◆ことばの話2940「レッドリスト」

「ジュゴン」が「絶滅危惧種」に指定というニュースを、8月4日の『ズームイン!SATURDAY』で伝えていました。その際に、
「ジュゴンは絶滅危惧種を載せた、いわゆるレッドリストに登録されており・・・」
と言っているのを聞いて「あれ?」っと思いました。それって以前はたしか、
「レッドデータブック」
と言っていたのでは?ネットで調べてみると、「生物多様性情報システム」というサイトに、こういう説明が載っていました。
(http://www.biodic.go.jp/rdb/rdb_f.html)
「レッドデータブックとは」
「野生生物の生息状況は常に変化しており、その評価は定期的に見直すことが不可欠です。全世界レベルのレッドデータブックを編纂しているIUCN(国際自然保護連合)でも、より定量的な評価基準に基づく新たなカテゴリーが平成6年に採択され、リストの見直しが行われました。
このような状況を踏まえ、環境省では、平成7年よりレッドデータブックの見直し作業を開始しました。今回の見直しは、まず分類群ごとにレッドリスト(レッドデータブックに揚げるべき日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)を作成・公表し、これを基にレッドデータブック(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種についてそれらの生息状況等を取りまとめたもの)を順次編纂するという2段階に分けて行っています。平成12年4月までに動植物全ての分類群についてレッドリストを作成し、公表しました。また、新しいレッドデータブックは、現在、爬虫類・両生類、哺乳類、汽水・淡水魚類、鳥類、昆虫類、甲殻類等、クモ形類・多足類等、植物I、植物II版が刊行されています(平成19年3月現在)。 」
はああ、つまり「絶滅危惧種」については、「2段階」の段階を経ているんですね。まず「レッドリスト」を作成して、それを元に「レッドデータブック」を作成すると。つまり、「レッドリスト」は「注意報(=イエローカード?)」、「レッドデータブック」は「警報(=レッドカード?)」といった感じですかね。
今回「ジュゴン」は、“絶滅注意報”にあたる「レッドリスト」ということか。ここで踏ん張れば、「レッドデータブック」には載らなくて済むのかも知れませんね・・・ただね、保護の仕方というのも難しいと思いますね。保護しすぎると、今度は「増えて困る」ということもあります。人間の勝手で絶滅に追いやってしまうのはいかがなものかと思いますが、それ以外の理由で絶滅に陥ることもあるのではないか。いわゆる自然淘汰です。そのあたりはどうなんでしょうか。
2007/8/4


◆ことばの話2939「玉突き事故の英訳」

夏です。もうすぐお盆です。お盆休み、帰省される方、交通事故が起きないよう、巻き込まれないように、気をつけましょう!と言っても自分には過失のないときでも巻き込まれることがあるところが、交通事故の怖いところ。先日、車を運転しながらラジオを聞いていた時のこと。交通情報の中の、
「玉突き事故」
という言葉に引っかかりました。ちょうど、ビリヤードをした帰りだったからでしょうか、
「『玉突き事故』って、英語ではなんと言うのかな?『玉突き』は『ビリヤード』だから、英語では『ビリヤード・アクシデント』とでも言うのかな?」
と思ったのです。でも待てよ、「玉突き」は「ビリヤード」でいいのか?もしかしたら子供(女の子)がする「まりつき」が「玉突き」だとすれば「ビリヤード」ではなくなってしまうぞ。でも「たまつき」の「つき」は「突き」か「衝き」だから、「ビリヤード」でいいのかな・・・ビリヤードを「撞球」とも言うから「撞く」かなあ?などと考えていました。
で、和英辞典を引いてみました。すると!「玉突き衝突」は、
chain- reaction traffic accident
と書かれていました。chain-reactionは、直訳すると「連鎖反応」ですね。文字通り「鎖のようにつながって反応が起きる」ことです。たしかに多重衝突、玉突き事故は、前の車からつながって、前の車の事故が原因となって次々と事故が起きるのですから、「チェーン・リアクション」というのはその通りですね。また「話し言葉」としては、
pileup
ともかかれていました。これを今度は英和辞典で引いてみると、
「(車の)多重衝突」
とありました。「pile」には「大量の、堆積、山」という意味がありますから、そこからの意味なんでしょうね。いずれにせよ、「ビリヤード」は使わないようですね。
皆さんも交通事故には十分気をつけて、安全運転でお願いします!
2007/8/4



