◆ことばの話2865「ZARDの坂井泉水さん、死去」

ZARDのボーカリスト、坂井泉水(さかい・いずみ)さん(40)が、入院中の慶応大学病院の階段から誤って転落して、脳挫傷のため5月27日、亡くなりました。子宮頸がんの治療のため入院していたというのですが、肺にも転移していたそうです。そんなこと、ちっとも知りませんでした。ビックリしました。驚きました・・・。
その訃報を伝えた5月28日の夕刊各紙の坂井さんの紹介文が、微妙に違いました。

(読売)人気ポップスグループ「ZARD(ザード)」のボーカリスト坂井泉水
(朝日)「ZARD」のボーカリストで作詞家の坂井泉水
(毎日)「負けないで」などのヒット曲で知られる人気歌手、ZARD(ザード)の坂井泉水
(産経)「負けないで」などのヒット曲で知られる人気グループ、ZARDのボーカル、坂井泉水
(日経)人気音楽グループ「ZARD」のボーカル、坂井泉水

でした。坂井さんが何をしていた人か、ZARDとは何か、そのあたりの紹介の詳しさの程度が違います。
朝日はいきなり「ZARDのボーカリ−ストで作詞家」と紹介して、「ZARD」に読み仮名も書かれていませんが、読売と毎日は、「ZARD(ザード)」と読み仮名を振っています。
また、毎日と産経は、ZARDの代表的なヒット曲として『負けないで』を挙げています。「ZARD」自体がどういったものなのかの修飾は、
「人気ポップスグループ」(読売)
「人気グループ」(産経)
「人気音楽グループ」(日経)
といずれも、
「人気」
が付いていますが、単純に「グループ」だったり「音楽」グループだったり「ポップス」グループだったりしています。
それから、坂井泉水さんの職業名としては、
「ボーカル」(産経・日経)
「ボーカリスト」(読売・朝日)
「人気歌手」(毎日)
と分かれていて、朝日はそれに付け加えて「作詞家」も、職業として挙げています。
ZARDでの役目としては「ボーカル」、仕事としては「ボーカリスト」ですね。「アナウンス」か「アナウンサー」か、はたまた「リポート」か「リポーター」かみたいな違いでしょうか。
そして「坂井泉水」の名前についた振り仮名の振り方も、新聞によって違い二つに分かれました。
毎日と産経・日経は「氏名の後ろに(さかい・いずみ)」
読売と朝日は「名前の『泉水』の上にだけ『いずみ』とルビ」
となっています。後ろにルビを振る場合は、フルネームで読み方をつけないとわかりにくいのですね。
なお、読売テレビの「ニューススクランブル」では、
「人気アーチスト・ZARDのボーカル・坂井泉水さん」
と紹介していました。そこで、昔バンドをやっていてアーチスト関係に強いSプロデューサーに聞いたところ、
「ZARDはグループじゃありません。坂井泉水、ひとりです!」
と言うではありませんか!そう言えば私も、ZARDがデビューした当初、この歌手の芸名(アーチスト名)が「ZARD」だと思っていました。そして本名が「坂井泉水」だと思っていました。(本名は、蒲池幸子=かまち・さちこ)
ネットの百科事典『ウィキペディア』を引くと、
「デビューしたての頃はZARDとはソロプロジェクトで、まだ音楽知識に不慣れな坂井を長戸大幸が傍でサポートしていた。バックメンバーはそれまでつける必要がないかと思われる。アルバム『もう探さない』からバックバンドの4人がクレジットされる。」
と載っていました。(『もう探さない』はセカンドアルバム)途中からグループになったのか。でもその後メンバーが抜けて行って、
「2004年に行われた初ライブ・ツアーのパンフレットによると、現在は『坂井泉水を中心としたユニット名』とされている。また、1999年のベスト盤発売時に寄せられたメッセージの中では、1991年のデビューシングル『Good-bye My Loneliness』のPVのディレクターだった岩井俊二が、『ZARDは一人だった』と発言している。」
とも記されています。つまりは一人なのか、やっぱり。
事務所からのコメントです。(http://wezard.net/)
「ZARDファンの皆様ヘ
弊社所属アーティストであります、ZARDのボーカル/作詞家、坂井泉水が、
5月27日15時10分、不慮の事故による脳挫傷の為、永眠致しました。
坂井さんは、昨年6月、子宮頸癌を患い、都内某病院にて、入退院をくりかえしながら闘病生活を送っておりました。摘出手術により、一度は快方に向かっておりましたが、子宮頸癌の肺転移が認められ、今年4月に再入院を余儀なくされました。主治医及び病院関係者の治療のおかげをもちまして、ここ最近は、早朝に病院の敷地内を散歩するまでになり、気丈にも体調回復のための日課としておりました。5月26日早朝、病室に戻る途中、階段の踊り場(約3メートルの高さ)を通った際、前日の雨により足を滑らせて転落、後頭部を強打したことが、要因となりました。
これまでZARDを応援して下さった皆様に深く感謝し、いつまでもZARD作品が、皆様の心の中に生き続けることを願っております。
2007年5月28日
ビーイングスタッフ一同」
残念ですが、坂井泉水さんのご冥福をお祈りします・・・・。
2007/5/28


