◆ことばの話2935「ブタカツ」

横浜育ちの新人・吉田奈央アナウンサーが、動画サイトの仕事で「大阪探訪」してきました。すでに動画サイトにアップされていますが、その中で「ディープな大阪」と言われる「新世界」にもお邪魔しました。新世界といえば串カツ!ということで、串カツ屋さんにも初トライ!ま、トライというほどのこともなく、串カツを食べただけなんですけど・・・。
注文も戸惑いながらの吉田アナ、でも、リポートに行っているのに結構食べちゃってます。その串の数と言ったら・・・!
さて、問題はその注文の仕方。そんなところも先輩アナは見ておりますゾ。彼女は、
「じゃあ、ブタカツ」
と言って注文していたのです。ブタカツ?それってもしかして、
「豚(トン)カツ」
じゃあないの?いや、でも新世界の串カツ屋さんて、私ももう長いこと行ってないからわからんけど、串に刺した豚カツのことを「ブタカツ」と言うのかもしれんぞ。「おしながき」にも、
「ブタカツ」
とカタカナで書かれていたのかもしれないし。でも・・・普通は「豚カツ」と書いて「トンカツ」と読みますよね。
そこで 本人を問いただしたところ、
「ああ、たしかに私、『ブタカツ』って言ってましたね、ウェブで・・・どうだっけ・・・『豚カツ』って漢字とカタカナで書いてあったんでしたっけ・・・それともカタカナだけで『ブタカツ』って書いてあったんでしたっけ・・・」
そんなん聞かれても、ワシ、行ってへんから、わからん!挙句の果てに、
「忘れましたあ・・・・。」
ガックシ!今度、新世界に確認しに行きたいと思います。
2007/8/5


◆ことばの話2934「テロ特措法」

8月4日の読売テレビ『ウェークアップぷらす』を見ていたら、
「テロ特措法」
について触れたナレーションが流れていました。それを聞いていて私は、
「え!」
と思いました。なぜかと言うと、
「テロとクソ法」
と聞こえたからです。読み方が悪いのか、略し方が悪いのか、はたまた法律の名前が悪いのか・・・法律が悪いのか・・・。ナレーターだけでなく、ゲスト出演していた自民党参議院議員の世耕弘成・首相補佐官(広報担当)が口にした「テロ特措法」「テロとクソ法」に聞こえました。「世界とテロとの戦いだ」と世耕さんは言っていましたが、この発音では「テロとクソとの戦い」に聞こえてしまいます。アメリカ人もきっと、
「bull shit (ブル・シット)!(クソッ!)」
と言うことでしょう。これは、
「テロ・特措法」
と区切って読めば問題はないのですが、きっちり切らないでつなげて読むと「クソ」が出てきてしまうわけです。
そう言えば「美しい国」は、さかさまから読むと、
「憎いし苦痛」
だしなあ。なんだか名前がよくないなあ。
2007/8/4


◆ことばの話2933「くぐらせる」

5月10日放送の読売テレビ『ニッポン旅×旅ショー』を見ていたら、料理人の方が、
「これ(白甘ダイ)を、衣(ころも)にサッとくぐらせ・・・・」
と言っていたのに違和感を覚えました。と言うのも、「くぐらせる」というのは、
「液体の下(中)」
にサッと通すことをいうのではないかと私は思います。この場合の「衣」は液体ではないので、「くぐらせる」というのはおかしいのではないか?と思ったのです。
「くぐらせる」のもとの動詞は「くぐる」(自動詞)です。それを『新明解国語辞典』で引くと、
「くぐる」=(1)(身をかがめて)も野々下や狭い所を通り抜ける。(2)水の中にもぐる
とありました。てんぷらの場合は「水」ではなく「油」ですが(2)の意味ですね。
しかし、もしかしたら料理の世界では、「油」と同じように「衣」も「くぐらせる」と言うのかもしれません。
ネットで検索してみると、
「ゆるめに溶いた衣の中をくぐらせる」「卵液をくぐらせる」「イワシを衣にくぐらせる」「卵にカキをくぐらせる」「小麦粉にくぐらせる」「水にくぐらせる」「砂糖醤油にくぐらせる」「出汁醤油にくぐらせる」「熱湯にくぐらせる」
などいろいろなものに「くぐらせ」ていました。ところで「卵液」はどう読むのでしょうか?「らんえき」でしょうか?それとも「たまごえき」でしょうか?「卵駅」みたい・・・。
そしてやはり「衣にくぐらせ」が出てきました。この場合の「衣」は小麦粉を水で溶いた「液状のもの」
なので、「くぐらせる」が使われるのでしょうね。ここで出てきたものはみな「液状のもの」です。必ずしも「油」や「水」「熱湯」でなくても「くぐらせる」ことがわかりました。
勉強になりました!
2007/8/1


◆ことばの話2932「改訂か?改定か?」

「会社の消防計画書を『カイテイ』したんだけど、これって『改定』かな?「改訂」かな?」
と元アナウンサーで、現在は総務部にいる先輩から内線電話が。
「うーん、難しいですね。『訂正の訂』の方の『改訂』のような気もするけど・・・ちょっと待ってください、辞書引きますから。」
と言いながら『新明解国語辞典・第6版』を引きました。
「改訂」=(書物の内容などを)改めなおすこと。(例)改訂版
「改定」=新たに取り決めること。(例)料金の改定(値上げ。値下げを指すことはほとんどない)
ということで、
「これは『訂正』の『訂』の『改訂』の方でしょうねえ、書物ですからねえ。」
ということで結構簡単に解決しました。ここ数年は、『新明解』の記述とは違って、
「改定=値下げ」
もありましたが、今年に入ってガソリン・ガス代、電気代など、また「改訂=値上げ」の季節に入っているのかもしれませんね・・・。
あとで見ると、『新明解』のカバーについていた帯に、
「全面改訂!」
と書いてありました。
2007/7/31


◆ことばの話2931「炊き出し」

7月16日に起きた新潟中越沖地震から6日目の7月21日、NHKの現地からの中継を見ていたら、リポーターの森本英樹という人が、
「夕食のごはんとサラダの炊き出しが行われています」
とリポートしていました。なんだかおかしいな。
「ごはんの炊き出し」は問題ないけれど、「サラダの炊き出し」はおかしいなあ。サラダって炊くもの?「炊き出し」の意味が変化したのか?おそらくこの森本記者は、
「炊き出し」=ボランティアが無料で食事などを提供すること
と思っているのですね。いや、たしかにそうなんですが、その時に無料で提供される食べ物は鍋や釜で火を通したもの、つまり「炊いたもの」というのが原則ではないでしょうか?
『新明解国語辞典』では、
「たきだし」=火事などの非常のときに、その場で飯を炊き、人びとに配ること。「焚き出し」とも書く。
とありました。やはり原則は「飯を炊く」ですね。
それともう一つは、文の構造の問題で、「ごはん」と「サラダ」が無料で振る舞われているというふうに、2つのことを並列で示そうとしたのだけれども、その2つの述語部分の動詞が、1つの動詞の要素を持つ名詞(炊き出し)ではまとまらないという事情もあったのでしょう。すなわち、
○「ごはん→炊く」
×「サラダ→炊く」
ということです。時々この「述語部分のねじれ」と言いますか「不一致」を見ることがあります。こういった場合は、動詞を一つにするという手抜きをせずに二つに分けて
「ごはんの炊き出しが行われ、サラダも配られています」
と言うべきところでしょうね。
2007/7/31
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