◆ことばの話2970「ひとことで例えると・・・」

8月29日の『ズームイン!!SUPER』の中のNNNのニュースで、8月27日に改造された新内閣について、 女性記者が安倍総理にこう聞いているVTRが流れていました。
「新内閣、ひとことで例えるとどうなりますか?」
これに対して安倍総理は、
「うーんそうですね、政策実行内閣ですね」
と答えていました。何気ないやり取りですが、私はこの記者の質問を聞いてハタと思い当たることがありました。それは小泉前総理大臣に対して言われたあのことば、
「ワンフレーズ・ポリティクス」
です。ことばの話でも962「ワンフレーズ・ポリティックス」で取り上げました。 2002年12月のことです。この年の12月12日の朝日新聞の見出しで、
「首相に『ワンスレーズ政治まずい』電通会長」
と、初めて私は「ワンフレーズ・ポリティクス」という言葉を目にしました。小泉総理(当時)はこれについて、
「ワンフレーズ・ポリティクスと言われるのは心外だ。」
と答えて、自らこの言葉を使っています。小泉総理というと、例の、
「感動した!」
に代表されるわかりやすさ、簡潔さ・情緒的な印象があり、そのあたりを指して作家の高村 薫さんなども以前から批判していました。(良い面もあるのですけどね)
しかし、です。今回女性記者は、こう聞いていたのです。
「ひとことで例えると」
そうなのです。実は「ワンフレーズ・ポリティクス」を求めていたのはメディア側だったのです!うーん、それなのに、「ワンフレーズポリティクス」というように批判するのは、まさに「マッチポンプ」だなあ・・・。
「ワンフレーズポリティクスはダメ」
と言うのであれば、「ひとことで言うと」などという質問をしてはいけないのではないでしょうか。わかりやすさを求め過ぎると、こういったことに陥ることもあるのですね・・・。
2007/8/29


◆ことばの話2969「ブラウン管で」

先日、伊丹市の小学校の先生の皆さん50人ほどを相手に、言葉の話をしに行きました。講演の前に、まず主催の校長先生から紹介されました。その際に校長先生が、
「道浦アナウンサーは、ブラウン管でもおなじみの・・・・」
と紹介してくれたのですが、ちょっと待てよ、と。最近のテレビ、特に平面テレビは、
「ブラウン管は使っていない」
のではないかと・・・液晶テレビなんかは、ねえ。
ま、けど「比喩的表現」としては、
「ブラウン管で」=「テレビで」
ということは、皆、わかりますから特に問題はないのですが。
これと同じようなテレビにまつわる「古い表現」としては、
「チャンネルを回す」
という表現があります。昔のチャンネルは、確かにガチャガチャ回していたんですが、リモコンになってから(もう20年以上、経ちますよね)は、回すものが特にありませんから、この表現は「比喩的表現」になっているんですよね。「筆」が入っていなくても「筆箱」、下駄が入っていなくても「下駄箱」というのと同じかもしれません。許容範囲と言えるのではないでしょうか。「平成ことば事情365チャンネルを回す」もお読みください。
2007/8/29


◆ことばの話2968「大事には至らなかったのアクセント」

8月29日の『ズームインSUPER』で、前日、最下位の広島と延長12回で引き分けてしまった阪神タイガースのニュースをやっていました。その中で、ウイリアムズ投手が内野ゴロを処理しようとしたマウンドから駆け下りた際に、バランスを崩してころんでしまったシーンを紹介して、うちのKアナウンサーとOアナウンサーがともに、
「大事には至らなくてよかった」
と言っていたのですが、この「大事に」のアクセントが、
「大事に育ててきました」
の「大事に」と同じ、
「だいじに(LHHL)」(Lは低く、Hは高く発音する)
だったのですが、私はこの場合の「大事」は、「小事」の反対語の「大事」なので、アクセントは、「頭高アクセント」の、
「だいじに(HLLL)」
だと思うのです。『NHK日本語発音アクセント辞典』を引くと、たしかにこの場合の「大事」 (小事に対し)のアクセントの1番目には、
「だいじ(HLL)」
「頭高アクセント」が載っているのですが、2番目には、
「だいじ(LHH)」
という「尾高アクセント」が載っているのです。これだと普通に使う意味での「大事」(「大事に育てました」の場合の「大事」。これは「尾高アクセント」と「平板アクセント」が載っています)と変わらないじゃないですか!
私としては、ぜひ、この二つの「大事」のアクセントは使い分けてほしいと考えています。そのように指導します。
2007/8/29


◆ことばの話2967「抜け道と抜け穴」

(ちょっと古い話になりましたが・・・・)
日本ライスによるブランド米の偽装事件のニュースのナレーションを録音しました。その際に、
「抜け道」
という言葉が出てきましたが、私は、
「『抜け穴』ではないか?」
と思ったので、調べてみました。『広辞苑』は、
「法の抜け道」「法律の抜け穴」
という作例
で、「抜け道」は「言い抜ける」「抜け穴」は「ひそかにのがれ出る」「抜け穴」の方が「ひそかに。こっそり」という感じがありますね。
『大辞林』は、
「法の抜け道」「法の抜け穴」
という作例。おんなじだ。「抜け道」は「逃れる手立て。法律や規制などの間隙を突いて責任などを逃れる方法」とあり、「抜け穴」は「うまく逃れる手段」となっていました。
私が思うに、「抜け穴」は、正統な道のどこかに穴があいていて、そこから這い出ることができるもので、いわば『欠陥』ですかねえ。それに対して「抜け道」は、ショートカットの近道のような形で抜けられる道。ルート。人間が意志を持って作ったもの
「穴」の方が小さいひっそりと、と言うことですかね、結論は。
2007/8/28


◆ことばの話2966「降りむら」

8月28日の『ニューススクランブル』で、お天気担当の小谷純久さんが、翌日の天気についてこう言いました。
「明日は、雨にフリムラがあります」
え?「フリムラ?」初めて聞いた言葉です。画面には漢字で、
「降りむら」
と出ています。その「むら」は、何県何郡にあるのだろうか?と思ってしましました。きっと、よく雨が降る村なんでしょうね?
冗談はさておき、小谷さんが言いたかったのは、強く降るところと弱い雨のところがある、雨の降り方に「むら」がある、ということだったのだと思います。
「色むら」
というのは聞いたことがありますが、それと同じようなことなのではないでしょうか?
そういえばこんな歌もあったな、
「♪フリムリ、フリムラ・・・・」
「それは『♪フニクリ、フニクラ』です!」
すぐに隣の席のHアナウンサーが突っ込んでくれました。
「あ、そうだ!たしか沖縄では『バカ』」のことを『フリムン』とか言ったよな」
「そうなんですか」
これは本当です。
でも・・・実は私がこの言葉を聞いて想像したのは、
「もし、『降りむら』の『む』が、『ま』だったら・・・」
ということでした・・・。
興味のある方は、「平成ことば事情1162」「平成ことば事情387」もお読みください。
2007/8/28
(追記)

翌日の話。
お昼前に、大阪市内にある読売テレビは、ものすごい雨に見舞われました。時間にして、ものの10分。すぐに雨雲は東の方角に移動していきました。アナウンス部から見ていると、はっきりとその動いて行った雲の区域が見て取れました。
「ああ、昨日、小谷さんが言っていた『降りむら』というのは、こういうことだったんだ」
と思いました。夏の暑い空気と秋のやや冷たい空気が、上空でケンカしていて大気の状態が不安定になり、こういう状態になるのだな。それだけ季節が動いているのだなと、感じました。
2007/8/29