◆ことばの話2864「弘前のイチ」

出張で青森県弘前市に行ってきました。青森空港から弘前駅前までリムジンバスで50分。終点は「弘前バスターミナル」でした。弘前駅前に回ってから、すぐ近くにあるバスターミナルで車庫に入るようです。バスは飛行機と連絡が良くて・・・と言っても、大阪・伊丹空港と青森空港の便は、1日に2便しかないのです。これで連絡が悪かったら、こっちも困りますが・・・乗客は私も入れて7人でした。
この日泊まったホテルは「弘前パークホテル」。初めて泊まるホテルなので、場所がよくわかりません。そこで、
「パークホテルはどこで降りればいいですか?」
とおじいさん運転手さんに聞いたら、
「うーん、やっぱりイチかターミナルだろね」
という答え。「イチ」というのは地名かな?と思って路線図を見たら、そんな地名はありません。「イチ」の位置がわからない。そもそも停留所も5つぐらいしか止まらないのです。その中で「イチ」の発音に近いところはと言うと・・・・
「駅」(つまり「弘前駅」)
でした。カルチャーショック!青森では、
「エキ」=「イチ」
つまり、
「E→I」「K→T」
という音の変化があるのですね。あんまり口、動かさないんだなあ。勉強になりました!
2007/5/28


◆ことばの話2863「ジューイチカイ」

5月28日、松岡利勝農水相が、議員宿舎で首を吊って自殺しました。それを伝える日本テレビの北 優路記者が、議員宿舎前からの中継で、
「松岡大臣は、この議員宿舎のジューイチカイにある部屋で・・・」
というふうに、
「ジューイチカイ」
と2回、リポートしていました。これはもちろん11階」のことですよね。これは、当然本来は、
「ジューイッカイ」
と促音便で言うべき言葉です。私は以前、マンションの「11階」に住んでいましたが「ジューイチカイ」というのは一度も聞いたことがありませんでした。
「11」をめぐる助数詞と数字の関係では、2006年12月10日のサッカーの「トヨタ・プレゼンツ・クラブワールドカップ」で、日本テレビの鈴木 健アナウンサーが、11か所」を、
「ジューイチカショ」
と話していました。これも普通は、
「ジューイッカショ」
と促音になるところですよね。どうも最近「11」に関するものを促音便にしない傾向があるのかもしれません。おそらくこれは「数字と助数詞を別に考える」ことから始まっていて、時間の「3分、4分」を半濁音ではなく清音で、
「サンフン、ヨンフン」
という若い人が増えているのと同じ傾向だと思います。(平成ことば事情2079「3ふん前、4ふん前」参照)
つまり本来「発音のしやすさ」から半濁音や促音化していたのに、ひとつの言葉を覚えるのが面倒なのでその手間を省き、数字と助数詞を別々に言う(助数詞をフン、プンなどと活用させなくていい)ようになってきたのではないでしょうか?
2007/5/28