◆ことばの話2938「『自動列車停止装置』の読み方」

2年前に起きたJR福知山線の脱線衝突事故。その事故に関して、JR西日本が独自に調査した報告書の説明会が、兵庫県伊丹市内で8月4日に開かれ、遺族やケガをした人148人と、当時のJRの職員などが参加しました。そのニュースを読む際に原稿に出てきた言葉が、
「自動列車停止装置」
です。これを読む時に、どこで切るのか?という問題があります。もちろん、一息に全部コンパウンドして、
「ジドウ・レッシャ・テイシ・ソウチ(LHH・HHH・HHH・HLL)」
                 (Lは低く、Hは高く発音する)
としてしまう手もありますが、普通は、どこかで一回きりますね。それが、
「自動列車・停止装置」
なのか、それとも、
「自動・列車停止装置」
なのか?という問題です。意味の上から考えると、後者の方が正しい。つまり、
「ジドウ・レッシャ・テイシ・ソウチ」(LHH・LHH・HHH・HLL)
です。だから「自動・列車停止装置」となります。ところがこれを、前者のように、
「ジドウレッシャ・テイシソウチ」(LHHHHL・LHHHLL)
という風に、「自動列車・停止装置」と分けてしまうと、
「『自動列車』ってなにさ?」
ということになってしまいますね。なぜこういうふうに切るかというと、このように漢字が8つも続く言葉の場合には、目で見てどこかで漢字を切ろうとします。その場合に、漢字の配置(文字数)でバランスのよい真ん中で切ろうとするので、「4+4」というバランスになるのではないでしょうか?意味の上からは明らかに「2+6」なのですが・・・。
こういった原稿を読む場合には、文字面に騙されずに、ちゃんと意味を考えて読むことが大切ですね。
2007/8/4


◆ことばの話2937「血肉」

早稲田大学の飯間浩明さんからメールがきました。
「道浦さんは『知識を血肉化する』をどうお読みになりますか。ほとんどの辞書では、
『けつにく』
としか載っていません。新聞社・NHKの用語辞典もそうです。ところが、『三省堂国語辞典』では『ちにく』を主にして、『けつにく』は簡単な説明しかありません。古い版(第3版以前)では『けつにく』だったのですが、今では逆になっています。私はというと『ちにく』です。妻に聞いても『ちにく』でした。『血肉のあいだがら』というときは『けつにく』でもいいと思いますが、『知識を血肉化』は『ちにくか』と読みたいです。おそらく、昔は『けつにく』だったのが、最近は『ちにく』になっており、ほとんどの辞書はその変化に追いついていないのでは?と思うのですが、道浦さんは、いかがでしょう?」
いやあ、全然気付かなかったなあ、ふだんは私も、
「ちにく」
ですねえ。で、こう返事しました。
「『血肉』は『ちにく』ですねえ。『血沸き、肉踊る』からの連想でしょうかねえ。」
それに対して飯間さんからは、
「やはり、そうですか。道浦さんも『ちにく』ならば、辞書には『ちにく』を主にして出すべきだと思いました。ありがとうございます。」
とのことでした。
それで気になって「血肉」に注目していると・・・出てきましたよお、昨日(8月3日)読んだ本『ビートたけしと「団塊」アナキズム』(神辺[こうのべ]四郎、集英社新書)の中に、
「アメリカから直輸入の民主主義教育のおかげで、十二分に『権利意識』というものを血肉化していたからである。」
「必ずしも現実的な血肉とはなっていないものだった」
「文字どおりの氏ならぬ“育ち”が、日本の伝統的美徳を『団塊』のビートたけしの血肉にも浸透させていたというだけのことにすぎない。」
「必ずしも現実的な血肉とはなっていないものだった」
「日本は(中略)極東の島国でしかない。この位置環境で数千年にわたって体内に継承され血肉に同化させてきた環境DNA、民族DNAというものは、なまなかなことでは払拭できるものではない。」
と気付いただけでもなんと5回も「血肉」が出てきました!
読み方は書いてなかったけど、おそらく「ちにくか」「ちにく」でしょうね。
以前、「平成ことば事情187・274・487」で3回にわたって、
「『肉』音読みなのだが、訓読みだと感じる』
ということについて書きましたが、この場合もそれが反映されているのではないでしょうか?「血」は音読みが「ケツ」、訓読みが「ち」ですが、「肉」が(本当は音読みだけど)訓読みのように感じるので、訓読みの「ち」をあわせて「ちにく」と読んでしまうのではないかと思います。「肉汁」を「にくじる」と読みたくなる気持ちに通じるような気が合います。今後も、「血肉」に注目してみます。
2007/8/4
(追記)

