うお客さんがいるかも知れませんね・・・いないか。でもちょっとおもしろい「世代」の使い方だなと思ったのでした。
2007/9/10


◆ことばの話2983「Vリーグ」

先日新聞のスポーツ欄で、
「Vリーグ」
という文字も目にしたので、「バレーボール」のリーグだと思ったら、さんと、
「サッカーのベトナムリーグ」
のことでした。「ベトナムのV」だったのか。
日本のプロサッカーリーグは1993年に発足した「Jリーグ」ですが、その成功(特に発足時のブームは、なかなかすごかった)に刺激されて、ほかのスポーツも「Vリーグ」(バレーボール(去年あたりから「Vプレミアリーグ」 と称しているみたいですが)、「Lリーグ」(女子サッカー)、「Xリーグ」(アメフト)、「トップリーグ」(ラグビー)などと名づけられましたが、なかなか2匹目のドジョウはいなかったようで・・・。
Google検索では(9月10日)、
「Vリーグ、ベトナム」=  864件
「Vリーグ、ヴィエトナム」=2件
「Vリーグ、ヴェトナム」=108件
「Vリーグ、バレーボール」=23万3000件

で、圧倒的に「バレーボール」でした。
また日本のサッカーの成功に刺激されて、既にプロ化していたけれども今ひとつ盛り上がりに欠けていた韓国のプロサッカーリーグが「Kリーグ」という名称にしたり、たしかシンガポールが「Sリーグ」、マレーシアが「Mリーグ」、中国が「Cリーグ」など同じようなネーミングをしているようでした。その流れの中でベトナムが「V」なのは、当然。でも、バレーボールと重なってしまうのですね。
ところで「バレーボール」は英語表記だと、
VollyBall
ですから、「ボレーシュート」の「ボレー」と同じなので、
「ボレーボール」
と言うか、もしくは「ボレーシュート」の方が、
「バレーシュート」
と言ったほうが、整合性があるのに、そうはならないのですねえ。「V」で始まっても、
「ヴァレーボール」「ヴォレーシュート」
にもならないんですねえ・・・。外来語は難しいです。
2007/9/6
(追記)

9月23日に開幕した日本初の「フットサル」の全国リーグの名前が、
「Fリーグ」
でした。「Jリーグ」以来のネーミングブームはまだ衰えていないようです。同じサッカーだしね。
2007/10/2
(追記2)

2005年にプロ化した、オーストラリアのサッカーリーグの名前は、
「Aリーグ」
だそうです。10月20日の読売朝刊に載っていました。
2007/10/22


◆ことばの話2982「新メニュー」

マイケル・ムーア監督の新作映画「シッコ」を見に行った帰り、昼ごはんを食べに、近くの「讃岐うどん」と書かれた店に入りました。「天ざる定食」を頼んでから、お茶をすすりながら壁に貼られたメニューを見ていると、
「新メニュー」
と書かれた張り紙が!興味を持ってよく見ると、そこには、
「新メニュー・とんかつ定食」
と書かれていたのです。何か違和感が・・・。そうなんです、「とんかつ定食」というメニューに「新味」が感じられないので、「新メニュー」という「冠」に違和感があったのです。もちろん、この店としては「新メニュー」なんですけど、それが世間一般としては「ありふれたもの」であるところに、食い違いがあるのでしょうね。
同じく「新メニュー」としてもう一つ、張ってあった紙には、
「新メニュー・生姜焼定食880円」
と書かれていました・・・。
このほか、この店の張り紙には、別の定食のうどんに関して、
「特製のコシが効いた麺」
という表現が。「コシが効いた麺」って・・・「コシの強い麺」ならわかりますが。味はまあまあでしたが、表現は、なんかちょっとずれているような気がしました。
2007/9/7


◆ことばの話2981「電動車いすとシニアカー」

9月6日昼前、大阪府高槻市のJR東海道線・摂津富田−茨木駅間の富田村踏切で、電動車イスに乗った72歳の男性が新快速電車にはねられて死亡するという事故がおきました。それを報じた読売テレビの表記は、
「電動車イス」
でした。各新聞の9月7日の朝刊では、読売、日経、朝日、産経は、
「電動車いす」
と「いす」がひらがな表記、毎日は、
「電動車椅子」
と「椅子」は漢字表記でした。日本新聞協会の『新聞用語集2007年版』では、「椅子」は使わずに、ひらがなで「いす」と書くことになっていますが。
9月7日、朝日新聞の朝刊紹介をしていた『ズームイン!SUPER』関西ローカルのコーナーで、虎谷アナウンサーはこの記事に関連して、
「車椅子って普通押してくれる人がいますが、今回はいなかったんですかねえ」
というようなコメントをしていましたが、実はこの「電動車いす」、いわゆる普通の「電動車いす」ではなかったのです。産経は、そのほかに説明の記事の中では、
「電動三輪車」
という表現を、また朝日は、
「シニアカーと呼ばれるハンドル型電動車いす」
と説明していました。そうなんです、最近よく見かける、スクーターのようにハンドルの付いた乗り物のようなもの、あれが今回事故に遭った「電動車いす」だったのです。あれなら、後ろで押す人なんて、ありえません。ひとりで「運転・操縦(?)」するものなんですね。ただ、「乗り物」としてしまうと、「歩道を走れなくなって車道を走らなくてはならない」こともあって、あれの扱いは「車椅子」と同じく「歩行者扱い」なんですね。車両じゃないんです。その辺がジレンマとなっていて、「電動車いす」という表現になっているのです。いわゆる「電動車いす」のイメージとは違うものですので、視聴者の方が虎谷アナウンサーのように勘違いしないように、伝える時には説明を付け加えるなど、注意を要しますね。
2007/9/7
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