◆ことばの話2880「仲むつまじい」

『あさパラ!』のナレーション録音をしているWアナウンサーから電話です。
「道浦さん、『仲むつまじい』というのは、女性同士の間でも使っていいんですか?」
なるほど、言われてみれば「仲むつまじい」は、
「夫婦仲むつまじく」
「兄妹仲むつまじく」

のように「男女間」にしか使わないような気もします。しかし、待てよ、
「2羽のスズメが、仲むつまじく遊んでいる、のように動物にも使えるよね。それからトランスジェンダーの女性同士のカップルが仲むつまじいというのも『あり』だよな。」
などと言いながら辞書を引いてみました。まず『新明解国語辞典』。「なかむつまじい」は載ってなくって、それならばと「むつまじい」を引きました。
「睦まじい」=身内の者の気持ちがしっくり合っていて、喧嘩・もめごとなどが無いように見える。睦まじい。(例)「仲むつまじい夫婦」
なるほど「身内」というところがポイントですか。それで今回は誰と誰が仲むつまじいという文脈なの?
「これまでは仲が悪いとされてきた、女優の沢尻エリカと長澤まさみです。」
「フーンそうか、だとすると、『身内』ではないわなあ。』

と言いながら、ほかの辞書を引きました。『新潮現代国語辞典』です。
「睦まじい」=(古くは「ムツマシ」(男女が)互いに気が合って仲がいい。
あ、やっぱり「男女が」なんだ!用例は『当世書生気質』から、
「むつまじきこと、さながらに、真実の兄妹に異ならねば」
とありました。そして『岩波国語辞典』を引くと、
「睦まじい」=仲良く、親しみあっている。情愛がこまやかだ。(例)「仲むつまじい夫婦」
と、用例は『新明解』と同じでした。『広辞苑』は、
「睦まじい」=(室町時代までは清音)交情がこまやかである。仲がよい。
として『雄略記』からの用例とともに、「睦まじい夫婦」「仲睦まじく過ごす」の作例がありました。『日本国語大辞典』は、
「睦まじい」
(1)間柄、気持ちのつながり、交わりなどが、隔てなく親密である。親しい。
(2)特に、夫婦または恋人同士の男女の仲がよい、愛情が濃密である。
(3)(主として人以外の事物に関して)心がひかれ、愛着を感じる。慕わしい。なつかし。

と3つの意味が載っていました。ハハン、この(3)のイメージが強いので「男女間」という感じがするんだな。納得です。でも「男女間」でなく使っても、必ずしも間違いと言うわけではなさそうです。
ちなみに「語源説」を読んでみると、
(1) ムツ(六)は一が五を求めて成就した数であるところから
(2) ミウチサマシ(身内状如)の義、またミウチツレミヤカシ(身内連見如)の義
(3) ムツミシキ(親如)の義

と3つの説が紹介されていました。
そうそう、そう言えばお正月の鏡餅に備える串柿の数が10個で、その数え方が、関西地方では、
「いつもニコニコ、仲睦まじく」(両端に2個づつ真ん中に6つの、計10個)
というのを前に書いたと思いますが(書いてないかも・・・)、それも「むつまじい」でしたね。
2007/6/8


◆ことばの話2879「献杯」

先日、横山ノック・前大阪府知事が亡くなりました。そのノックさんの「お別れの会」が、6月7日に大阪市内で開かれました。
会では、「漫画トリオ」の一員であった上岡龍太郎さんが挨拶でノックさんのことを、
「府知事から最後は刑事被告人まで、相方や車や住むところ、肩書きなどをコロコロと替えたけれども、奥さんは生涯替えなかった」
と紹介・挨拶。その様子を、翌日のワイドショーで流していました。その時にナレーターが、
「ケンパイの音頭を取った上岡龍太郎さん」
と言ってたんですが、この「ケンパイ」というのは、字は、
「献杯」
という字を当てるのでしょうが、「お別れの会」では「乾杯」とは言わずに「献杯」と言うのですね。音で言うと、
「カ→ケ」
に変わっただけですが、やはり、ずいぶん印象が変わるものですね。
2007/6/8


◆ことばの話2878「△△2△ ○○2○」

JR環状線の大阪駅で、何気なく足元を見たら、なんだかおもしろい記号が見えました。

「△△2△ ○○2○」

落書きではありません。乗り口の足元のプラットホームに記されたものです。
快速や新快速は△印、各駅停車は○のところに止まるのですね。数字は「何両目か」を記しています。また△や○の数は、「何列で並ぶか」を記しています。
別に何の不思議もなく、普段見慣れた光景でしたが、なんとなくこれが「暗号」のように見えてしまいました。
文字ではなく、マークや数字を示す内容を、人々は特に違和感なく受け入れて従っているのだなあと、ちょっと不思議に思った一瞬でした。
2007/6/8


◆ことばの話2877「琵琶湖で海水浴」

今日、6月8日の『ズームイン!!SUPER』の関西ローカル部分の放送は、滋賀県大津市の琵琶湖岸からでした。あの遊覧船「ミシガン」からの中継です。今日は「泊まり明け」だったので、会社のテレビでその中継を見ていたら、大田良平アナウンサーが、
「いやあ、琵琶湖に来るのは久しぶりです。子供の頃によく海水浴には来たんですけど」とポロッと言ったのを、私は聞き逃しませんでした。
「海水浴?いつから琵琶湖で『海水』浴が出来るようになったんだ!?」
でしょ?琵琶湖は「海」ではありませんから、「『海水』浴』は出来ません。強いて言うなら、
「湖水浴」
ですが、この言葉は、こなれていませんよね。じゃあどう言えばいいのか?ここはシンプルに、
「泳ぎに来た」
で良いのではないでしょうか?Google検索(6月8日)では、
「湖水浴」=5万8600件
と結構使われていますね。ニュースサブで、
「大田に海水浴って言うなよって伝えて!また番組内で言うといけないから」
とスタッフに言うと、
「わかりました!」
と言って、本当にすぐに伝えてくれたので、調子に乗って、
「今からそっちにすぐ行くから、待っとくようにって言っといて!」
というと笑いが起きました。
その後大田アナは、「海水浴」とは言わなかったようです。
2007/6/8


◆ことばの話2876「タキツバ」

今年30回目を迎える「24時間テレビ 〜愛は地球を救う」(8月18・19日)のメインパーソナリティを担当することになった2人について報じた記事が、5月14日の「スポーツ報知」に載っていました。その見出しは、
「タキツバ」
でした。誰?それ?よく記事を読むと、
「『タッキー&翼』を略して『タキツバ』」
なのだそうです。ふーん。「たきつぼ(滝壷)」なら聞いたことがあるけど、「タキツバ」は初めて知ったな。アナウンス部のアルバイトの女性Fさんに、
「タキツバって知ってる?」
と聞いたら、
「知ってますよ、もちろん。『タッキー&翼』のことでしょ」
と、こともなげに答えられてしまいました。そうか 若い女性にとっては常識なのか。知らなんだ・・・。Google検索(6月7日)では、
「タキツバ」=   19万5000件
「たきつば」=   2万6500件
「タッキー&翼」= 2万9900件
でした。正式に書いた「タッキー&翼」より「タキツバ」の方が断然多いのか。フーン。知りませんでした。
2007/6/7
(追記)

「NEWS」の手越君と増田君の2人が台湾で大歓迎を受けたという「ニュース」を、6月18日の『ズームイン!!SUPER』で伝えていました。そこで2人のことを略して、
「テゴマス」
だそうです。4文字略語ですね。フーン。
2007/6/18
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