注目したらすぐに出てきました。8月5日の朝日新聞の書評欄で、神戸女学院大学の内田樹教授が、中島 敦の『李陵・山月記』についての書評で、
血肉化された漢文学 端正な<宇宙的視座>」
という見出しで、本文でも、
「明治42(1909)年生まれの中島 敦は漢文学を血肉化し、自在に操ることのできた最後の世代に属する。」
「血肉化」が出てきますが、これは「ちにくか」と読むのか、「けつにくか」と読むのかは、ちょっとわかりません。
2007/8/5


◆ことばの話2936「ハンジョウ」

8月2日、関西国際空港(関空)の2本目の滑走路がオープンしました。これまでの1本目が出発用、新しい2本目は着陸用となるそうです。その記事を載せた8月3日の読売新聞朝刊の見出しは、
「関空ハンジョウ 願うフライト 祝福の翼 中国・杭州(ハンジョウ)へ」
として、これからは着陸専用となる新しい滑走路から、特別に出発第1便として、中国の杭州への全日空機が飛び立ったという記事です。その際に関空会社の宮本 一会長が、
「杭州は中国語で『ハンジョウ』。これで関空はさらに繁盛できる。」
とあいさつしたと載っていました。そうなんですってね、「杭州」は中国語で、
「ハンジョウ」
だそうです。これに関しては6月の新聞用語懇談会放送分科会で「虹橋空港の読み方」について話し合った際に、北京特派員も務めたことがあるというフジテレビの委員から、
「現地音の『ホンチャオ』が正しい。JTBのパンフレットなどでも『ホンチャオ・ミレニアムホテル』など『ホンチャオ』を採用している。ついでに、中国の『広州』と『杭州』は、どちらも『コーシュー』と読むのでわかりづらいので『杭(くい)のコーシュー』などと読んで区別しているが、全日空(ANA)では『杭州』は現地音の『ハンジョー』を使ってコマーシャルなどでも言っている。」
という意見が出ていました。この日の「ハンジョー」への便も全日空(ANA)機でした。たしかに「こうしゅう」といった場合には「杭州」なのか「広州」なのかがわかりにくいですね。関空からはこの日、その「広州」へ向かう貨物便のノースウエスト機も、新しい第2滑走路から飛び立ちましたし。
関空のハンジョウ(繁盛)を、関西人の一人として祈ります。今度、夏休みの旅行でも関空を使う予定です、ハンジョウ(杭州)には行きませんが。きっと、旅行先のベッドの広さは「ハンジョウ(半畳)」ぐらいだと思います・・・それじゃ寝られないか。「イチジョウ」は欲しいです、ハイ。
2007/8/4