◆ことばの話2870「本県」

出張で青森県弘前市に行ってきました。
地方へ行くと必ずその土地の「地方紙」を買って読みます。今回読んだのは「東奥日報」でした。そこで気づいた独特の表現は、
「本県」
でした。関西に住んでいて新聞紙面では見かけません・・・見かけないと思います。(と言っても、私は大阪では地方紙を読まないので。神戸新聞では使っているのかな?京都新聞は「本府」?・・・ないだろな。)
これって、昔よく見かけた、
「わが国」(我が国)
という表現にも似ているような。
ちなみに、3月に行った鹿児島「南日本新聞」で見かけたのは、
「鹿県」
でしたね。これは「平成ことば事情2836 鹿県」に書きました。読んでください。

2007/6/1


◆ことばの話2869「最旬」

「平成ことば事情1222」で、
「最薄(さいうす)」
という言葉を取り上げましたが、『週刊文春』2007年2月1日号の記事では、
「最旬」
という言葉を見つけました。
「さいしゅん」
でいいのかな、読み方は。意味は、
「もっとも旬」
ということでしょう。でも「上旬」「中旬」「下旬」の場合は、
「じゅん」
ですよね・・・。
「旬」だけでも意味は同じなのに、それを強調しようとすると「最」をつけて「最旬」ということになるのでしょうね。
こうやって新しい言葉が作られていきます。
2007/4/9
(追記)

4月に書いて、UPするのを忘れていました。(うずもれていました。)5月30日にGoogleの「日本語のページ」で検索したら,
「最旬」=167万件
もありました!そんなに!?使われ方は、
「最旬Tシャツ」「最旬ビデオカメラ」「最旬美白テクニック」「最旬バッグ」「最旬エクステ」「最旬おしゃれ」「最旬ホテル」「最旬コラボバッグ」「最旬スタイル」「最旬アイテム」「最旬サンダル」などなど。
「エクステ」って、「付け毛」のことですよね?「最旬」は女性向けの宣伝で相当使われているようですね。「旬」に敏感なのは、やはり、男性よりも「女性」なのでしょう。アナウンス部のアルバイトの女性Fさんに、
「『最旬(さいしゅん)』って言葉、知ってる?」
と聞くと、
「あ、知ってます。女性誌やファッション雑誌でよく見かけます」
とのこと。そうか、ファッションだけにもちろん「最も旬」がキーワードなのですね、納得!
2007/5/30


◆ことばの話2868「慙愧に堪えない2」

「平成ことば事情862」でも書いた「慙愧に堪えない」をまたテレビで耳にしました。
5月28日、松岡利勝・農水大臣が自殺した報を受けて、安倍晋三総理大臣は、
「大変残念です。慙愧に堪えない思いです。確かに国会で、厳しく追及されておりましたが、しかし、自分の専門の分野で自分の知識を生かせるということで、頑張っておられたと思います」
と述べました。が、この「慙愧に堪えない」に対して、情報番組担当のY君とキャスターのSさんから、
「この使い方はおかしいのではないか?」
と疑問の声が届きました。確かにちょっとおかしい感じがします。Y君が言うには、
「安倍総理の『慙愧に堪えない』は、『遺憾に思う』<『遺憾の極み』<『慙愧に堪えない』というような使われ方をしているのではないか?そしてそれは本来の使い方ではないのではないか?」
とのことなのです。しかし、2002年に「平成ことば事情862」で書いた作家の柳美里さんの例に比べると、まあ、「使わなくもないかな」という気はします。しかし、この使い方によると安倍総理は、
「松岡大臣を任命してしまったこと、もしくは辞めさせなかったこと」
について「慙愧に堪えない」と言っているということなんでしょうかね。
当の松岡大臣も5月25日の会見で、緑資源機構をめぐる官製談合事件に関して、
「国民の皆様の信頼を著しく裏切ることになることとなったことに対して、所管者である農林水産省として、誠に慙愧に堪えないことでございます」
「慙愧に堪えない」という言葉を使っていますが、これは正しい使い方でしたね。
もう一度『日本国語大辞典』を引いておきましょう。
「慙愧・慚愧」
(古くは「ざんぎ」元は仏語で、「慙」はみずからはじること。「愧」は人に向かってこれをあらわすこと。)
(1) いろいろと自分のことを反省して心からはずかしく思うこと。恥じ入ること。また恐縮すること。
(2) 悪口を言うこと。

安倍総理は、何に関して「反省して恥じ入って恐縮している」のでしょうか?
「美しい国日本」は、まず「美しい日本語」からだと思いますが、いかがでしょうか?
2007/5/29
(追記)

やはり問題にしていた人たちもいたようで、5月29日の読売新聞朝刊政治面に、
「首相の慙愧発言」
という見出しの小さな囲み記事が出ていました。安倍総理の発言について、
「『残念だ』の意味で使ったのであれば、間違っている」
という指摘が出ているのだそうです。やっぱり。それに対して「首相周辺」(塩崎官房長官でしょうか?)は、
「首相は部下を死なせたことは、自分の責任だといいたくて、あえて使った」
としているそうですが・・・本当かなあ。
2007/5/30
(追記2)