◆ことばの話2862「ズバリ考」

平成ことば事情2055「ズバッと予報」でも書きましたが、読売テレビの夕方のローカルニュースワイド番組「ニューススクランブル」の人気コーナーの一つ「小谷さんのズバッと予報」というお天気コーナー。
ウェザーキャスターの小谷さんが、下駄を飛ばして(コーナータイトルどおり)ズバッと天気を占うという大胆なコーナーで、小谷さんは下駄を飛ばしながら、
「ズバッと、明日は、晴れ!」
「ズバッと、明日は、雨!」
と冒頭で言い切るのですが、「ズバッと晴れ」「ズバッと雨」はいいけど、
「ズバっと、明日は、くもり!」
というのが、気にかかるということを書きました。(2004年1月)
「ズバッと、半熟」
「ズバッと、途中まで」
というのも「中途半端」でしょ。それと同じものを「ズバッと、くもり」に感じていたのですが、あれから3年半、
「でも、ちょっと認めてもいいのかな?」
と思ったのです。
というのは、「ズバッと、くもり」という予報、その日が「くもり」なら「ズバリ、正解!」なわけですよね。そういう意味ではルーレットで、
「ズバリ、赤」「ズバリ、黒」
という「二分法」は、まさに「ズバリ」という感じがしますが、それ以外に、たとえば、
「ズバリ、14
が当たることもありえるし、この表現はOKでしょ?そう考えると、
「ズバリ!晴れ時々くもり、ところにより夕方ににわか雨」
というピンポイントの「ズバリ」もありうるのではないかと。あ、「ところにより」は、やっぱり「ズバリ」にはなじまないか。
2007/5/28


◆ことばの話2861「欧米か!分析」
「タカアンドトシ」の使う流行語、
「欧米か!」
は、実はあまりテレビで私は見たことがないのですが、それでもなんとなく使ってしまう「手軽さ」があります。なにせ、「タカアンドトシ」なのか「テツアンドトモ」なのか、あんまり区別のついていない私です。それでもなぜ、ついつい言ってしまうのか?朝、通勤途中の電車の中で吊り革につかまりながら考えました。
「おーべーか!」は、「欧」・「米」2語とも長音ですね。だから同じ長音の形を持つ別の意味の言葉を入れると、パターンが似ているのでパロディとしておもしろいんですね。
「照明か」
「透明か」
「経営か」
「校名か」
「中継か」
などなどいくらでも作れて、この「答え」を引き出すための「質問」部分を作るのがきっと難しいんだと思います。バリエーションがありますしね。
こういった「答え」が、「規範」である「欧米か」から「少しずれてる」というのが、(笑)が生じる原因でしょう。「駄じゃれ」もこれと同じ笑いですね。「言葉遊び」です。そこには「規範が守られる」ことが前提条件としてあります。
そして「答え」を言う「突っ込み役」の役目は、「ボケ役」の「ボケ具合・ずれ具合を明確にする」ことです。それがこの場合、
「同じ長音2つパターンで、別の熟語の一語」
で表される内容を、「突っ込み」によって明確にすることで笑いが生じるのです。
ここまで考えたときに、電車が京橋駅に着きました。駅から会社まで歩く間に、さらに考えました。ボケ役のボケ具合を、突っ込み役が明確にするのは、ごく当たり前のオーソドックスな漫才のパターンです。しかし、大木こだま・ひびきの場合は、ボケ役がボケたパターンを、相手の突っ込み役が同じようになぞってボケると、
「そんなヤツ、おらへん」
と否定する。突っ込み役が「ボケ」てしまっては、収拾役がいなくなる。そこで突如、
「ボケが、突っ込み役に変身」
し、その「ちょっとしたずらし」を「意味なし!」と断罪するところに、新鮮な笑いが生じるのです。これは漫才における「権威の否定」ですね。横暴か!
ここでちょうど、会社に着きました。
2007/5/28