今日(5月31日)発売の『週刊文春』(6月7日号)を通勤途中の駅の売店で購入、電車の中で読んでいたら、特集の中に、
「慙愧を口にした安倍首相の『恥』」
という記事が載っていました 特集の最後にちょっとだけ「慙愧」について書かれていました。
「『慙愧に堪えない思いです』 安倍首相は死を悼んで表明した。『慙愧』とは自分の行動を恥じて使う言葉だが、その意味を安倍首相は知っていたのだろうか。」
と載っていました。気になる人は、やはり気になるのですね。
2007/5/31
(追記3)

「追記2」を書いてから1年8か月。この間に総理大臣が2人、変わりました。
さて。
安倍、福田と来て麻生太郎内閣。その内閣府政務官を務めていた松浪健太議員が、第2次補正予算案の衆議院本会議の採決で造反、退席して棄権したことで、2009年1月13日、内閣府政務官を辞任しました。それを報じた1月14日の日経新聞朝刊は、河村官房長官が松浪氏との会談の後に記者団に対して、
「非常にざんきに堪えない。彼の純粋な思いに対して我々の監督不行き届きもあった」
と述べたと報じています。これはどうなんでしょう?本来の正しい使い方なんでしょうか?河村官房長官は、
「いろいろと自分のことを反省して心からはずかしく思うこと。恥じ入ること。また恐縮」
しているのでしょうか?なんとなく、
「残念で仕方がない」
と聞こえるのですが。いかがでしょうか?ちょっと、反省しているのかな?
2009/1/19


◆ことばの話2867「殯(もがり)の森」

日本時間の5月28日、フランスのカンヌ映画祭で、河瀬直美監督の『殯(もがり)の森』が、グランプリ(審査員特別大賞)を受賞しました。グランプリは「パルムドール」に次ぐ第2位だそうです。
タイトルの『殯(もがり)の森』の「殯(もがり)」というのは、昔、貴人などが亡くなったときに、遺体を葬る前に棺に入れてしばらく安置した儀式のことを言うそうです。死者の魂が完全に体から離れるまで時間を置いた、つまり周りの人の意識からも「死んだ」ということを実感として認識できるまでは、遺体を埋めないというための儀式だったのでしょう。
カンヌでの発表の際の映像を見ていたら、タイトルを英語で発表していて、それが、
「モーニング・フォレスト」
と聞こえたとI部長が言うのです。その後のニュースで聞いたら、私にも確かにそう聞こえました。「モーニング」・・・なんで「朝」なんだろう?「殯(もがり)」なんて、日本の儀式だから英語に訳せなくて、そこで全く別の「朝の森」という英語のタイトルにしたのかな?と思って英和辞典を引くと、やはり、「morning」には「朝」という意味しかありませんでした。
そのやり取りを聞いていたUアナウンサーが、
「こちらの意味ではないですか?」
とインターネットの英和辞書を引いたものをプリントアウトして持ってきてくれました。そこには、
「mourning」
という単語が!「u」がひとつ多い!意味は、
「悲しみ・哀悼・喪に服する」
とあります。発音は「朝」の「morning」と同じでした。こっちかあ、「殯(もがり)」=「喪に服する」、直訳ですね。喪服・・・ハッ、そうか、いわゆる、
「礼服のモーニング」
もこれだったのか!今頃気づくとは!!朝しか着たらダメなのかと思ってた!ちなみに、
「モーニングサービス」
の「モーニング」は「朝食サービス」ですよね。喪服の「モーニング」を着てサービスしてくれるわけではないですから。
いずれにせよ、河瀬監督、受賞おめでとうございます!
2007/5/28
(追記)

新人アナと2年目アナに「三大映画って、カンヌのほかは何?」と聞いたのですが、ちょっと質問が難しかったのか、「ハリウッド映画際ですか?」とか「ナポリ?」「ハンブルグ?」など、トンチンカンな答えが返ってきました。ドイツの首都がなかなか出てこなかったのには驚きました。まだ「ボン」と答えて間違うぐらいならいいのですが、それも出てこない。困ったなあ。
2007/5/28
(追記2)

ああ、早とちり!新聞協会の金武さんからご指摘をいただきました。

「『ことばの話2867』で礼服のモーニングがmourning(喪服)と取れるような個所がありましたが、ご存じのようにモーニング (コート)はmorning coatで、evening coat(燕尾服)の対語であり、祝いごとにも着ますから、ちょっと誤解されそうですね。」

「モーニング」は「モーニングコート」で、「朝」の「モーニング(morning)」でよかったのか!たまたまmourningとmorningが似ていて、しかもmourningに「喪服」の意味があったので早とちりしてしまいました。すみません。金武さん、ありがとうございました。
2007/5/30


◆ことばの話2866「申し上げましたみたいに」

5月20日日曜日の深夜、時計の針は2分ほど21日月曜日に入った頃、NHKのニュースに出てきた解説委員のような記者の人が、
「さきほども申しあげましたみたいに…申しあげましたように。」
と言いました。
「申し上げましたみたいに」
は結構、おかしかったです。「申し上げました」という丁寧さと、「みたいに」という日常交互は相容れないのだな、と改めて感じました。「ように」だと落ち着くのですね。
何のニュースだったのかは忘れましたが、その部分だけが記憶に残っています。
2007/5/28
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